Trademark Appeal Case
防護標章の著名性要件
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2009−9702(T2009−9702/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願標章
本願に係る防護標章登録を受けようとする標章(以下「本願標章」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第29類「食用油脂,乳製品,食肉,卵,食用魚介類(生きているものを除く。),冷凍野菜,冷凍果実,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,加工卵,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物,豆,食用たんぱく」を指定商品とし、国際登録第825372号(以下「原登録商標」という。)に係る防護標章登録出願として、平成19年6月15日に登録出願されたものである。
第2 原登録商標
原登録商標は、別掲のとおり、本願標章と同一の構成よりなり、日本国を指定する国際登録において指定された第35類「Advertising of goods and services at wholesale stores, hypermarkets, supermarkets, food retailers and department stores; negotiation and conclusion of contracts for wholesale markets, supermarkets, food retailers and department stores, relating to the purchase and sale of goods and the utilisation of services; display of food, beverage and non-food products enabling customers to conveniently view and purchase those goods at wholesale markets, hypermarkets, supermarkets, food retailers and department stores.」を指定役務として、2003年9月22日にGermanyにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2004年(平成16年)3月16日に国際商標登録出願され、平成18年1月13日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
第3 原査定の拒絶理由
原査定は、「本願標章は、他人が本願指定商品に使用しても、出願人の取り扱いに係る商品であるかの如くその出所について混同を生じる程に需要者間に広く認識されているものとは認められない。したがって、本願標章は、商標法第64条の要件を具備しない。」旨認定、判断し、その登録を拒絶したものである。
第4 当審の判断
商標法第64条第2項は、「商標権者は、役務に係る登録商標が自己の業務に係る指定役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合において、その登録商標に係る指定役務及びこれに類似する役務以外の役務又は指定役務に類似する商品以外の商品について他人が登録商標の使用をすることによりその役務又は商品と自己の業務に係る指定役務とが混同を生ずるおそれがあるときには、そのおそれがある役務又は商品について、その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。」と規定している。
そこで、これを前提として、以下、本願について検討する。
1 本願標章と原登録商標との同一性
本願標章は、別掲に示すとおり、青色の矩形内に黄色の文字で「METRO」の文字を横書きしてなるところ、該構成はその構成・色彩において原登録商標と同一のものであること、そして、原登録商標が請求人の所有に係るものであり、かつ、該商標権が現に有効に存続していることは、商標登録原簿の記載に照らし、これを認めることができる。
2 原登録商標の著名性について
請求人は、原登録商標が自己の業務に係る指定役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているから、他人が本願商標の指定商品に使用した場合、請求人の業務に係る商品であるかの如く混同を生ずるおそれがある旨述べ、証拠として、原審における第1号証ないし第143号証、当審における甲第1号証ないし甲第33号証を提出しているので、以下、これについて検討する。
(1)請求人の提出した証拠資料の検討
ア 第1号証は、「メトロキャッシュアンドキャリージャパン」(以下「メトロジャパン」という。)のホームページの情報(2008年10月21日付け印刷)であり、事業内容、メトログループ(以下「メトロ社」という。)全体の売上高、メトロキャッシュアンドキャリー・インターナショナル(以下「メトロ」という。)の店舗数等の記載よりみて、「メトロ」は、ドイツ在の流通企業「メトロ社」傘下の、事業者を対象とした卸売店舗であること、「メトロ」の2006年度の売上高は299億ユーロであること、「メトロ」第1号店は、1964年にドイツで創業され、2006年12月末現在で、28カ国に約600店舗を展開しており、日本には、「メトロジャパン」が運営する店舗が3店舗存在していること及び「メトロ社」が宣伝業務を行っていることが認められる。
イ 第2号証は、「メトロ社」ホームページ(2008年3月18日付)であり、2006年度及び2007年度の「メトロ社」全体及び事業毎の売上高、店舗数等の記載よりみて、「メトロ社」のアジア・アフリカ地域別の売上高のシェアは3%であること、2008年6月30日時点で日本における「メトロ」店舗数は3店舗であることが認められる。
ウ 第3号証は、各国の「メトロ」店舗リスト(2007年2月21日付)であり、日本国内には埼玉県川口市、千葉県千葉市、東京都町田市に店舗が存在することが認められる。
エ 第4号証は、「DAX(ドイツ株価指数)採用銘柄各社のブランド価値」(写し)であり、「メトロ社」がドイツにおける2006年のブランドランキングで第12位である旨の記載があることから、ドイツにおいて「メトロ社」が一定程度知られていることは窺える。
オ 第5号証ないし第8号証は、2000年から2006年にかけて、外国において行ったアンケート調査結果であり、商標「『METRO』を知っているか」との設問に対し、フランスで約60%超、イタリアで約70%、クロアチアでほぼ全員、モルドバで約80%超の各モニターが「商標『METRO』を知っている」回答している旨の記載があることから、当該国において、「METRO」商標が一定程度知られていることは窺える。
