結論テキスト
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年異議第92166号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4173381号商標(以下、「本件商標」という。)は、「IRIDIUM」の文字を書してなり、平成8年12月24日に登録出願、第12類「船舶並びにその部品及び附属品,航空機並びにその部品及び附属品(タイヤ,チューブを除く。),鉄道車両並びにその部品及び附属品,二輪自動車並びにその部品及び附属品(タイヤ,チューブを除く。),自転車並びにその部品及び附属品(タイヤ,チューブを除く。),乳母車,車いす,人力車,そり,手押し車,荷車,馬車,リヤカー,荷役用索道,カーダンパー,カープッシャー,カープラー,牽引車,陸上の乗物用の動力機械器具,陸上の乗物用の機械要素,タイヤ又はチューブの修繕用ゴムはり付け片,乗物用盗難警報器,落下傘」を指定商品として、同10年7月31日に設定の登録がされたものである。
これに対して、2件の登録異議の申立がなされた。
(1)本件商標は、金属元素を表し、電気接点、電極等に用いられるものであるから、これを「イリジウムを電極材とする点火栓」について使用しても、単に商品の品質を表示するに過ぎず、該商品以外の点火栓について使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
(2)「IRIDIUM」及び「イリジウム」の文字よりなる商標(以下「引用商標」という。)は、申立人の業務に係る「全世界規模の衛星移動体通信ネットワークシステム」を表示するものとして取引者・需要者の間に広く認識されている商標であるから、商標権者が、本件商標をその指定商品に使用するときは、登録異議申立人の業務に係る商品とその出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するものである。また、本件商標は、著名な引用商標にフリーライドし、公の秩序を害するおそれがある商標であるから同第7号に該当する。
平成11年5月11日付けで、上記2(1)と同趣旨の取消理由を商標権者に通知した。
上記3の取消理由に対して、商標権者は、要旨つぎのように意見を述べている。
一般に商品の品質とは、商品の「良し悪し」を指すものであり、例えば「スーパー、デラックス、ゴールデン、ソフト、ニュー、高性能、長寿命」等の用語がこれに該当するものである。
しかるに、本件商標は、金属元素のイリジウムと同義語ではあるが、上記のような商品の良し悪しを指すものではなく、本来的に商品の品質を表わす用語ではない。ちなみに、内燃機関用スパークプラグにおける品質とは、乙第1号証(JIS B 8031)において規定される「性能」、例えば、絶縁抵抗、耐衝撃性、気密性等に相当する用語であり、本件商標はこれらの「性能」に該当せず、全く異質の概念であることは明白である。
また、イリジウムという金属元素は金や銀のような金属元素とは異なり一般的にはほとんど知られていないので、「イリジウムプラグ」や「イリジウム合金」といった、他の語句を付加し商品等を説明するような表記をした場合、これらの表記の方法は自他商品の識別力が低いと考えられるものの、「イリジウム」というように特に印象の強い部分のみを抜き出し、さらに、その部分を英文字で「IRIDIUM」と表記した場合には十分な識別力が生じ、何人の業務に係る商品であるか十分に識別できるものである。
更に、仮に本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであったとしても、本件商標は、乙第2号証(商品の写真)、同第3号証(包装箱の写し)及び同第4号証(販売実績)に示すとおり、スパークプラグのセラミック碍子部分に本件商標を表示して使用しており、その販売数量は、1997年4月の販売開始以来2年あまりの間に300万本近くに達しているものである。
してみれば、本件商標は、商標権者のスパークプラグを示すものとして需要者・取引者の間に広く認識されているものであるから、同法第3条第2項の適用を受け、商標登録を受けることのできるものである。
よって判断するに、登録異議申立人(以下、「申立人」という。)提出の(ア)甲第2号証(日刊工業新聞社発行「マグローヒル 科学技術用語大辞典 第2版」)によれば、「iridium」は、金属元素を表し、少なくとも電気接点、電極に用いられるものである。(イ)同第3号証ないし同第13号証(特許出願公開昭57−180886、同昭58−34151、同昭59−91681、同昭60−72182、同昭61−135080、同昭63−257193、同平2−242577、同平5−101869、同平6−60959、同平7−50192、同平8−222351)の各公報によれば、明細書においては、「イリジウム」が点火栓の電極材として用いられていることを「イリジウム」の文字あるいは「Iridium」の略語である「Ir」の記号をもって表しているものである。