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Trademark Appeal Case

非満水電磁の記述性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第35624号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第4138080号の指定商品中「測定機械器具」についての登録を無効とする。
その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4138080号に係る商標(以下「本件商標」という。)は、「非満水電磁」の漢字を横書きしてなり、平成8年11月29日登録出願、第9類「測定機械器具、電気通信機械器具」を指定商品として、同10年4月24日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

1 請求の趣旨

「本件商標の登録はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決

2 請求の理由

(1)本件商標と指定商品との関係について

本件商標は、「非満水電磁」の漢字よりなるところ、その指定商品中「電磁流量計」との関係で識別力を欠くものである。

「電磁流量計」とは、配管内の流量をファラデーの電磁誘導の法則を応用して測定するものであるが、いままでの電磁流量計では、配管内が満水にして水位が変化しない条件でしか測定できなかった。

しかし、最近では、水位が様々に変化する非満水状態でも流量を正確に測定できる電磁流量計が実用化されるようになった。このことから、従来の「満水」状態でのみ測定可能であった電磁流量計に対し、「非満水」状態でも測定可能となった最近の電磁流量計とを区別して称呼する必要性が生じ、必然的に生じた称呼が「非満水電磁流量計」あるいは「非満水用電磁流量計」である。

これは従来タイプに比較し、「非満水」であっても測定可能であることを示す最も端的な言葉である上に、もともと業界にて「非満水電磁流量計」の語が使用されていたからである。

(2)「非満水電磁」の顕著性について

以上(1)に述べた理由及び証拠から、「満水」、「非満水」の語は、電磁流量計の機能の説明に関連して本件商標が出願(平成8年11月29日)される以前から業界にて一般に用いられてきた用語であり、また「非満水電磁流量計」そのものも、「非満水」状態での水量を測定できる「電磁流量計」を指すものとして、本件商標出願前より業界内で認識され、使用されてきた語であることが分かる(甲第5号証)。ただ、「非満水電磁流量計」の実用化が難しかったため、市場に出回っていた商品の殆どが「満水」状態における「電磁流量計」だったという事情があるに過ぎない。

しかし、今後、より高い実効機能性を備えた「非満水」状態での電磁流量計が出現してくれば、いずれも、従来タイプとの比較上「非満水電磁流量計」として認識され、取引上も用いられることは明らかである。甲第3号証、同第4号証等はその代表的使用例を示すものである。

(3)商標法第3条第1項第3号違反について

本件商標は「非満水電磁」の語からなるものであるが、これは本来「非満水電磁流量計」として一体として称呼されるべき商品名から「流量計」の部分のみを故意に削除したものに過ぎない。しかし、上述したように「電磁流量計」の分野においては「満水」、「非満水」の語は、電磁流量計の機能説明上、あるいは、そのタイプを仕分ける必要性から用いられる不可欠の業界用語である。したがって、「非満水電磁」といっても電磁流量計の分野では「非満水状態での流量測定が可能な電磁流量計」を指す言葉としてしか理解できないものである。

特に、本件物品は大衆物品とは異なり、専門業者間でのみ取引される物品であり、かかる物品の取引者、需要者にとって「非満水電磁」と言えば直ちに「非満水電磁流量計」を指すものとしてしか認識し得ないものである。

よって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものである。

(4)商標法第4条第1項第16号違反について

(3)で述べたように、電磁流量計の分野において「非満水電磁」と言えば取引者、需要者にとって直ちに「非満水電磁流量計」を想定するものであってそれ以外に想定するものは、ない。したがって、かかる商標が上記以外の「測定機械器具」やその他の商品に使用されるとすれば取引者、需要者をして「非満水電磁流量計」との関係において、誤認を生じさせることは極めて明白である。

よって、本件商標は商標法第4条第1項第16号にも該当する。

3 証拠方法

請求人は、審判請求書記載のとおり証拠方法として甲第1号証ないし同第8号証を提出した。

第3 被請求人の答弁

1 答弁の趣旨

「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決

2 答弁の理由

(1)本件商標と指定商品との関係について

請求人も述べているように、従前においては満水でない状態で計測できる電磁流量計は存在しなかった。そこで、被請求人がこのような電磁流量計を開発し、最初に実用化するとともに、被請求人の製造する流量計に対する「非満水電磁」なる商標を出願し、権利化したもので、「非満水電磁」の商標は、業界で使用されていなかった商品について被請求人が将来使用する商品に付するために、被請求人が独自に考えた造語である。

