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Trademark Appeal Case

称呼類似と周知性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2010−890005(T2010−890005/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4833248号商標(以下「本件商標」という。)は、「クルミット」の文字を標準文字で書してなり、平成16年5月27日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同年11月29日に登録査定、平成17年1月21日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第33号証(枝番を含む。)を提出した。(甲号証、乙号証のいずれにおいても、枝番のすべてを引用するときは、以下枝番の記載を省略する。)

1 請求の利益

請求人は、「クルミッ子」の文字を縦書きしてなる商標(甲第2号証、以下「引用商標」という。)を使用して焼き菓子の販売等を行い、引用商標は、本件商標の出願日までに周知となっていた。したがって、引用商標に類似する本件商標がその指定商品に使用されれば、請求人の業務と混同を生ずるおそれがあるので、請求人は、本件商標の存在によって直接不利益を被る関係にあり、本件審判を請求することについて利害関係を有する者である。

2 請求の理由

以下に述べるとおり、本件商標は、その出願時及び登録時において、請求人の業務に係る「砕いた胡桃にキャラメルを練り合わせたものを手焼きのクッキーで挟んだ焼き菓子」(以下「請求人商品」という。)を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた引用商標に類似する商標であって、その商品と同一又は類似の商品について使用をするものであるので、商標法第4条第1項第10号に該当し、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効とされるべきである。

(1)引用商標の周知性

ア 引用商標の使用態様

請求人は、菓子の製造、販売等を目的とする株式会社として、昭和30年1月17日に設立された(甲第3号証)。請求人商品は、リスの絵をあしらった透明の包装ビニールに一つ一つ包装され(甲第4号証の1)、これらが5個袋入り、8個箱入り、16個箱入りとして販売されている。これらの包装袋及び包装箱には、引用商標が表示されている(甲第4号証の2ないし4)。

イ 引用商標の使用期間及び使用地域

請求人は、請求人商品の製造、販売を遅くとも平成6年9月30日に開始し(甲第5号証)、現在に至っている(審決注:なお、「証拠方法」における甲第2号証の説明には、引用商標の使用について、「平成9年から現在に至るまで」と記載されている。)。

(ア)請求人商品の本件商標の出願日までの販売地域(甲第6号証の1ないし723)

a 株式会社ダイエー(以下「ダイエー」という。)

綾瀬店、海老名店、橋本店、戸塚店、三ツ境店、湘南台店、相模原店、横須賀店、鴨居店、金沢八景店、港南台店、十日市場店、上溝店、平塚店(以上神奈川県)

b 株式会社三越百貨店(以下「三越」という。)

札幌店(北海道)、銀座店、日本橋本店、新宿店、恵比寿店、馬事公苑店、吉祥寺店(以上東京都)、横浜店、鎌倉店(以上神奈川県)、熊谷店(埼玉県)、名古屋栄本店(愛知県)、新潟店(新潟県)、大阪店(大阪府)、松山店(愛媛県)、広島店(広島県)、倉敷店(岡山県)、福岡店(福岡県)、鹿児島店(鹿児島県)

c 株式会社シェルガーデン(以下「シェルガーデン」という。)

自由が丘店、荻窪店、白金台店、目黒店、池袋店、上野店(以上東京都)、大船店(神奈川県)、船橋店、柏店(以上千葉県)、新所沢店(埼玉県)、筑波店(茨城県)

d 株式会社西友(以下「西友」という。)

衣笠店、新逗子NT店、鶴見店、追浜店、能見台店、新逗子ハイランド店、鷹取店(以上神奈川県)、

e 株式会社東急百貨店(以下「東急百貨店」という。)

町田店(東京都)、日吉店(神奈川県)

f その他

さいか屋藤沢店(神奈川県)、そごう大宮店(埼玉県)、横浜そごう(神奈川県)、調布パルコ(東京都)、岡島百貨店(山梨県)、一畑百貨店(島根県)、JR東日本NEWDAYS鎌倉(神奈川県)

(イ)請求人商品の本件商標の出願日以降の販売地域(甲第6号証の724ないし2174)

a 三越

札幌店(北海道)、仙台店(宮城県)、銀座店、日本橋本店、新宿店、恵比寿店、馬事公苑店、吉祥寺店、多摩センター店(以上東京都)、横浜店、鎌倉店(以上神奈川県)、熊谷店(埼玉県)、名古屋栄本店、星ケ丘店(以上愛知県)、新潟店(新潟県)、大阪店(大阪府)、松山店(愛媛県)、高松店(香川県)、広島店(広島県)、倉敷店(岡山県)、福岡店(福岡県)、鹿児島店(鹿児島県)

b シェルガーデン

自由が丘店、荻窪店、白金台店、目黒店、池袋店、上野店、吉祥寺店(以上東京都)、大船店(神奈川県)、船橋店、柏店(以上千葉県)、筑波店(茨城県)

c 西友

衣笠店、新逗子NT店、鶴見店、追浜店、能見台店、新逗子ハイランド店、阿久和店、鷹取店、七里ヶ浜店(以上神奈川県)

d 東急百貨店

町田店(東京都)、日吉店、青葉台店(以上神奈川県)

e その他

西武百貨店東戸塚店、さいか屋藤沢店(以上神奈川県)、そごう大宮店(埼玉県)、横浜そごう(神奈川県)、マルエツ(鶴間店、川崎駅西口店、綾瀬店、東逗子店:以上神奈川県)、ダイエー(十日市場店、横須賀店、相模原店、港南台店、上溝店:以上神奈川県)、調布パルコ(東京都)、岡島百貨店(山梨県)、一畑百貨店(島根県)、JR東日本NEWDAYS鎌倉、西武商事、サンエス富士シティオ藤ヶ谷店、紅谷ビル、津田屋ビル(以上神奈川県)

以上のうち三越は、平成16年、集客力強化・売上拡大策として、新・三越のスタートを記念して「三越デビューフェア」を開催し、特に日本橋本店の記念企画は需要者やマス・コミの注目を集めた。また、首都圏の需要者のみならず、全国の需要者を日本橋本店に迎えた特別招待会など、新・三越のネットワークを生かした施策を展開した。さらに、平成16年は、日本初の百貨店として営業を始めてから100年目の節目にあたり、これを記念した企画の一環として1月に「新春三越100年祭」を開催した。これに加え、急速に売上高が拡大しているインターネットをはじめ、店舗以外の販売チャネルによる営業拡大にも取り組み、成果を上げている(甲第20号証)。したがって、全国の相当数の需要者が来店し、及びインターネットを通じて商品を購入したものと考えられる。

ウ 請求人商品の販売数及び売上

(ア)本件商標の出願日まで

a ダイエーに対する販売数及び売上

平成14年6月は、2,009個、200,900円であり、同年7月は、2,675個、267,500円である(甲第7号証の1)。また、同年10月は、1,332個、133,200円、同年11月は、1,554個、155,400円、同年12月は、2,165個、216,500円である(甲第7号証の2)。

b 平成15年1月ないし平成16年5月の販売数及び売上、並びに上記各社ごとの詳細な内訳は、甲第6号証の1ないし743のとおりである。

したがって、平成14年6月から平成16年5月までの販売数及び売上は相当なものである。

(イ)本件商標の出願日以降

平成16年6月ないし平成17年1月の販売数及び売上、並びに上記各社ごとの詳細な内訳は、甲第6号証の744ないし2174のとおりである。

したがって、平成16年6月から平成17年1月までの販売数及び売上は相当なものである。

エ 特設店舗での販売

三越と提携関係にある一畑百貨店は、平成15年10月2日に、「菓遊庵」なる店舗を出店し、当該店舗で請求人商品を販売した(甲第8号証)。また、福岡三越は、「菓遊庵」なる店舗で請求人商品を販売し、遅くとも平成15年10月4日に、請求人商品を紹介したパンフレットを作成し、来店客等に頒布した(甲第9号証)。

オ ブランド商品としての認定

請求人商品は、平成13年3月28日に、社団法人神奈川県産業貿易振興協会により第10回湘南ブランド商品「SEILALIES」として認定された(甲第10号証)。

カ 観光展での販売

請求人商品は、平成14年5月26日に、東名高速道路下り線海老名サービスエリアで実施された観光展「湘南の海とまつり」において展示された(甲第11号証)。

キ カタログの頒布

請求人は、請求人商品を紹介したカタログを平成10年4月に31,500部作成し(甲第12号証)、このカタログは、平成20年12月までに全部数を頒布したので、本件商標の出願時及び登録時を含む平成16年2月から平成17年1月までの間は、およそ3,230部頒布されたと推定することができる。

ク 書籍への掲載

請求人商品は、以下の書籍に紹介された。

(ア)平成16年11月26日発行「おいしくてかわいい」(なお、該書籍は、初版発行部数が16,000部、累計発行部数が38,000部である。:甲第13号証)、(イ)平成18年3月末発行「甘く、かわいく、おいしいお菓子」(甲第14号証)。(ウ)平成19年3月発行「気持ちを贈るプチ☆プレゼント」(甲第15号証)。

