Trademark Appeal Case
素材名結合商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2009−16014(T2009−16014/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、「エラストマーライトガイド」の片仮名を標準文字で表してなり、第9類「電線及びケーブル,光ファイバーケーブル,誘導単位計量器,液面計,圧力計,業務用テレビゲーム機,スロットマシン,パチンコ機,光学機械機器,自動販売機」、第11類「電球類及び照明用機器,発光式標識,線状発光体,浴槽類,洗面台,シャワー器具」及び第12類「自動車の部品及び付属品,二輪自動車の部品及び付属品,自転車の部品及び付属品」を指定商品として、平成20年11月13日に登録出願されたものであるが、その指定商品については、原審おける同21年4月22日付け手続補正書により第9類「エラストマーからなる光ファイバーケーブル,エラストマーからなるライトガイドを使用した発光式標識」、第11類「エラストマーからなるライトガイドを使用した照明用機器 」及び第12類「エラストマーからなるライトガイドを使用した自動車の部品及び付属品,エラストマーからなるライトガイドを使用した二輪自動車の部品及び付属品,エラストマーからなるライトガイドを使用した自転車の部品及び付属品」と補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、本願指定商品を取り扱う業界においては、『エラストマー』及び『ライトガイド』の文字が、それぞれ『常温でゴム弾性を示す高分子物質一般』、又は、『照明用の光を伝送するもの』ほどの意味合いを表す語として広く使用されているから、本願商標は、『エラストマー』及び『ライトガイド』の語を結合した構成よりなるものと容易に理解されるものである。
そして、『ライトガイド』の素材としてエラストマー素材(ゴム等)が使用される場合があること(別掲(1)、(2)、(3)及び(4)を参照)。また、『ライトガイド』を取り扱う際は、例えば『ガラスライトガイド』『石英ライトガイド』『プラスティックライトガイド』のように、その素材名を冠して称することが商取引上普通に行われている実情がうかがわれる。(別掲(5)、(6)及び(7)を参照)。さらに、『ライトガイド』も、その素材名を冠した態様で称されている例が見受けられる(別掲(8)を参照)。
そうとすれば、本願商標構成中『エラストマー』の文字は、『ライトガイド』の素材を表すものと容易に理解され、本願商標は、全体として『エラストマー素材を使用したライトガイド』を想起させるというのが相当であるから、本願商標をその指定商品に使用するときは、単にその商品の品質を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号について
「商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠くものであることによるものと解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁参照。)。この趣旨に照らせば、本件審決時において、当該商標が指定商品の原材料又は品質を表すものと取引者、需要者に広く認識されている場合はもとより、将来を含め、取引者、需要者にその商品の原材料又は品質を表すものと認識される可能性があり、これを特定人に独占使用させることが公益上適当でないと判断されるときには、その商標は、同号に該当するものと解するのが相当である。」(平成17年6月9日判決[平成17年(行ケ)第10342号]、同旨判決、平成12年6月13日判決[平成11年(行ケ)第164号事件]、平成12年10月25日判決[平成12年(行ケ)第164号事件]、平成15年4月21日判決[平成14年(行ケ)第222号事件]、平成15年9月30日判決[平成14年(行ケ)第502号])
以上のことを踏まえて、本願商標の商標法第3条第1項第3号の該当性について判断する。
(1)エラストマーについて
本願商標は、前記第1のとおり、「エラストマーライトガイド」の片仮名を普通に用いられる方法で書してしてなるところ、その構成中の前半の「エラストマー」の文字は、「H.L.Fisher(1939)が常温付近で弾性の顕著な高分子物質に与えた名称で、物理的性質から高分子物質を分類する一方式である。これに対し塑性が顕著ならばプラストマーと呼ぶ。概して合成ゴムはエラストマーに、合成樹脂はプラストマーに分類されるが、同じ物質でも製造条件によってそのどちらにもなりうる場合がある。」(「岩波理化学辞典」第3版増補版 株式会社岩波書店 1985年2月15発行)等の意味を有する語であり、以下のように、光透過性、柔軟性のある物質であることをうかがい知ることができる。
ア 「携帯電話照光用ライトガイドフィルム」の見出しのもと、「3.3 操作部感触評価」の項において、「...このように、当社製LGF(Light Guide Film)のベースフィルムは、MD(Metal Dome)のクリップ感への影響を最小限にするため、高い柔軟性を有しながら、前述の光学特性、耐久性を有する特殊なエラストマである。...」、「7.むすび」の項において、「光透過性、耐久性、柔軟性に優れた特殊エラストマからなるベースフィルム...を開発した。」との記載がある(フジクラ技報(第117号2009年11月25日発行 株式会社フジクラ)。
イ 「知って得する素材・技術の話008 “裏方から表舞台へ”陽の目見始めた透明樹脂素材」の見出しのもと、「ウレタンゲルでフロアマットに挑戦」の項において、「エポキシ樹脂と同じく、これまでデザイン性を求められる商品にほとんど使われてこなかった透明素材にポリウレタンゲルがある。これはエラストマー...と呼ばれる柔らかい弾力性のある素材の一種で、...」の記載がある(「NIKKEI DESIGN」2004年2月 日経BP社発行)。
