sokuhyo

Trademark Appeal Case

記述的商標の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2009−7756(T2009−7756/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、「ちょっとリッチな切り落とし」の文字を標準文字で表してなり、第29類「食肉」を指定商品として、平成20年5月27日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定は、「本願商標は、指定商品との関係から『少し贅沢な切り落とし肉』程度の高級感を表すキャッチフレーズ的意味合いを認識させるに止まる『ちょっとリッチな切り落とし』の文字を普通に用いられる方法で表示してなるものであるから、これを本願指定商品に使用しても、これに接する需要者は上記意味合いの内容の商品であると認識するにとどまり、需要者が何人かの業務に係る商品であるかを認識することができないものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における証拠調べ通知

当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを行ったところ、別掲に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、平成22年9月15日付けで証拠調べの結果を通知した。

4 当審の判断

(1)本願商標は、「ちょっとリッチな切り落とし」の文字を書してなるところ、構成中の「ちょっと」の語は「少し」の意味、「リッチ」の語は「贅沢なさま」の意味、「切り落とし」の語は、「肉・カステラなどの切り落とした半端な部分」の意味を有するものであり、別掲の証拠調べ通知のとおり、食品業界において、「ちょっとリッチな」の語が、「少し贅沢(高級)な」程の意味合いで使用されていることとも相俟って、本願指定商品である「食肉」との関係においては、「品質の良い切り落とし肉」程の意味合いを認識させるにすぎないものである。

そうとすると、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は「品質の良い切り落とし肉」であることを認識するにとどまるものであって、自他商品の識別標識としての機能を有するものとはいえず、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものといわざるを得ない。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。

(2)請求人の主張について

ア 識別性(商標法第3条第1項第6号及び同項第3号の該当性)

請求人は、請求の理由及び証拠調べに対する意見として、本願商標は請求人が独自に考案したものであって、本願商標と同一の語は、食品業界でキャッチフレーズとして広く使用されているものではなく、本願商標と類似する「ちょっとリッチな」の語も、指定商品である「食肉」との関係においては僅かな使用例しか見当たらず、また、本願の指定商品とは別の区分に属する商品分野での使用例は本願とは事例を異にするものであり、さらに、その表記例もばらつきがあることとも相俟って、不特定多数の需要者がごく一般的な表記例として認識すると解釈することには無理があることなどを述べ、キャッチフレーズが第3条第1項第6号に該当するとしても、同号に適用されるべき商標とは、キャッチフレーズとしか解し得ない表現、あるいは現に指定商品の分野で広く用いられている表現等に限るべきであり、本願商標はこのような商標に該当しない旨、主張している。

さらに、請求人は、原審の査定の理由が、いわゆる記述的商標であることを理由に、商標法第3条第1項第3号違反を認定しているようにも読み取れるとして、同号違反について、「ちょっと」、「リッチ」、「切り落とし」は、それぞれ品質表示であって自他商品識別力を有さないものと認められるものの、本願商標はこれらを一連に書してなる「ちょっとリッチな切り落とし」であって、各単語を所謂ぶつ切りにしたり省略することなく、一気呵成にリズム良く称呼できるものであり、さらに、「ちょっとリッチな切り落とし」なる表現が食肉の分野で一般的に利用されている事実は見当たらないこと、及び原審において提示された「ちょっとリッチな」の使用例も単なる商品ないし役務の説明にすぎないものであり、証拠に足るものではないなどの理由により、本願商標は同号に該当しない旨、主張している。

しかしながら、「ちょっとリッチな切り落とし」と同一の語が、食品業界でキャッチフレーズとして実際に広く使用されているものではないとしても、本願商標は、構成中の「ちょっと」、「リッチ」、「切り落とし」の各語の意味合いが一般に親しまれたものであるから、全体として「品質の良い切り落とし肉」程の意味合いを容易に想起できるものであることに加え、別掲の証拠調べ通知のとおり、食肉を含む食品を取り扱う業界において、「ちょっとリッチな」の語は、品質の良い商品であることを表現する語として、「少し贅沢(高級)な」の意味合いで広く使用され、需要者(一般消費者)は認識しているものであり、該語を「切り落とし肉」を認識させる「切り落とし」の語と結合してなる本願商標においては、これに接する取引者、需要者は、なおさら「品質の良い切り落とし肉」程の意味合いを認識するにすぎないものであるため、本願商標を本願指定商品に使用しても、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものというのが相当であり、商標法第3条第1項第6号に該当するものである。