ケ マス・コミによる紹介

請求人商品は、平成18年12月11日及び同16日に、テレビ番組「もっとぶらり!風気分」で紹介された(甲第16号証)。

コ 以上のとおり、引用商標は、本件商標の出願時において、請求人商品を表示するものとして需要者に広く知られていたものであり、また、本件商標の出願時以降も請求人商品の販売数は増大しているので、本件商標の登録時においても、請求人商品を表示するものとして需要者に広く知られていたことは明らかである。

(2)本件商標と引用商標との類否

ア 外観

本件商標が「クルミット」であるのに対し、引用商標が「クルミッ子」であるから、語頭から4文字までの「クルミッ」が共通し、語尾が「ト」と「子」と相違するのみである。したがって、本件商標及び引用商標は、5文字中1文字のみに相違点を見いだすことができないので、外観上相紛らわしいということができる。

イ 称呼

本件商標の称呼が「クルミット」であるのに対し、引用商標の称呼が「クルミッコ」であるから、両者は、同音数からなり、称呼の識別上重要な要素を占める語頭音部の「クルミッ」の音を共通にし、語尾音が「ト」と「コ」と相違するのみである。しかも、相違する「ト」と「コ」の音は、いずれも無声破裂音「k」、「t」と母音「o」とからなる近似音であるばかりでなく、比較的聴取し難い語尾に位置し、かつ、前音の「ミッ」が促音を伴って強く発音され、これに吸収されるように響くことから、両音の差異が全体に及ぼす影響はわずかなものである。そうすると、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語調、語感が近似し、互いに聴別し難いものである。上記請求人の主張は、商標審査基準や過去の審決によって裏付けられる(甲第17、18号証)。

その上、引用商標は、上述のように、請求人商品に使用され、需要者の間に広く知られているから、引用商標と上述のような程度の差異しかない本件商標の称呼「クルミット」が称呼されても、聴者は、「クルミット」であるか「クルミッコ」であるか明らかな区別をすることができない。したがって、本件商標及び引用商標は、称呼上相紛らわしいということができる。

ウ 観念

本件商標は、「クルミ」の語に「ット」の接尾語が付されていることから、胡桃の愛称として受け取ることができるので、「小さな胡桃」又は「かわいい胡桃」の観念を生じる。

一方、広辞苑第6版には、接尾として「子」の語が用いられる場合は、「小さなもの、劣ったものの意で添える語。『ひよ―』『猿まし―』『娘っ―』」と記載され、また、日本語大辞典には、「小さいもの、また親しみを表す語。」と記載されている(甲第19号証)。そこで、引用商標は、「小さな胡桃」又は「かわいい胡桃」の観念を生じる。

したがって、本件商標及び引用商標は、観念上相紛らわしいということができる。

エ 取引実情

「菓子及びパン」の属する食品業界は、昨今、食品偽装の問題や、農薬等の添加物の問題などが頻発しており、大変な社会問題となっている。そのため、一般消費者にとって、商品の原材料・製造方法・品質レベル等といった点は、商品選択に際し、非常に重要となっている。

上記取引実情を考慮すると、本件商標及び引用商標の構成中「クルミ」の文字は、商品の原材料を示すものであるので、需要者にとっては、大変強いインパクトを与える文字である。したがって、本件商標及び引用商標は、インパクトの強い文字について外観、称呼及び観念が共通しているので、その外観、称呼及び観念が混同を生じるほど相紛らわしいということができる。

オ 以上のとおり、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても引用商標と混同を生じるおそれのある類似の商標である。

(3)本件商標に係る指定商品と請求人商品との類否

本件商標の指定商品と請求人商品は、同一又は類似の商品である。

3 答弁の理由「4 引用商標の周知性」に対する弁駁

請求人商品は、菓子の中でも特に地域の特色を強く帯びた土産品であるから、販売数、売上、販売チャネルその他の事情が菓子一般とは全く異なる。以下、請求人商品が土産品の特性を有することを考慮し、被請求人の答弁に対し弁駁をする。

(1)被請求人は、「甲第4号証の1は、・・『クルミッ子』の商標を認識させるものはなく、かつ、この商品が販売された場所、撮影時も不明である。」と主張する。

しかし、包装ビニール(甲第4号証の1)を展開した状態を示す版下(甲第21号証の1)には、包装ビニールの側面に「クルミッ子」の文字が表示されている。甲第4号証の1は、この版下に基づいて印刷されるので、請求人商品に引用商標が表示されていることは明らかである。

また、請求人商品をばら売りする場合は、商品名「クルミッ子」及び価格を表示したプライスカードを請求人商品に添えて設置している(甲第21号証の2)。したがって、請求人商品には、引用商標が表示されていたということができる。

そして、甲第21号証の1の版下に基づいて印刷された包装ビニールの納品日及び納品数を証明する書面(甲第21号証の3)によれば、平成14年5月2日〜平成16年7月23日に、包装ビニールが印刷業者から請求人に納品されたことが分かる。したがって、甲第4号証の1は、本件商標の出願日前である平成14年5月2日〜平成16年5月26日の使用態様を示すものということができる。

(2)被請求人は、「甲第4号証の2は、・・袋の内容が焼き菓子であるかどうか判別できず、かつ、この商品が請求人商品である事実、販売されている場所、撮影時も不明である。」と主張する。

包装袋に請求人商品が収容されていることは、証拠の副本が白黒写真であるから、判別しにくいが、鮮明なカラー写真である正本を確認すれば、容易に認識することができる(甲第4号証の2)。

また、請求人商品が、請求人の製造、販売する商品であることは、甲第3号証、甲第9号証、甲第11号証の2、甲第12号証の1等を総合すれば疑う余地はない。

さらに、インターネット上で、平成17年5月〜平成19年7月に、請求人商品が包装袋に収容されて紹介された(甲第22号証の1ないし9)こと及び甲第6号証によれば、遅くとも平成15年1月から5個袋入りの請求人商品が販売されたことが分かる。また、後述のように、平成6年9月30日撮影の甲第25号証に、包装袋に請求人商品が収容された状態が表示されている。そして、平成6年9月30日〜平成17年5月の間に甲第4号証の2の包装袋の表示内容が変更された事実はない。したがって、これらの事実を総合すると、甲第4号証の2は、本件商標の出願日前である平成6年9月30日〜平成16年5月26日の使用態様を示すものであるということができる。

(3)被請求人は、「甲第4号証の3は、・・請求人商品が販売された場所、撮影時も不明である。」と主張する。

しかし、包装紙(甲第4号証の3)を展開した状態を示す版下(甲第23号証の1)及び該版下に基づいて印刷された包装紙の納品日及び納品数を証明する書面(甲第23号証の2)によれば、平成11年12月8日〜平成16年6月16日に、包装紙が印刷業者から請求人に納品されたことが分かる。したがって、甲第4号証の3は、この版下に基づいて印刷されるので、本件商標の出願日前である平成11年12月8日〜平成16年5月26日の使用態様を示すものであるということができる。

(4)被請求人は、「甲第4号証の4は、包装紙又は包装箱に・・『クルミッ子』の文字は判別できないし、その撮影場所、撮影時も不明である。」と主張する。

しかし、包装紙(甲第4号証の4)を展開した状態を示す版下(甲第24号証の1)には、該包装紙に「クルミッ子」の文字が表示されている。甲第4号証の4は、この版下に基づいて印刷されるので、包装紙に引用商標が表示されていることは明らかである。また、上記版下に基づいて印刷された包装紙の納品日及び納品数を証明する書面(甲第24号証の2)によれば、平成11年11月16日〜平成14年8月27日及び平成17年12月17日に、該包装紙が印刷業者から請求人に納品されたことが分かる。したがって、甲第4号証の4は、本件商標の出願日前である平成11年11月16日〜平成16年5月26日の使用態様を示すものであるということができる。

(5)被請求人は、「甲第5号証は、・・『クルミッ子』の文字はどこにも見あたらない。」と主張する。

しかし、甲第5号証の写真の一部を拡大したもの(甲第25号証)には、ショーケースの最上段中央に請求人商品が陳列されていると共に、商品名「くるみっ子」及び価格「¥100」を表示したプライスカードがその手前に設置されている。したがって、甲第5号証に、引用商標と実質的に同一の商標が表示されていることは明らかである。また、甲第25号証(中段矢印で図示)には、甲第4号証の1の包装ビニールの一部(リスの絵が描かれている面)が表示されている。したがって、甲第5号証には直接表示されていないが、甲第21号証の1から、引用商標が使用されていることは明らかである。さらに、甲第25号証(上段矢印で図示)には、甲第4号証の2の包装袋に請求人商品が収容された状態が表示されている。したがって、引用商標が使用されていることは明らかである。

