Trademark Appeal Case
品質・効能表示の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2009−18606(T2009−18606/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、「タマネギの力」の文字を標準文字で書してなり、第29類「玉ねぎを使用した食用油脂,玉ねぎを使用した加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・食用魚粉・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),玉ねぎを使用した冷凍野菜,玉ねぎを使用した加工野菜,玉ねぎを使用したカレー・シチュー又はスープのもと,玉ねぎを使用したお茶漬けのり,玉ねぎを使用したふりかけ,玉ねぎを主原料としてなる錠剤状・カプセル状・顆粒状・粒状・粉状・固体状・半固体状・液体状・ペースト状の加工食品」を指定商品として、平成20年9月17日に登録出願されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『タマネギの力』の文字を標準文字により表してなるところ、その構成中『タマネギ』の文字部分は、野菜の一種類名と認められ、『力』の文字部分は、『ききめ、効能』等の意味を有する語であることよりすれば、本願商標全体として『タマネギ(玉葱)の効能』程の意味合いが容易に認識されるものである。そして、本願指定商品を取り扱う食品業界においては、商品の主原料の栄養価や効能等をうたって、『○○の力』(○○のちから)と称することも一般に行われていることを考慮すると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者等は、該商品が『タマネギ(玉葱)の効能を利用した商品』であると認識するにとどまり、単に、商品の品質、効能を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 本願商標は、上記第1のとおり「タマネギの力」の文字を書してなるところ、その構成中、前半部の「タマネギ」の文字(語)は、「ユリ科の多年生作物、主要な野菜の一つ。」(「広辞苑第6版」)の意味を有し、「タマネギに含まれる硫化アリルは、消化を助け、ビタミンB1の吸収をよくする働きがある。」(小学館「食材図典生鮮食材篇」)と認められるものであって、かつ、別掲の「証拠調べ通知の内容」に示したインターネットのウェブページ及び後掲の書籍、新聞の記載事実によれば、「タマネギ」には、ポリフェノールの一種であるケルセチン等の有効成分が含まれていること、並びに、その成分が人の血糖値、中性脂肪値、コレステロール値を下げるなどの健康面やビタミンB1の吸収をよくするなどの栄養面に及ぼす作用・効能があることが世人一般に知られているということができるものである。
また、「力」の文字(語)は、「効力」を意味する語として一般に親しまれた文字(語)である(「大辞林第3版」)。
そうとすれば、本願商標は、全体として「タマネギの効力」程の意味合いが容易に認識されるものである。
2 そして、別掲の「証拠調べ通知の内容」の「第1 2」(1)ないし(4)、(6)及び(9)並びに「第1 3」等のとおり、「タマネギの力」に関するインターネットのウェブページに記載された事実によれば、本願指定商品を取り扱う食品業界において、「タマネギの力」の文字(語)とこれと称呼、観念を同じくする「玉ねぎの力」「玉ねぎのチカラ」「たまねぎのちから」等の文字(語)は、商品の品質、効能を表示するものとして普通に使用されているものということができる。
3 そうとすれば、「タマネギの力」の文字(語)からなる本願商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者・需要者は、その商品が「タマネギの効能を有する商品」であることを表示したものであると理解、認識するにとどまるというのが相当であって、単に商品の品質、効能を表示するにすぎないものといわざるを得ないから、本願商標は、自他商品の識別標識としては認識し得ないというべきである。
4 ところで、請求人は、「本願商標『タマネギの力』は、これをその指定商品に使用する場合には、これに接する取引者、需要者が『タマネギの特性を間接的に暗示する程度のもの』としか認識することができず、『タマネギの働き、効果を有する商品である』という商品の品質を表示したものと理解するに止まらず、自他商品の識別機能として認識し得るものである。」旨主張している。