ウ 「知って得する素材・技術の話012 細部の質感を高める進化するエラストマーを使いこなせ!」の見出しのもと、「通常、エラストマーというと、ゴムのような弾性を持つ熱可塑性プラスチック(TPE:Thermo Plastic Elastomer)のことを指す。...最近は樹脂メーカー各社とも、柔らかなエラストマーの開発に余念がない。...シリコーンゴムの代替として、エラストマーの利用が拡大しているのだ。...もはやエラストマーは欠かせない素材だ。こうした細部に使われるエラストマーの機能や意匠性が最近、急速に高まってきている。」との記載がある(「NIKKEI DESIGN」2004年7月 日経BP社発行)。
(2)ライトガイドについて
本願商標の構成中の後半の「ライドガイド」の文字は、以下のように、光を伝送するものとして使用されていることをうかがい知ることができる。
ア 「ライドガイド」の見出しのもと、「ライトガイドは光ファイバ素線を多数本束ねてバンドル状にしたもの」との記載があり、また、「Keyword」の見出しのもと、「POF」の欄に「プラスチック光ファイバ」、「ライトガイド」の欄に「光ファイバ素線を多数束ねてバンドル状にしたもの」、「冷光照明」の欄に「熱線である赤外線を通さず可視光のみを伝搬する照明」との記載がある(「画像ラボ」2005.10 日本工業出版株式会社 35頁及び38頁)。
イ 「松尾産業株式会社」のウェブサイトにおいて、「ライドガイド・光源」の見出しのもと、「ライトガイドとは、光の伝送を目的とし、着色のない優れた分光透過性を持ったガラス光ファイバーを多数束ねたものです。各種光源(ハロゲン、メタルハライド、紫外光、赤外光)との組み合わせで 種々の照明が実現できます。」との記載がある。
(http://www.matsuo-sangyo.co.jp/recent-techno/jp/products/fiber-optical/light-guide.html)
ウ 「ALPS」のウェブサイトにおいて、「携帯電話向け電子部品」の見出しのもと、「携帯電話の中で活躍する電子部品」の項に、「ライトガイドとは、ポリカーボネートもしくはウレタン系素材でできた透明かつ、約0.1mm〜0.15mmほどの薄い膜です。その薄い膜の側面から光を入れると、光はその膜内を屈折を繰り返しながら進みます。そして、ライトガイドの表面に溝を彫ることで、膜内を進んだ光は上面に出てきて、私たちの目に、全体が光っているように見えるのです。」との記載がある。
(http://www.alps.com/j/about_alps/mobile/index.html)
また、「ライドガイド」には、別掲(5)ないし(8)のとおり、「ガラスライトガイド」、「石英ライトガイド」、「プラスチックライドガイド」及び「シリコンライトガイド」など様々な素材名を冠して称することが商取引上普通に行われている実情をうかがい知ることができる。
(3)まとめ
以上のことから、現在、エラストマーが、ライトガイドの材料として使用されていないとしても、プラスチック、シリコン等の材料がライドガイドに使用されており、常温でゴム弾性を示す高分子物質の総称として知られるエラストマーは、光透過性を有するものであることが一般に認識されているといい得るものであることを考慮すると、エラストマーを使用したライトガイドを製造することも十分考えられることから、本願商標は、将来的に取引者、需要者にその商品の品質であると認識される可能性があると認められることは明らかである。
そうとすれば、「エラストマーライトガイド」は、取引に際し必要適切な商品の品質表示であって、特定人による独占使用を認めるのは公益上適当でないというべきである。
してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用する場合には、これに接する取引者、需要者をして、「常温付近で弾性の顕著な高分子物質の総称であるエラストマーで光透過性の性質を有するものを使用した光を伝送するためのライトガイド」程の意味合いを容易に理解、認識するから、単に商品の品質を表示するものと理解するにとどまり、自他商品の識別標識として認識し得ないというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第3条第2項について
請求人は、「本願商標は、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものであるから、商標法第3条第2項の規定により商標登録を受けることができる。」旨主張する。
ところで、商標法第3条第2項の趣旨は、特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識として他人に使用されることなく永年独占排他的に継続使用した実績を有する場合には、当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に、当該商品の取引界において当該特定人の独占使用が事実上容認されている以上、他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益性の要請は薄いということができるから、当該商標の登録を認めようというものであり、その要件を具備するためには、ア 使用により自他商品識別力を有すること、イ 出願商標と使用商標の同一性が認められること、が必要であると解される(平成18年6月12日判決[平成18年(行ケ)10054号])。
