Trademark Appeal Case
PINK称呼類似と混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2010−900098(T2010−900098/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5294659号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成21年4月7日に登録出願され、第3類、第8類、第9類、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類、第25類、第26類、第28類及び第35類に属する別掲2に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成21年12月9日に登録査定、同22年1月15日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する国際登録第925667号商標(以下「引用商標1」という。)は、「VICTORIA’S SECRET」及び「PINK」の文字を上下二段に横書きしてなり、2007年(平成19年)4月18日に国際商標登録出願され、第3類、第8類、第21類及び第25類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として平成21年12月25日に設定登録されたものである。
同じく登録第5257953号商標(以下「引用商標2」という。)は、「VICTORIA’S SECRET PINK」の文字を横書きしてなり、平成20年5月29日に登録出願され、第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として平成21年8月14日に設定登録されたものである。
以下、引用商標1及び2を一括して、単に「引用商標」という。
3 登録異議申立ての理由の要点
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号の規定により、取り消されるべきものであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号ないし第25号証(枝番を含む)を提出している。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、引用商標と「ピンク」の称呼及び観念を同じくする類似商標であり、かつ、その指定商品及び指定役務中、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,つけづめ,つけまつ毛」、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,帽子,防暑用ヘルメット,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。)」及び第35類「織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(但し、平成22年7月15日付け手続補正書の具体的理由において、第35類「時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」は、申立対象の指定役務から除かれている。)(以下「申立商品役務」という。)は、引用商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似の商品又は役務である。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、申立人が製造販売する「被服」等の商品及び小売等役務を指称するものとして需要者に広く知られた周知商標「VICTORIA’S SECRET PINK」及び「PINK」(以下、一括して「引用使用商標」という。)と類似するものであり、これと同一又は類似の商品又は役務について使用した場合、申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある。
(3)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、引用使用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれが非常に高いものである。
(4)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、引用使用商標に化体した信用等を毀損させるばかりでなく、本件商標権者が真実に反する説明・表示をしたことにより、需要者・取引者に誤解を与えたことは、社会公共の利益に反する行為である。
4 当審の判断
(1)本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標は、別掲のとおり、レタリングされた籠文字で「pink」と「x」の欧文字を書し、その間にピンク色のハートの図形を表してなるところ、その構成中の「pink」及び「x」の文字は、いずれもピンク色の同一態様で表されており、全体がまとまりよく一体的に看取されるものであり、これから生ずると認められる「ピンクエックス」の称呼もよどみなく一気一連に称呼し得るものである。
そして、たとえ、「x」の文字が、商品の型式、品番等を表示するための記号、符号等として類型的に使用されるローマ字の1つであるとしても、本件商標のかかる構成にあっては、殊更「pink」の文字部分と「x」の文字部分とが、分離、分断されて看取されるものというよりは、むしろ、全体をもって一体不可分の一種の造語からなるものとして認識し把握されるものとみるのが自然である。