(6)本件商標の出願日前の使用実績について

被請求人は、「平成6年9月30日〜平成14年5月までに販売されたとする証拠を請求人は提出していない。」と主張する。

ア 請求人商品の販売

平成14年5月以前については、請求人は、請求人商品に関する取引書類を散逸したので、販売実績の直接的証拠を提出することは困難であり、また、平成14年6月以降についても、請求人は、請求人商品に関する取引書類の一部を散逸したので、販売実績の直接的証拠を一部しか提出することができない。

しかし、以下のように販売数を推測することができる。

(ア)包装ビニール(甲第4号証の1)の納品日及び納品数を証明する書面(甲第21号証の3)によれば、平成14年5月2日に16巻、平成14年8月5日・同年9月2日・同年12月2日・平成15年1月17日・同年2月1日にそれぞれ8巻、平成15年7月22日・同年10月23日・平成16年1月22日・同年4月28日・同年7月23日にそれぞれ16巻の包装ビニールが印刷業者から請求人に納品されたことが分かる。1巻は1,000mであり、1巻から8,695枚の包装ビニール(甲第4号証の1)が得られ、包装ビニールは、欠品なくほぼ全数が請求人商品の包装に使用されるので、包装ビニールの消費量から、平成14年5月2日〜平成16年4月27日の請求人商品の販売数量を推測すると、

平成14年5月2日〜同年8月4日:16(巻)×8,695(枚)=139,120個

平成14年8月5日〜同年9月1日:8(巻)×8,695(枚)=69,560個

平成14年9月2日〜同年12月1日:8(巻)×8,695(枚)=69,560個

平成14年12月2日〜平成15年1月16日:8(巻)×8,695(枚)=69,560個

平成15年1月17日〜同年1月31日:8(巻)×8,695(枚)=69,560個

平成15年2月1日〜同年7月21日:8(巻)×8,695(枚)=69,560個

平成15年7月22日〜同年10月22日:16(巻)×8,695(枚)=139,120個

平成15年10月23日〜平成16年1月21日:16(巻)×8,695(枚)=139,120個

平成16年1月22日〜同年4月27日:16(巻)×8,695(枚)=139,120個 となる。

平成16年4月28日〜平成16年5月26日(本件商標の出願日前日)については、平成16年4月28日〜平成16年7月23日の日数が86日であり、平成16年4月28日〜平成16年5月26日の日数が28日であるので、以下の個数の請求人商品が販売されていることを推測することができる。

平成16年4月28日〜同年5月26日:16(巻)×8,695(枚)×28(日)/86(日)≒45,294個

(イ)8個箱入りの包装紙(甲第4号証の3)は、その包装紙の納品日及び納品数を証明する書面(甲第23号証の2)によれば、平成11年12月8日に18,000枚、平成13年10月2日に17,730枚、平成15年5月6日に18,000枚がそれぞれ印刷業者から請求人に納品されたことが分かる。包装紙の消費量から、平成11年12月8日〜平成14年5月1日の請求人商品の販売数を推測すると、

平成11年12月8日〜平成13年10月1日:18,000(枚)×8(個)=144,000個

平成13年10月2日〜平成14年5月1日:17,730(枚)×8(個)×212(日)/581(日)≒51,752個 となる。

(ウ)16個箱入りの包装紙(甲第4号証の4)は、その包装紙の納品日及び納品数を証明する書面(甲第24号証の2)によれば、平成11年11月16日に9,600枚、平成14年8月27日に17,100枚がそれぞれ印刷業者から請求人に納品されたことが分かる。包装紙の消費量から、平成11年11月16日〜平成14年5月1日の請求人商品の販売数を推測すると、

平成11年11月16日〜平成14年5月1日:9,600(枚)×16(個)×898(日)/1015(日)≒135,888個 となる。

以上(ア)ないし(ウ)によれば、本件商標の出願日前における請求人商品の販売は、合計で1,281,214個ということができる。この販売数は、甲第7号証の1ないし8に記載の数量の約15.7倍に上る。そして、この販売数から売上を算出すると、128,121,400円となる。

包装ビニールの消費量から販売数及び売上を算出することが妥当であることは、例えば、平成18年の包装ビニールの消費量(甲第21号証の3)から897,127個の請求人商品が販売されたことを推測することができ、また、平成18年の請求人商品の販売数及び売上の一部を示す書面(甲第26号証)の平成18年についてが、少なくとも826,355個販売され、包装ビニールの消費量から算出した販売数と、実際の販売数を比較すると、乖離率が7.9%程度あるが、比較的近い値で一致していることからその妥当性が担保される。

参考までに、本件商標の出願日以降でかつ登録日前の販売数及び売上を包装ビニールの消費量から同様に算出すると、請求人商品の販売数量は、合計で415,240個ということができる。この販売数は、甲第7号証の9ないし16に記載の数量の約2.8倍に上る。そして、この販売数から売上を算出すると、41,524,000円となる。

イ 請求人商品の広告

請求人は、請求人商品を広告したしおりを請求人の各種商品に同梱し、本件商標の出願日前には、合計で254,450枚のしおりが頒布された(甲第27号証)。

(7)引用商標の使用地域について

ア 請求人商品の全国販売について

請求人商品は、首都圏を中心に全国各地で販売された(甲第7号証)。このうち三越は、本件商標の出願時である平成16年度の売上が全国百貨店の売上の11.4%に達する規模である(甲第28号証)。全国的販路を持つ三越で請求人商品が販売されていたことは、全国的に販売されていたことを裏付けるものであり、全国の需要者に引用商標が認識されていた事実につながる。また、全国展開している百貨店と取引することは、その前提として、品質のよさや周知性が求められるのは自明である。請求人商品は、品質のよさや周知性の観点から地方の土産品として高い評価を受け、その結果として大手百貨店との取引が実現しているのであるのであって、引用商標の周知性は、これらの積み重ねの結果であり、すべての使用を総合して判断されるべきである。

被請求人は、「日本全国で引用商標を周知とさせるように販売されていたとは言えない。」と主張するが、商標審査基準によれば、「本号でいう『需要者の間に広く認識されている商標』には、・・全国的に認識されている商標のみならず、ある一地方で広く認識されている商標をも含む。」(甲第29号証の1)ので、引用商標は、必ずしも全国的に周知である必要はなく、請求人商品の使用地域のうちある一地方で周知性が得られれば足りるのである。特に、菓子の周知性について、網野博士は、「その地域的範囲は必ずしも全国的に知られていることを必要とせず、・・相当広範囲の需要者・取引者間に知られていれば足りる。しかしながら、これは一般的な原則であって、地域的範囲については指定商品や指定役務との関係を十分に考慮して決定されなければならない。・・菓子等の地方産業に属する商品の商標については、一府県内でも地方の名産としてその地方の者が広く認識している商標は、周知商標として扱われることが多いであろう。」と述べている(甲第29号証の2)。

イ 平成14年の三越の事業内容との関係について

被請求人は、「『三越デビューフェアー』が本件商標の出願日前に開催されたとの証拠はなく、また、1月に開催された『新春三越100年祭』において、引用商標がどのような態様で使用されたかについての証拠の提出もない。」と主張する。

しかし、請求人は、三越の販路の規模を立証することにより、三越における請求人商品の販売が、全国の需要者に引用商標が認識されている事実につながることを立証しようとするものである。

(8)請求人商品の販売数及び売上について

ア 「消化仕入れ」について

被請求人は、「百貨店や総合スーパーでの当事者間の取引は『消化仕入れ』と呼ばれる仕入れ形態が多い。その場合、商品納入時に納品書は発行されるが、その商品が売れない場合は返品される。」と主張する。

しかしながら、甲第6号証には、納入件数が最も多い三越をはじめ、そごう、東急百貨店、パルコ、さいか屋など多くの納品書に「買取仕入」と記載されている。したがって、これら店舗との取引は「消化仕入れ」ではない。また、請求人商品の仕入先である西友・東日本キヨスク株式会社・株式会社高島屋等・株式会社イトーヨーカ堂と請求人との間で締結した商品売買契約に関する契約書の写し(甲第30号証の1ないし4)によれば、請求人商品は買取仕入であり、返品の条件として請求人商品が売れない場合は規定されていない。そもそも、「消化仕入れ」とは、通常、劣化のスピードが遅い商品(例えば、服飾品)や単価の高い商品(例えば、宝石)について適用されるものであって、請求人商品のように、賞味期限のある菓子等の食品類について、「消化仕入れ」の形態をとることは商取引の常識としてあり得ない。また、甲第6号証によれば、同一の仕入先に対して比較的短期間で納品書が発行されており、これは、仕入先で請求人商品が完売したからこそ、次の納品が行われたという事実を示すに他ならない。

