結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第35307号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第3132112号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、第42類「調剤」を指定役務として、平成4年9月30日登録出願、同8年3月29日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第284号証を提出した。
また、被請求人は不正の目的をもって、請求人の商標を盗用したものである。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号にも違反して登録されたものである。
さらに、引用パンダ図形は調剤にも使用されていたので、本件商標は商標法第4条第1項第10号にも違反して登録されたものである。
(1)請求人は、中国から様々な漢方薬を輸入し販売しているが、昭和47年に中国から上野動物園に「パンダ」が送られ、大変な人気を博していることに鑑み、同社が取り扱う中国産の漢方薬のハウスマーク商標として、多少漫画化されたパンダを採択した(甲第85号証;薬業時報昭和48年3月8日等を参照)。
(2)その後、請求人は、企業イメージ及び商品イメージを高めるためのハウスークとして、キャラクター化した「パンダ」の採用を決定し、著名な漫画家であった故手塚治虫氏が主宰する虫プロにその制作を依頼し、漫画化された立ち姿の愛くるしいパンダの引用パンダ図形が制作された。
(3)請求人は、引用パンダ図形を、遅くとも、昭和49年頃より(甲第40号証;読売新聞昭和49年2月4日等を参照)、同人のハウスマークとして、その取扱いに係る様々な漢方薬に使用するとともに、これら商品の広告にも使用されて今日に至っている。
(1)請求人が行なった広告は業界紙及び全国紙、各地方紙、テレビコマーシャル、パンフレット、薬局における店頭広告等多岐に渡る(甲第2号証ないし甲第281号証)。また、現在も、引用パンダ図形は、同人のハウスマークとしてその取扱に係る漢方薬に使用されている(甲第282号証)。
(2)昭和47年の新聞広告にはパンダの図形がないが、請求人が漢方薬を取り扱っていることが、薬局等の需要者の間に浸透したことが立証できる。また、昭和48年の新聞広告には引用パンダ図形ではなく、写実的に描かれたパンダが、ないしは、多少漫画化されたパンダが掲載されていたが、このようなパンダの広告により、請求人の漢方薬には「パンダ」の商標が使用されるものである旨の認識が引用パンダ図形の使用前に需要者間に浸透したことが立証できる。
(3)請求人の漢方薬は、折からの、漢方薬ブームの下で需要者の注目を集め、その結果、引用パンダ図形は、次第に需要者の間に浸透し、本件商標が出願された平成4年当時には、請求人のハウスマークとして薬剤関係者の間では著名なものとなっていたといえる。
これまで述べてきたこと及び提出した証拠方法から明らかなように、引用パンダ図形は、請求人のハウスマークとして使用されてきたものであり、取引の経験則上、ハウスマークは企業が活動を行なう限り永続して使用されるものであることからすると、引用パンダ図形が本件商標の出願前18年以上前から永続的に使用されてきたことは疑いようもない。
(1)本件商標の指定役務である「調剤」は、専ら薬剤師の専権事項であり、調剤は薬局においてのみ調剤することが許されている(薬剤師法)。
一方、漢方薬を含む医薬品は薬局でなければ販売できず、薬局として許可を受けるには、必要な数の薬剤師を置かなければならない(薬事法)。
このように、漢方薬と調剤とは共に専ら薬剤師が取り扱うものである。また、現実取引においても、調剤を行なう薬局において漢方薬等の医薬品が販売されていることが多い。
(2)請求人は古くから直営の薬局の「イスクラ薬局」を有する(甲第2号証ないし甲第第70号証等参照)とともに、請求人の漢方薬を取り扱う薬局が参加する中医薬研究会を主催している(甲第268号証;中医薬研究会々員資料等参照)等の如く本件商標の指定役務である調剤と密接な関係を有してきている。そして、これら薬局の業務や中医薬研究会に関しても引用パンダ図形を使用している。また、請求人は昭和56年頃より、同社の漢方薬を取り扱う薬局に引用パンダ図形が入った電飾看板を設置して(甲第271号証;企画書)、その薬局が請求人の漢方薬を取り扱っていることを需要者に強く印象付けようとしている。
(3)これらの事情に鑑みると、引用パンダ図形と表情等の微細な部分も含めて寸分違わない本件商標がその調剤に使用された場合には、その役務が請求人ないしは請求人と人的及び資本的に関係のある者の業務に係るものとその出所の混同を生じるは必定である。
