結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2010−300124(T2010−300124/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4593021号商標(以下「本件商標」という。)は、「寒ころ」の文字を標準文字で表してなり、平成13年9月4日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として同14年8月9日に設定登録されたものである。
請求人は、商標法第51条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
商標権者は、指定商品の「菓子及びパン」について、本件商標に類似する商標の使用であって、商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品と混同を生ずる使用を故意にしているので、本件商標の登録は、商標法第51条第1項の規定により取り消されるべきものである。
本件商標の実際の使用態様は、登録商標「寒ころ」に「餅」の字を不可分一体的に付加した類似商標「寒ころ餅」である(甲第1号証)。
商標権者は、上記類似商標「寒ころ餅」を「もち米、うるち米」を原料とする揚げ餅に使用している(甲第1号証)。
商標権者が上記類似商標を付して譲渡している商品の原材料は「もち米、うるち米、植物油(米油)、醤油、青のり粉、四万十川産青のり粉」のみであり、さつまいもは一切含まれていない(甲第1号証)。
長崎県の特産品である「かんころもち」、すなわち「干したさつまいもともちを混ぜたもち菓子」、「干したさつまいもを混ぜたもち」を想起させる上記類似商標「寒ころ餅」をさつまいもが含まれていない餅、菓子に使用することは商品の品質の誤認を生じさせる。
長崎県の特産品である「かんころもち」は、蒸して干したさつまいもともちとを混ぜたもち又はもち菓子であるから、さつまいもを全く含まず餅米・うるち米からなるもち菓子に上記類似商標「寒ころ餅」を付して譲渡することは、他人の業務に係る商品「かんころもち」との混同を生じさせる。
商標法51条第1項の故意とは、「商標権者が指定商品について登録商標に類似する商標を使用し又は指定商品に類似する商品について登録商標若しくはこれに類似する商標を使用するにあたり、右使用の結果、商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品と混同を生じさせることを認識していたことをもって足り」とされ(最高裁昭和55年(行ツ)第139判決)、通説においては、「付記・変更の目的物を認識すれば足りる」(網野誠著「商標法」第5版862頁)とされている。
また、一般的に、業として商品を生産し、証明し又は譲渡する者がその商品について使用する商標を登録出願する際には、出願前に先願及び先登録もしくは周知の商標の有無の調査を行うことは当然に期待されることである。
商標権者は、業として主にせんべいを製造販売する株式会社であり、上記出願前調査は当然に行っていたはずである。その調査段階で、長崎県の特産品「かんころもち」が存在していることは、検索サイトGoogleで「かんころもち」を検索すれば約18万6千件の検索結果が表示される事実からみても(甲第2号証)、容易に把握できたはずである。しかも、商標権者の所在地は、さつまいもの名産地である茨城県であり(甲第3号証)、せんべいほかのもち菓子を扱う商標権者にとって、さつまいもを使用した餅・菓子として有名な「かんころもち」の存在はより身近であったと考えるのが自然である。
上述のとおり、商標権者が上記類似商標を付して譲渡している商品の原材料は「もち米、うるち米、植物油(米油)、醤油、青のり粉、四万十川産青のり粉」のみであり、さつまいもは一切含まれていない(甲第1号証)。さつまいもを含まないもち菓子に上記類似商標「寒ころ餅」を使用すると、商品の品質に誤認を生じさせる結果になることは、もち菓子製造販売会社である商標権者には当然認識されていたと考えるべきである。
また、商標権者は、商標「寒ころ」の登録を受ける一方でその登録商標を長崎県特産の「かんころもち」を想起させる使用商標「寒ころ餅」に改変して使用すれば、他人の業務に係る商品と混同を生じさせる結果になることも当然認識していたと考えるべきである。
したがって、商標権者による上記類似商標の使用には故意が認められる。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
(1)請求人は、「寒ころ」に「餅」を付した使用は、「寒ころ餅」という類似商標の使用であり、「寒ころ」の使用とは異なる旨主張しているが、米菓の業界で「餅」「せんべい」「だんご」等は一般名称で、それぞれに「寒ころ」を付して使用したものが「寒ころ」とは別の商標として認識されるとは考えられない。
(2)被請求人は、商標「寒ころ」を「もち米、うるち米」を原料とする揚げ餅に使用しているものであり、「かんころもち」について、商標「寒ころ」が誤認を生じさせることはあり得ないものであって、他人の業務に係る商品との混同を生じさせることもあり得ないものである。
(3)請求人は、被請求人が「かんころもち」を知っての上で「寒ころ餅」という商品を製造販売した旨主張しているが、「かんころもち」が長崎県の特産品であり、芋を含有するものであるというのは、請求人の主張であって、被請求人の関知するところではない。また、インターネットでの検索結果が本件商標「寒ころ」とどのように関係してくるのかも明らかではない。