(ウ)同第14号証(社団法人 自動車技術会発行「学術講演会前刷集924 1992−10」)、同第15号証(社団法人 自動車技術会発行「研究論文(5)Vol.24,No.4,October1993.)及び同第17号証(雑誌「環境研究 1995.No.99」)の各論文によれば、「イリジウム」が点火栓の電極材或いは触媒として普通に用いられていることが記述されているものである。(エ)同第18号証(1996年4月5日発行「中日新聞」及び1996年4月12日発行「日経産業新聞」)によれば、商品の紹介記事として、プラグ(点火栓)の中心電極にイリジウム合金が使用されている旨の記載がされている。(オ)同第19号証ないし同第21号証(日本特殊陶業株式会社発行のパンフレット)、同第22号証(社団法人 自動車技術会主催の「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展’96」に関するリーフレット、カタログ)、同第23号証(株式会社 宮田自動車商会主催の「感謝創業75周年フェア(1996年7月12日〜13日)」に関するパンフレット、カタログ)及び同第22号証の4のカタログには、イリジウムが点火栓の電極材として普通に採用されていることを窺い知ることができる。(カ)同第24号証ないし同第28号証(1996年4月から1997年10月までの「イリジウムプラグ」の日本特殊陶業株式会社の販売実績表)によれば、日本特殊陶業株式会社は1996年4月から1997年10月までの間に「イリジウムプラグ」を数多く販売していたものである。
以上(ア)〜(カ)の事項によれば、動力機械器具を取り扱う業界においては、放電電圧を下げ着火性を向上させることを目的として点火栓(スパークプラグ)の極細電極に「Iridium合金」(イリジウム合金)が普通に用いていること及びその略語として「Ir」の語が普通に用いられているのが実情である。
してみれば、「IRIDIUM」の文字よりなる本件商標をその指定商品中の「イリジウム(lridium)を電極材とする点火栓(スパークプラグ)」に使用した場合、前記した実情から、これに接する取引者・需要者は、該商品が「イリジウムを電極材とした点火栓」であると認識するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものである。また、本件商標をその指定商品中の上記以外の「点火栓」について使用した場合には、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
なお、商標権者は、本件商標は商標法第3条第2項の適用を受け得るものである旨主張しているが、乙第2号証(商品の写真)及び同第3号証(包装箱の写し)は、単に、「IRIDIUM」を使用したスパークプラグであることを表しているにすぎないものと認められるものであり、かつ、その販売数量からみても、直ちに使用による識別力を備えていたものということはできない。
したがって、本件商標の指定商品中の「点火栓」については、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。
次に、本件商標が商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第7号に該当するものであるか否かを検討するに、引用商標は本件商標の登録出願時に申立人の業務に係る「全世界規模の衛星移動体通信ネットワークシステム」の商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたものとは認められないものである。
そうとすれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、その商品が申立人又は申立人と関係のある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはない。また、いわゆるフリーライド行為に基づくものであることを客観的に示す証左もなく、国際的な信義則及び社会公共の利益に反するものとも言い得ないものである。
なお、申立人は、本件商標を登録することは商願平3−127689号に係る異議決定の判断に反するものである旨主張しているが、該異議決定は、当該出願の指定商品に含まれている「ロケット」との関係においてなされた判断であって、本件とは事案を異にするものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第7号に違反して登録されたものではない。
してみれば、本件商標の指定商品中「点火栓」についての登録は、商標法第43条の3第2項の規定により取り消すべきものであり、本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品については、取り消すべき理由がないから、同第4項の規定により登録を維持する。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
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