しかしながら、本願商標は、「タマネギ」と「力」の文字を助詞の「の」で組み合わせた文字(語)と容易に認識されるものであって、これを構成する各単語の語義及び取引の実情を踏まえると、上記のとおり、「タマネギの効能を有する商品」の意を看取させる語として認識されるものであるから、請求人の上記主張はいずれも採用することができない。
さらに、請求人は、「○○の力」の文字を有する登録商標を引用して本願商標が登録要件を具有するものであると主張しているが、そもそも、商標の識別性の判断は,各商標につき、それぞれの構成態様や取引の実情等をも勘案し、個別具体的に判断されるべき性質のものであるばかりでなく、請求人の引用する登録例をもって本件の判断が拘束されるものでもないから、この点についても、請求人の主張は、採用することができない。
5 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
後掲
1 書籍における「玉ねぎ」等の記載事実
(1)「気になる血糖値をぐんぐん下げる大百科」(2006年11月10日株式会社主婦の友社第1刷発行)によれば、「玉ねぎ」の項には、「特有の辛み成分が血糖値を下げる/玉ねぎに糖尿病に対する効果があることは、昔から知られていました。・・・ところが、玉ねぎの血糖降下作用は、薬のようにむりやり血糖値を下げるものではなく、体に余分な糖があるときにだけ働くため、低血糖を起こしてしまう心配はありません。また、玉ねぎは血糖値を下げるだけでなく、動脈硬化の原因となる悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪を下げることもわかっています。」と記載されている。
(2)「おいしいクスリ食べもの栄養事典」(平成17年2月20日株式会社日本文芸社改訂新版第1刷発行)によれば、「活力を生みだすビタミンB1の吸収率を高めるアリシンを含む玉ねぎ」の項には、「主な効用/動脈硬化/高血圧/食欲不振/疲労回復/精神安定/不眠症」、「栄養と薬効/アリシンは、特有の辛みと香り、甘味や風味を料理につけるほか、薬効もある物質。最も重要な働きは、ビタミンB1の吸収を高めて、新陳代謝を促進し、体力アップ・疲労回復・集中力の低下・夏バテに有効に働く作用です。また、胃の消化液の分泌を助け、食欲を増進させる、発汗作用があるなどは、これまで知られていましたが、最近では、血液の固まりを溶かしたり、血液中の脂質の量を減らしたりする働きのあることがわかってきました。また、玉ねぎが高血圧に優れた効果があるといわれるのは、皮の黄色い色素・ケルセチン(クエルセチン)によるものです。」と記載されている。
(3)「ビタミン文庫/ガン、脳卒中、心臓病を防ぐ食材事典」(平成14年2月23日株式会社マキノ出版第1刷発行)によれば、「血糖値を自然に下げ中性脂肪値も改善するタマネギの効果を糖尿病患者で確認/文京第一医院院長斉藤嘉美」(94頁)の項には、「人数も検査項目も増やして治験した/タマネギには血糖値(血液中の糖分の量を示す値)を下げる働きがあることは、ウサギを使った実験などで、すでに証明されていました。しかし、実際には糖尿病の患者さんに玉ねぎを食べさせて、その効果を確認した報告はありませんでした。その効果を検討した結果は『続血液・血管が若返る本』(マキノ出版)でも報告しました。そこで、私は1996年に11名の糖尿病の患者さんに、タマネギの健康食品を飲んでもらったのです。私が用いたタマネギの健康食品とは、生のタマネギを濃縮乾燥した粒状のものです。」と記載されている。
(4)「アンチエイジング食材ベスト100」(2008年10月1日株式会社講談社第1刷発行)によれば、「たまねぎ」の項には、「にんにくの仲間、たまねぎは、強力な抗酸化作用を持ち、セルライト生成を阻止/たまねぎは血圧を正常に整え、血栓を予防します。抗がん性物質のケラスチンを大量に含み、炎症を抑えます。セレニウムを大量に含むので、免疫力を上げ、肝臓をきれいにし、日焼けからくるシワを防ぎます。また、お肌や爪、髪の毛などの再生のカギとなる、硫黄を含んでいます。」と記載されている。
(5)「イキイキ!食材図鑑」(2004年6月株式会社日本文芸社発行)によれば、「たまねぎ/玉葱」の項には、「たまねぎの薬効成分でもある特有の辛みとにおいは、硫化アリル、二硫化プロピルなどの硫化物によるものです。硫化物には免疫増強作用、抗酸化作用、抗ガン作用、コレステロール低下作用、血行をよくする作用などがあります。ガン、動脈硬化、冷え性など、さまざまな症状の予防や改善が期待できます。また、疲労回復効果のあるビタミンB1の体内での吸収や働きを高めます。そのほか、たまねぎの皮に含まれるケルセチンには、高血圧予防効果が認められています。甘みの成分の1つフラクトオリゴ糖は、腸内でビフィズス菌を増殖させ、腸内環境を保つのに役立ちます。」と記載されている。
