sokuhyo

Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2010−900095(T2010−900095/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5293988号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5293988号商標(以下「本件商標」という。)は、「AJ HACKETT BUNGY」の欧文字を標準文字で表してなり、平成17年5月27日に登録出願、第25類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同21年9月15日に登録査定、同22年1月15日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

本件商標の登録異議の申立ての理由に引用されている商標は、次のとおりの商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである。

1 登録第4736462号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、2000年4月26日にスイス連邦においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成12年6月30日に登録出願、第18類、第25類及び第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同15年12月26日に設定登録されたものである。

2 登録第2025747号商標(以下「引用商標2」という。)は、「HACKETT」の欧文字を横書きしてなり、昭和61年5月13日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同63年2月22日に設定登録されたものであり、その後、2回にわたり、商標権の存続期間の更新登録がなされ、指定商品については、平成20年8月13日に第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品に指定商品の書換登録がされている。

3 登録第2034098号商標(以下「引用商標3」という。)は、「HACKETT」の欧文字と「ハケット」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり、昭和60年9月20日に登録出願、第22類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同63年3月30日に設定登録されたものであり、その後、2回にわたり、商標権の存続期間の更新登録がなされ、指定商品については、平成20年9月24日に第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品に指定商品の書換登録がされている。

4 登録第4121371号商標(以下「引用商標4」という。)は、「HACKETT」の欧文字を横書きしてなり、平成8年9月30日に登録出願、第18類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同10年3月6日に設定登録されたものであり、その後、同20年4月1日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。

5 登録第4286804号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、平成10年3月31日に登録出願、第14類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同11年6月25日に設定登録されたものであり、その後、同21年6月30日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。

6 登録第4309015号商標(以下「引用商標6」という。)は、「HACKETT」の欧文字を横書きしてなり、その下に、やゝ小さく「ESSENTIAL/BRITISH/KIT」の各欧文字を三段に配した構成からなり、平成8年2月19日に登録出願、第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同11年8月27日に設定登録されたものであり、その後、同21年8月25日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。

7 登録第4836809号商標(以下「引用商標7」という。)は、「HACKETT」の欧文字を標準文字で表してなり、平成15年3月27日に登録出願、第6類、第9類、第14類、第24類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同17年2月4日に設定登録されたものである。

以下、引用商標2、引用商標3、引用商標5及び引用商標6をまとめていうときは、「HACKETT」商標ということがある。

第3 登録異議の申立ての理由(要点)

1 ジョルジオ アルマーニ エス・ペー・アー、ミラノ スイス ブランチ メンドリジョ(Giorgio ARMANI S.P.A.,Milan Swiss Branch Mendrisio)(以下「申立人A」という。)からの申立て

(1)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、その構成からみれば、「HACKETT」の文字部分も独立して把握されるものというべきであるから、これより「ハケット」の称呼をも生ずるものである。

一方、引用商標3ないし引用商標7は、「HACKETT」の文字を要部とするものであるから、これより「ハケット」の称呼を生ずるものである。

したがって、本件商標と引用商標3ないし引用商標7とは、「ハケット」の称呼を共通にする類似の商標であり、その指定商品も同一又は類似のものである。

(2)商標法第4条第1項第10号及び同第15号について

(ア)GIORGIO ARMANI(ジョルジオアルマーニ)は、1975年にイタリアで紳士・婦人ものの既製品を扱うファッション・デザイン会社「ジョルジオアルマーニ社」を設立して以来、「GIORGIO ARMANI」ブランドを付した紳士・婦人服を製作、販売するとともに、1981年以降、カジュアルラインの「ARMANI JEANS」等の多くのブランドを付して商品を販売してきた。

アルマーニ・ジーンズの世界各国での売り上げは、2000年においては、世界では187億、日本では5億5000万円となっており、最近の日本での売上げは、2003年と2004年が10億円、2005年は5億円となっている。

「AJ」を付した申立人Aの取り扱う商品は、ベルト・紳士服・婦人服・帽子・靴・サングラス・小物等を含む広範囲な商品であり、パンフレットや雑誌広告などに大きなサイズの記事として掲載されている。また、「AJ」は、東京都内の有名百貨店等の店舗においてショーウィンドウ全体を使って大きく表示された使用方法がとられている。

申立人Aによるこのような信用蓄積のための広告宣伝努力の結果、引用商標1は、本件商標の出願時には、我が国における取引者、需要者の間においても広く知られたものとなっている(甲第1号証ないし甲第269号証)。

(イ)上記のとおり、引用商標1は周知・著名なものであり、引用商標1と本件商標とは、「AJ」の文字部分を共通にする類似の商標であり、その指定商品も同一又は類似のものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当し、また、本件商標がその指定商品に使用された場合には、その商品の需要者が申立人Aの業務に係る商品と出所について混同するおそれがあるから、同第15号にも該当する。