以上のとおり、請求人商品は、「消化仕入れ」ではないので、少なくとも納品書(甲第6号証)に記載の数量が実際に販売されたということができる。

イ 納品書(甲第6号証)について

被請求人は、「提出された納品書自体にも受領印や受領のサインがないなど、証拠として不十分なものが多い。」と主張する。

仕入先の店舗が納品書に受領印を押し又は受領サインを記載することは義務ではないので、仕入先の店舗によっては、請求人との取引の信用を背景に受領印の押印又は受領サインの記載を省略する商慣行があり、納品書の写しには、受領印が押されず又は受領サインが記載されていないものが存在する。上記のとおり、納品書の写しに記載の数量を遥かに超える請求人商品が販売されていることを推測することができるので、納品書の写しに記載の数量が優に納品されているということができる。したがって、実際に請求人商品が納品されていることは紛れもない事実である。

ウ 販売チャネルについて

被請求人は、「請求人商品は、・・コンビニに対しては0である。」と主張する。

しかし、請求人商品は、土産品であるので、コンビニのようにどこでも購入できる商品ではなく、特定の店舗で購入できることがステータスとなっている。したがって、販売チャネルを限定していることが周知性を否定することにはならない。

エ 菓子全体の売上に対する請求人商品の売上の割合について

被請求人は、「全日本菓子協会の統計を基準にすると、請求人商品の売上高は、菓子全体の売上の0.001%以下である。」と主張する。

しかし、比較の対象となる請求人商品の売上の集計期間は、平成14年6月〜7月、同年10月〜平成16年5月の1年10月であるのに対し、全日本菓子協会の売上の集計期間は、平成14年、平成15年の2年であるので、両者の集計期間が不一致である上、対象期間が5月もずれているので、正確な比較とはいえない。

全日本菓子協会等が集計した平成13年〜平成16年の菓子推定生産小売金額等を示す資料(甲第31号証)によれば、請求人商品は、「その他」の分野に属する菓子であるので、菓子全体において、飴菓子、チョコレート等の請求人商品とは関係のない分野の売上が占める割合が91.3%に及ぶにもかかわらず、そうした関係のない分野の売上までも一緒くたにして菓子全体の売上に対する請求人商品の売上の割合を算出し、その割合をもって引用商標の周知性の有無を論ずることに意味があるのか疑問である。請求人商品は、土産品であるので、他との比較において周知性の有無を論ずるのであれば、周知である他の土産品と比較するのが適当である。

また、被請求人は、「日本百貨店協会の菓子の統計を基準にしても、請求人商品の売上高は、全体の売上の0.002%以下である。」と主張する。

しかし、上記全日本菓子協会の売上と同様に、請求人商品の売上と日本百貨店協会の売上の集計期間が不一致である上、対象期間が3年5月もずれているので、正確な比較とはいえない。また、菓子全体との比較が適当でないことも同様である。

そもそも、売上は、引用商標の周知性の有無を判断する指標の一つになり得るかもしれないが、単に、菓子全体の売上に対する請求人商品の売上が占める割合が低いことをもって、引用商標の周知性がないことを論ずるのは適当ではない。周知性の問題は、請求人商品の売上高ではなく、その販売数を主眼とすべきである。売上は、請求人商品の販売数の規模等を認識するためにあくまで補完的に参酌される指標として位置づけられるべきである。そして、請求人商品は、上記のとおり、本件商標の出願日前に約128万個を販売した。地方の土産品としてこれだけの販売数を達成するのは極めて希有であり、引用商標が周知であることに疑いはない。

(9)引用商標の宣伝広告について

ア 特設店舗での販売について

被請求人は、「平成19年7月の名古屋三越のカタログによれば、135品目の菓子が紹介されているが、請求人商品は記載されていない。」、「ウェブ上に公開されている平成22年3月現在での名古屋三越『菓遊庵』における引用商標は日曜日のみの販売である。」と主張する。

しかし、これらのカタログや資料は、本件商標の出願日以降である平成19年又は平成22年のものであり、本件商標の出願日前における引用商標の周知性の判断には影響を与えない。

イ 観光展での展示について

被請求人は、「1回のみの観光展で周知とはいえない。」と主張する。

しかし、引用商標の周知性が認められるには、百貨店等での販売、観光展での展示その他の使用の1つ1つの積み重ねの結果として周知性が得られれば足りるのである。したがって、引用商標の周知性の有無は、引用商標の個々の使用ではなく、すべての使用を総合して判断されるべきである。

ウ カタログの頒布について

請求人は、甲第12号証の1が、平成10年4月以降に印刷された第2版のカタログであることを訂正し、上記カタログに代えて、平成10年4月に印刷された第1版のカタログの版下(甲第32号証)を提出する。

エ 書籍への掲載及びマス・コミによる紹介について

被請求人は、「その他の証拠である、書籍への掲載、マス・コミによる紹介は、本件商標の出願日以降である。」と主張する。

しかし、書籍への掲載及びマス・コミによる紹介は、それまでにその商品についてある程度の話題性や認知度が得られていなければならない。請求人商品は、引用商標と共に十分な周知性が得られていたからこそ、書籍に掲載され、マス・コミにも紹介されたということができる。したがって、本件商標の出願日前に引用商標が需要者の間に広く知られていたことを裏付ける一つの証拠となり得る。

(10)まとめ

以上のとおり、本件商標の出願時及び登録時において、引用商標は、請求人の業務に係る商品「焼き菓子」を表示するものとして需要者に広く知られていたことは明らかである。

第3 被請求人の主張

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第14号証(枝番を含む。)を提出した。

1 本件商標を付した商品について

本件商標を付したくるみ入りの菓子(以下「被請求人商品」という。)は、平成13年ころ、町(三重県志摩市大王町)の土産品となるように本件商標の商標権者により開発され販売が開始された。また、被請求人商品は、三重県の自慢品を生み出そうと取り組んでいる「三重の食パワーアップ100事業」の一環として、平成17年10月15日及び同16日に東京・池袋で開かれた「三重の食彩創造フェア」において、応募173点の中から第1位に選ばれており、そのことは中日新聞、奥志摩タイムス等で報道された(乙第1号証)。その後、被請求人商品は、平成18年11月16日の三重県の腕自慢商品発表会において三重県の腕自慢商品に選定された(乙第2号証)。さらに、昭文社から出版された「まっぷるマガジン」伊勢志摩版に掲載され、近くのお寺の法事、注文販売、ネット販売等により、数100個/年の単位で現在まで販売が継続されている(乙第3号証)。

2 引用商標の特許庁における経緯

引用商標は、指定商品を「焼き菓子」として、平成21年10月20日に出願され(商願2009−79451)、平成22年1月25日(発送日)に、「信濃の」と「くるみっ子」の文字を二段に表し、かつ、該「くるみっ子」の文字を若干大きく表した登録第4460739号商標(以下「件外登録商標」という。)と同一又は類似であって、その商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するとして、拒絶査定された(乙第4、5号証)。

3 請求の利益について

引用商標は、本件審判の結果如何に関わらず、件外登録商標の存在により、出願商標は拒絶査定が確定する蓋然性が高い商標である。また仮に該拒絶査定が確定すれば、引用商標を請求人が使用し続けると件外登録商標の権利侵害になる。

そうすれば、請求人の業務と混同を生ずるおそれがあり、請求人が直接不利益を被る関係にあるのは、件外登録商標との関係である。

平成16年7月8日の本件商標公開時、平成17年2月22日の公報発行時、平成17年10月15、16日に東京・池袋で開かれた「三重の食彩創造フェア」時に、本件商標は、多数の参観者に公開されているのであり、仮に本件商標の出願日までに、引用商標が周知となっているのであれば、請求人は、本件商標に対して対抗手段が可能であった。本件商標の商標権者からの警告あるいは権利侵害の訴等がなされていない現段階で、「引用商標は本件商標の出願日までに周知となっていた。」ことを要件として無効審判を請求するためには、周知となっていたとする証拠は、過去の審判決例に基づき十分に立証される必要がある。不十分な証拠による審判請求は、いたずらに審判請求事件が増加するのみである。請求人にとって、「クルミッ子」の周知性を争う途は別途残されているのであり、単に周知性の確認のために本件審判を利用することは許されない。

4 引用商標の周知性について

以下のとおり、三重県の特産品に使用されている本件商標の登録を無効とする周知性を、引用商標は本件商標出願時において獲得していない。

(1)引用商標の使用態様について

ア 甲第4号証の1は、請求人商品について、「リスの絵をあしらった透明の包装ビニールにより一つ一つ包装されている」として提出された。しかし、請求人商品のどこにも「クルミッ子」の商標を認識させるものはなく、かつ、この商品が販売された場所、撮影時も不明である。

イ 甲第4号証の2は、包装袋に「クルミッ子」の名称は記載されているものの、この袋の内容が焼き菓子であるかどうか判別できず、かつ、この商品が請求人商品である事実、販売されている場所、撮影時も不明である。

