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Trademark Appeal Case

歌舞伎の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2009−900344(T2009−900344/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第5239727号商標の指定商品中、第28類「人形,羽子板」についての商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5239727号商標(以下「本件商標」という。)は、「歌舞伎」の文字を標準文字により書してなり、平成19年12月27日に登録出願され、第1類ないし第45類(ただし、第29類、第30類及び第33類を除く。)に属する別掲のとおりの商品及び役務を指定商品又は指定役務として、平成21年5月28日に登録査定、同年6月19日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は江戸時代に大成した日本の伝統的演劇の歌舞伎を示唆するものであるところ、人形製販業界において、「歌舞伎」の名称は、人形(特に、風俗人形)の品質、種類を表すものとして熟知されている。また、押絵羽子板の製販業界において「歌舞伎」の名称は、押絵羽子板の品質、種類を表したものとして熟知されている。したがって、本件商標は、その指定商品中の「人形,羽子板」については、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、その登録は取り消されるべきである旨主張し、証拠方法として甲第1号ないし第5号証を提出した。

3 当審における取消理由

当審において、平成22年6月21日付けで商標権者に対して通知した取消理由は、要旨以下のとおりである。

(1)申立人提出に係る甲第1号ないし第5号証によれば、以下の事実を認めることができる。

ア 甲第1号証「節句商品の基礎知識」の(1)節句人形の項には、「五月人形には、武者人形や、歌舞伎人形(弁慶、暫など)、童心人形(金太郎、桃太郎など)、神武、鍾馗などがあります。」との記載がある。

また、(2)風俗人形の項には、「風俗人形は、・・・時代、時代の世の中の様々な風俗を現した人形で、演劇や歌舞伎、能狂言などを主題にしたのもが多く作られています。風俗人形の種類には、尾山人形、歌舞伎人形、能人形、舞踊人形、若衆人形などの種類があります。」との記載がある。

イ 甲第2号証「押絵羽子板」の「1 羽子板の種類」には、「押絵羽子板の題材は、歌舞伎狂言や歌舞伎舞踊からとる。」との記載がある。

ウ 甲第3号証「にんぎょう日本 '94 2月/NO.232」の「知っておきたい商品知識」の項には、「いうまでもないが、我々の業界でいう”舞踊人形”とは、歌舞伎や能などの一場面、一ポーズを人形にしたものである。」との記載がある。

また、「ちょっと確認」の項には、「舞踊人形 歌舞伎を題材にした人形を総称していう。節句用の贈り物の人形とされている。」との記載がある。 エ 甲第4号証「にんぎょう日本 59年12月/NO.119」の「衣装着人形の種類」の項には、「五月人形には、武者人形や、歌舞伎人形(弁慶、暫など)、童心人形(金太郎、桃太郎など)、神武、鍾馗などがある。」との記載及び「風俗人形の種類には、尾山人形、歌舞伎人形、能人形、舞踊人形、若衆人形などがある。」との記載がある。

オ 甲第5号証「にんぎょう日本 '92 12月/NO.218」の「種類」の項には、「押絵の他には、次のような羽子板がある。・・・題材は、歌舞伎からとった舞踊が主流。」との記載がある。

(2)上記(1)で認定した事実によれば、「歌舞伎」の文字は、風俗人形や五月人形などを取り扱う業界や、押絵羽子板を取り扱う業界においては、その商品が「歌舞伎を題材にとった人形」であること、ないし「歌舞伎から題材をとった羽子板」であることを表しているにすぎないものというべきである。

してみれば、「歌舞伎」の文字からなる本件商標を、その指定商品中「人形,羽子板」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、それが単に商品の品質(人形・羽子板の種類)を表示したものと認識するに止まり、これをもって自他商品の識別機能を発揮する商標とは認識しないものといわざるを得ない。

4 商標権者の意見

前記3の取消理由に対し、商標権者は、要旨以下のように意見を述べ、証拠方法として乙第1号ないし第29号証を提出している。

(1)期間経過後の証拠の取り扱いについて

商標権者は、申立理由の補正が認められる期間は、平成21年10月26日までであり、平成21年10月26日以降の「登録異議申立に関する新たな証拠提出に該当する上申書(三)の手続」は、不適法なものとして却下されなければならない。したがって、甲第4号及び第5号証は、登録異議申立書の理由補充期間である平成21年10月26日以降の提出であって、法律で定めた期間経過後の証拠であるから、本件異議申立の審理の対象から外されるべきである。

(2)「歌舞伎」が、指定商品中「人形、羽子板」の品質表示に該当するか否について

ア 乙第4号証の岩波書店の「広辞苑」(第6版)の第572頁及び第573頁に「歌舞伎」関連の単語が紹介されているが、「歌舞伎人形」のような項目の記載はなく、かつ商品「人形、羽子板」に関する記載は一切ない。