(3)よって、本件商標は、その指定商品・指定役務中の第25類の指定商品について、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから取り消されるべきである。

2 ハケット リミテッド(以下「申立人B」という。)からの申立て

(1)商標法第4条第1項第8号について

本件商標構成中の「HACKETT」の文字は、後述のとおり、申立人Bであるハケット リミテッドの著名な略称である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第11号について

本件商標構成中の「AJ」及び「BUNGY」の文字部分は、指定商品との関係において自他商品識別力が弱いものであり、本件商標において識別力を発揮するのは「HACKETT」の文字部分である。

したがって、本件商標は、引用商標2、引用商標3、引用商標5及び引用商標6と類似の商標であり、その指定商品も類似するものである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第15号及び同第19号について

申立人Bであるハケット リミテッドは、1983年に設立された紳士服店「ハケット」から始まり、その後、リシュモングループを経てペペジーンズグループの傘下となり、現在は世界24力国で42店の直営店を有し、その売上高は約120億円にのぼるものであり、紳士服における真の英国スタイルブランドである。

「HACKETT」商標の外国における周知・著名性は、外国の媒体に掲載された記事やニューズレター、広告等の資料のとおりであり(甲第9号証ないし甲第12号証)、また、日本における周知・著名性は、甲第15号証に示す新聞記事のとおりであって、多くの媒体において「HACKETT」が取り上げられている。

したがって、「HACKETT」商標は、我が国においても周知・著名なものとなっている。

上述のとおり、本件商標の要部は「HACKETT」であり、一方、申立人Bの「HACKETT」商標は、世界的に周知・著名な商標である。

よって、本件商標をその指定商品に使用した場合には、本件商標の指定商品と申立人Bの業務に係る商品との間で出所の混同を生ずるおそれがあり、また、著名商標を含む本件商標を申立人Bと何等の関係も持たない第三者がその指定商品に使用した場合には、著名商標である「HACKETT」商標の名声の毀損を招くおそれがある。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当する。

(4)よって、本件商標は、その指定商品・指定役務中の第25類の指定商品について、商標法第4条第1項第8号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから取り消されるべきである。

第4 当審の判断

1 申立人Aからの申立てについて

(1)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、前記のとおり、「AJ HACKETT BUNGY」の欧文字を標準文字で表してなるところ、これを構成する各文字は、外観上まとまりよく一体的に表現されており、これより生ずるものと認められる「エイジェイハケットバンジー」の称呼も格別冗長なものでもなく、一連に称呼し得るものである。そして、申立に係る第25類の「被服」等との関係においては、構成中の「AJ」の文字部分は商品の規格・型式又は品番を表すための記号・符号の一類型として理解される場合があるとしても、「BUNGY」の文字部分については、特定の商品又は商品の品質等を具体的に表示するものとして直ちに理解し得るものともいい難いところであるから、むしろ、構成全体あるいは「AJ」の文字部分を捨象したその余の構成全体をもって一体不可分の造語を表したものと認識し把握されるとみるのが自然であり、「HACKETT」の文字部分のみが分離・抽出され、取引に供されるとみるべき格別の理由は見出せない。

そうとすれば、本件商標は、「エイジェイハケットバンジー」の称呼のみを生ずるか、あるいは、略称されるとしても「ハケットバンジー」の称呼を生ずるものとみるのが相当であり、単に「ハケット」の称呼が生ずることはないものといわなければならない。

してみれば、本件商標から「HACKETT」の文字部分も独立して認識されることを前提にして、そのうえで、本件商標と引用商標3ないし引用商標7とが称呼において類似するものとする申立人Aの主張は採用できない。

そして他に、本件商標と引用商標3ないし引用商標7とを類似するものとすべき特段の理由は見出せない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものとはいえない。

(2)商標法第4条第1項第10号について

本件商標は、前記のとおり、申立に係る第25類の「被服」等との関係においては、「AJ HACKETT BUNGY」の構成全体あるいは「HACKETT BUNGY」の文字部分をもって自他商品識別標識として機能するものというべきであるから、「AJ」の文字と「ARMANI/JEANS」の文字とが併記されている引用商標1あるいはその構成中の「AJ」の商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標と認められるものである。

したがって、その余の点について判断するまでもなく、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものとはいえない。