ウ 甲第4号証の3は、包装紙に「鎌倉だより クルミッ子」の文字と鎌倉時代の公家らしき図形が描かれている。しかし、請求人商品が販売された場所、撮影時も不明である。

エ 甲第4号証の4は、包装紙又は包装箱に「鎌倉だより(?) ????鎌倉殿」の文字と鎌倉時代の公家らしき図形が描かれている(「?」は判別が困難な文字である。)が、「クルミッ子」の文字は判別できないし、また、その撮影場所、撮影時も不明である。

オ 甲第5号証は、撮影時が記載されているが、「クルミッ子」の文字は判別できない。

カ そうすると、請求人が引用商標を付した請求人商品を本件商標出願日までに周知にさせる態様で使用したとする事実は証拠上把握することができない。

(2)引用商標の使用期間について

請求人は、請求人商品の製造、販売を遅くとも平成6年(1994)9月30日に開始し、現在に至っていると主張する。

しかし、上記のように、甲第5号証の写真に「‘94 9 30」の表示は見られるものの、「クルミッ子」の文字はどこにも見当たらない。仮に証拠の写真が請求人の店舗であるとしても、それは単に店舗での販売であり、周知となるように販売しているとは言えない。さらに、平成6年9月30日〜平成14年5月に販売されたとする証拠を請求人は提出していない。

そうすると、本件商標出願日までの引用商標の使用期間は、実質的に平成14年5月から僅か2年間と解される。また、証拠によれば、最初の1年間は、ダイエー1社のみの販売である。

(3)引用商標の使用地域について

ア 請求人は、引用商標の使用地域として、ダイエー、三越、シェルガーデン、西友、東急百貨店、さいか屋、そごう百貨店、調布パルコ、岡島百貨店、一畑百貨店、JR東日本の各会社名を挙げる。ここで、ダイエー、三越、西友、東急百貨店、さいか屋、そごう百貨店、岡島百貨店、一畑百貨店はそれぞれ百貨店と解され、シェルガーデン、調布パルコ、JR東日本はスーパー、その他と解される。

請求人は、これらの地域で使用されたとする主な証拠として甲第6号証の1ないし700を提出する。

しかし、甲第6号証の1ないし700は、納品書の単なるコピーである。その内容を解析するために、甲第6号証の1ないし700を一覧表にまとめた結果を乙第6号証として提出する。

乙第6号証によれば、納品書700件中、三越が321件、西友が125件、シェルガーデンが111件であり、この3社で約8割を占める。このように、販売地域はこの3社の地域に偏るものである。さらに、三越及び関連百貨店内に店舗展開する菓遊庵関連が322件であり、これも全体の約5割近くを占める。

大手百貨店が全国展開するのは通常の百貨店経営手段であり、それに伴い全国展開され百貨店内で販売されるとしても、日本全国で引用商標を周知とさせるように販売されていたとは言えない。

イ 請求人は、「平成16年に『三越デビューフェアー』を開催し、特に日本橋本店の記念企画は需要者やマス・コミの注目を集めた。・・1月に『新春三越100年祭』を開催し、大きな成果をおさめている。」(甲第20号証)」と主張する。

しかし、「三越デビューフェアー」が本件商標の出願日前に開催されたとの証拠はなく、また、1月に開催された「新春三越100年祭」において、引用商標がどのような態様で使用されたかについての証拠の提出もない。

(4)請求人商品の販売数及び売上について

ア 請求人は、甲第6号証及び甲第7号証を挙げて、平成14年6月〜平成16年5月までの期間について、販売数及び売上は相当なものであると主張する。

しかし、「相当なものである」とされている販売数及び売上を示す主たる証拠は、納品書である。

百貨店や総合スーパーでの当事者間の取引は「消化仕入れ」と呼ばれる仕入れ形態が多い。その場合、商品納入時に納品書は発行されるが、その商品が売れない場合は返品される(乙第7号証)。そうすれば、単に納品書のみではその納品書に記載された商品が現実に販売されたかどうか不明である。仮に、納品書に記載の商品が全量販売されたとして、各証拠として提出された納品書等に記載された売上を集計してみる(乙第6号証)と、甲第7号証の1及び2に記載の売上高973,500円、甲第6号証の1ないし700に記載の売上高6,357,880円であり、合計売上高は、7,331,380円である。なお、乙第6号証に見られるように、販売数の中でばら売りが19,893個、5個入が7,818袋、8個入が824箱、16個入が94箱と認められる。最も多い販売形態であるばら売りの場合、甲第4号証の1に見られるように、引用商標は付されていない。

菓子及びパンは、百貨店、スーパー、コンビニ等により、日本全国の地域で販売され、その購買層もほぼ全ての年齢層に及んでいる。

百貨店、スーパー、コンビニの売上高の推移は、平成17年ころには、スーパー、百貨店、コンビニの順に少なくなっている(乙第7号証)。「消化仕入れ」と呼ばれる仕入れ形態が多い百貨店や総合スーパーでの売り上げを立証するためには、納品書のみでは不十分である。また、提出された納品書自体にも受領印や受領のサインがないなど、証拠として不十分なものが多い(例えば、甲第6号証の2)。仮に納品書全量が販売されたとしても、以下説明するように、請求人の商品の販売数量は極めて少なく、引用商標を周知とすることはできない。

イ 日本百貨店協会によれば、協会加盟店は85社であり、その店舗数は254店舗である。また、協会加盟店の平成18年(2006)度の菓子の総売上は455,524,342,000円である(乙第8号証)。日本スーパーマーケット協会によれば、通常会員は平成21年2月12日現在で107社である(乙第9号証)。全日本菓子協会の統計によると、菓子の小売金額は平成14年で31,547億円、平成15年で31,485億円である(乙第10号証)。

提出された証拠によると、請求人商品は、85社ある百貨店の8社に、107社あるスーパーの3社に、それぞれ納入しているのみであり、コンビニに対しては0である。

また、全日本菓子協会の統計を基準にすると、請求人商品の売上高は、菓子全体の売上の0.001%以下である。日本百貨店協会の菓子の統計を基準にしても、請求人商品の売上高は、全体の売上の0.002%以下である。

(5)引用商標の宣伝広告について

ア 請求人は、甲第8号証及び甲第9号証により、三越又は三越関連の百貨店内の特設店舗である「菓遊庵」にて請求人商品を販売し、パンフレットを頒布したと主張する。

甲第8号証は「菓遊庵」への出品依頼書であり、甲第9号証は「菓遊庵」での商品説明である。「菓遊庵」は「三越独自の味覚と感性で厳選した、全国の銘菓を集めたお菓子のセレクトショップです。老舗の逸品、季節の味わい、愛され続ける地元の味など、バラエティーにとんだ、自慢のおいしさをご紹介しています。」とあるように、全国各地の多数の菓子を販売している三越内の店舗である(乙第11号証)。平成19年7月の名古屋三越のカタログによれば、135品目の菓子が紹介されている(乙第12号証)が、請求人商品は記載されていない。ウェブ上に公開されている平成22年3月現在での名古屋三越「菓遊庵」における引用商標は日曜日のみの販売である(乙第13号証)。このように、「菓遊庵」全体が扱う菓子の種類は、少なくとも135品目以上であり、単発的な販売である請求人商品が周知となるように販売されているとは言えない。

イ 請求人は、甲第10号証をもって、請求人商品が平成13年3月28日に、第10回湘南ブランド商品「SEILIES」として認定されたと主張する。

しかし、この湘南ブランド商品「SEILIES」は請求人商品が周知であるから認定したとの証拠はない。なお、湘南ブランド認定品は、約100商品ほど認定したが応募する企業も少なくなったことから自然消滅したと言われている。事実、湘南ブランドの取り組みは失敗したとの報告もある(乙第14号証)。甲第10号証によれば、「クルミッ子」はブランド品を創りだすために認定されたのであって、周知だから認定されたわけではない。

ウ 請求人は、請求人商品が平成14年5月26日に、海老名サービスエリアで実施された観光展「湘南の海とまつり」に展示されたとして甲第11号証を提出するが、1回のみの観光展で周知とはいえない。

エ 請求人は、請求人商品を紹介したカタログを作成し、このカタログを平成10年4月に31,500部印刷したと主張する(甲第12号証)。

しかし、甲第12号証の1に「クルミッ子」の記載は認められるものの、請求人の取り扱う商品全体のカタログであり、請求人商品を周知とするために頒布されたカタログではない。また、平成20年12月までに全部数を頒布したとするが、頒布地及び頒布の態様の証拠は提出されていない。さらに、平成10年4月に印刷されたとするが、甲第12号証の1には、概要欄に、「平成11年10月店主、厚生大臣表彰」と記載されている。このパンフレットが平成10年4月に印刷されたとは考えられない。また、甲第12号証の2には、件名として、「A4 巻三 パンフレット」と記載されているのみであり、これが甲第12号証の1のカタログであるとの証拠はない。