(1)引用パンダ図形は、上述したように著名な漫画家の制作に係るものであり、本件商標の出願前約18年前以上から請求人が自社のハウスマークとして継続的に大々的に使用し、新聞、テレビ等で宣伝してきた故に薬剤の分野では著名なものとなっている。その結果、引用パンダ図形は、請求人の業務上の信用が化体し、大きな顧客吸引力を有するものであり、その財産的価値は計り知れないものがある。
一方、本件商標は、引用パンダ図形とその構成上寸分違わないものであって、このようなユニークな漫画化された商標がたまたま採用されたとは到底考えられない。特に、調剤を提供する被請求人は、「薬局」を営んでいる薬剤関係の者であることは明らかであるから、この業界紙等における広告及び漢方薬の包装に使用されてきた引用パンダ図形の存在を充分知り得る立場にあったといえる。
以上のことからして、本件商標は、引用パンダ図形の顧客吸引力にただ乗りせんとする意図の下に盗用されて採択されたものと思われる。
(2)商標の採択は本来自由であるが、そこには当然商業道徳による制約が存在する。引用パンダ図形のような著名商標はその顧客吸引力が大きく財産的価値のある商標にただ乗りせんをとする意図の下で、該商標を盗用して自己の商標として採択することは商業道徳に反するものであり、このような行為は、商標法の趣旨からすれば、競業秩序に反することは明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号にも違反して登録されたものである。
上述したように、請求人は遅くとも昭和47年頃にはすでに直営の薬局の「イスクラ薬局」を有していた。そして、引用パンダ図形がハウスマークであることから、この商標を採択した後は同薬局における調剤に関しても、当該商標が継続的に使用されてきたことは明らかであり、引用パンダ図形は平成4年頃には請求人の直営の薬局が行なう調剤の商標としても周知、著名なものとなっていたといえる。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号にも違反したものである。
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
請求人は、引用する商標を「パンダの図形」であるとし、甲第2号証ないし甲第282号証を示しているが、これらの証拠中のパンダの図形は30態様になっている(乙第1号証)。
上記の如く、請求人は、様々な態様で引用パンダ図形を使用していたこと、また使用する目的についても「中国産の漢方薬のマスコット」、「企業イメージを高めるため」、「商品イメージを高めるため」、「ハウスマークとして」、「直営薬局の業務を示すものとして」、「中医薬研究会会員の業務を示すものとして」など様々であり、請求人がいう「引用商標」というのは、未登録のまま、請求人が様々な意味と目的のために使用していた様々な態様の引用パンダ図形の総称を意味しているにすぎない。
(1)請求人の引用パンダ図形中の一部に本件商標と同一性のあるものが含まれているが、商標の同一性は、同一の標章を同一の商品または役務に使用する場合にのみいえることである。本件商標は、役務「調剤」に使用するものであり、引用パンダ図形は、商品「薬剤」に使用するものであるから、基本的に異なるものであり、経験則では両者は互いに非類似として取り扱われている。
したがって、請求人の主張は、指定商品や指定役務を無視した誤った主張である。
(2)請求人は、引用パンダ図形が「薬剤」について著名なものであったと主張するが、特許庁が、現在、日本における周知、著名商標と認められるものを発表している中には存在しない。
(3)請求人は、引用パンダ図形を昭和47年から使用し、著名となっていると主張し、甲第2号証ないし甲第281号証提出しているが、その証拠中には引用パンダ図形が使用されていないものも多く、使用されていても、何時、何処で、どれくらい、どのように使用したか不明な資料が多く、これらは、証拠能力のない資料といわざるを得ない。
また、当該証拠資料は、ア.引用パンダ図形が30態様も記載されていて著名になっている商標が特定できない。イ.その使用態様は、商品「薬剤」の商標としての使用もあるが、中国産の漢方薬のイメージキャラクターとして、薬局のイメージキャラクターとして、会社のイメージキャラクターとして、PR効率をあげるためのペットとして、あるいは中医薬研究会会員の証として、多様な目的で使用しており、請求人が引用パンダ図形を商標として使用したのは、極く一部である。ウ.上記のように複数の異なるパンダの図形を、統一性のない多様な目的や機能のために無原則に使用していたので、特定のパンダの図形に対し顧客吸引力のあるグッドウィルが形成される余地はなく、著名な商標にはなり得ない。エ.請求人は、パンダの図形は、あたかも創作物であり、それには著作権があり、請求人が使用権を有しているかの如き主張をしているが、証拠中には具体的事実関係については何も説明されていない。
