Trademark Appeal Case
免税店略称DFSの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2008−32801(T2008−32801/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、「DFS」の欧文字を横書きにしてなり、第35類「小売店サービス」を指定役務として、平成19年4月4日に登録出願、その後、指定役務については、原審における同20年4月21日付け手続補正書により、第35類「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,酒類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,宝玉及びその模造品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に補正されたものである。
第2 原査定の拒絶理由の要点
原査定において、「本願商標は、登録第4438330号商標(以下「引用商標1」という)及び登録第4438331号商標(以下「引用商標2」という)と、「ディエフエス」の称呼を共通にする類似の商標であって、同一又は類似の役務及び商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審においてした審尋(要旨)
当審において、平成21年6月16日付の審尋をもって通知した内容は、次のとおりである。
本願商標は、平成20年9月25日付けの拒絶査定(以下「査定」という。)において、同年4月24日付の拒絶理由通知書(以下「拒絶理由」という。)で通知した理由3(商標法第4条第1項第11号)に該当すると、認定、判断されたものであるが、本願商標について、当審において、職権により調査したところ、辞書、新聞記事及びインターネット検索情報等において、以下のとおり、掲載されている事実が認められるものである。
してみれば、本願商標「DFS」の文字は、本願商標の指定役務との関係において、「免税店」を意味する「duty−free shop」(デューティー・フリー・ショップ)の略称であることから、これを本願指定役務について使用しても、本願商標に接する取引者、需要者は、「DFS」の持つ意味合いから、「免税店における商品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」であることを認識するに止まり、単に役務の提供場所又は質(内容)を表すもので、自他役務の識別標識としての機能を具有しない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、本願商標の指定役務中「免税店における商品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」以外の役務に使用するときは、その役務の質について誤認を生じさせるおそれがあり、商標法第4条第1項第16号に該当するものであるから、拒絶理由で通知した理由1を解消するものではない。
1 「大辞泉(増補・新装版)」(89頁、株式会社小学館)
「DFS」の項目に、「[duty−free shop]デューティーフリーショップ。免税店」の記載がある。
2 「現代用語の基礎知識」(1409頁、2009年1月1日発行、自由国民社)
「外来語」のタイトルの「デューティー・フリー」の項目に、「[duty−free]無税の。免税の。免税店はデューティー・フリーショップ。」(duty−free shop DFS)。」の記載がある。
3 「Fujisankei Business i.」(2006年3月25日付け、2頁)
「【つかちゃんの笑window】笑いはEU国境を越えて」の見出しの下、「多くの人が行き交い、談笑する空港カフェ。DFS(免税店)で買った大荷物を抱えた人の中に、車いすの老人。」の記載がある。
4 「朝日新聞」(2005年9月6日付け、大阪朝刊 10頁)
「(情報ファイル)ニノミヤ、3店を新装開店【大阪】」の見出しの下、「会社更生手続き中の家電量販店ニノミヤ(大阪市)は5日、同市浪速区日本橋の電気街にある4店のうち3店を改装して10月1日にオープンすると発表した。免税品を扱う「DFS日本橋店」が、鉄道模型など趣味の商品を販売する店舗「ホビックス」に衣替え。」の記載がある。
5 「Fujisankei Business i.」(2005年1月9日付け、1頁)
「【ヒーロー&ヒロイン】JALUX空港業務部・中井弘子さん」の見出しの下、「JALUX(ジャルックス) JAL系の商社で、航空機部品の調達や機内用品の卸売りを業務とするが、飛行機の機内誌を活用した通信販売や、空港売店、DFS(免税店)など、一般消費関連事業でなじみも深い。」の記載がある。
6 「日刊工業新聞」(2002年2月7日付け、5頁)
「FTC、5月めどに秋葉原に家電免税店」の見出しの下、「エフ・ティー・シー(FTC、東京都千代田区外神田2の4の4、岡内英樹社長、03・5256・6501)は、5月をめどに東京・秋葉原に外国人観光客を対象にした家電商品のデューティー・フリー・ショップ(DFS・免税店)をオープンする。」の記載がある。
7 「スポーツ報知」(1998年6月10日付け、9頁)
「大相撲[新横綱・若乃花 お兄ちゃんINカナダ]過密スケジュールの改善提案」の見出しの下、「『生活に必要なものしか買わない』のが持論で、ブランド品ばかりのDFS(免税店)ではなく、カナダにしかない専門店に入るこだわりも愛情の表れだ。」の記載がある。
8 「フリー百科事典『ウィキペディア』」のウェブサイトにおける「DFS」の項目に、「免税店(duty−free shop)」の記載がある。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/DFS)
9 「Hatena::Keyword」のウェブサイトにおける「DFS」の項目に、「duty free shopの略。免税店のこと。」の記載がある。
