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Trademark Appeal Case

不使用取消と遡及許諾

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2010−300675(T2010−300675/J2)
審判種別取消
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第1753576号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和56年7月30日に登録出願、第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同60年3月25日に設定登録され、その後、商標権の存続期間の更新登録が2回にわたりされ、さらに、平成17年9月14日に指定商品を第16類「雑誌,新聞」とする指定商品の書換登録がされ、現に有効に存続しているものである。

そして、本件審判の請求の登録は、平成22年7月6日にされたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、「本件商標についてその登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べた。

1 請求の理由

本件商標は、その指定商品第16類「雑誌,新聞」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者いずれも使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消されるべきである。

2 答弁に対する弁駁

被請求人は、商標権者自身、登録商標について使用しておらず、通常使用権者(株式会社大有)のみが同登録商標の使用をしていると主張している(乙第5号証)。

しかし、乙第5号証は、「通常使用権の許諾確認書」としたものであり、この確認書は、平成22年8月9日であり、まさに本答弁書の提出日である平成22年8月11日のわずか3日前に作成されたものである。内容は、昭和60年3月25日に遡って平成22年8月9日まで通常使用権があったとするものである。

この確認書をもって、大幅に時期を遡及して通常使用権があったとすることは乱暴な主張であり、商標権者が「株式会社大有」の登録商標の使用に関して、単に黙認したものにすぎないと判断することが妥当である。仮に、後から通常使用権があったと主張できたとすると、商標法第50条第1項の規定の趣旨を没却することになる。いずれかの者が登録商標を使用していれば、その者が通常使用権者であると主張して、取消しを逃れることができるからである。

以上の観点から、本件商標は、取り消されるものである。

3 むすび

以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、指定商品「雑誌,新聞」について取り消されるべきである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証(枝番を含む。)を提出した。

1 本件商標は、通常使用権者が本件商標の登録日以来、毎月1回発行される雑誌(定期刊行物)「遠州」として日本国内において使用している商標であり、商標法第50条の規定により、当然維持されるべき商標である。

(1)本件商標は、本件審判の被請求人(商標権者)である「小堀正晴」が取締役として共同経営に当り、通常使用権を許諾している「株式会社大有」の発行に係る雑誌(月刊誌)「遠州」として、本件商標の設定登録以来現在(平成22年8月)まで、被請求人(商標権者)が許諾した通常使用権に基づき継続して使用されているものである。

(2)本件商標の使用について

ア 乙第1号証及び乙第2号証について

(ア)乙第1号証の1は、雑誌(月刊誌)「遠州」の平成22年1月号に係るものである。本件商標「遠州」は、雑誌「遠州」のタイトルとして使用されている。

本件商標は、楷書ゴシック体を「遠州」と縦書きしてなるのに対し、乙第1号証1で挙げた雑誌「遠州」は、表紙に「遠州」と横書きに草書体で書してなり、双方共に同一の商標であり、楷書体、草書体の差異はあるものの、社会通念上は同一の商標であることは明白である。

また、乙第1号証の1の奥付(月刊誌「遠州」と表記)、裏表紙の左上、背表紙の上部に、楷書ゴシック体の縦書きで「遠州」と表記されている。

(イ)「遠州」は、昭和41年6月に第1号が創刊され、昭和59年6月19日に第三種郵便物の認可を受け、現在まで、毎月1日付けで雑誌(定期刊行物)として発行されている。

この間44年にわたり号を重ね、平成22年6月1日付け発行で529号を数えるものである。

乙第1号証の1は、茶道「遠州流」に関する定期刊行物である雑誌「遠州」で、平成22年1月1日付け発行の平成22年1月号(第524号)である。

雑誌「遠州」は、奥付に明示されているとおり、月刊「遠州」として、東京都新宿区若宮町26番地在の「株式会社大有」を発行所、発行人「浅井宗兆」(後述する代表者小堀正次氏の茶道宗匠名)で発行され、定価950円(税込)で販売されているものである。

平成22年2月号(第525号)ないし平成22年6月号(第529号)については、表紙、奥付、背表紙、裏表紙の写しを提出する(乙第1号証の2ないし6)。

(ウ)雑誌「遠州」は、昭和41年創刊以来「国立国会図書館」に書蔵されている蔵書である(乙第2号証:NDL−OPAC(国会図書館蔵書検索・申込検索システム)のインターネット情報の印刷物をプリントしたもの)。

