結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2010−890012(T2010−890012/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第5219089号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(A)のとおりの構成からなり、平成20年7月25日に登録出願、第16類「接着性を有する付箋,低粘着剤付き付箋,粘着剤付き付箋,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,紙製包装用容器,荷札,紙類,文房具類,学用品(文房具に当たるものに限る。),印刷物」を指定商品として、同21年2月6日に登録査定、同年4月3日に設定登録されたものである。
請求人が引用する登録商標は、次の1ないし3に掲げるとおりである。
上記引用商標1ないし3は、いずれも現に有効に存続しているものであり、以下、これらを総称するときは単に「引用商標」という。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし10号証を提出している。
(1)本件商標と引用商標は、その後半部分が英語の代名詞である「IT」とハイフンとからなる点で共通しているほか、その前半部分が共にローマ字4文字からなり、称呼における音も共に3音からなる。
また、本件商標の「SITE」は、「場所、会場、位置させる」を意味する語であり(甲第5号証)、引用商標の「POST」は「持ち場、受け持ち地域、配置する」を意味する語である(甲第6号証)。したがって、両者はその意味合いを共通にしている。
このように、本件商標と引用商標とは共通点が多いものである。特に、「ーIT」なる構成は商標においては余り例のないものであり、引用商標の特長ともなっており、この点を共通にしている本件商標は、引用商標と共通している度合いが高いといえる。
これらの事情に鑑みれば、本件商標がその指定商品に使用された場合には、引用商標との関係で商品の出所の混同を生じるものといえる。したがって、本件商標は引用商標に類似するといえる。
(2)加えて、引用商標は本件商標の指定商品である「接着性を有する付箋、低粘着剤付き付箋、粘着剤付き付箋」の商標としては当該商品の代名詞となる程極めて著名なものである。引用商標の著名性は特許庁においても顕著な事実であると思われる。
参考までに、請求人は「POST−IT(ポストイット)」について言及したフリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」の打ち出し(甲第7号証)及び英和商品名辞典(甲第8号証)を提出する。この「ウィキベディア(Wikipedia)」の中では「POST−IT(ポストイット)」が付箋の代表となっている旨並びに1980年以降「POST−IT(ポストイット)」という商品名で世界中に広まり現在では100力国以上で販売されている旨の記述があり、このことから、引用商標が著名であることは明らかである。
また、「POST−IT 3M」をキーワードにインターネットを検索したところ、666,000件のホームページがヒットした(甲第9号証)。この数は請求人の「POST−IT」が著名であるのに十二分すぎるものであることは明らかである。無論インターネットの検索結果は現在のものであるが、上述した「1980年以降『POST−IT(ポストイット)』という商品名で世界中に広まり」という記述から、本件商標の出願後に急激に「請求人のPOST−IT」に関するホームページの数が増えたとは考え難い。むしろ、本件商標の出願前でも同じような数のホームページがヒットしたであろうことは、経験則上容易に推測できる。したがって、現時点で「POST−IT 3M」をキーワードにインターネットを検索した結果出てきた数は本件商標の出願前の引用商標の著名性を立証できるものである。
(3)商標に基づき商品を選択する際には、需要者はその頭の中に記憶された商標に多分に影響されるものである。常に、需要者は値段に変わりがなければ著名商標の商品を購入したいと希望しているものである。そのため、普通であれば間違わない商標であっても著名商標と共通する点が見出せるものは、著名商標であると誤認混同されるものである。
現実の取引において、引用商標「POST−IT(ポストイット)」を付した「接着性を有する付箋、低粘着剤付き付箋、粘着剤付き付箋」を購入したいと希望している需要者が、当該商品に使用された、引用商標の特長を備えかつ同じ文字数及び音数の本件商標に接した場合には、この「POST−IT(ポストイット)」が先入観念として強く働く結果、これに引きずられて本件商標を引用商標であると誤認混同することは必定である。
引用商標の著名性の故に、現実の取引において、本件商標が引用商標と誤認混同するおそれがある以上、本件商標は引用商標に類似するものとなる。
(4)以上詳述したことから明らかなように、本件商標は商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである。
本件商標の登録出願日(2008年7月25日)前より、引用商標は「接着性を有する付箋、低粘着剤付き付箋、粘着剤付き付箋」について著名なものであった。このことも特許庁においては顕著な事実であると思われる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定にも違反して登録されたものである。
さらに、引用商標は「接着性を有する付箋、低粘着剤付き付箋、粘着剤付き付箋」について著名なものであったことから、本件商標は、同法第4条第1項第15号の規定にも違反して登録されたものである。
本件商標は、引用商標の「POST」を同じ字数音数でかつ意味合いにおいて共通している「SITE」に置き換えたものにすぎない。この点で、本件商標は引用商標の顧客吸引力にただ乗りする意図、すなわち不正の目的をもって採択されたものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の規定にも違反して登録されたものである。
商標は採択行為であったとしても、商道徳に反して商標を採択されることは許されるものではない。上述したように、本件商標は明らかに、多大なる企業努力により著名なものとし、大いなる顧客吸引力を有する財産的価値あるものとなった引用商標にただ乗りし不正に利益を得ることを意図して採択されたものであって、商道徳に反するものであるといわざるを得ない。
現に、本件商標と社会通念上同一のものと認められる商標が、引用商標が使用されてきた「接着性を有する付箋、低粘着剤付き付箋、粘着剤付き付箋」に被請求人によって使用されている(甲第10号証)。「接着性を有する付箋、低粘着剤付き付箋、粘着剤付き付箋」に使用される商標として、敢えて著名商標と多くの点で共通性を有するものを採択したことは、この著名商標の顧客吸引力を利用して不当に利益を得る意図に基づいたものであることは明々白々である。
商標法第4条第1項第7号の「公の秩序」には、取引の秩序を維持する商標法の趣旨からして商道徳も含まれると解すべきである。