このように、当該証拠を客観的に精査すれば、請求人の「引用商標は薬剤について著名なものであった」との主張は、事実を無視したものである。
(4)被請求人の調査によれば、アース製薬株式会社は、「パンダ」の文字を書し、「薬剤」を指定商品とする登録第1527434号を所有していた(存続期間満了により平成4年7月30日権利消滅)が、請求人が使用権者として登録された記録はなく(乙第2号証)、請求人が引用パンダ図形を薬剤について長年使用してきた行為は、上記登録商標の存続期間中商標権侵害を続けてきたことを示している。
また、請求人は、乙第3号証の1〜8に示す商標を登録出願した事実があるが、いずれも本件商標が登録になった後のことであり、請求人は、引用パンダ図形について、平成9年8月頃までは、実質的に商標法による法的保護をうけようとせず、商標管理してこなかったことを示している。
このような違法行為を含む多様な引用パンダ図形の使用事実をもって、適法な財産的価値が生じる余地はなく、周知、著名になったと認められるものではないから、請求人の主張は不当なものといわざるを得ない。
(5)以上のように、引用パンダ図形は、本件商標と同一でなく、著名商標でもない。両者は、その指定商品と指定役務もまるで相違している。
したがって、本件商標を調剤に使用しても未登録で薬剤にしか使用していない引用商標とは、出所の混同を生じることはないものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
(1)前述したとおり、30種類もの引用パンダ図形すべてについて、どのようにして制作され、商標として採択されたかは、被請求人は知るよしもない。
(2)引用パンダ図形が請求人のハウスマークとして盛大に使用してきた証拠はない。
(3)引用パンダ図形は、商標登録されていない未登録状態での使用であり、その間の使用は登録第1527434号商標の権利侵害行為であった。
このような不正な使用によっては、引用パンダ図形が著名商標になっていることはありえない。この事実は、特許庁でも、引用パンダ図形を著名商標と認定してはいないことからも明らかである。
(4)被請求人は、請求人の引用パンダ図形の一部が、薬剤の一部に使用していたことは知っているが、これを調剤について盛大に使用している事実は知らないし、本件商標を出願する当時、薬剤と非類似の調剤について登録していないことを確認していた。そして、被請求人は、役務商標として既存の種々な「パンダの図形」の中から選定、採択して、これを適法に出願し、審査を受け、登録を受けた上で、正当な権利行使として使用しているのである。
請求人は、本件商標が、引用パンダ図形の一部図形と似ているため、盗用呼ばわりしているが、商標は、必ずしも創作性は必要条件ではなく、既存の言葉や図形の中から選定し採択してもよいものである。そのうえ、出願当時、被請求人は、請求人の使用する複数のパンダの図形は、親しみやすくして、企業イメージを高め、宣伝の効率を高めるための小道具として使用するペット表示であって、商標であるとの認識はなかった。そして、被請求人は、調剤については他人の先登録がなかたったので、全く善意にサービスマークとして採択し、登録したものである。
したがって、このような被請求人の商標の採択、出願、登録といった行為は、正当な競争行為であり、何ら違法性はないものである。
請求人は、引用パンダ図形は調剤についても使用され周知、著名になっていたと主張するが、そのようなサービスマークとしての使用の事実を立証する証拠は一切示されていない。
さらに、特許庁が発表した、日本における周知、著名商標中には、引用パンダ図形は含まれていない。
したがって、本件商標は、調剤についてのサービスマークとして周知、著名な商標とはなっていないので、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものではない。
本件商標は、別掲(1)のとおり、漫画化されたパンダの図形よりなるものと認められるところ、該パンダは、頭部を大きく描き、その頭部をやや左に傾け、笑みを浮かべ、後肢で立っているところを表現したものと認められる。
請求の理由及び甲各号証を総合すれば、請求人は、1960年(昭和35年)に設立され、1963年(昭和38年)より中国で製造された「漢方薬」の輸入、販売を開始した。また、請求人は、1967年に開設した請求人直営の「イスクラ薬局」とともに、同人の取扱いに係る上記「漢方薬」について、全国紙、業界紙等に昭和48年頃から、少なくとも平成6年まで新聞、雑誌等に宣伝広告していたことが認められる。そして、請求人と「イスクラ薬局」は、実質的に同一の組織と認め得るところである。