カ 第9号証は、「FORTUNE」(フォーチューン誌)が発表する「世界で最も賞賛される企業2007」において、「メトロ社」が第6位に選出されたことは認められる。
キ 第10号証及び第11号証は、国内外の「METRO」及び「METRO」の文字を含む商標の登録の状況が示されているに止まるものである。
ク 第12号証は、2008年3月刊行の「外国ブランド権利者名簿」(財団法人対日貿易投資交流促進協会発行)に、原登録商標の権利情報が掲載されていることが認められる。
ケ 第13号証ないし第143号証は、2000年10月から2007年12月にかけて、一般紙、専門・業界新聞、専門・業界雑誌等の媒体を通じて、継続的に「メトロ社」の日本市場への参入及び「メトロ」店舗の出店拡大についての記事が掲載されたことは認め得るが、一般紙、テレビCMによる広告等のマスメディアによる広告の有無は、商標の周知・著名性を総合的に判断する際に重要なものといえるところ、請求人が提出した証拠資料からは、一般紙における「メトロ」店舗に関する記事は、「メトロ」、「メトロキャッシュアンドキャリージャパン」等、記述的に使用されている例が大多数であり、原登録商標と同一の態様での使用はほとんど認められず、かつ、一般需要者が接する機会が多いと認められるテレビ等の大衆向けマスメディアにおいて、請求人が、原登録商標を付した役務等に関し、テレビCM等の宣伝・広告を行っている事実も認めることができない。
コ 甲第1号証は、原登録商標の権利情報が示されているに止まるものである。
サ 甲第2号証は、2007年12月31日時点の「メトロ社」の子会社リストが示されているに止まるものである。
シ 甲第3号証は、「メトロジャパン」会社概要パンフレット(写し)であり、業務内容の記載よりみて、「メトロ」が食品関連の商品を取り扱っていること、パンフレットの表紙に原登録商標と「Cash & Carry Japan」の文字が併記して表示されていることが認められる。
ス 甲第4号証ないし甲第33号証は、日本国内の「メトロ」店舗において、店舗看板、店舗内のフォークリフト、従業員のユニフォーム、店舗案内チラシ等、一部に原登録商標と同一の態様で使用されていることが認められるが、大多数の使用例は、原登録商標と「Cash & Carry」、「Cash & Carry Japan」、「Cash & Carry Japan K.K」「NEWS」、「BRAND」等の文字や図形が併記して表示されていることが認められる。
(2)まとめ
以上の認定事実によれば、原登録商標は、ドイツの流通企業「メトロ社」傘下の、事業者を対象とした卸売店舗「メトロ」の標識であること、日本国内の一般紙等を通じて、2000年から2007年にかけて、「メトロ」に関する記事を継続的に掲載していること、日本国内の「メトロ」店舗数は、3店舗であり、該店舗の看板等に原登録商標と同じ構成・態様の使用例があること、「メトロ社」が宣伝業務を行っていること等が認められる。
しかしながら、請求人の取り扱いに係るパンフレットや「メトロ」店舗等において、原登録商標と同態様の使用が一部見受けられるものの、それらの証左は、請求人の取扱いに係る卸売店舗での使用例に止まり、請求人が原登録商標をその指定役務に直接表示し、使用している事実を示す証左を見つけることができなかった。
また、日本国内の「METRO」商標を付した店舗は、日本で「メトロ」第1号店が2002年にオープンしていることから、「METRO」商標の使用開始期間も同時期であることが推測できるとしても、その使用期間は、8年程度であること、店舗数も2007年2月時点でわずか3店舗(埼玉県川口市、千葉県千葉市、東京都町田市)であり、当審において調査した結果、現在の店舗数は6店舗(前記3店舗の他、栃木県宇都宮市、千葉県流山市、神奈川県横浜市)となっているものの、日本国内における「メトロ」の営業規模は決して大きいものとはいい得ず、該店舗の大半が首都圏に集中していること、「メトロ」が事業者のみを対象とし、一般消費者が入店できないシステムになっている卸売店舗であること、一般需要者が接する機会が多いと認められるテレビ等の大衆向けマスメディアにおいて、請求人が、原登録商標を付した役務等に関し、テレビCM等の宣伝・広告を行っている事実が認められない等の実情からすれば、一般需要者の多数が、その店舗の存在を知り、かつ、原登録商標に接しているとはいい難いものである。
してみれば、たとえ、「メトロ」が外国において、一定程度知られているとしても、我が国において、原登録商標を指定役務に直接表示し使用している事実を示す具体的な証左がないこと、我が国における原登録商標の使用開始時期が2002年からと推測できるとしても、使用期間が8年程度であること、我が国における営業規模、使用地域及び広告の状況から、原登録商標に接する需要者が限定されていると判断できることからすれば、原登録商標が、一般需要者の間にまで、広く認識されているものとは、直ちに認めることはできない。
3 出所の混同のおそれについて
他人が原登録商標を本願標章に係る指定商品について使用した場合、需要者が、その商品と原登録商標の商標権者に係る指定役務と混同を生ずるか否かについて判断するに、商標法第64条第2項においていう「混同を生ずるおそれ」を判断するにあたっては、原登録商標自体とその商標の著名性、当該商品分野における需要者一般の注意力その他取引の実情等を総合勘案して、そのおそれの有無を判断すべきものと解される。
これを本件についてみるに、請求人の全証拠からは、原登録商標が一般の需要者の間にまで広く認識され、著名性を得ているとは認められないとした
前記認定を相当とするから、他人が、原登録商標と同一の商標を、本願指定商品に使用したとしても、これに接する需要者が、直ちに原登録商標の権利者の業務に係る商品の如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるとまではいえないものと判断するのが相当である。
4 請求人の主張
請求人は、「本願標章の指定商品は、請求人の事業と関連のある取扱商品であることを勘案すれば、他人が本願標章を本願指定商品に使用した場合には、これに接する需要者は、その商品が本件出願人をはじめ、メトログループ、メトロジャパンとの何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。」旨、主張している。
しかしながら、たとえ、請求人が実際に本願標章の指定商品と関連のある商品を取り扱っていたとしても、出所の混同のおそれは、原登録商標の著名性が前提となるところ、原登録商標が著名性を有するとは認められず、その前提を欠くものであることは、前記2(2)で認定したとおりであるから、この点に関する請求人の主張は認められないものである。
5 むすび
したがって、本願標章が、商標法第64条の要件を具備しないとした原査定は、妥当であって、これを取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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