(http://d.hatena.ne.jp/keyword/DFS)
10 「大和電化株式会社」のウェブサイトにおける「DENKI Station since1968」のタイトルの下、「会社紹介」の項目に、「弊社、DFS(免税店)です。海外のお客様もお気軽にお問い合わせください。」の記載がある。
(http://shop.nedan.co.jp/html/company.html)
第4 審尋に対する請求人(出願人)(以下「請求人」という。)の回答
請求人は、長年に亘り、小売又は卸売の役務に本願商標を使用していることから、本願商標をその指定役務に使用した場合、需要者が、請求人に係る役務であることを認識するものである。
よって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものであり、請求人はその事実を証明するために、証拠資料を提出する予定である。
第5 当審の判断
1 本願商標の商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の該当性について
前記第3の審尋で示した通知の内容のとおり、本願商標「DFS」の文字は、本願商標の指定役務との関係において、「免税店」を意味する「duty−free shop」(デューティー・フリー・ショップ)の略称であることから、これを本願指定役務について使用しても、本願商標に接する取引者、需要者は、「免税店における商品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」であることを認識するに止まり、単に役務の提供場所又は質(内容)を表すもので、自他役務の識別標識としての機能を具有しないものであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記指定役務以外の役務に使用するときは、その役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当するものである。
2 本願商標の商標法第3条第2項の該当性について
(1)請求人の主張及び提出した証拠について
請求人は、前記審尋の応答として、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備する旨主張し、平成22年2月2日付で発送された結審通知が送達後の同年2月5日付け上申書により、早急に証拠資料を提出する旨述べ、同年2月5日及び2月16日付け手続補足書により、本願商標が商標法第3条第2項に該当するとする証明を甲第1号証ないし甲第46号証として提出したものである。
(2)商標法第3条第2項について
商標法第3条は、同条第1項第一号ないし第六号に該当する商標については、商標登録できない旨の規定であるが、同条第2項において、「商標法第三条第一項第三号から第五号までに該当する商標であっても、使用された結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。」とされている。
そして、工業所有権法逐条解説[第17版](特許庁編集 社団法人発明協会発行 1173頁)によれば、「本条(商標法第3条)二項は、いわゆる使用による特別顕著性の発生の規定である。前述のように一項各号に掲げる商標は自他商品又は自他役務の識別力がないものとされて商標登録を受けられないのであるが、三号から五号までのものは特定の者が長年その業務に係る商品又は役務について使用した結果、その商標が、その商品又は役務と密接に結びついて出所表示機能をもつに至ることが経験的に認められるので、このような場合には特別顕著性が発生したと考えて商標登録をしうることにしたのである。」と説明されている。
また、知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)10441号判決(判決日 平成19年3月29日)(以下「判決例」という。)において、「商標法3条2項は、商標法3条1項3号等に対する例外として、『使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの』は商標登録を受けることができる旨を規定している。その趣旨は、特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識として長期間継続的かつ独占的に使用し、宣伝もしてきたような場合には、当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に、他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請は乏しいということができるから、当該商標の登録を認めるというものであると解される。そして、このような商標法3条2項の趣旨からすると、商標法3条2項の要件を具備し、登録が認められるための要件は、(1)実際に使用している商標が、判断時である審決時において、取引者・需要者において何人の業務に係る商品であるかを認識することができるものと認められること、(2)出願商標と実際に使用している商標の同一性が認められること、であると解される。」旨判示されている。
そこで、以上の観点を踏まえて、本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否かについて検討する。
(3)請求人の提出した証拠資料について
平成22年2月5日及び同年2月16日付け手続補足書により、請求人が提出した証拠は、以下のとおりである。
ア 「ハワイ本オアフ 2008」(甲第1号証ないし甲第5号証)、「ハワイスタイル 2008No.12」(甲第6号証ないし甲第10号証)、「日本語で大丈夫ハワイ」(甲第12号証ないし甲第15号証)、「沖縄スタイル 05」(甲第17号証及び甲第18号証、甲第20号証及び甲第21号証)、「沖縄リゾートスタイル 2005」(甲第23号証及び甲第24号証)、「沖縄 2007」(甲第26号証ないし甲第28号証)及び「オキナワ本 2008」(甲第30号証ないし甲第32号証)を掲載するウェブページの抜粋であり、「DFS」の文字が使用されていることは認められる。