本件商標「寒ころ」は、さいの目状に切った餅を焼いたり揚げたりして製造する「ころ餅」を念頭において創造された商標であり、硬くなった鏡餅を賽の目に切って作業する冬と言う季節感を得るために、「寒ころ」なる商標を採択したものである。
実際に、乙第1号証のごとく、「ころもち」と言う名称で類似の商品を製造販売している会社もある。また、乙第2号証のごとく、「かんころ」という単語は、西日本で使われている乾燥芋の別称であるが、乙第2号証には「かんころもち」の記載は存在しない。
さらに、特許電子図書館で商標「カンコロ」の称呼検索をしたところ、乙第3号証に示すごとき類似の商標「かんころ餅」、「甘古呂餅」の2件が2008年と2009年に出願されている。
これらの事実から、「長崎県の特産品で芋を含有する食品がかんころもちである」という請求人の主張は、その昔からだれでもが知っていたといえるものではなく、一部地域で最近になって流布した商品であると判断せざるをえない。
平成13年に出願をし、平成14年に登録になった本件商標「寒ころ」が、後続の特産品と称する商品の名称に影響を受けることはないものというべきである。
そこで、被請求人(商標権者)が実際に使用している商標の使用が上記規定に該当するか否かについて検討する。
本件商標は、上記第1のとおり、「寒ころ」の文字を標準文字で表してなり、第30類「菓子及びパン」を指定商品とするものである。
請求人が被請求人による本件商標の変更使用である旨主張している商標は、甲第1号証(2009年(平成21年)7月6日にプリントアウトされた商標権者のホームページ)に表示されている「寒ころ餅」の文字を同書、同大、同間隔で一連に横書きされた構成からなる商標(以下「使用商標1」という。)及び別掲の商品の包装袋に貼付されたラベルに表示されている商標(以下「使用商標2」といい、使用商標1及び2を合わせて「使用商標」という。)であり、後者の構成は、「寒」と「餅」の各文字を同一の書体をもって上下に大きく表し、その間に、「こ」と「ろ」の各文字をやや小さく、右上から左下へ斜めに表されるように配した構成からなるものである。
そして、被請求人の主張によれば、使用商標が使用されている商品(以下「使用商品」という。)は「揚げ餅」であり(この点については、請求人も認めている。)、また、甲第1号証によれば、その原材料が「もち米、うるち米、植物油(米油)、醤油、青のり粉、四万十川産青のり粉」であることが認められる。
本件商標は、前記第1のとおり、「寒ころ」の文字からなるものである。
一方、使用商標は、前記3のとおりの構成からなるものであるところ、使用商標の構成中の「餅」の文字は、本件商標の指定商品中例えば「餅菓子」「煎餅」「揚げ餅」などについては、一般に使用されている文字であることから、識別力が弱い文字といえる。
そうとすれば、使用商標は、「揚げ餅」について用いられている商標であるから、これに接する取引者、需要者がその構成中「寒ころ」の文字部分に
着目し記憶することが少なくないということができる。
してみれば、本件商標の「寒ころ」の文字と使用商標中の「寒ころ」の文字とは、外観において構成文字を共通にし、その構成文字から生ずる「カンコロ」の称呼も共通にするものであるから、本件商標と使用商標とは類似の商標というべきである。
したがって、被請求人は、本件商標の指定商品中に含まれていると認められる「揚げ餅」について、本件商標に類似する商標の使用をしているといわなければならない。
請求人は、使用商標からは長崎県の特産品である「かんころもち」を想起させるところ、「かんころもち」は「干したさつまいもともちを混ぜたもち菓子、干したさつまいもを混ぜたもち」を表すものであり、「干したさつまいも」と「餅」を原材料としているところに特徴があるにもかかわらず、使用商標が用いられている商品の原材料は「もち米、うるち米、植物油(米油)、醤油、青のり粉、四万十川産青のり粉」のみで、「さつまいも」が一切含まれていないものであるから、「さつまいも」が含まれていない餅菓子に「寒ころ餅」の商標を使用することは、商品の品質について誤認を生じさせるものであり、他人の業務に係る商品「かんころもち」との混同を生じさせる旨主張している。
(1)「かんころもち」について
ア そこでまず、「かんころもち」なる商品についてみると、請求人提出の甲第2号証(検索サイトGoogleにおける「かんころもち」の検索結果)によれば、「かんころもちは、サツマイモを混ぜこんだ餅の一種。長崎県五島列島の郷土料理の一つ。・・・色は緑色−緑褐色で、強い甘みを持ち、低温でもあまり硬くならない。」、「本場五島列島の元祖かんころ餅は昔ながらの素朴な味が大人気」、「さつまいもを薄く切り、茹でて、干して・・・米があまり採れなかった時代に考えられた長崎の田舎名物」等と記載されている。
そうとすれば、「かんころもち(餅)」とは、長崎県地方(特に、五島列島)の郷土菓子であり、「干したさつまいもともちを混ぜたもち菓子、干したさつまいもを混ぜたもち」を指称しているものと認められる。そして、該商品名中の「かんころ」の文字部分は、専ら平仮名をもって表されていることが認められる。
なお、甲第2号証中には、一部に「甘古呂餅」の表示も認められるが、この点については、被請求人が提出した乙第3号証中の請求人の出願に係る商標登録出願(商願2009−19308)について職権により調査したところ、当該出願の出願人(本件審判の請求人)である協力産業有限会社(伊達本舗)は、拒絶理由通知に対する意見書の中で、「甘古呂(餅)」は出願人の造語商標であり、「甘古呂(餅)」を使用しているのは出願人のみである旨述べている。
