結論テキスト
審判費用は,被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2010−300123(T2010−300123/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第5020825号商標(以下「本件商標」という。)は,「ゆがふ」の文字を標準文字により表してなり,平成18年1月26日に登録出願,第36類「預金の受入れ(債権の発行により代える場合を含む。)及び定期預金の受入れ,資金の貸付及び手形の割引,生命保険契約の締結の媒介,建物の売買の代理又は媒介,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,株式市況に関する情報の提供」を指定役務として,平成19年1月26日に設定登録され,その商標権は,現に有効に存続しているものである。
請求人は,結論同旨の審決を求めると申し立て,その理由及び答弁に対する弁駁を次のとおり述べ,証拠方法として,甲第1号証の1及び2,甲第3号証並びに甲第4号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は,その指定役務中「預金の受入れ(債権の発行により代える場合を含む。)及び定期預金の受入れ,資金の貸付及び手形の割引」について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないから,商標法第50条第1項の規定により,その登録を取り消されるべきである。
(2)答弁に対する弁駁
ア 不使用について「正当な理由」を有しないこと
(ア)商標法第50条第2項の規定
商標法第50条第2項は「登録商標を指定商品(役務)について使用していないことについて正当な理由があるときはその取消しが免れる。」旨規定する。
被請求人は,「沖縄定住者資産運用商品『ゆがふ』などは,元日本銀行関係者や金融専門家等に相談し,現在も金融関係機関等へ実現のため,商談を進めている。」と主張して,その本件商標の不使用について認めた上で,不使用について正当な理由があるやの主張をする。
しかしながら,商標法第50条第2項における「正当な理由」とは,天災地変等の不可抗力事由その他法令の禁止等により,商標権者又は使用権者の責に帰すべからず事由によるものであるところ,商標権者の商標不使用に係る事情は,同人の社内事情による自己都合であるうえ,以下に述べるとおり,本件請求に係る指定役務についての許認可を有していないのであって,「正当な理由」が存しないことは明白であるため,本件商標は,その登録の取消しを免れるものではない。
(イ)商標権者が本件商標を本件請求に係る指定役務に使用できないこと
a.銀行法第1項(審決注:「第2条第1項」の誤記と認める。)は,「『銀行』とは,第4条第1項の内閣総理大臣の免許を受けて銀行業を営むものをいう。」,同第2項(審決注:「第2条第2項」と認める。)で「『銀行業』とは,次に掲げる行為のいずれかを行う営業をいう。1)預金又は定期積金の受入れと資金の貸付け又は手形の割引とを併せ行うこと。2)為替取引を行うこと。」と規定する。そして,同法第4条は「銀行業は,内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ,営むことができない。」と規定する。一方,商標権者は,「広告代理店業,不動産の賃貸,売買,管理,仲介,保有並びに運用」等を営む会社であり(甲第3,4号証),銀行法上に規定されている「銀行」ではなく,本件請求に係る指定役務中「預金の受入れ,定期預金の受入れ」を業として営むことはできない。
b.貸金業法第2条第1項は,「『貸金業』とは,金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引,売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付又は当該方法によってする金銭の授受の媒介を含む。)で業として行うものをいう。」と規定し,同法第4条第1項(審決注:「第3条第1項」の誤記と認める。)は「貸金業を営もうとする者は,・・一の都道府県の区域内の営業所を設置してその事業を営もうとする場合にあっては当該営業所又は事務所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。」と規定する。
商標権者は,貸金業法上に規定されている「貸金業者」ではなく,本件請求に係る指定役務中「資金の貸付及び手形の割引」を業として営むことはできない。
c.上述のとおり,商標権者は,本件請求に係る指定役務を業として営むことができない者であるため,商標使用に向けて準備中である旨の被請求人の主張は採用できない。
イ 乙第2号証ないし乙第4号証について
乙第2号証ないし乙第4号証は,商標権者が本件商標を本件請求に係る指定役務について使用していたか否かという事実に何ら関係のない書類であるため,本件商標の使用の事実について被請求人は何も立証していない。
ウ 商標権者の営む業務について
前述のとおり,商標権者は,「広告代理店業,不動産の賃貸,売買,管理,仲介,保有並びに運用等」の業務を営む有限会社であり(甲第3,4号証),本件請求に係る指定役務については,商標権者の業務に関連するものではない。