イ 乙第3号証及び乙第4号証(枝番を含む。)について

乙第3号証も1ないし6で、平成22年1月ないし同年6月にわたり、毎月雑誌「遠州」が印刷され、発行されていることを、(株)日刊工業出版プロダクションの「株式会社大有」宛ての印刷製本代の請求書の写しで立証する。

乙第4号証の1ないし6で、平成22年1月ないし同年6月にわたり印刷された雑誌「遠州」が、毎月発送されていることを、「古市梱包運輸株式会社」の請求書の写しで立証する。

(3)本件商標の通常使用権許諾について

ア 本件商標は、乙第5号証の「通常使用権の許諾確認書」記載のとおり、被請求人(商標権者)である「小堀正晴」が、昭和60年3月25日の設定登録以来現在まで、また、更新登録を含む存続期間全部に亘り、「株式会社大有」に通常使用権を許諾していることを確認するものである。

通常使用権者である「株式会社大有」が、雑誌「遠州」を発行して「遠州」なる本件商標を使用していることは、前記(2)及び乙第1号証の1ないし6、乙第2号証ないし乙第4号証で立証したとおり明らかである。

イ 本件商標の通常使用権者である「株式会社大有」と、被請求人(商標権者)である「小堀正晴」の関係を以下詳細に説明する。

添付した「株式会社大有」の現在事項全部証明書(乙第6号証)記載のとおり、「小堀正晴」は、「株式会社大有」(代表取締役小堀正次氏)の取締役であり、小堀正次氏と共同で「株式会社大有」の経営に当たっている。

したがって、共同経営に係る「株式会社大有」に、本件商標の通常使用権を許諾し、「株式会社大有」が雑誌「遠州」を発行しているものである。

ちなみに、乙第1号証の1の雑誌「遠州」の平成22年1月号掲載の挨拶記事「新春のお慶びを申し上げます」の1頁に掲載されている「小堀宗実」は、被請求人(商標権者)である「小堀正晴」の遠州流茶道の宗匠名である。また、同2頁及び雑誌「遠州」の発行人である「浅井宗兆」は、「株式会社大有」の代表取締役小堀正次の遠州流茶道の宗匠名である。

したがって、商標権者である被請求人の「小堀正晴」は、通常使用権者である「株式会社大有」を通じて実質上「小堀正晴」自身が、本件商標を乙第1号証の1ないし6のとおり、使用しているものである。

なお、「小堀正晴」と「株式会社大有」との関係を証明するため、陳述書を提出した(乙第7号証、乙第8号証)。

2 まとめ

以上のとおり、本件商標は、商標法第50条の規定により、当然維持されるべき商標である。

第4 当審の判断

1 認定事実

乙各号証によれば、以下の事実が認められる。

(1)乙第1号証の1ないし同6について

乙第1号証の1ないし同6は、平成22年1月1日発行から同年6月1日発行の月刊雑誌(「株式会社大有」発行)で、1月号から6月号のいずれにも、表紙の上部に大きく行書体又は草書体で「遠州」と横書きされ、裏表紙の左上及び背表紙の上部に、ゴシック体で「遠州」と縦書き表記がなされている。

そして、これら「遠州」と表された標章(以下「使用標章」という。)は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められるものである。

(2)乙第2号証について

乙第2号証は、「国立国会図書館NDL−OPAC(書誌詳細表示)」の表題のあるインターネット情報の写しであり、雑誌「遠州」が1966(昭和41)年6月の1号から2010年(平成22年)8月の531号までの各号が所蔵されていることが記載されており、書誌情報欄には、タイトルとして「遠州」、出版者又は出版事項として「大有」が記載されている。

(3)乙第3号証の1ないし同6について

乙第3号証の1ないし同6は、「(株)日刊工業出版プロダクション」からの「株式会社大有」宛て「請求書」の写しであると認められる。

そのうち、乙第3号証の2には、請求日に該当する欄に「22年1月29日」、品名欄に「遠州2月号」「印刷製本代」「製本費」ほか、単価欄に「3,600部」、金額欄に合計として「¥2456479」などの記載がある。

また、乙第3号証の5には、請求日に該当する欄に「22年4月30日」、乙第3号証の6には、同じく「22年5月31日」とあり、上記乙第3号証の2と同様に「遠州5月号」と「遠州6月号」の印刷製本代、編集費等の請求内容が記載されている。