イ また、被請求人提出の乙第2号証(株式会社岩波書店発行の広辞苑第三版)によれば、「かんころ」の語については、「(西日本で)さつまいもの切干し。ほし芋。」と記載されていることが認められるが、「かんころもち」についての記載はない。このことは、職権により調査した1989年11月6日第1刷株式会社講談社発行の「講談社カラー版日本語大辞典」や1995年1月10日第1版新装版第5刷株式会社小学館発行の「国語大辞典(新装版)」においても、「かんころ」については、広辞苑と同様の説明が記載されているが(講談社カラー版日本語大辞典においては、方言である旨記載されている)、「かんころもち」についての記載は存在しない。
ウ 上記したところからすれば、「かんころもち(餅)」なる商品は、長崎県地方(特に、五島列島)の郷土菓子であって、当該地方においては、ある程度知られているであろうことは推測し得るとしても、我が国において広く一般に知られているものということはできないというのが相当である。
(2)商品の品質の誤認を生ずるおそれについて
請求人は、「さつまいも」が含まれていない餅、菓子に「寒ころ餅」の商標を使用することは、商品の品質について誤認を生じさせる旨主張している。
しかしながら、使用商標1及び2は、態様は相違するもののいずれも「寒ころ餅」の文字からなるところ、上記したとおり、「(西日本で)さつまいもの切干し。ほし芋。」を表す「かんころ」は、平仮名でのみ表され、対応する漢字はないものであり、長崎地方の「かんころもち(餅)」も「かんころ」の文字は平仮名で表されるものであって、さらに、「かんころ」及び「かんころもち(餅)」について、「かん」の部分に「寒」の文字を使用される例は見あたらない。また、「かんころもち(餅)」なる商品が広く一般に知られている商品とも認められない。
そうとすると、使用商標の 「寒ころ」の文字部分から上記「かんころ」を、また「寒ころ餅」の文字から上記「かんころもち(餅)」を想起することはないというのが相当である。
したがって、本件商標は、これを「さつまいもが含まれていない菓子」に使用しても商品の品質について誤認を生ずるおそれはないものといわなければならない。
なお、商品「もち(餅)」は、本件商標の指定商品中には含まれず、また、同指定商品と非類似の商品である。
(3)商品の出所の混同を生ずるおそれについて
請求人は、さつまいもを全く含まないもち菓子に「寒ころ餅」を付して譲渡することは、他人の業務に係る商品「かんころもち」との混同を生じさせる旨主張している。
しかしながら、請求人の主張の趣旨は必ずしも明らかではないが、他人の業務に係る商品との混同を生じさせるとしている「他人の業務に係る商品」が如何なる者の業務に係る商品であるのか明らかにされていないばかりでなく、その他人の業務に係る商品及び商標の周知・著名性についての主張、立証もないから、この点についての請求人の主張は採用できない。
仮に、請求人の業務に係る商品との混同を生じさせるとの趣旨だとしても、同人の業務に係る商品及び商標の周知・著名性についての立証はない。
したがって、被請求人(商標権者)が使用商標をその指定商品中の「揚げ餅」に使用しても、これに接する取引者・需要者をして長崎県地方の郷土菓子である「かんころもち(餅)」あるいは請求人の業務に係る「甘古呂餅」を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が被請求人以外の者又はそれらの者と何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
請求人は、「商標権者は、煎餅やもち菓子を製造販売する株式会社であり、しかも、さつまいもの名産地である茨城県の会社であるから、長崎県の特産品『かんころもち』が存在していることは承知していたはずであり、さつまいもを含まないもち菓子に『寒ころ餅』の商標を使用すれば、商品の品質に誤認を生じさせる結果となり、他人の業務に係る商品と混同を生じさせる結果になることも当然認識していたと考えるべきであるから、被請求人による上記商標の使用には故意が認められる」旨主張している。
しかしながら、上述のとおり、長崎県地方の郷土菓子である「かんころもち(餅)」と使用商標とは、その表示態様において明らかに相違するばかりでなく、「かんころもち(餅)」と使用商標が使用されている「揚げ餅」とは別異の商品と認められるものであり、しかも、「かんころもち(餅)」は、広く一般に知られている商品ということはできないものであることを併せみれば、そもそも、使用商標は、「かんころもち(餅)」との関係においては、商品の品質の誤認や他人の業務に係る商品と混同を生じさせるおそれはないものであるから、被請求人においても、請求人が主張しているような事情についての認識(故意)があったものとみる余地はないものというべきである。
以上のとおり、被請求人による使用商標の使用は、取引者・需要者をして商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものとはいえず、また、故意に、商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたとも認められない。
したがって、被請求人による使用商標の使用は、商標法第51条第1項の要件を欠くものというべきであるから、本件商標の登録は、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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