イ 英語表記の記事であり、その訳文の一部に「ハワイの免税品小売店、DFSの売上げの94パーセントは日本人顧客によるものです。」の記載がある(甲第33号証)。
ウ 本審判請求人の共同創設者チャールズ・フィーニーの自伝の抜粋及びその部分訳文に「ハワイ、ホノルルのDFSの店舗の大きな成功は、1964年、東京オリンピックの開催と同時に、日本国政府がそれまでの禁止されていた余暇目的の旅行を解禁したことによります。」、「1969年、DFSは8先平方フットの免税店をダウンタウンにオープンしました。」等の記載がある(甲第34号証)。
エ 沖縄県那覇市内の大型免税店「DFSギャラリア・沖縄」に関するを記事であり、赤地の円内に白抜きし、右肩上がりに書された「DFS」の文字や、「DFSギャラリア」、「DFS Galleria」等の記載がある(甲第35号証ないし甲第46号証)。
(4)本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否かについて
ア 本願商標が、取引者・需要者において請求人の業務に係る役務であるかを認識することができるものであるかについて
提出された証拠資料を総合判断するに、請求人は、ハワイや沖縄で免税店を出店している事実は認められる。
また、沖縄に出店した免税店は、赤地の円内に、右肩上がりに書された白抜きの「DFS」や、「DFSギャラリア」や「DFS Galleria」と表示されていることから、請求人が、その出所を表示するものとして、これらの文字を使用している事実は認められる。
しかしながら、提出された証拠資料からすると、例えば、「ハワイ本オアフ 2008」等に掲載された「DFS」のみの表示は、特定の出所を表示するものとして使用されているのか否かが、明らかではなく、かつ、甲第2号証や、甲第4号証をみると、請求人の免税店名を表示したものとして、「DFSギャラリア・ワイキキ」の文字が使用されていることからすると、請求人が、「DFS」の欧文字3字のみからなる本願商標をその指定役務ついて使用し、実際に営業を行っている事実は見受けられないものである。
そして、その免税店に関連する記事も、ハワイと沖縄に関するものが中心で、日本国内のその他の地域に存在するのか否かも明らかではない。
また、提出された情報も、沖縄やハワイに関する情報誌やウェブサイトによるものであって、全国の一般需要者が接する機会が決して多いとは認定することができない。
さらに、一般需要者が接する機会が多いと認められるテレビや一般紙等の大衆向けマスメディアにおいて、請求人自らが、本願商標に関し、テレビCM等の宣伝・広告を行っている事実は認めることができない。
さらにまた、請求人は、本願商標の著名性を立証するために、例えば、同業他社からの「本願商標の著名性の証明書」あるいは「売上げ高、市場占有率」等に関する資料をなんら提出していない。
してみれば、本願商標は、本願商標に接する取引者・需要者をして、請求人の業務に係る役務であることを認識されるに至っていると認めることはできない。
イ 出願商標と実際に使用している商標の同一性について
本願商標は、「DFS」の欧文字3文字からなるところ、請求人の提出した証拠資料をみるに、そこで使用されているのは、赤地の円内に、右肩上がりに書された白抜きの「DFS」や、「DFSギャラリア」や「DFS Galleria」の文字であり、本願商標の構成態様とは、実質的に異なるといえるものである。
してみれば、提出された証拠資料からは、客観的に本願商標と実際に使用されている商標が同一であるとは認められないものである。
(5)小括
したがって、本願商標は、取引者・需要者において請求人の業務に係る役務であるかを認識することができるものとは認められず、かつ、その使用について、同一とは認められないものであるから、商標法第3条第2項の要件を具備するものとは認められない。
なお、請求人は、平成22年2月16日付けで、審理再開申立書を提出しているが、前記(3)及び(4)で述べたとおり、本合議体は、本願商標が商標法第3条第2項に該当するとの心証が得られなかったため、審判長は、審理再開の必要性はないと判断したものである。
3 本願商標の商標法第4条第1項第11号の該当性について
引用商標1の商標権は、商標登録原簿の記載によれば、平成21年1月27日付けで商標法第50条第1項に基づく商標権一部取消し審判の請求(取消2009−300158)がなされ、引用商標1の指定商品中「時計」については、その登録を取り消す旨の審決がされ、その審判の確定登録が、同年7月16日にされているものである。
また、引用商標2の商標権は、商標登録原簿の記載によれば、平成21年1月27日付けで商標法第50条第1項に基づく商標権一部取消し審判の請求(取消2009−300159)がなされ、引用商標2の指定商品中「傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」については、その登録を取り消す旨の審決がされ、その審判の確定登録が、同年7月13日にされているものである。
その結果、本願の指定役務は、引用商標1及び引用商標2の指定商品とは、類似しないものになった。
4 まとめ
以上からすると、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものであるとしても、同法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し、かつ、同法第3条第2項の要件を具備しないものであるから、本願を拒絶した原査定は妥当であって、これを取り消すことはできない
よって、結論のとおり審決する。
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