イ インターネット上の国語辞典である「gooの大辞林」で「人形」の文字で終わる単語を逆引きした結果が、乙第5号証のとおりであるが、これに「歌舞伎人形」に関する掲載例はない。

ウ 甲第1号及び第2号証に関する文献の発行部数が極めて少なく、国立国会図書館にも寄贈されていない文献であり、絶版になっている書籍を一般人が入手することは困難な状況にある事実からすれば、これらの書籍に人形又は羽子板に関連して「歌舞伎」という記述があったとしても、直ちに「歌舞伎」が商品「人形、羽子板」に関する品質表示として一般需要者・取引者に認識されていたことにはならない。

エ 最近の発行元である日本人形協会のホームページでは人形辞典の「五月人形」では、乙第16号証に示すように「武者人形」、「馬乗武者」、「金太郎」、「桃太郎」、「大将飾」、「暫」、「弁慶」、「勧進帳」、「矢の根」、「神天」、「鍾馗」、「神功皇后・武内宿禰」、「神武」、「鳴弦」、「梶原」、「太閤」、「清正」と分類分けされているが「歌舞伎人形」という分類は現在使用されていない。

オ 以上述べたように、本件商標に対する取消理由通知は、理由補充期間経過後の証拠(甲第4号及び第5号証)を証拠として採用している点で不適法であり、甲第1号ないし第3号及び第5号証は、指定商品「人形,羽子板」に関して、乙第3号証の登録商標「歌舞伎Z」が存在する中で発行された文献で誤って標章「歌舞伎」、「歌舞伎人形」が記述されているものであり、商標法的には不適切な証拠である甲第1号ないし第3号及び第5号証を本件登録商標の取消理由の根拠として採用している判断に誤りがある。

5 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号該当性について

本件商標は、前記1のとおり、「歌舞伎」の文字よりなるところ、該文字が、少なくとも本件商標の登録査定時には、人形や羽子板等を取り扱う業界において、「歌舞伎を題材にとった人形」ないし「歌舞伎から題材をとった羽子板」を意味する語として、一般的に使用されていたことが認められることは、前記3で示したとおりである。

そうすると、本件商標を、その指定商品中「人形,羽子板」について使用しても、これに接する取引者・需要者は、該商品が「歌舞伎を題材にとった人形・羽子板」であるという、商品の品質(人形・羽子板の種類)を表示したものと理解するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を有する商標とは認識し得ないものと判断するのが相当である。

したがって、本件商標は、その指定商品中「人形,羽子板」については、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものといわなければならない。

(2)商標権者の主張

ア 商標権者は、前記4の意見書において、「申立理由の補正が認められる期間は、平成21年10月26日までであり、それ以降の手続は、不適法なものとして却下されなければならない。したがって、甲第4号及び第5号証は、登録異議申立書の理由補充期間以降の提出であって、法律で定めた期間経過後の証拠であるから、本件異議申立の審理の対象から外されるべきである。」旨主張している。

確かに、理由補充期間経過後の追加補正ができないことは、商標権者の主張のとおりである。しかし、提出された甲第4号及び第5号証については、当合議体の判断により、職権審理の対象として取消理由の証拠に採用したものであって、本件異議申立の審理の対象から外さなければならない合理的な理由は認められないから、請求人のこの主張は採用できない。

イ また、商標権者は、「広辞苑第6版」、「gooの大辞林」及び「日本人形協会のホームページ」には、「歌舞伎人形」に関する掲載例がないこと、また、甲第1号ないし第3号及び第5号証は、登録商標「歌舞伎Z」が存在する中で発行された文献で誤って標章「歌舞伎」、「歌舞伎人形」が記述されているものであり、商標法的には不適切な証拠である」旨主張している。

しかしながら、商標権者が前記で挙げた広辞苑(第6版)等に、「歌舞伎人形」に関する記載例がないとしても、「歌舞伎」の文字が、人形や羽子板等を取り扱う業界において、「歌舞伎を題材にとった人形」ないし「歌舞伎から題材をとった羽子板」を意味する語として一般的に使用されている実情があることは、前記3で示したとおりであるから、本件商標に接する取引者・需要者は、「歌舞伎」の文字から、容易に「歌舞伎を題材にとった人形・羽子板」を表したものと認識するというべきである。

また、商標権者は、登録商標「歌舞伎Z」が存在する中で発行された文献で、誤って標章「歌舞伎」、「歌舞伎人形」が記述されているものであり、不適切な証拠である旨主張しているが、主張のみであって、その主張を立証する証拠の提出はないものであるから、請求人のこの主張も採用できない。

(3)以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、第28類「人形,羽子板」については、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、商標第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものとする。

よって、結論のとおり決定する。

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