(3)商標法第4条第1項第15号について

申立人Aの提出に係る甲各号証によれば、引用商標1及びその構成中の「AJ」の文字部分からなる商標が「紳士服、婦人服、ベルト」等の商品について使用されている事実は認められるとしても、引用商標1は、「AJ」の文字と「ARMANI/JEANS」の文字とが併記されている商標であるから、引用商標1の使用事実をもって、「AJ」の文字部分についての周知・著名性が立証されたものとはいえない。また、「AJ」の文字が単独で使用されている例も認められるが、その多くは、かなり特殊な構成態様からなるものであって、通常の態様のアルファベットからなる「AJ」の標章が申立人Aの業務に係る商品について使用されて周知・著名となっていたものとは認められない。

しかも、前記のとおり、本件商標と引用商標1あるいはその構成中の「AJ」の商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない別異の商標というべきものである。

してみれば、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、申立人Aの使用に係る引用商標1あるいはその構成中の「AJ」の商標を想起又は連想させるものとは認められず、その商品が申立人A又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものとはいえない。

2 申立人Bからの申立てについて

(1)商標法第4条第1項第11号について

前記した申立人Aからの申立てについての(1)の項で判断したところと同様の理由により、本件商標から「HACKETT」の文字部分も独立して認識されることを前提にして、そのうえで、本件商標と引用商標2、引用商標3、引用商標5及び引用商標6とが称呼において類似するものとする申立人Bの主張は採用できない。

そして他に、本件商標と引用商標2、引用商標3、引用商標5及び引用商標6とを類似するものとすべき特段の理由は見出せない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものとはいえない。

(2)商標法第4条第1項第8号及び同第15号について

(ア)「HACKETT」商標の周知・著名性について

申立人Bは、「HACKETT」商標が申立人Bの業務に係る「高級紳士服」の商標として著名であり、また、申立人Bの著名な略称である旨主張して、甲各号証を提出している。

しかしながら、「HACKETT」商標の外国における周知・著名性を証明するものとして提出されているのは、外国におけるカタログ、スポーツへの後援の事実、各国の店舗写真、外国の媒体に掲載された記事や広告、各国への出願・登録リスト等であり(甲第6号証ないし甲第14号証)、また、我が国における周知・著名性を証明するものとして提出されているのは、日本経済新聞や日経流通新聞、東京読売新聞等における記事のみであり(甲第15号証)、しかも、本件商標の出願時である平成17年(2005年)5月27日以降の事実に関する証拠も数多く含まれている。

そして、例えば、2008年7月21日付の日経流通新聞には、「英高級紳士服ブランド『ハケットロンドン』を製造販売するハケットリミテッド(ロンドン)は2009年春、日本市場に再進出する。・・・このほどハケットジャパン(東京・千代田区)を設立した。・・・09年春から卸・小売り事業を開始。百貨店などへ5年目をメドに35店を出し、小売りベースで35億円の売上高確保を目指す。・・・ハケットは1983年の創業。日本では90−2000年にダイドーリミテッドがライセンス商品を販売していた。英ダンヒルホールディングス(現在はスイスのリシュモングループ)傘下となったのに伴い、ライセンス事業を中止した。・・・」と記載されている。

そうとすれば、「HACKETT」商標が、高級紳士服の商標としてイギリスをはじめとする欧州各国において一定程度知られていたものであるとしても、本件商標の出願当時においては、申立人Bは、我が国においてライセンス事業も行っていなかったのであり、申立人Bの提出に係る証拠をもってしては、「HACKETT」商標が、申立人Bの業務に係る高級紳士服を表示する商標として、本件商標の登録出願時において、我が国における取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。

また同様に、申立人Bの我が国における上記の如き事業活動の状況からみれば、本件商標の登録出願時において、「HACKETT」商標が申立人Bの名称の著名な略称であったものとも認められない。

(イ)商標法第4条第1項第8号について

前記(ア)のとおり、本件商標は、申立人Bの名称の著名な略称を含む商標ということはできない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してされたものとはいえない。

(ウ)商標法第4条第1項第15号について

前記(ア)のとおり、「HACKETT」商標は、申立人Bの業務に係る高級紳士服を表示する商標として、本件商標の登録出願時において、我が国における取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは認められないものであり、しかも、本件商標と申立人Bの使用に係る「HACKETT」商標とは、前記のとおり、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない別異の商標というべきものである。

してみれば、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、申立人Bの使用に係る「HACKETT」商標を想起又は連想させるものとは認められず、その商品が申立人B又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものとはいえない。

(3)商標法第4条第1項第19号について

前記のとおり、本件商標と申立人の使用に係る「HACKETT」商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

そうとすれば、申立人の使用に係る「HACKETT」商標が、外国における需要者の間に広く知られていたとしても、本件商標と申立人Bの使用に係る「HACKETT」商標とは、別異の商標というべきものであるから、その余の要件について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に規定されている要件を満たすものとはいえない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものとはいえない。

3 むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、登録異議の申立てに係る指定商品について、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。