そして、商標が使用により識別力を有するに至ったかどうかは、例えば、実際に使用している商標並びに商品、使用開始時期、使用期間、生産、証明若しくは譲渡の数量又は営業の規模(店舗数、営業地域売上高等)、広告宣伝の方法、回数及び内容等の事実を総合勘案して判断するものである。
そこで、上記観点から、請求人提出の平成21年4月23日付け手続補足書(提出物件(1)ないし提出物件(5))及び同21年9月1日付け手続補足書(提出物件(6)ないし提出物件(10))に基づいて、本願商標の商標法第3条第2項該当性について検討する。
(1)本願商標と使用商標の同一性及び使用された商品について
請求人が提出するゼネラルカタログ(提出物件(1)及び提出物件(9))によれば、「ライドガイド」の商品について、商品の写しとともに本願商標が表示されているのが確認できる。
しかし、前記第1のとおりの本願商標の指定商品は、「エラストマーライトガイド」を使用した「発光式標識,照明用器具,自動車の部品」等であり、いわば、エラストマーライトガイド材料を使用した製品であるのに対し、「ライドガイド」は光を伝送させるための商品であるから、同一の商品について本願商標を使用しているとはいい難いものである。
(2)本願商標の使用等について
ア 本願商標の使用時期についてみれば、請求人が提出するゼネラルカタログ(提出物件(1)によれば、「ライドガイド」について、最終頁に「2004.03.」の文字の記載がされていること、また、Tecnical Noteの写し(提出書類(2))によれば、「ライトガイド」について、その写しの右下隅に「改訂:2005.05.20.」の文字の記載がされていることから、本願商標は、少なくとも2004年3月ないし2005年5月時点において、「ライドガイド」について使用されていたことが推認できる。
イ 請求人は、商品「ライドガイド」の販売にあたり、本願商標の使用開始から今日に至るまでの長期間にわたり、ゼネラルカタログ(提出物件(1)及び提出物件(9))を2004年3月5,000部、2006年7月2,500部、2007年11月3,000部及び2009年3月2,000部の合計12,500部(提出書類(8))を発行し、ゼネラルカタログ(提出書類(1)及び提出物件(9))の裏表紙に記載されている請求人の営業所(東京都、埼玉県、三重県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県、福岡県)から全国の発光部品メーカーや代理店に頒布を行っている旨主張する。
しかしながら、請求人のゼネラルカタログについては、請求人の主張を裏付ける具体的な証拠の提出がなく、その頒布先や頒布地域等を具体的に確認することができない。
ウ 請求人は、「エラストマーライトガイド」について、Yahoo検索結果(提出物件(4))を提出しているが、この検索結果からは、本願商標を請求人が使用して、その商標がその業務に係る商品の自他商品識別標識として,取引者、需要者に広く知られていることを確認することができない。
エ 請求人は、商品「エラストマーライトガイドS」について、2006年10月6日、2008年11月5日、同19日、同21日、同28日、2009年1月7日、同年2月10日、同年3月4日、同19日、同31日付けの売上伝票兼出荷案内書(提出物件(5)及び提出物件(7))を提出しているが、本願商標の指定商品である「エラストマーライトガイド」を使用した「発光式標識,照明用器具,自動車の部品」等との関係が不明であるから、これらの商品の売上高を確認することはできない。
オ 請求人は、商品「エラストマーライトガイドS」について、製品仕様書(提出物件(6))を提出しているが、上記エ同様、本願商標の指定商品との関係が不明であるから、商品の販売先を確認することができない。
カ 請求人は、「エラストマーライトガイドS(散乱タイプ)技術資料」(提出物件(10))を提出しているが、この技術資料からでは、上記エ同様、本願商標の指定商品との関係が不明である。
(3)まとめ
以上、請求人が提出した各証拠を総合して判断すると、本願商標については、「ライドガイド」について約6年間商品カタログにおいて使用していることは認められるものの、本願商標が表示されている商品の使用地域が不明であること、また販売された商品における本願商標の使用態様及び本願商標の指定商品との同一性が確認できず、さらに、商品の生産数量又は営業の規模(店舗数、営業地域売上高等)なども不明であること、加えて、広告宣伝の方法、回数及び内容等が不明であることから、本願商標がその指定商品に使用をされた結果、取引者、需要者が、何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認めることはできないから、本願商標は、商標法第3条第2項に該当するものということができない。
したがって、この点についての請求人の主張も採用することができない。
3 その他の請求人の主張について
なお、請求人は、過去の登録例を挙げて本願商標も登録されるべきである旨を主張するが、それら過去の登録例は、指定商品の内容及び商標の具体的構成等において本願とは事案を異にするものであり、また、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるか否かは、当該商標の構成態様と指定商品とに基づいて、個別具体的に判断されるべきものであるから、請求人の上記主張は、採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同法第3条第2項の要件を具備しないものであるから、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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