Trademark Appeal Case
世界遺産と国際信義
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2009−10700(T2009−10700/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第35類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成20年1月29日に登録出願されたものである。
その後、指定役務については、原審における平成21年1月19日付けの手続補正書により、第35類「運動用特殊衣服及び運動用特殊靴の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,運動用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,布製身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、その構成中に、ややデザインを施してなる『PANTANAL』の文字を含むものであるが、これはブラジル中西部に位置する地名『Pantanal』を直ちに認識させるものであり、しかも、この地域は『パンタナル自然保護地域(Pantanal Conservation Area)』としてユネスコの世界遺産に登録されているものであるから、一法人である出願人が自己の商標として採択・使用することは国際信義に反し穏当ではない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」と認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 本願商標の商標法第4条第1項第7号の該当性
本願商標は、別掲1のとおり、ブラジル連邦共和国に生息する鳥であるオニオオハシと思しき図形と、該図形に一部が重なるように、「PAnTAnAL」及び「Matogrossense」の文字を配してなるところ、その構成中、「PAnTAnAL」の文字は、大文字及び小文字を取り混ぜた欧文字を二重線で書してなり、文字の一部と接した下線を配する等、ややデザイン化されているとはいえ、いまだ特異ともいい難い構成からなるものである。
そして、「Pantanal」及び、その表音である「パンタナル」または、「パンタナール」が、国連機関のUNESCO(国際連合教育科学文化機関)の世界遺産として登録されている『パンタナル自然保護地域(Pantanal Conservation Area)』(ブラジル連邦共和国)を表す略称として一般的に、採択、使用されている実情が、別掲2のとおり、新聞記事情報及びインターネット・ホームページの記載から窺い知ることができる。
そうすると、本願商標の構成中、「PAnTAnAL」の文字からは、上記略称を想起するほかに、特定の意味を有する親しまれた語が見いだせないことからすれば、これに接する取引者、需要者は、世界遺産の一つである「パンタナル自然保護地域(Pantanal Conservation Area)」を表したものと容易に理解すると判断するのが相当である。
ところで、UNESCOの世界遺産リストに登録されるためには、「世界遺産条約履行のための作業指針」で示されている登録基準のうち、いずれか1つ以上に合致するとともに、その国において適切な保護管理体制がとられていること等の様々な厳しい条件を満たす必要があり、また、世界遺産リストに登録された後も、保有国と国際社会にはその世界遺産を保護する義務と責任が生じる(「社団法人 日本ユネスコ協会連盟」のホームページを参照 http://www.unesco.jp/contents/isan/about.html)など、ある国が、世界遺産リストへの登録を受けようとする場合、また、登録を受けた場合、その国においては、地方自治体や国全体をあげての管理体制の整備、環境整備、予算措置等様々な取り組みが必要とされているところである。
そして、商標法第4条第1項第7号における「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,1)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,3)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,4)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである(知財高裁 平成17(行ケ)第10349号判決、平成18年9月20日判決言渡し)から、請求人の商標を、その指定役務について、採択、使用することが、国際信義に反するといえる場合にも、本条項に該当すると解されるものである。
してみれば、国をあげての管理等が必要とされている世界遺産の一つである「パンタナル自然保護地域(Pantanal Conservation Area)」を、容易に理解させる「PAnTAnAL」の文字を含む本願商標を、一私人である請求人が営利目的で、自己の商標として登録し、使用することは、ブラジル連邦共和国の尊厳、ひいては国際間の信義則を保つ観点から、穏当ではないものといわざるを得ない。
2 請求人の主張(要旨)
請求人は、証拠を提出して、本願商標を付した商品を長年継続して販売、広告宣伝した結果、サッカー関連商品の分野においては、周知、著名となっており、また、ブラジル連邦共和国においても、周知な企業である旨、主張しているが、それを証明する証拠等は提出されておらず、また、仮に、請求人の商標として周知、著名であるとしても、そのことが直ちに、前記判断に影響を及ぼすとはいえないものであるから、請求人のこの主張は採用できない。
また、請求人は、過去の登録例を挙げ、本願商標も同様に登録されるべきである旨、主張するが、登録出願された商標が商標法第4条第1項第7号に該当するものであるか否かの判断は、それぞれの構成態様や取引の実情等をも勘案し、個別具体的に判断されるべき性質のものであるばかりでなく、請求人の主張している登録例をもって本件の判断が拘束されるものでもないのであって、かつ、その判断時期は、査定時又は審決時と解されるべきものであるから、請求人が挙げた商標登録例の存在によって、前記判断は左右されるものではない。
その他の請求人の主張をもってしても、原査定の拒絶の理由を覆すに足りない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして、本願を拒絶した原査定の理由は妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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