(6)「おいしいサプリ−食材の相性クッキング−」(2006年5月5日テレビ朝日コンテンツ事業部第一刷発行)によれば、「冷えないからだにするアリシン/冬だけでなく、夏もからだが冷えるという人が増えています。その原因は毛細血管の血行が悪いことにあります。冷えを解消するためには、毛細血管の血行をよくし、体温を上げれば、からだを芯から温めることになります。アリシンには、毛細血管の血行をよくする働きがあります。」、そして「アリシンを多く含む主な食品/にんにく(茎含む)/長ねぎ/玉ねぎ/にら/紫玉ねぎ」と記載されている。
2 新聞における「たまねぎ」等の記載事実
(1)「【始まりはいつも関西】たまねぎ 泉州産、日本の食生活を牽引」の見出しの下、「最近の流行に『デトックス』があります。トックスは毒、すなわち、デトックスは体内の有害物質を排出することです。毒と言ってもハブやマムシに噛まれた毒ではありませんので、『解毒』は言い過ぎでしょう。ここでの有害物質は水銀やヒ素、鉛など、おもに食品から摂取されたものですので、体内の蓄積量はごく微量。通常、汗や尿から排出されますが、エアコンの効いた生活や運動不足などで排出量が減少し、蓄積されるようになってきているようです。そして、その排出にはサプリを含め、手軽な食品が使われることが多いのが今日の特徴といえましょう。血液をさらさらにするタマネギもそのひとつ。タマネギに含まれる『ケルセチン』に水銀排出効果があるそうです。」と記載されている。
(2006.03.09付け産経新聞 大阪夕刊 7頁)
(2)「<お知らせ>週刊朝日増刊『健康食2005』」の見出しの下、「大好評増刊の第7弾は、病気予防とアンチエイジングの特集号の保存版です。主な内容は、米、温州ミカン、バナナ、タマネギ、寒天など身近な食品の意外な効能▽日本初の食事バランスガイド活用法▽若返りや老化防止、肥満解消、美白によい食事とサプリメント▽美肌のために欠かせない成分▽働く女性のダイエット体験ルポ▽糖尿病性腎症、疲労、食物アレルギー対策など。」と記載されている。
(2005.12.10付け朝日新聞 東京朝刊 37頁)
(3)「[論説]野菜の粉末利用 簡単な“天然サプリ”に」の見出しの下、「ビタミン類などの栄養成分や、特定の機能性成分を手軽に摂取できる野菜粉末(パウダー)の利用が広がってきた。食品関連業界は、差別化を狙って粉末商品や製造技術を相次ぎ登場させている。野菜の健康効果を多くの人々に伝え、消費拡大にも結びつく。農家の起業活動の中でも、積極的に活用したい。野菜の粉末利用は、野菜ジュースが食生活に浸透した流れを受け継ぐ。『1日の必要量の野菜を手軽にとれる』などの訴求で、多種多様なジュースが出回る。カロテンやアントシアニンなどの機能性成分に注目し、複数の野菜を調製する商品は多い。野菜粉末も同様に、全般的な健康効果のほか、疾病予防の役割を担う機能性成分の含有量の多さをうたう。飲料に溶かして飲むだけでなく、めん類やパン、菓子類、各種料理に添加して使えるという多様さと簡便性を訴える。・・・成分は加工時に流出せず、小腸で吸収される利点を強調する。特に揮発性成分が多いニンニクやタマネギ、ネギなどで効果的だ。粉末は刺激臭がなく、ほんのり甘みがある。無理なく成分を摂取でき、介護食などでの利用が考えられている。・・・簡単な一工夫で食生活を改善でき、野菜の未利用資源の活用にも結びつく粉末利用には大きな可能性がある。成分を濃縮し、機能性をより高めた粉末化であれば、天然素材原料の栄養補助食品(サプリメント)にもなるだろう。」と記載されている。
(2007.12.04付け日本農業新聞 2頁)
(4)「[経営と技術]期待の新品種(9)タマネギ・月交22号/健康食品市場向き」の見出しの下、「◇育成の目的と経過/野菜の粗生産額は、1993年をピークに緩やかに減少しており、最近はピーク時の70%に当たる300億円程度となっている。一方で、消費者の健康志向の高まりを受け、サプリメントや特定機能性補助食品など『健康志向食品』の市場は拡大を続け、2010年には3.2兆円に達するとされている。サプリメントとして利用されている成分以外にも、野菜類には機能性成分が多く含まれていることから、こうした情報を効果的に宣伝することで、健康志向食品市場の一部を、野菜類の消費に取り込むことができれば、粗生産額の減少を抑えることが可能と考えられる。このような背景から、北海道農研センターでは、健康志向食品利用者が関心を持ちやすい、ポリフェノールの一種であるケルセチンに注目して、タマネギの品種改良に取り組み、10年の期間を経て、ケルセチン含有量の多いタマネギ『月交22号』を育成した。」と記載されている。
(2006.06.15付け日本農業新聞 34頁)
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