オ その他の証拠である、書籍への掲載、マス・コミによる紹介は、本件商標の出願日以降である。

(6)まとめ

以上のとおり、引用商標は、請求人商品(焼き菓子)を表示するものとして、本件商標の登録出願日である平成16年5月27日の時点において、その取引者又は需要者の間に広く認識されていたとは言えない。よって、その他の要件を考慮するまでもなく、本件商標を無効とすることはできない。

第4 当審の判断

1 請求の利益について

請求人に本件審判を請求する法律上の利益があるか否かについて、当事者間に争いがあるので、この点について検討する。

請求人の主張は、要するに、本件商標は、請求人商品について使用され、本件商標の登録出願前より周知となっていた引用商標に類似する商標であって、その指定商品も引用商標が使用される商品と同一又は類似する商品であるから、これをその指定商品について使用するときは、その商品が請求人の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある、とするものであるから、請求人は、本件商標の存在により直接的に不利益を被る立場にあるということができる。

したがって、請求人は、本件審判を請求するについて、法律上の利益を有するというべきである。

2 引用商標の周知性について

(1)甲第3号証ないし甲第16号証によれば、以下の事実を認めることができる。

ア 請求人及び請求人商品について

(ア)請求人(株式会社紅谷)は、「菓子類の製造並びに販売」等を目的として、昭和30年1月17日に設立された(甲第3号証)。

(イ)請求人商品は、クルミの入ったキャラメルを手焼きのクッキーで挟んだ焼き菓子であり(甲第12号証の1等)、「BENI−YA」の文字とリスの図柄が表示された透明な包装ビニールに個別に包装されている(甲第4号証の1)。請求人は、これをばら売りとして個々に販売するほか、5個入りとして、縦書きされた「クルミッ子」の文字(引用商標)が表示されたプラスチック製包装袋に請求人商品5個を詰めた商品(甲第4号証の2)、同じく8個入りとして、2行に縦書きされた「鎌倉だより」及び「クルミッ子」の文字等が表示された包装箱に請求人商品8個を詰めた商品(甲第4号証の3)、同じく16個入りとして、2行に縦書きされた「鎌倉だより」及び「クルミッ子」の文字等が表示された包装箱に請求人商品16個を詰めた商品(甲第4号証の3)を販売している。

なお、甲第5号証は、撮影日として「‘94 9 30」が表示された写真であるところ(当該写真が1994年(平成6年)9月30日に撮影されたものであることについては、当事者間に争いがない。)、写真全体の写りが不鮮明であり、また、撮影場所も不明である。

イ 請求人商品の販売地域

請求人商品は、2003年(平成15年)1月6日から2004年(平成16年)5月24日にかけて、株式会社アクロス調布パルコ、株式会社パームガーデン調布パルコ、東急百貨店(町田、日吉)、さいか屋藤沢店、三越(取引があった日付順に、銀座店、日本橋本店、新宿店、馬事公苑店、吉祥寺店、横浜店、名古屋栄本店、新潟店、大阪店、松山店、広島店、倉敷店、福岡店、札幌店、鹿児島店、恵比寿店、熊谷店)、西友(衣笠店、鶴見店、追浜店、能見台店、新逗子ハイランド店、鷹取店、新逗子NT店)、そごう百貨店(大宮店、横浜店)、岡島百貨店、一畑百貨店(松江店)、ND鎌倉、シェルガーデン(上野店、自由が丘店、荻窪店、白金台店、目黒店、池袋店、大船店、船橋店、柏店、新所沢店、筑波店)に納品された(甲第6号証の1ないし723)。

また、請求人商品は、本件商標の登録出願日からその登録査定日(平成16年11月29日)の間においても、多少の変動があったものの、三越を中心に、上記と同程度の企業(地域)に納品された(甲第6号証の724ないし1809)。

なお、納品書の納入者欄の請求人の名称は、「合資会社紅谷」を意味する「(資)紅谷」と記載されている(納品書によっては、請求人の会社組織名を表示していないものもあるが、その件数は、甲第6号証全体からみれば、極わずかである。)。

ウ 請求人商品の販売数及び売上高

(ア)平成14年6月、7月、10月〜12月のダイエーへの出荷数は、合計9,735個であった(甲第7号証の1及び2)。ただし、これを裏付ける納品書等の提出はない。また、ダイエーへの売上高は、「個数×100円」として算出されているが、「100円」は、請求人から請求人商品を仕入れた店舗で販売される価格であって、請求人が請求人商品をその取扱店に納品する際の原価は、1個あたりおおよそ72円か、73円(例えば、甲第6号証の23、24、30、74)であるから、甲第7号証の1及び2に記載された請求人商品の売上高は正確なものとはいえない。以下、甲第7号証の3ないし16の売上高も同様である。

(イ)平成15年1月〜同年12月の販売数は、合計1,864個であった(甲第7号証の4)。

(ウ)平成16年1月〜同年12月の販売数は、合計197,667個であった(甲第7号証の3、5ないし15)。

(エ)平成17年1月1日〜同年同月21日の販売数は、合計20,875個であった(甲第7号証の16)。

エ 請求人商品の販売・展示等

(ア)株式会社三越は、一畑百貨店(松江店)の店舗内において、菓子店「菓遊庵」を平成15年10月2日に開店するにあたり、請求人(「合資会社紅谷」宛)に対し、当該菓子店で請求人の取扱いに係る商品の販売をしたい旨の文書を送付し、これに対し、請求人は、請求人商品を含む商品の販売を希望する回答書を送付した(甲第8号証)。また、福岡三越の店舗内に展開する菓子店「菓遊庵」は、2003年(平成15年)10月4日に、同店舗が取り扱う商品を紹介するパンフレットにおいて、請求人商品が掲載された項目について、その記載内容の確認を請求人に依頼した(甲第9号証)。

(イ)請求人商品は、平成13年3月28日に、社団法人神奈川県産業貿易振興協会より、第10回湘南ブランド商品「SEILALIES」として認定された。なお、請求人の名称は、「合資会社紅谷」と表示されていた。

(ウ)請求人は、平成14年5月26日に行われた観光展「湘南の海とまつり」において、請求人商品を展示した。なお、上記観光展に、請求人がその取扱いに係る商品を出展したことに対する礼状の宛名は、「(資)紅谷」と記載されている(甲第11号証)。

オ パンフレットの作成

請求人は、その業務に係る商品を掲載したパンフレットを作成し、その中に請求人商品も掲載した。該パンフレットには、「クルミッ子」の商品名及び商品写真が掲載されており、商品説明として「くるみのたっぷりはいったキャラメルを、手焼きのクッキーではさみました。和洋どちらのお茶うけにも御好評いただいております。」の記載がある(甲第12号証の1)。また、当該パンフレットを作成した株式会社アップルが請求人に宛てた2010年1月19日付けのFAXには、「1998年4月に31500枚納品」と記載され、請求人の名称として「株式会社紅谷」の記載がある(甲第12号証の2)。なお、請求人は、弁駁の理由中で、甲第12号証の1のパンフレットは、平成10年4月以降に作成されたものである旨の訂正をした。

カ 書籍・テレビでの紹介

(ア)請求人商品は、「おいしくてかわいい」(株式会社主婦と生活社、2004年11月26日初版発行、初版16,000部)なる書籍の表紙に、「BENI−YA」の文字とリスの図柄が表示された透明なビニールで包装された請求人商品(甲第4号証の1)が掲載され、他の頁で「表紙のお菓子」、「クルミッ子 1個105円」などと紹介された。また、当該書籍の奥付には、「この本に掲載された商品の価格・取引先は2004年11月1日現在のものです。」と記載されている(甲第13号証)。

(イ)請求人は、「甘く、かわいく、おいしいお菓子」(株式会社主婦の友社、2006年3月末発売)に請求人商品が掲載されることについて、出版社より原稿のチェックを依頼された(甲第14号証)。

(ウ)請求人は、2006年(平成18年)12月7日に、株式会社リヨン社より、同社2007年3月発行予定の書籍「気持ちを贈るプチ☆プレゼント(仮)」に請求人商品を掲載することについての許可等を求める通知を受けた(甲第15号証)。

(エ)請求人(「合資会社紅谷」宛)は、平成18年11月28日付けで、tvkテレビより、「もっとぶらり!風気分 ロケスケジュールおよびロケ構成台本(「もうひとつの鎌倉を訪ねて」ロケスケジュール、放送日:平成18年12月11日(月)午後8時45分〜午後8時59分)」を送付されたところ、当該台本中には、請求人商品の紹介が含まれていた(甲第16号証)。

