Trademark Appeal Case
著名祭礼名称の独占と公益
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2010−3810(T2010−3810/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「吉田の火祭り」の文字を書してなり、第30類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成20年7月8日に登録出願され、指定商品については、平成21年2月18日付け手続補正書により、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと」に補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定において、「本願商標は、山梨県指定無形民俗文化財である、著名な『吉田の火祭り』と同一の文字を書してなるものと認められる。ところで、一般に、そういった文化財については、その地元の観光見学の対象となり、該名称を観光や土産物販売等の事業に用いて地域振興を図っているのが実情である。そうとすれば、山梨県指定無形民俗文化財名称からなる本願商標を、一私人に、指定商品について独占使用を認めることは、公正な競業秩序を害するものであって、公の秩序及び一般的道徳観念に反し、穏当ではない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」と認定、判断し拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、商標の構成自体が、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれると解される。
(2)そこで判断するに、本願商標は、「吉田の火祭り」の文字を書してなるところ、「吉田の火祭り」は、山梨県富士吉田市の北口本宮冨士浅間神社と諏訪神社の秋祭りとして、毎年8月26日及び27日に行われる「鎮火大祭」を称するものであり、山梨県の無形民族文化財に指定されているものである。
そして、「吉田の火祭り」は、「日本三奇祭」の一つなどといわれ、観光ポスターの作成や観光ガイドブックに掲載がされるなどし、当該祭りには、例年約15万人ほどの見物客が訪れている(読売新聞記事情報2009.8.27、共同通信記事情報2010.8.26)。
ところで、一般に、有名な祭礼(祭り)は、その地域の代表的な観光対象であり、地域の観光協会等による宣伝、広告が行われるほか、観光パンフレットやガイドブック等にも紹介され、多くの見物者が訪れているところである。そして、これらの見物客向けに当該祭りにちなんだ記念商品や限定商品が、製造、販売されるのが通例であり、例えば、本願の指定商品に含まれている「菓子」も、その代表例の一つといえる。このように、それぞれの祭りにちなんだ各種商品が販売されるのは、それによって、祭りの参加者や見物人等需要者の購買意欲が高まり、結果として、売上げに好影響をもたらすことが期待されるからである。さらに、有名な祭りは、上記のとおりその地域を代表する観光対象であることから、その祭りにちなむ上記商品は、その地域の土産品として、年間を通して販売されることも少なくない。
そして、近年、このような観光資源を利用した地域活性化のための取組が検討されているところであり、例えば、本願商標に係る「吉田の火祭り」についても、平成22年10月30日には、地域活性化を目指して全国に発信することを目的に、歴史と伝統のある「炎の祭典(火祭り)」を集めた「第1回日本の火祭りサミットinはず」が愛知県幡豆町において、同町の「三河鳥羽の火祭り」、長野県野沢温泉村の「道祖神祭り」、愛知県岡崎市の「滝山寺鬼まつり」のほか、「吉田の火祭り」の関係者により開催されている(2010.11.1 朝日新聞名古屋地方版)。
そうすると、当該「吉田の火祭り」においても、祭りが開催される時期や年間を通して、その地域周辺の業者においては、誰もが自己の商品に「吉田の火祭り」の標章の使用を欲するものと思われるところ、このような有名な祭りであり、地域の重要な観光資源である、その名称を一個人に独占的に使用権限を取得させることは、その地域周辺の競合業者による「吉田の火祭り」の標章の使用を不可能又は困難とするだけでなく、商標権を巡る争いなど無用の混乱をも招くおそれがあり適当でないというべきである。
してみれば、本願商標について一個人が独占使用することは、公正な競合秩序を害するおそれがあり、社会公共の利益に反するものというべきであるから、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(3)請求人は、1)「吉田の火祭り」は年に1回催される、ほんの数日話題になる祭りに過ぎず、これに商標権を設定しても、公正な競業秩序を害し、地域振興等に格別に悪影響を及ぼすほどのものではない、また、2)過去の審決例及び登録例を挙げ、本願商標は、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」ということはできない、などと主張している。
しかしながら、前記説示のとおり、有名な祭りについては、その祭りにちなんだ商品が年間を通して販売されていることも少なくなく、「吉田の火祭り」についても、大きな集客力があり、観光資源として地域経済に与える影響も小さくないというべきであって、本願商標を登録することは、公正な競合秩序を害するおそれがあり、社会公共の利益に反するというべきであるから、本願商標は、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというのが相当である。したがって、上記請求人の主張は採用できない。
(4)以上のとおり、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
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