したがって、請求人の主張は採用することができない。

イ 使用による識別性

請求人は、本願商標は、現実の使用の結果、請求人の商標であることは需要者間である程度認知される程度に至っており、相応の信用の化体も認められ、現実に自他商品の識別標識として機能している旨主張し、証拠方法として、参考資料1ないし28(枝番を含む。)、及び甲第1号証ないし甲第21号証を提出している。

そして、請求人の提出した証拠によれば、請求人は、本願商標を阿波牛食肉に使用し、その販売形式は、主にインターネットショッピングモールである「楽天市場」、「ヤフーショッピング」における請求人のウェブサイトを通じた通信販売であり(参考資料5の1ないし参考資料6、甲第2号証、甲第7号証)、該商品の販売実績は、平成20年1月から12月(年間)においては、売り上げ件数9,069件(参考資料7)、売り上げ個数10,219個(参考資料8)であると認められる。なお、提出された資料で確認する限り、該商品の販売価格は、概ね850円(100グラム)から7100円(500グラム×2パック)である(参考資料5の1ないし参考資料6ほか)。

また、日本全国2万店舗以上の店舗が出店し、登録商品2,500万以上(参考資料10)、1日の平均取扱高17億4,000万以上、会員数4,000万以上(参考資料11)であるインターネットショッピングモールの「楽天市場」において、本願商標を使用した食肉に関し、平成18年(2006年)8月31日の売れ筋トップ100で59位(甲第18号証)、平成19年上半期の売れ筋ランキングの「食品・スイーツ部門」で26位(参考資料14)、平成20年上半期売れ筋ランキングの「食品部門」で22位(参考資料16)、2007年と2008年の「楽天市場グルメ大賞」の受賞(甲第2号証、甲第3号証)、その他「楽天市場」に出店する店舗を対象とした食品に関するイベント(大会等)への出品等(参考資料5の1、参考資料5の2、参考資料13、参考資料25、甲第4号証ないし甲第6号証)が認められる。

さらに、メールマガジン(参考資料21ないし参考資料24)、書籍(参考資料25)、雑誌(参考資料26)において、本願商標を使用した食肉が紹介されている。

そこで、検討するに、請求人が提出した意見書によると、請求人が本願商標に係る上記商品の販売を開始したのは、平成18年2月から(甲第18号証によって少なくとも平成18年8月には使用が認められる。)であり、その販売期間は、わずか5年程度である。

また、その売り上げは、具体的に販売額の実績が確認できる資料は提出されていないが、販売数量の実績は、該商品が平成20年上半期売れ筋ランキングの「食品部門」で22位(参考資料16)、「楽天市場グルメ大賞」(甲第2号証、甲第3号証)を受賞した平成20年であっても、年間で10,219個(参考資料8)であり、食肉の販売市場においては、極めて少ないものといわざるを得ない。

さらに、その宣伝、広告については、上記販売数量及び楽天市場内での受賞から考えても、請求人の販売数量の相当程度は「楽天市場」を通じての販売と推認できるものであるから、請求人は、これを通じて、本願の指定商品である食肉を宣伝、広告し、通信販売しているといえるが、食肉を購入する一般需要者においては、日常的に店頭で購入するのが一般的であり、これを主にインターネットの通信販売で購入している者は未だ極めて少数というべきである。加えて、請求人から宣伝、広告に関し提出された証拠も、請求人と楽天市場のメールマガジンのほか、2冊の雑誌・書籍のみであるから、本願商標が、これらの宣伝、広告等によって、一般需要者の間に広く知られるに至っているということはできない。