したがって,本件審判の請求が認められ,本件請求に係る指定役務についての登録が取り消された場合においても,商標権者の業務に係る役務「建物の売買の代理又は媒介,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供等」についての商標登録は維持されるのであって,商標権者には何らの実質的損害はない。
エ むすび
上述のとおり,本件商標は,本件審判の請求の登録前3年以内に使用が認められず,かつ,本件商標を本件請求に係る指定役務に使用できないことについて「正当な理由」を有するものではないことから,登録を取り消されるべきものである。
被請求人は,「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し,その理由を次のとおり述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
(1)現在まで商標の準備を進めている。
(2)商標準備状況の説明
商標権者では,常に地元沖縄県の発展に資する事を社会的使命と考え,諸事業の企画展開を実施している。商標権者が商標登録するのは,商標権者の権利確保もさることながら,沖縄の大切な言葉の権利を守ることも大切であり,他の国内外の地域で商標登録されることに対する危機意識もあり,厳しい事業環境の中,事業資金から捻出し登録した。乙第2号証(沖縄移住促進総合金融商品開発企画書「MENSORE」)に記載されている沖縄定住者資産運用商品「ゆがふ」などは,元日本銀行関係者や金融専門家等に相談し,現在も金融関係機関等へ実現のため,商談を進めている。
琉球銀行(請求人)からの審判請求に対し沖縄県の企業として,また県民の一人として,怒りと呆れで一杯である。何故ならば,請求人は,我々県民の財産を活用して生業としているのにもかかわらず,商標権者との事前の調整もないまま,いきなり審判請求を起こすという暴挙に出るなど,顧客でもある商標権者及びその代表取締役に対し恩義を感じる事無くこのような行動を起こすことは,道義上許されるべき事ではないと考える。事前に調整すれば,商標権者としても地銀とのさらなる良い関係を築く円満な解決を望み,互いのメリットを共有する事もできたと思い,大変に残念である。
他の事実関係も明らかにすると,沖縄移住促進金融商品開発企画書「MENSORE」の表紙に提案先と日付が記載されている琉球銀行へ2006年1月に提案した。その結果,担当者から時期尚早との回答であった。しかしながら,琉球銀行は,沖縄移住者むけの金融商品を商品化した。商標権者には,事前にも商品化後も,連絡さえなかった。商標権者からすれば非常に不誠実な会社だと感じている(乙第1号証)。
(1)使用の事実について
商標法第50条第1項の規定に基づく商標登録の取消審判の請求があったときは,同条第2項の規定により,被請求人において,その請求に係る指定商品又は指定役務について当該商標を使用していることを証明し,または,使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り,その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れないところ,被請求人は,「現在まで商標使用の準備を進めている」旨述べ,乙第1号証ないし乙第4号証を提出するので,以下検討する。
ア 乙第1号証ないし乙第4号証によれば,以下の事実を認めることができる。
(ア)「商標準備状況の説明書」(乙第1号証)には,「乙第2号証(沖縄移住促進総合金融商品開発企画書「MENSORE」)に記載されている沖縄定住者資産運用商品『ゆがふ』などは,元日本銀行関係者や金融専門家等に相談し,現在も金融関係機関等へ実現のため,商談を進めている。」と記載されている。
(イ)乙第2号証は,商標権者が作成し,琉球銀行(請求人)に宛てた2006年1月25日付け「『MENSORE(審決注:Oの上に長音符号が付されている,以下同じ)』沖縄移住促進総合金融商品開発企画のご提案」との表題のある印刷物であるところ,その「3.新金融商品名及び商品内容」の項目(3頁)には,「5)沖縄定住者資産運用商品『ゆがふ』/沖縄移住者・定住者の富裕層を市場とした資産運用商品を開発し,さらなる資産形成を支援する。」などと記載されている。また,同「5.企画実施スケジュール」の項目(5頁)には,「1)2006年1月 企画実施決定・プロジェクトチーム『MENSORE』の結成,商品開発(商品規格)・不動産物件情報(データー)の整理統合・充実,業務提携企業決定,広報戦略戦術立案・広告宣伝物(HP・広告デザイン・ポスター等)制作開始,2)2006年3月下旬 新金融商品完成,広告宣伝物完成,3)2006年4月3日 「記者会見・ニュースリリース」東京・大阪・名古屋・沖縄・福岡・仙台・北海道,金融商品販売(広告宣伝)開始・募集開始,沖縄不動産物件視察スタディーツアー公募及び受け入れ開始」と記載されている。
(ウ)乙第3号証は,沖縄への移住関連の広告を掲載した雑誌「PRESIDENT」に関するものである。