(2)弁駁書に添付された甲第21号証ないし甲第27号証及び甲第32号証によれば、以下の事実を認めることができる。

ア 包装ビニールについて

請求人商品を個別に包装する包装ビニールの版下(作成日は不明である。)には、「BENI−YA」の文字とリスの図柄が表示されているほか、「品名 クルミッ子」の文字と該文字の下の表に「名称」、「原材料名」、「内容量」、「保存方法」がそれぞれ記載され、最下段の「製造者」欄には、「株式会社 紅谷」と記載されている(甲第21号証の1)。また、請求人商品のばら売りには、横書きにした「クルミッ子の文字と価格(¥126)などが表示された商品札が置かれている(甲第21号証の2)。さらに、1巻を1000mとする包装ビニール(当事者間に争いのない事実)は、株式会社ワタナベから、平成14年5月2日に16巻、平成14年8月5日・同年9月2日・同年9月19日・同年12月2日・平成15年1月17日・同年2月1日にそれぞれ8巻、平成15年7月22日・同年10月23日・平成16年1月22日・同年4月28日・同年7月23日・同年10月15日にそれぞれ16巻が請求人(合資会社紅谷)に納品された(甲第21号証の3)。

イ 5個入り商品(甲第4号証の2)等について

請求人商品5個をプラスチック製包装袋に詰めた商品及び包装ビニールで包装された請求人商品は、2005年(平成17年)5月29日、同年10月13日、同年10月28日、2006年(平成18年)3月30日、同年10月、2007年(平成19年)4月30日、同年7月に、インターネット上のブログで紹介された(甲第22号証)。

ウ 8個入り包装箱の蓋の部分に掛ける包装紙(以下「8個入り包装紙」という。)について

8個入り包装紙の版下(2008年(平成20年)4月24日作成)には、2行に縦書きされた「鎌倉だより」及び「クルミッ子」の文字等が表示されているほか、「品名 クルミッ子」の文字と該文字の下の表に「名称」、「原材料名」、「内容量」、「賞味期限」、「保存方法」がそれぞれ記載され、最下段の「製造者」欄には、「株式会社 紅谷」と記載されている(甲第23号証の1)。また、該包装紙を請求人に納品した三和紙工株式会社(以下「三和紙工」という。)が作成した「クルミッ子関連包材納入実績」(甲第23号証の2)には、三和紙工は、8個入り包装紙を平成11年12月8日から平成15年11月21日までに、合計71,730枚を請求人に納品し、その後、本件商標の登録査定前である平成16年6月16日に16,650枚を請求人に納品したことが記載されている。

エ 16個入り包装箱の蓋の部分に掛ける包装紙(以下「16個入り包装紙」という。)について

16個入り包装紙の版下(2007年(平成19年)12月18日作成)には、2行に縦書きされた「鎌倉だより」及び「クルミッ子」の文字等が表示されているほか、「品名 クルミッ子」の文字と該文字の下の表に「名称」、「原材料名」、「内容量」、「賞味期限」、「保存方法」がそれぞれ記載され、最下段の「製造者」欄には、「株式会社 紅谷」と記載されている(甲第24号証の1)。また、該包装紙を請求人に納品した三和紙工が作成した「クルミッ子関連包材納入実績」(甲第24号証の2)には、三和紙工は、16個入り包装紙を平成11年11月16日及び平成14年8月27日に、合計26,700枚を請求人に納品したことが記載されている。

オ 写真全体の写りが不鮮明であるものの、請求人商品が店舗(店舗名、場所、撮影日等は不明。)内で販売される場合には、横書きにした「くるみっ子」の文字と価格「¥100」が表示された商品札が置かれていた(甲第25号証)。なお、甲第25号証が甲第5号証の拡大写真であることを裏付ける証拠の提出はない。

カ 請求人商品の平成18年の販売数は、合計826,355個であった(甲第26号証)。ただし、その売上高は、請求人商品1個を120円として算出したものであり、この値段は、前記(1)ウ(ア)認定と同様に、最終消費者に販売される価格であり、請求人が百貨店等に卸売りする原価ではないから、正確なものとはいえない。

キ 請求人の業務に係る菓子を掲載したしおりの版下(2006年(平成18年)7月3日作成)には、請求人商品が掲載されていた(甲第27号証の1)。なお、甲第27号証の1の版下の上部には、「(資)紅谷様 しおりリニューアル」と表示されている。上記しおりを請求人に納品した三和紙工が作成した「クルミッ子関連包材納入実績」(甲第27号証の2)には、三和紙工は、上記しおりを平成15年6月27日から納入し、本件商標の登録出願前までに、合計258,300枚納入したことが記載されている。

ク 請求人の業務に係る商品を掲載したパンフレットの版下(1997年(平成9年)3月27日作成)には、請求人商品が掲載されている(甲第32号証)。

(3)前記(1)及び(2)で認定した事実によれば、以下のとおり判断するのが相当である。

ア 請求人は、「菓子類の製造並びに販売」等を目的として、昭和30年1月17日に設立されたが、会社の組織が株式会社になる前は、合資会社であって、その状態は、本件商標の登録査定時(平成16年11月29日)においても継続していたものと推認することができる。

イ 請求人は、平成6年9月ころから請求人商品の製造、販売を開始し、請求人商品を個別に包装ビニールで包装し、これをばら売りする場合には、横書きにした「くるみっ子」又は「クルミッ子」の文字と価格(「¥100」又は「¥126」)を表示した商品札を備え付けていた。また、個別に包装ビニールで包装した請求人商品を5個入り、8個入り又は16個入りとして販売する際には、その包装袋又は包装箱(包装箱の蓋に掛ける包装紙)に、引用商標を表示していた。

なお、請求人商品を個別に包装する包装ビニールに、本件商標の登録査定以前より引用商標を表示していたことは認めることができない。すなわち、前記認定のとおり、請求人が株式会社となったのは、本件商標の登録査定日以降であるから、甲第21号証の1(包装ビニールの版下)に記載された「株式会社 紅谷」との表示からすれば、甲第21号証の1は、本件商標の登録査定日以降に作成されたものと優に推認できるのであり、他に、本件商標の登録出願前に、個別に包装する包装ビニールに引用商標が表示されていたと客観的に認めるに足りる証拠は存在しない。

ウ 請求人商品は、神奈川県、東京など首都圏に店舗を構えるスーパー、百貨店などを中心に卸売りされており、その中でも全国的に店舗を展開する三越が大口の取引先であった。そして、平成15年1月から平成16年12月までの請求人商品の全体の販売数は199,531個であった。また、本件商標の登録出願日及び登録査定日が含まれる平成16年1月〜同年12月までの請求人商品の全体の販売数は、197,667個であり、その月平均販売数は約16,472個、(1ヶ月を30日として)1日平均販売数は約550個であったことが認められ、本件商標の登録出願日及び登録査定日が含まれる平成16年1月〜同年12月までの請求人商品の全体の販売数をとってみても、この販売数は、決して多いものとはいえない。

なお、請求人は、本件商標の登録出願前までの請求人商品の販売数を、ビニール包装の納入巻数並びに8個入り及び16個入りの包装紙の納入枚数から推測し、これらを足し合わせて、1,281,214個と主張するが、8個入り及び16個入りの包装箱に入れる請求人商品は、すでに個別に包装ビニールで包装されている(甲第4号証の3及び4)ところからすると、請求人の主張する販売数は、包装ビニールと8個入り及び16個入りの包装紙から推定される販売数とを重複して計算したことになる。さらに、請求人は、甲第21号証の1の版下に基づいて印刷された包装ビニールの納品日及び納品数を証明する書面(甲第21号証の3)、甲第23号証の1の版下に基づいて印刷された包装紙の「クルミッ子関連包材納入実績」(甲第23号証の2)及び甲第24号証の1の版下に基づいて印刷された包装紙の「クルミッ子関連包材納入実績」(甲第24号証の2)により、甲第21号証の1の版下の包装ビニール、甲第23号証の1の版下の8個入りの包装紙及び甲第24号証の1の版下の16個入りの包装紙が本件商標の登録出願前の使用態様を示すものである旨主張し、本件商標の登録出願前までの請求人商品の販売数を推測するが、前記(2)ア、ウ、エのとおり、いずれの版下にも「株式会社紅谷」と表示されており、請求人が株式会社に組織変更したのが本件商標の登録査定日以降と推認されることからすると、これら包装ビニール、8個入り及び16個入りの包装紙は、いずれも本件商標の登録査定日以降に作成されたものと優に推認することができるのであって、「これら版下より作成された包装ビニール、8個入り及び16個入りの包装紙は、本件商標の登録出願前より使用されていた」旨の請求人の主張は、真実とは異なるものである。そうすると、裏付け証拠が提出されていない甲第23号証の2及び甲第24号証の2を使用事実の根拠とするには、疑問を生ずることを否定できない。以上を併せ考慮すると、請求人の算出した請求人商品の本件商標の登録出願日までの販売数は、必ずしも正確なものということはできず、これを直ちに認めることはできない。