(1)請求の理由の全趣旨によれば、請求人がその業務に係る「漢方薬」ついて使用し、この種商品の取引者、需要者に広く認識されているとする商標は、昭和49年2月4日付読売新聞(甲第40号証)にした広告に表示されている「パンダの図形」と認められるところ、甲第40号証には、その右下の縦長長方形の枠内に「中国のくすり」、「輸入元イスクラ産業」などの文字とともに、右上に別掲(2)に示す漫画化されたパンダの図形及び花を付けた植物の図形が描かれているものである。
また、同号証の左下の縦長長方形の枠内には、「漢方のイスクラ薬局」、「中国のくすり輸入元イスクラ産業直営」などの文字とともに、左上に別掲(3)に示す漫画化されたパンダの図形及び花を付けた植物の図形が描かれているものである。
そして、別掲(2)で示した図形と別掲(3)で示した図形は、左右対称であること、パンダの図形部分は、植物の図形部分に比べて極めて大きく描かれ、看者の注意を強く引くものであること、該パンダの図形部分は、頭部を大きく描き、その頭部をやや右(一方は左)に傾け、笑みを浮かべ、後肢で立っているところを表現したものであることが認められる。(以下、別掲(2)及び別掲(3)の図形をまとめて「引用A商標」という。)。
(2)甲各号証には、上記引用A商標のほかに、パンダの写実的図形(甲第85、105〜111、122、124〜129号証)、「パンダセール」、もしくは「中国から来ました」の文字を結合した図案化されたパンダの図形(甲第4〜9、80、123号証)、引用A商標から花を付けた植物の図形部分を除いた図形(以下、「引用B商標」という。)、ありふれた円輪郭内に引用B商標を描いた図形(以下、「引用C商標」という。)等のパンダの図形が使用されていることが認められる。
(3)ところで、請求の理由(引用商標の使用の経緯)によれば、請求人は、同人のハウスマークとして甲第85号証に示すパンダの写実的図形を採用し、昭和49年頃から、引用A商標を使用していたと述べているので、この点について検討すると、
ア 甲第4〜9、80、123号証によれば、請求人及び「イスクラ薬局」は、昭和48年1月から同年3月頃にかけて、「パンダセール」、もしくは「中国から来ました」の文字を結合した図案化されたパンダの図形を表示し、その取扱いに係る「漢方薬」について新聞広告していたことが認められる。
イ 甲第85、105〜111、122、124〜129号証によれば、請求人は、昭和48年3月頃から同年7月頃にかけて、パンダの写実的図形を「漢方薬」について使用し、新聞広告していたことが認められる。
ウ 甲第40〜76、94〜100、114〜119、132〜141号証によれば、請求人及び「イスクラ薬局」は、昭和49年2月から同50年7月頃にかけて引用A商標を「漢方薬」について使用していたことが認められる。
エ 甲第142〜185、189号証によれば、請求人は、昭和55年12月頃、引用B商標を「漢方薬」について使用していたことが認められる。
オ 甲第275、276、277、282号証を総合すれば、請求人は、中国の京劇女優である高嵐(カオラン)を、同人の取扱いに係る漢方薬(風邪薬)のテレビコマーシャルに出演させ、これが昭和56年3月頃放映されたこと、京劇女優である高嵐のテレビコマーシャル出演のための来日は、当時日本において、パンダの上野動物園来園等もあり、中国ブームであったことも加えて、中国の女優が初めて日本のテレビコマーシャルに出演するものとして種々の新聞、雑誌で取り上げられたこと、上記テレビコマーシャルには引用B商標に酷似するパンダの図形もその一部に使用されたこと、請求人の取扱いに係る上記漢方薬(風邪薬)の新聞紙上等への宣伝広告の版下には、「高嵐(カオラン)の日本探訪」と題した記事中に、漢方薬とともに引用B商標及び引用C商標が表示されていること、平成3年1月1日以降作成したものと認められる薬剤の効能書き(請求人の電話番号の3桁部分が4桁に変更されている。)には、引用B商標が表示されていることなどが認められる。
(4)前記(1)ないし(3)によれば、請求人は、昭和48年頃までは、パンダの写実的図形などを使用していたが、昭和49年頃から引用A商標の使用を開始し、その後、引用B商標もしくは引用C商標を使用したものと認められるところ、引用AないしC商標は、頭部を大きく描き、その頭部をやや右、もしくは左に傾け、笑みを浮かべ、後肢で立っているパンダの図形を要部とするものであるから、社会通念上同一のものと認められる。
したがって、請求人が引用する商標は、引用AないしC商標に特定されるといわなければならない。