a.2006年9月4日発行の同雑誌には,「特別広告企画 沖縄移住特集」(148〜153頁)において,「特別企画/沖縄移住スタディーツアー参加者募集!」,「沖縄への移住計画または,関心をお持ちの皆様へ,本企画『沖縄移住特集』に掲載されている物件や施設の案内をはじめとして,様々なご要望にお応えするワンランク上のオリジナルスタディーツアーをご提案致します。」,「申込受付期間 2006年8/14−8/31」,「企画 沖縄移住センターMENSORE(有限会社インターフェース内)」との広告が掲載された。
b.2007年4月16日発行の同雑誌には,「特別広告企画 沖縄移住特集」(177〜183頁)において,沖縄の文化,生活,環境等が紹介された。ただし,商標権者の広告の掲載はない。
c.2007年2月26日発行の同雑誌に,プレジデント社と商標権者とが共同企画した「特別広告企画 沖縄移住特集2」を掲載するために,広告主の募集の広告が掲載された。
(エ)乙第4号証は,2008年8月25日発行の「日本経済新聞・広告特集」における「特集Second House/沖縄セカンドハウス」の広告である。ただし,商標権者の広告の掲載はない。
イ 前記アで認定した事実によれば,商標権者は,2006年(平成18年)1月ころに,琉球銀行(請求人)に対し,「『MENSORE』沖縄移住促進総合金融商品開発企画のご提案」として,商標権者が開発した金融関連商品を提示したこと,その商品中に,沖縄定住者の資産を運用する商品「ゆがふ」なる商品があったこと,2006年(平成18年)9月に発行された雑誌「PRESIDENT」において,「沖縄移住スタディーツアー」の参加者を募集する広告をし,また,2007年(平成19年)2月26日に発行された同雑誌に「特別広告企画 沖縄移住特集2」を掲載するための広告主の募集の広告をしたことなどを,それぞれ認めることができる。
しかし,以下のとおり,商標権者のした上記行為は,本件請求に係る指定役務について本件商標の使用の準備をしているものとは到底認めることができない。
すなわち,商標権者が琉球銀行に示した「沖縄定住者資産運用商品(ゆがふ)」等の提案は,本件請求に係る指定役務「預金の受入れ(債権の発行により代える場合を含む。)及び定期預金の受入れ,資金の貸付及び手形の割引」について商標権者自らが行うための準備ではなく,金融機関である琉球銀行に商標権者が開発した商品を売り込むための試みにすぎないものである。
また,雑誌において商標権者が広告をした「沖縄移住スタディーツアー参加者の募集」又は雑誌に「特別広告企画 沖縄移住特集2」を掲載するための広告主の募集の広告は,本件請求に係る指定役務に含まれないことは明らかであり,これが本件請求に係る指定役務について本件商標の使用の準備に結びつくものとはいえない。
他に,商標権者が,請求に係る指定役務について本件商標の使用の準備をしていたと認めるに足りる証拠は見出せない。また,商標権者において商標の使用の準備を進めていたにもかかわらず,商標権者の責めに帰すことができない特別の事情により現実の使用に至らなかったなどの事実関係を具体的に証明する証拠の提出もない。
ウ してみると,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件請求に係る指定役務のいずれかについて本件商標を使用している事実を何ら立証していないことになるというべきである。その他,商標権者又は使用権者が,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件商標を本件請求に係る指定役務について使用していたと客観的に認めるに足りる証拠の提出はない。
なお,被請求人は,商標権者を含む沖縄県民の財産を活用して生業としている請求人が本件審判を請求することは,道義上許されるべきではない旨主張するが,商標法第50条第1項は,登録商標の不使用による取消審判の請求人適格について「何人も」と規定しているところであるから,登録商標の不使用による取消審判の請求が,専ら商標権者を害することを目的としていると認められる場合などの特段の事情がない限り,請求人適格について何ら制限を受けるべき理由はないと解するのが相当である。そして,請求人よる本件審判の請求が商標権者を害することのみを目的としてされたものであると客観的に認めるに足りる証拠は見出せないから,上記に関する被請求人の主張は理由がないというべきである。
(2)むすび
以上のとおりであるから,被請求人は,本件審判の請求の登録(平成22年2月16日)前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,本件商標を本件請求に係る指定役務について使用した事実を証明し得なかったものといわなければならない。また,被請求人は,本件商標を請求に係る指定役務について使用していなかったことについて,正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,その指定役務中「預金の受入れ(債権の発行により代える場合を含む。)及び定期預金の受入れ,資金の貸付及び手形の割引」について,商標法第50条の規定により,取り消すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
Next Action
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