したがって、商道徳に反して採択登録された本件商標は、同法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものであるといえる。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号、同第19号及び同第7号の規定に違反して登録されたものであり、その登録は同法第46条第1号によって無効とされるべきである。
被請求人は、何ら答弁していない。
請求人の提出に係る証拠(甲第7号証ないし甲第9号証)によれば、請求人は最初の糊付き付箋製品といわれる「ポスト・イット(Post−it)」を開発し、1977年に試作品が完成、1980年には全米で発売されたこと、それ以降、同製品は世界中に広まり、2010年2月には100カ国以上で販売されていること、同製品は、低粘着性の付箋紙であって、下地の紙を傷めず何回も貼ったりはがしたりすることが可能なことを特徴とするが、より強い接着面を持つものや、色彩や大きさの異なるものなど、さまざまなバリエーションのものが販売されており、いずれにも引用商標と社会通念上同一の商標が使用されていること、などが認められる。
以上からすれば、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には既に、請求人の業務に係る商品「接着性を有する付箋、低粘着剤付き付箋、粘着剤付き付箋」を表示する商標として、この種商品の取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきである。
(1)本件商標は、別掲(A)のとおり、図形と文字との組合せからなるところ、該図形は親しまれた既成の観念を有する事物・事象を表したものとは認められず、また、該図形と文字とが常に不可分一体にのみ認識し把握されるべき格別の理由を見出し難いことから、読み易い「SITE−IT!」の文字部分を捉え、これより生ずると認められる「サイトイット」の称呼をもって取引に資されるものというべきである。そうすると、本件商標は、「サイトイット」の称呼を生ずるとみるのが自然である。
(2)他方、引用商標1は、「POST−IT」の文字のみからなるものであって、該構成文字に相応して「ポストイット」の称呼を生ずるものである。また、引用商標2及び3は、別掲(B)及び(C)のとおり、文字と図形の組合せからなるところ、本件商標と同様、該図形は親しまれた既成の観念を有する事物・事象を表したものとは認められず、また、該図形と文字とが常に不可分一体にのみ認識し把握されるべき格別の理由を見出し難いことから、読み易い「Post−it」の文字部分を捉え、これより生ずると認められる「ポストイット」の称呼をもって取引に資されるものというべきである。そうすると、引用商標は、いずれも「ポストイット」の称呼を生ずるとみるのが自然である。
(3)そこで、本件商標から生ずる「サイトイット」の称呼と引用商標から生ずる「ポストイット」の称呼とを対比すると、両者は、称呼の識別上重要な要素を占める語頭音を含む前半部分において「サイト」と「ポスト」とで相違しており、しかも相違する「サ」(sa)及び「イ」(i)の音と「ポ」(po)及び「ス」(su)の音とは、それぞれ子音及び母音を異にする異質の音であるうえ、「SITE」の語が「敷地、用地、サイト、ホームページ◆WWWなどで情報が置かれている場所」等を意味する英語(甲第5号証)として、「POST」又は「Post」の語が「郵便、郵便ポスト」を意味する英語(甲第6号証)として、いずれも広く親しまれていることから、上記「サイト」及び「ポスト」の音からこれらの語を連想、想起することが少なくないこととも相俟って、これらの差異が全体に及ぼす影響は大きく、それぞれを一連に称呼するときは、全体の音感、音調が異なり、明瞭に区別することができるものである。
(4)そして、本件商標と引用商標とは、上記のそれぞれの構成に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有するものであり、また、いずれも全体として親しまれた既成の観念を有する成語又は図形を表したものとは認められないことから、観念上、両者を比較すべくもない。なお付言するに、両商標の構成中の「SITE」の文字と「POST」(Post)の文字とが、上記のとおり、それぞれ別異の意味を有する語として親しまれていることを考慮すれば、両商標は、より一層区別できるものである。
(5)以上からすれば、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
前記2のとおり、本件商標と引用商標とは類似するものではないから、両商標の指定商品が類似するものであるとしても、また、引用商標が請求人の業務に係る商品を表示する商標として需要者の間に広く認識されているとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び第11号に該当するものではない。
本件商標は、前示のとおり、引用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異のものというべきものであり、他に両者間に混同を生ずるとみるべき格別の理由も見出し得ない。そして、上記引用商標の周知著名性を考慮したとしても、本件商標をその指定商品に使用した場合に、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品が請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
前記2のとおり、本件商標と引用商標とは類似するものでないから、引用商標が周知著名であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。
なお、請求人は、本件商標は引用商標の「POST」を「SITE」に置き換えたものにすぎず、不正の目的をもって採択されたものである旨主張しているが、本件商標は、その構成に照らし、引用商標とは類似するところのない別異の商標であり、引用商標を剽窃等したものであるとはいえないばかりでなく、他に不正の目的をもって採択したものであるとすべき具体的な主張、立証もされていないところであるから、請求人の主張は採用することができない。
本件商標は、別掲(A)のとおり、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような標章からなるものではないし、他の法律によってその使用が禁止されているものでもない。
また、前示のとおり、本件商標は、引用商標とは類似するところのない別異の商標であり、引用商標を剽窃等したものであるとはいえず、他に不正の目的をもって採択し出願したものであるとすべき事情等も認められないから、その出願経緯において社会的妥当性を欠くものがあったものともいえない。
その他、本件商標の採択・登録が、商道徳に反し公正な取引秩序を乱すおそれがあるとすべき理由や、国際信義に反するとすべき理由等も見出すことができない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とはいえないから、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第11号、同第15号及び同第19号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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