ところで、一般にインターネットによる販売では、商品の品質、特長等を端的に印象付ける必要があり、また、リンクを張ることにより、その商品の商品情報のページや購買ページに移ることができることから、商品の品質等を表す表示であってもそれをその商品の名称(商標)のように表示して、自己の取り扱う他の商品と区別することが広く行われており(例えば、甲第6号証では、豚肉販売部門1位であるショップ「ハイ食材室」は、「最高峰フォアグラドオアお試しパック」を取り扱う商品の表示としている。)、このような表示は、自己の取り扱う商品における区別を表すことができるとしても、他人の商品とを区別する識別標識として機能するものではなく、需要者は、第一義的にその商品の品質等にかかる意味合いを理解するにすぎないものであり、多くの場合、自他商品の識別標識として機能するのは、その商品を取り扱う店名等を表す表示である(例えば、先の例についていえば、店名である「ハイ食材室」。)。したがって、その商品の表示が、品質等を表す文字である場合には、特にインターネットによる販売においては、これに接する需要者は、その表示を商品の出所を識別するために付されている表示とは必ずしもとらえるとはいえないところである。

そこで、本願商標の使用について提出された資料を見てみると、本願商標が「阿波牛の藤原精肉店」の店名とともに使用されているもの(例えば、甲第3号証では、「牛肉部門」の見出しのもと、「【2年連続受賞】ちょっとリッチな切り落とし」とあわせて、「阿波牛の藤原精肉店」の記載がある。)のほか、本願商標の文字部分等にリンクが張られ、前記店名が付されたページに移ってから、商品情報の詳細を確認し、購買を行うことが求められるもの(例えば、甲第4号証では、徳島県代表の見出しのもと、「【グルメ大賞受賞】霜降りのとろける旨さ!ちょっとリッチな切り落とし」の記載があり、店名等の表示はないが、商品情報の確認や購買の際は、リンクされている「阿波牛の藤原精肉店」のウェブサイトに移って利用されるものと推察するのが相当である。)が多数あり、本願商標が「品質の良い切り落とし肉」程の意味合いを容易に認識させることを勘案すると、これらのような使用においては、自他商品の識別標識として機能するのは前記店名の文字部分というべきであり、需要者は、本願商標の表示を商品の出所を表示するためのものとは認識し得ないというのが相当である。

また、本願商標が使用されているとして提出された資料には、「阿波牛のちょっとリッチな切り落とし」、「阿波牛の藤原のちょっとリッチな切り落とし」のように、他の文字と結合した態様のみで使用されたもの(参考資料9、参考資料14、参考資料16、参考資料17、参考資料21、参考資料25、参考資料26、甲第6号証、甲第10号証、甲第11号証、甲第13号証、甲第15号証、甲第17号証、甲第18号証、甲第20号証)、又は、「切り落とし」の文字部分にカギ括弧が付され強調されたもの(参考資料9、参考資料25、甲第10号証、甲第11号証、甲第13号証、甲第18号証)など、本願商標とは態様を異にするものも含まれており、また、これらの態様での使用は、需要者に、「阿波牛の品質の良い切り落とし肉」のような一体的な意味合いを想起させたり、「『切り落とし肉』という商品の品質が良いこと」を強調した意味合いを想起させるものであり、なおさら、需要者に商品の内容を表す品質表示的使用と認識されるものというのが自然である。

以上に加えて、上記(1)及び(2)アにおいて認定した事実を考慮すると、本願商標は、請求人により使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものといえない。

ウ 過去の登録例

請求人は、登録例を提示するとともに、本願商標に類似する商標の登録例が多数存在することは、本願商標が直ちにキャッチフレーズに該当し登録できない訳でないことを示す証左となり得る旨、主張している。

しかしながら、登録出願に係る商標が商標登録の要件を具備しているか否かは当該商標の構成態様と指定商品の取引の実情等に基づいて、個別具体的に判断されるものであり、本願商標については、上記のとおり判断すべきであるから、請求人の上記主張は採用することができない。

(3)以上よりすれば、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとした原査定は妥当であって、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。