(4)乙第4号証の1ないし同6について

乙第4号証の1ないし同6は、「古市梱包運輸株式会社」からの「株式会社大有」宛て「御請求書」の写しであると認められる。

そこには、請求日に該当する欄に、乙第4号証の1は「2009年12月31日」、同2は「2010年1月31日」、同3は「2010年2月28日」、同4は「2010年3月31日」、同5は「2010年4月30日」、同6は「2010年5月31日」とそれぞれ記載されているほか、「遠州」各月号の発送費や当月請求金額などが記載されている。

(5)乙第5号証について

乙第5号証は、「小堀正晴」(商標権者)(甲)と「株式会社大有」(乙)との間の平成22年8月9日付けの「通常使用権の許諾確認書」を表題とするものであり、第1条に「甲は乙に対し、甲の所有する次の商標権について、通常使用権を許諾していることを確認する。/商標登録第1753576号/商標 遠州(エンシュー)/指定商品 第16類 雑誌、新聞(旧26類)」の記載、第2条「範囲・期間・内容」に「通常使用権の範囲・期間・内容は下記の通りである。/範囲 全国/期間 本件商標の設定の登録日(昭和60年3月25日)以降現在及び更新登録を含む存続期間全部/内容 雑誌」と記載されている。

(6)乙第7号証及び乙第8号証について

乙第7号証及び乙第8号証は、「小堀正晴」と「株式会社大有」それぞれの「陳述書」であり、本件商標について、「通常使用権の使用許諾を与えている」旨、「通常使用権の使用許諾を受けている」旨、それぞれ陳述されている。

2 本件商標の使用についての判断

前記1により認定した事実を総合すれば、本件商標と社会通念上同一と認められる使用標章を付した月刊雑誌「遠州」が少なくとも本件審判の請求前3年(平成19年7月6日から同22年7月5日まで)以内に含まれる期間に「株式会社大有」により発行されていたことが認められる。

そして、使用許諾契約は、商標権者と使用権者の意思表示の合意によって成立し、口頭による契約も認められると解されるところ、商標権者である被請求人「小堀正晴」と「株式会社大有」とは、具体的に「通常使用権の許諾確認書」(乙第5号証)にあるとおり、本件商標についての通常使用権の許諾を確認しており、しかも、通常使用権の期間は「本件商標の設定の登録日(昭和60年3月25日)以降現在及び更新登録を含む存続期間全部」とされているものである。

そうすると、商標権者である被請求人「小堀正晴」と「株式会社大有」との間には明らかに使用許諾がなされているといえるものであり、このことは両者の「陳述書」(乙第7号証及び乙第8号証)からも裏付けられるものであって、通常使用権の許諾期間も本件審判の請求の登録前3年以内を含むものであることから、「株式会社大有」は、本件商標の通常使用権者であると認められる。

3 請求人の主張について

請求人は、「通常使用権の許諾確認書は、平成22年8月9日であり、本答弁書の提出日である平成22年8月11日のわずか3日前に作成されたものであり、内容は、昭和60年3月25日に遡って平成22年8月9日まで通常使用権があったとするものである。この確認書をもって、大幅に時期を遡及して通常使用権があったとすることは乱暴な主張であり、株式会社大有は本件商標の通常使用権者ではない。」旨主張する。

しかしながら、通常使用権の許諾は、明文の契約に限らず、黙示の契約によっても可能であり、また、商標法50条における通常使用権者による登録商標の使用というために通常使用権の登録を要するものではない(知的財産高裁平成21年(行ケ)第10290号、平成22年2月25日判決参照)ところ、前記2のとおり、被請求人(商標権者)は、「株式会社大有」に使用許諾した旨主張し、商標権者と「株式会社大有」のそれぞれがその旨陳述している(乙第7号証及び乙第8号証)ことから、「株式会社大有」に対し本件商標について使用許諾したものというべきであるし、上記「通常使用権の許諾確認書」の締結により、本件商標に係る通常使用権の存在はより一層明確であるといえる。

したがって、「株式会社大有」は、本件商標に係る通常使用権者とみるのが自然であるから、請求人のこの点に関する主張は採用の限りでない。

4 まとめ

以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を本件商標の指定商品中の「雑誌」について、通常使用権者が使用していたことを証明したというべきである。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべき限りでない。

よって、結論のとおり審決する。

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