そうすると、本件商標は、「pinkx」の欧文字より「ピンクエックス」の一連の称呼のみを生じ、かつ、該文字は、既成の親しまれた観念は有しないものというべきである。
なお、本件商標の構成中のハート状の図形は、装飾的ないしは付記的に表示されたものであって、これからは格別の称呼及び観念は生じないというべきである。
イ 他方、引用商標は、同書同大に欧文字が二段又は一行一連に表されており、いずれも全体がまとまりよく一体的に看取されるものである。
しかも、下段中央又は末尾に配された「PINK」の文字は、「ピンク色、桃色」の意味を有する英語として我が国においても親しまれた語であって、商品・役務に関する色彩表示として一般に広く使用されているものであるから、自他商品・役務の識別力がないか極めて弱いものであることからすると、引用商標は、いずれも「VICTORIA’S SECRET」の文字部分が自他商品・役務の識別標識としての機能を果たす要部というべきである。
そうすると、引用商標は、「ビクトリアズシークレットピンク」の一連の称呼のほか、「ビクトリアズシークレット」の称呼をも生ずるものといえるが、単なる「ピンク」の称呼は生じないというべきである。
そして、引用商標は、全体としては既成の親しまれた観念を有する成語を表したものとは認められないが、研究社発行「英和商品名辞典」の記載(甲第4号証)に徴すれば、「VICTORIA’S SECRET」の文字部分から米国のランジェリー(女性用下着類)・ナイトウェアのメーカーとしての「ビクトリアズシークレット」の観念が生ずる場合があり得るものである。
ウ しかして、本件商標から生ずる「ピンクエックス」の称呼と、引用商標から生ずる「ビクトリアズシークレットピンク」及び「ビクトリアズシークレット」の称呼とは、構成音数の差、構成音の配列及び各音の相違等により、明らかに区別することができるものである。
そして、本件商標と引用商標とは、その構成に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有するものであり、また、本件商標が既成の親しまれた観念を有しないものである以上、観念上も両者を比較することはできない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 申立人の提出による証拠(甲第1号ないし第25号証)によれば、研究社1991年発行「英和商品名辞典」の「Victoria’s Secret ヴィクトリアズシークレット」の項に、「米国Ohiao州のランジェリー(女性用下着類)・ナイトウェアのメーカー、そのブランド、およびその専門店チェーン.」と記載されていること(甲第4号証)、我が国においてもインターネットの通信販売サイトにおいて「VICTORIA’S SECRET(ヴィクトリアズシークレット)」、「ヴィクトリアシークレットPINK」、「Victoria’s Secretビクトリアシークレット」等の表題の下に女性用下着類等の被服、化粧品、バッグ、履物が取引されていること(甲第5号ないし第9号証)、申立人は引用使用商標を使用した女性用下着類等の被服、化粧品、履物等が掲載されているカタログ(甲第10号証の別紙D)を作成し、2002年以降日本の顧客にも送付していること(甲第10号証3頁)、申立人の商品の日本国内での販売額は2004年の34万8千余ドルから2008年には102万4千余ドルであること(甲第10号証の別紙C)、「ヴィクトリアズシークレット本格上陸」等として申立人の商品が2008年9月及び10月に女性誌に紹介されたこと(甲第19号及び第20号証)、米国には900を超える申立人の店舗があり(甲第10号証3頁)、店舗の店頭には「VICTORIA’S SECRET」の看板が掲げられていること(甲第10号証の別紙E)、などが認められる。
しかしながら、上記通信販売サイトでは、商品の見出しに「VICTORIA’S SECRET」(ヴィクトリアシ−クレット)を掲げるものが殆どである。「PINK」又は「PINKコレクション」として掲載されているものが散見されるものの、それらの大部分は、常に「VICTORIA’S SECRET」(ヴィクトリアシ−クレット)、「ビクトリアシークレットPINK」又は「Victoria’s Secret PINK」の文字と共に掲載されており、「PINK」の文字が単独で表示されているものは見当たらない。
イ 以上からすると、「VICTORIA’S SECRET」の文字は、我が国においても、申立人の業務に係る商品、特に女性用下着類について使用する商標として、女性を中心に相当程度知られているものといえるが、「PINK」の文字自体は、申立人の業務に係る商品を表示する商標として取引者・需要者の間に広く認識されているものとは認められず、むしろ、商品の色彩を示すものとして理解し認識されているとみるのが自然である。
もとより、「PINK」の文字は、「ピンク色、桃色」を意味する平易な英語として我が国においても一般に広く親しまれているものであり、商品又は役務に関して色彩表示として使用されており、自他商品・役務の識別力の乏しいものであるから、永年の盛大な使用等により識別力を獲得し、他に使用する者がいないなどの格別の事情がない限り、商標としての機能を果たし得ないものである。
他に、「PINK」の文字が、申立人の業務に係る商品・役務を表示する商標として取引者・需要者の間に広く認識されていることを認めるに足る証拠はない。
ウ そして、本件商標と引用商標とが非類似の商標であることは上記(1)のとおりであり、引用商標と引用使用商標とは実質的に同一といえるものであるから、本件商標は、引用使用商標とも類似するところのない別異の商標というべきである。