したがって、請求人が「必然的に生じた称呼」であると主張することは失当である。

また、請求人は、甲第3号証及び同第4号証を掲げて、「もともと業界にて非満水電磁流量計の語が使用されていた」と主張するが、甲第4号証は被請求人の本件商標「非満水電磁」の商標を被請求人が使用したものであり、また、甲第3号証は請求人が本件商標に「用」を付して後発的に使用したものであり、更に、この流量計のメーカーが被請求人と請求人しかないこの業界において、請求人自らが「非満水電磁流量計」の用語を使用していないのに、業界にて「非満水電磁流量計」の語が使用されていたと主張することは矛盾し、その主張は失当である。

(2)請求人は、なお書きで、甲第5号証に「非満水電磁流量計」の語が記載されているため「非満水電磁流量計」の製造業者がこれを「非満水電磁流量計」と称呼するのは自然的必然性に基づくものであると主張するが、この「非満水電磁流量計」の語は説明上、被請求人の商標である「非満水電磁」の語を使用したものであり、これをもって、業界での一般用語とするのは過言で失当である。すなわち、甲第5号証の計装エンジニアのための「流量計測AtoZ」の編集には被請求人も積極的に関与、協力し、技術資料も積極的に開示したことから、このように甲第5号証に記載されたものである。

よって、甲第5号証については、前記の通りであるため、有効な資料とはなり得ない。

甲第6号証においては、本件商標である「非満水電磁」のみからなる語は記載(使用)されておらず、また、甲第3号証ないし甲第5号証は特別な事情であることから、「非満水電磁」は造語であることが明白である。同様に、甲第7号証及び同第8号証についても、造語であることがより明白である。

(3)「非満水電磁」の顕著性について

請求人は、『「非満水電磁流量計」そのものも、「非満水」状態での水量を測定できる「電磁流量計」を指すものとして、本件商標登録出願前より業界で認識され、一般に使用されてきた語であることが分かる』と主張するが、甲第3号証乃至同第5号証が前記のような記載、特に請求人自身のカタログである甲第3号証において「用」を用いて記載していることから、「非満水電磁流量計」の語そのものが業界内で認識され、使用されていたとは言えず、また、将来的使用を述べているが、請求人の主張は失当である。

(4)商標法第3条第1項第3号違反について

請求人は、本件商標「非満水電磁」と言えば直ちに「非満水電磁流量計」を指すものとしてしか認識できないと主張しているが、「非満水電磁流量計」の語は被請求人が甲第4号証で使用した語であり、この語が前記のように一般名称ではないことから、本件商標と「非満水電磁流量計」の語を対比することは失当である。「非満水電磁」は被請求人の造語であり、識別力を有するものである。

したがって、本件商標は商標法第3条第1項第3号に違反しないものである。

(5)商標法第4条第1項第16号違反について

請求人は「非満水電磁」が測定機械器具やその他の商品について使用されると誤認を生じさせると主張するが、本件商標は「非満水電磁」であり「流量計」の語は付されていない。したがって、この本件商標を流量計以外の測定機械器具や電気通信機械器具に使用されても、流量計と何ら誤認を生じさせるものではなく、また、誤認を生じた根拠もない。

よって、本件商標は商環法第4条第1頃第16号に該当しないものである。

(6)商標登録適格性を有する商標

請求人は、「非満水電磁流量計」の名称は一般名称であるとの前提で主張するが、前記に説明したように甲第3号証乃至甲第5号証は請求人、被請求人が関与したものであることから、これをもって商品の一般名称として認識されていた用語であると主張するのは失当である。

なぜならば、被請求人の発行である甲第4号証の表紙には、「非満水電磁流量計」と記載されているのに対し、請求人の発行である甲第3号証の表紙及び裏表紙には「非満水用電磁流量計」と「用」を付して記載され、また、前記のようにこの流量計のメーカーが被請求人と請求人しかないこの業界において、請求人自らが「非満水電磁流量計」の用語を使用していないのに、「非満水電磁流量計」の語が業界において一般名称であると主張するのは矛盾し、その主張は失当である。

したがって、本件商標は、商標法本来の保護目的から外れたものではない。

第4 当審の判断

1 商標法第3条第1項第3号違反について

本件商標は、「非満水電磁」の漢字を書してなるものである。

そこで、本件商標について自他商品の識別機能を有するか否かについて検討する。

(1) 甲第3号証(請求人の製造販売に係る「非満水用電磁流量計」に関する商品カタログ)によれば、「東芝の電磁流量計が非満水状態の流量測定を実現しました。」「芝非満水用電磁流量計は、これまでの電磁流量計と同様にファラデーの電磁誘導の法則を応用して配管内の流量を測定するものです。」、また、甲第4号証(被請求人の製造販売に係る「非満水電磁流量計」に関する商品カタログ)によれば、「非満水を測る。」「アイチは、独自のセンシング技術により、満水状態はもとより非満水状態まで計測可能な「非満水電磁」を開発しました。次世代をみつめ、新しい発想で計測の世界をさらに広げる非満水電磁流量計の誕生です。」と記載している事実が認められる。