エ 平成15年10月ころに、一畑百貨店(松江店)の店舗内にある菓子店「菓遊庵」において、請求人の取扱いに係る商品の販売を行う予定があったこと、及び、福岡三越の店舗内にある菓子店「菓遊庵」において、請求人の取扱いに係る商品についてのパンフレットを頒布する予定があったことは、推認することができるとしても、甲第6号証によれば、請求人が三越に請求人商品を納品したという事実は、そのほとんどが三越の多くの店舗内にある「菓遊庵」に、平成16年1月以降納品したという事実であったことが認められ、ことさらに、上記一畑百貨店(松江店)及び福岡三越の「菓遊庵」との間で、請求人商品の取引が予定されていることを明らかにする請求人の意図が不明であり、裏を返せば、三越の多くの店舗内にある他の「菓遊庵」では、請求人商品について特に紹介をしていなかったことが推測される。したがって、三越の多くの店舗内にある「菓遊庵」のうち、上記2店舗で請求人商品の販売を行う予定があったとしても、その事実が引用商標の周知性を高める要因となるとは考えにくいものである。

オ 請求人商品が、平成13年3月28日に、社団法人神奈川県産業貿易振興協会より、第10回湘南ブランド商品「SEILALIES」として認定されたことが認められるとしても、その認定基準等については不明といわざるを得ない。

また、請求人は、平成14年5月ころに行われた観光展「湘南の海とまつり」に請求人商品を展示したことが認められるとしても、その観光展の規模や入場者数などは不明であって、甲第11号証の2(出展商品の写真)からすると、請求人商品は、湘南地域の様々の企業が取り扱う商品が多数展示されている商品の中の一つにすぎないことが推測される。

そうすると、これらの事実は、請求人商品ないしこれに使用される引用商標が周知であるが故に、第10回湘南ブランド商品として認定されたものであるか、あるいは、観光展「湘南の海とまつり」に展示されたものであるかは、大いに疑問の残るところであり、したがって、上記事実の存在が、引用商標が周知であったとの事実に直接結びつかないものである。

カ 請求人は、平成9年3月ころに、その業務に係る商品を掲載したパンフレットを作成したと推認することができる(甲第32号証)が、それ以外に、本件商標の登録出願時までに、請求人商品について宣伝広告をしたと認めるに足りる証拠を提出していない(書籍やテレビでの請求人商品の紹介は宣伝広告ということはできないうえに、本件商標の登録出願前における書籍等での紹介は全くなく、登録査定時までに1件紹介されたにすぎないから、これらをもって、本件商標の登録出願前における引用商標の周知性を認めることはできない。)。

キ 以上に認定した事実に加え、引用商標は、請求人商品の主たる原材料である「クルミ」の語に「ッ子」の文字を付加して、「クルミ」を愛称的に表現したものと認めることができるところ、「原材料+っ子」あるいは「商品の普通名称+っ子」等の表現方法は、特に、食品業界における商標として多用されている手法であって、全く自他商品の識別機能を有しない商標とまではいえないとしても、需要者に格別強い印象を与える商標とはいえないことも考慮すれば、引用商標は、本件商標の登録出願時において、請求人商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることは困難であるといわざるを得ない。そして、引用商標が本件商標の登録査定時までに、周知性を獲得したと認めるに足りる特段の事情も見出せない。

したがって、引用商標は、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、請求人商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。

なお、請求人は、請求人商品が三越など全国的に店舗を展開する大手百貨店で販売されていることは、引用商標の周知性獲得につながる旨の主張をことさら強調する。

確かに、三越など全国的に店舗を展開する大手百貨店で販売されている商品の中には、その使用に係る商標が既に周知、著名性を獲得しているか又は販売されることによりその使用に係る商標の周知、著名性を高める要因の一つとなる場合があることは否定し得ない。しかし、請求人商品のように、土産物、贈答品などの菓子は、これがたとえ、百貨店内の専門店で販売されているとしても、その販売方法は、全国各地の様々な土産物や贈答品と一緒に店頭に数多く並べられているのが通常であって、消費者は、数多く並べられた商品の中から、嗜好、価格、用向き、商品及びその包装の見栄えなどを総合して商品の選択に当たる場合が多いことは取引の実情に照らし明らかであり、必ずしもそこで使用される商標の周知性と関連づけて購入するとは限らない。そして、請求人商品が、その原材料等からして、特に生産地域の特色を強く帯びた土産物であるとも認めることができず、また、これに使用される引用商標は、前記認定のとおり、需要者に格別強く印象づけられる商標ということもできないこと、請求人商品が三越で販売されたのは、本件商標の登録出願日のわずか約5ヶ月前の平成16年1月からであって、平成16年1月から同年5月までの三越の全国各地の約16〜18店舗への合計販売数は、41,355個(甲第7号証の5ないし8)であり、特別に多い販売数とはいえないこと、その間に、請求人商品の宣伝広告を盛大にしたと窺える証拠も存在しないこと、加えて、請求人商品が三越など大手百貨店やスーパーマーケット等で販売されたこと以外に、引用商標が本件商標の登録出願前より需要者の間に広く認識されていた事実を客観的に認めるに足りる証拠は見出せないことなどを総合すれば、請求人商品が三越で販売されているとしても、前記認定のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願前より請求人商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。

また、請求人は、平成22年7月6日付け上申書において、請求人商品の販売数及び売上(甲第7号証)に関連する主張の補強として平成16年1月〜平成17年1月の請求人の銀行口座の入出金履歴の一部(甲第33号証)を提出するが、甲第33号証における三越の振込金額は、請求人商品のみの販売金額とは限らず、三越に販売された商品すべての金額であり、請求人の取り扱う他の商品も含まれているものと推認される(例えば、甲第6号証の44・45・49・50・51・52・53・63・・・等々)。したがって、甲第6号証(納品書)に記載された請求人商品を含む請求人の取扱いに係る商品が三越に納品されたことは推認し得るとしても、甲第33号証に記載された三越の振込金額は、請求人商品それ自体の売上を示すものとはいえず、これをもって、前記認定を左右することはできない。

3 本件商標と引用商標との類否

(1)外観

前記第1のとおり、本件商標は、標準文字で「クルミット」と書してなるものである。

これに対して、引用商標は、前記2認定のとおり、「クルミッ子」の文字を縦書きにした構成よりなるものである。

そうすると、本件商標と引用商標は、「クルミッ」の文字を同じくするものであるとしても、いずれも簡潔な構成よりなり、末尾おいて、平仮名の「ト」と漢字の「子」の文字の差異を有するものであるから、通常の注意力をもってすれば、互いに見誤るおそれはないというべきである。

したがって、本件商標と引用商標は、外観上類似する商標ということはできない。

(2)称呼

本件商標は、その構成文字に相応して、「クルミット」の称呼を生ずるものである。

これに対して、引用商標は、その構成文字に相応して、「クルミッコ」の称呼を生ずるものである。

そこで、本件商標より生ずる「クルミット」の称呼と引用商標より生ずる「クルミッコ」の称呼を比較すると、両者は、語頭から3音の「クルミッ」の音を同じくし、末尾において「ト」と「コ」の音の差異を有するものである。そして、「ト」の音は、舌尖を上前歯のもとに密着して破裂させる無声子音「t」と母音「o」との結合した音節であり、「コ」の音は、後舌面を軟口蓋に接し破裂させて発する無声子音「k」と母音「o」との結合した音節であって、両音は、いずれも強く響く音といえるばかりでなく、前音「ミ」に促音を伴うところから、「クルミッ」の音を称呼した後に、呼気が小さく途切れ、称呼上の段落が生ずる関係から、差異音が比較的強く発音されるものといえる。そうすると、両称呼における差異音は、末尾に位置するものであるとしても、それぞれ明瞭に聴別し得るものであるから、該差異音が比較的短い両称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいえず、それぞれの称呼を全体として称呼した場合においても、互いに聞き誤るおそれはないというべきである。

したがって、本件商標と引用商標は、称呼上類似する商標ということはできない。

(3)観念

本件商標は、特定の語義を有しない造語よりなるものと認める。

これに対して、引用商標は、請求人商品の主たる原材料である「クルミ」に「ッ子」を付して、「クルミ」を愛称的に表現したものと認めることができる。

そうすると、本件商標と引用商標は、観念上比較することができないといえるが、少なくとも観念において相紛れるおそれはないといえる。

(4)まとめ

以上によれば、本件商標と引用商標は、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても互いに紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

4 本件商標の指定商品と請求人商品との類否

本件商標は、その指定商品を「菓子及びパン」とするものであり、請求人商品は、「焼き菓子」であるから、両者は、同一又は類似の商品というべきである。

5 むすび

以上のとおりであるから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品「クルミの入ったキャラメルを手焼きのクッキーで挟んだ焼き菓子」を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていた商標ということはできず、また、本件商標は、引用商標とは非類似の商標というべきものである。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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