エ かかる事情の下において、本件商標を申立商品役務について使用しても、これに接する取引者・需要者が引用使用商標ないしは申立人を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品・役務が申立人又は申立人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 申立人の提出に係る証拠によれば、本件商標権者の住所及び代表者は、「Vivica Style株式会社」(以下「Vivica社」という。)と同一であること(甲第13号及び第14号証)からすると、本件商標権者とVivica社は実質的に同一の事業者といえるものであり、Vivica社は、その店舗及びウェブサイトにおいて女性用下着類等を販売又は紹介しており、申立人の商品も取り扱い、申立人の商品について「ヴィヴィカ ジャパンが総販売輸入元となり、日本でも購入可能に!」、「Victoria’s Secret日本上陸!」、「世界中で人気のニューヨークブランド、ヴィクトリアズ・シークレットが日本初上陸!正規取扱店となるVivica Styleが代官山にオープン!」等と告知していることが認められる(甲第16号ないし第22号証)。
イ そして、この点に関し、申立人代理人からVivica社に宛てて不正競争法違反、商標法違反などを内容とする通知書が発せられ、Vivica社代理人から、Vivica社の取扱商品は申立人のagentである「American Fashion Brand社」から購入したものであること、「総販売輸入元」と表示したことは誤りであり謝罪すること、などを内容とする回答書が発せられたことが認められる(甲第23号及び第24号証)。
ウ かかる経緯からすれば、本件商標権者と実質的に同一の事業者といえるVivica社は、申立人との間に商品販売に関する契約等がないにも関わらず、申立人の商品を販売し、雑誌等に「ヴィヴィカジャパンが総販売輸入元」、「正規取扱店となるVivica Style」等と表示し、恰も我が国における「正規取扱店」であるかの如く、取引者、需要者に誤解を与えたものと認め得るものである。
しかしながら、本件商標権者の商取引における上記行為と、本件商標の登録との直接的な関連性を見いだすことはできないものであり、さらに、前述のとおり、本件商標と引用商標とは、類似するところのない別異のものであるから、本件商標を申立商品役務について使用しても、申立人の商品と混同を生ずるおそれはないものである。
また、例えば、本件商標権者が申立人の日本市場への参入を阻止したり、引用商標を不正に使用し、申立人に損害を与えたというような具体的事実は見当たらず、本件商標は、不正の利益を得る目的、他人である申立人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって使用するものとは認め難いものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。
(4)本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
商標法第4条第1項第7号については、同号の趣旨からすれば、当該商標の構成自体が矯激、卑猥、差別的な文字、図形である場合など、その商標を使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合、他の法律によって当該商標の使用等が禁止されている場合、当該商標ないしその使用が特定の国若しくはその国民を侮辱し又は一般に国際信義に反するものである場合がこの規定に該当することは明らかであるが、それ以外にも、特定の商標の使用者と一定の取引関係その他特別の関係にある者が、その関係を通じて知り得た相手方使用の当該商標を剽窃したと認めるべき事情があるなど、当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合も、この規定に該当すると解するのが相当である(知的財産高裁平成16年(行ケ)第7号、平成16年12月21日判決参照)。
これを本件についてみれば、本件商標は、その構成自体が矯激、卑猥、差別的な文字、図形からなるものではないし、その使用が他の法律等によって禁止されているものでもなく、特定の国民を侮辱したり国際信義に反するものでもない。
そして、前述のとおり、本件商標は、引用商標又は引用使用商標とは非類似の商標であり、本件商標の使用により申立人の商品と混同を生ずるものでもないことからすれば、本件商標が直ちに引用商標又は引用使用商標に化体した信用等を毀損させるものとはいえないし、たとえ本件商標権者が引用商標及び申立人の存在を知りながら本件商標を登録出願したものであるとしても、本件商標が引用商標を剽窃したものであることを窺わせるような事実はなく、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあるものともいえない。
また、本件商標権者が申立人の総販売輸入元であるとの誤った説明・表示をしたことのみをもって、社会公共の利益に反する行為であるとすることもできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、その指定商品及び指定役務中の申立商品役務について、商標法第4条第1項第7号、同第11号、同第15号及び同第19号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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