(2)請求人の提出に係る甲第5号証ないし甲第8号証によれば、以下の事実が認められる。

(ア)甲第5号証「流量計測AtoZ」(工業技術社平成7年11月1日初版発行)には、第9章電磁流量計の「9.3機種別解説」の項に、測定方法の違いによる分類として「満水形」、「非満水形」と分類されていること、「9.6今後の展望/(6)非満水電磁流量計」の項には、「非満水状態の水路を流れる流量を直接電磁流量計で計測できる流量計が近年発表された。」と記載されていること

(イ)甲第6号証「流体工学」(産業開発社1976(昭和51)年1月1日発行)には、「P−Bフローメータの下水流量測定の応用」の表題のもとに、「・・・下水のように主として円形管路を非満水の状態で流れ,・・・このような円形管路に非満水の状態で流れる汚水を連続的に流量測定する目的で,・・・新しい方式の流量計(以下P−Bフローメータと呼ぶ)の研究に着手し,ここにその開発に成功した。」、P−Bフローメータの構成と測定原理の項には、「P−Bフローメータは,・・・ヒューム管などの円形管路の中を非満水で流れている汚水流量を連続測定する流量計である。」と記載されていること

(ウ)甲第7号証「計装8月号」(工業技術社昭和51年8月1日発行)には、「プロセスに適した排水流量測定システムの選択(上)」の表題のもとに、「工場排水に適用可能な流量計と水路形状」の項の「表1測定条件と流量計」には、フリューム式及びせき式は,非満水の流れの状態を測定し,電磁式には,満水の流れの状態を測定する電磁流量計と非満水及び満水の状態で測定する電磁流速計が掲載されていること

(エ)甲第8号証「計装10月号」(工業技術社昭和51年10月1日発行)には、「プロセスに適した排水流量測定システムの選択(下)」の表題のもとに、「3.3パーマ・ボラウスフリューム」の項には、「パーマ・ボラウスフリュームは,・・・円形管路を非満水で流れる水路の流量測定用として開発されたものである。」と記載されていること

以上の(1)及び(2)の事実よりすると、本件商標の指定商品中の測定機械器具に属する商品として、管路を流れる流体の流量を遠隔で測定する流量計の一として電磁流量計が存するところ、従前において管路が満水でない状態で計測できる流量計は難しいとされていたが、非満水で流れている汚水流量を連続測定する流量計が開発に成功したことより、非満水の状態で測定する流量計が存していたことと、非満水あるいは満水の状態で測定する方式には電磁式が存していた事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

そして、平成7年11月1日初版の甲第5号証は、社団法人日本計量機器工業連合会が著者であって、当業者間に頒布されているといえるから、電磁流量計は、機種別に分類すると満水形と非満水形が存することについて、取引者、需要者の間に広く知られているというのが相当である。

被請求人は、「業界で使用されていなかった商品について独自に考えた造語である」旨主張しているが、当業者間において、本件商標の出願時(平成8年11月29日)以前より非満水の状態で測定する流量計が存し、本件商標の登録査定時(平成10年3月3日)以前より、非満水形の電磁流量計が存していたことは、上記認定事実に照らして明らかであるから、被請求人の主張は採用することができない。

そうすると、「非満水電磁」の漢字を書してなる本件商標をその指定商品中「非満水用電磁流量計」について使用した場合には、本件商標に接する取引者、需要者は、前記の事情からして、本件商標を単なる造語からなる商標として認識するよりも、むしろ、商品「流量計」について「非満水の状態で測定ができる電磁流量計」であるものと容易に理解し、商品の機能、用途等の品質を表示したものと認識するに止まり、自他商品の識別標識とは認識し得ないものといわなければならない。

2 商標法第4条第1項第16号違反について

そして、本件商標は、商品の品質を表示したものであることは前記したとおりであるから、本件商標を非満水用電磁流量計以外の測定機械器具について使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。

3 結び

以上のとおり、本件商標は、その指定商品中「測定機械器具」については、商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすべきものである。

しかしながら、本件商標は、測定機械器具以外の指定商品については、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものと認められるから、その登録を無効とすべき限りでない。

よって、結論のとおり審決する。

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