その他に見られるパンダの図形(甲第274号証;乙第1号証中の図5〜11)は、引用AないしC商標のシリーズものとしての態様と認められる。
(5)請求人及び「イスクラ薬局」が「漢方薬」を取り扱う業者であることは、前記のとおり、昭和48年頃から、少なくとも平成6年まで全国紙、業界紙、業界誌、テレビ等を通じて宣伝広告した結果、この種商品の取引者、需要者に広く知られていたと認めることができる。
そして、昭和49年頃より請求人及び「イスクラ薬局」が使用した引用A商標、及びその後の使用に係る引用B、C商標は、「イスクラ産業(株)」、あるいは「イスクラ薬局」の文字、及び請求人らの取扱いに係る「漢方薬」の名称とともに使用されていることが認められ、上記各引用商標は、請求人らの取扱いに係る「漢方薬」を表示するためのものとして、この種商品の取引者、需要者によく知られていたと認め得るところである。
(1)本件商標は、前記したとおり、頭部を大きく描き、その頭部をやや左に傾け、笑みを浮かべ、後肢で立っているパンダの図形よりなるものである。
(2)各引用商標は、前記したとおり、頭部を大きく描き、その頭部をやや右、もしくは左に傾け、笑みを浮かべ、後肢で立っているパンダの図形を要部とするものである。
(3)してみると、本件商標と各引用商標は、頭部の傾く方向に差異を有するものがあるとしても、外観上極めて近似する商標であることは明らかである。
(1)本件商標は、前記したとおり、「調剤」を指定役務とするものである。
ところで、調剤は、「薬を調合すること」(岩波書店発行「広辞苑第5版」)であり、薬剤師法によれば、「薬剤師は、調剤、医薬品の供給その他薬事衛生をつかさど」り(1条)、「薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはなら」ず(19条)、かつ、「薬剤師は、薬局以外の場所で、販売又は授与の目的で調剤してはならない。(ただし書きあり。)」(22条)とされている。
一方、薬事法でいう「薬局」とは、「薬剤師が販売又は授与の目的で調剤を行う場所」(2条5項)であり、薬局の開設の基準の一つに、「薬局において薬事に関する実務に従事する薬剤師が厚生省令で定める員数に達しないとき」は許可が与えられないことが規定されている(6条)。
そして、各引用商標は、前記したとおり、「薬剤」の範疇に含まれる「漢方薬」について使用されるものであり、該商品は、薬局で販売されている場合が多いことは顕著な事実である。
(2)上記事実よりすると、本件商標の指定役務である「調剤」と各引用商標が使用される「漢方薬」は、薬局という同一の場所において、薬剤師により扱われる場合が多いものといわざるを得ず、前記認定のとおり、本件商標と各引用商標は、外観上極めて近似する商標であり、各引用商標が「薬剤」の分野において、その取引者、需要者に知られていることよりすれば、本件商標をその指定役務について使用した場合は、これに接する取引者、需要者は、該商品が請求人、もしくはこれと何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。
被請求人は、引用商標は、その態様及び使用目的が多様であり、未登録商標であるから著名商標とはなり得ない旨主張し、さらに、引用商標は特許庁が発表した著名、周知商標に入っていないから、著名商標ではない旨主張する。
しかしながら、請求人が引用する商標は、前記認定のとおりであり、各引用商標が商品「漢方薬」について使用され、自他商品の識別標識として機能していることは、甲各号証を総合して明らかでる。
また、商標が登録されているか否かにかかわらず、周知、著名商標が存在することは、商取引の実際に照らし明らかであり、商標法においても、例えば、第32条において、未登録周知商標の保護を規定しているところであるから、登録商標でないことをもって周知、著名商標でないとする被請求人の主張は理由がない。
さらに、当該商標が周知、著名であるか否かは、その商標が使用されている取引の実情等に照らし、個別具体的に検討すべきであって、特許庁が発表した周知、著名商標に入っていないことと商標法第4条第1項第15号の該当性判断としての周知、著名性とは必ずしも一致するものではないから、特許庁が発表した周知、著名商標に入っていないことが法第4条第1項第15号の該当性判断の前提となる周知、著名性を欠くということにはならない。したがって、この点に関する被請求人の主張も理由がない。
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とする。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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