Trademark Appeal Case
他人の周知商標との同一性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2010−900105(T2010−900105/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5295598号商標(以下「本件商標」という。)は、「福島交通」の文字を標準文字で表してなり、平成21年2月26日に登録出願、同年12月7日に登録査定、第36類「生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」及び第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,道路情報の提供,自動車の運転の代行,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,貨物の積卸し,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,駐車場の提供,駐車場の管理,自動車の貸与,機械式駐車装置の貸与」を指定役務として、同22年1月22日に設定登録されたものである。
その後、商標権は、商標登録原簿の記載によれば、平成23年1月6日に一部放棄の申請がなされ、第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,道路情報の提供,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ」については、その登録が抹消されているものである。
2 登録異議申立の理由の要点
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第8号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号ないし第117号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、福島交通株式会社が、「生命保険契約の締結の媒介,車両による輸送」等の業務に使用して、同社を表示するものとして需要者の間に広く知られている(甲第2号ないし第93号証)「福島交通」標章(以下「使用商標」という。)と、同一である。
(2)商標法第4条第1項第15号について
使用商標は、福島交通株式会社の商標として広く知られているので、これと同一の本件商標がその指定役務に使用された場合、役務の出所について混同を生ずるおそれがある。
(3)商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、他人である福島交通株式会社の著名な略称である「福島交通」と同一である。
(4)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、日本国内における需要者に広く認識されている使用商標と同一であり、不正の目的で取得したものである。
3 当審における取消理由
当審において、登録異議申立に基づき、商標権者に対して平成22年10月29日付けで通知した取消理由は、別掲のとおりである。
4 商標権者の意見
前記3の取消理由に対し、商標権者は、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同第19号に該当しない理由を、要旨以下のように意見を述べている。
(1)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 申立人は、使用商標は需要者の間に広く認識されている旨を主張しているが、福島交通株式会社が、「生命保険契約の締結の媒介」に係る商標として使用されているのは、アメリカンファミリー生命保険会社の業務に係る役務であることを表示する「Aflac/アフラック」という標章のみである(甲第13号証)。
したがって、第36類の「生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出」について、福島交通株式会社の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとは認められない。
イ 申立人は、福島交通株式会社のグループ会社において、自動車整備・車両販売・自動車用品の販売の役務を行っている旨を主張するが、その証左として確認できるのは、福交整備株式会社のパンフレット(甲第115号証)のみであり、当該パンフレットに、使用商標は一切使用されていない。
したがって、第39類の「自動車の運転の代行,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,貨物の積卸し,駐車場の提供,駐車場の管理,自動車の貸与,機械式駐車装置の貸与」について、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとは認められない。
ウ 以上のとおり、本件商標は、商標権者による前記商標権の一部放棄後の指定役務について、他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であって、その役務又はこれらに類似する役務に使用をするものではないから、商標法第4条第1項第10号には該当しない。
(2)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 商標権者が本件商標を出願した平成21年2月26日の時点において、既に福島交通株式会社は東京地方裁判所に対し、会社更生手続開始申立を行っており(平成20年4月11日申立て)、福島交通株式会社の経営が破綻した事実は公のものとなっていた。
そして、本件商標の出願時(平成21年2月26日)には、福島交通株式会社の会社更生手続きは終結決定がなされておらず、更生手続きは廃止され破産手続きに移行する可能性も十分にあった。
仮に、裁判所が福島交通株式会社の会社更生手続の終結決定を出した後の出願であれば、裁判所によって会社の更生が認められ、今後も存続する会社に関することですので不正の目的が推認されても致し方ないところだが、本件商標の出願の時点は、未だ福島交通株式会社の会社更生が上手くいくか、破産するか不明な状態での出願であり、そのような時点での本件商標登録出願に不正の目的を推認されることは有り得ない。
そうでなければ、福島交通株式会社の会社更生手続きが上手くいった場合には商標権者に不正の目的があったこととなり、会社更生手続きか失敗し破産宣告となった場合には、商標権者に不正の目的がなかったと判断されることとなり、会社更生の結果如何で、商標権者の意思とは無関係に、後付けで商標権者に不正の目的が邪推されることとなる。
イ 本件商標権の一部放棄後の指定役務については、他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であって、その役務又はこれらに類似する役務に使用をするものは一切含まれていない。
したがって、本件商標権の一部放棄後の指定役務については、原審説示の如き「これが登録されていないことを奇貨として、本件商標を先取り的に登録出願し登録を得たものと推認せざるを得ない」との取消理由は当てはまらず、仮に同理由により本件商標登録が取り消されるようなことがあれば、一定程度の周知性を有する商標について、その指定商品・役務に関わりなく一切商標登録が受けられず、仮に商標登録を受けたとしても、その全部が「先取り的に登録出願し登録を得たもの」として取消理由・無効理由を有することとなってしまい、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を目的とし、かつ先願登録主義を建前とする我が国法制が根本から瓦解することとなる。
ウ これまでも本件商標権を濫用したり、福島交通株式会社に対して本件商標権を行使した事実もなく、商標権者が本件商標を「不正の目的をもって使用」した事実はないから、商標権者による前記商標権の一部放棄後の本件指定役務については、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第10号該当性について
商標権者は、商標権の一部放棄後の指定役務については、商標法第4条第1項第10号には該当しない旨主張している。
しかしながら、本件商標が、商標法第4条第1項第10号及び同第19号に該当しないというためには、その出願時において当該各号に該当せず、かつ、査定時においても該当しないものでなければならない(商標法第4条第3項)ところ、本件商標の登録出願時及び査定時における指定役務は、前記1のとおりであって、たとえ、審判段階において、その指定役務について商標権の一部放棄により、第39類「鉄道による輸送,車両による輸送,道路情報の提供,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ」について、その登録が抹消されたとしても、登録出願時及び査定時において含まれていたことは明らかである。
そして、「福島交通」の文字は、福島交通株式会社が、永年にわたり自己の業務に使用し、本件商標の登録出願時及び査定時において、取引者、需要者の間に広く知られているものであって、本件商標と同一のものであり、かつ、その業務に係る役務も本件指定役務と同一又は類似のものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号該当性について
商標権者は、本件商標を出願した平成21年2月26日の時点においては、福島交通株式会社の会社更生が上手くいくか、破産するか不明な状態であるから、そのような時点での出願に不正の目的を推認されることは有り得ない。本件商標権の一部放棄後の指定役務については、他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であって、その役務又はこれらに類似する役務は一切含まれていない、また、本件商標を「不正の目的をもって使用」した事実はないから、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当しない旨主張している。
しかしながら、商標法第4条第1項第19号の適用については、前記(1)に記載の趣旨と同様であって、また、同号については、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。) 」と規定するところ、同号は、もともと只乗り(フリーライド)のみならず、稀釈化(ダイリューション)や汚染(ポリューション)の防止をも目的とする規定であり、そこでは、例えば、同第15号が出所の誤認混同のおそれを要件として規定しているのとは異なり、これを要件として規定することはしていない。また、商標法第4条第1項第19号は、問題とされる商標が外国において周知であるときは、日本国内における周知性は問わないものとしている。これらのことからすれば、同号の要件としての周知性は、誤認混同のおそれの防止を直接の目的とするものではなく、同号によって守られるに値する商標としての最低限の資格を設定するものにすぎないというべきであり、そうであるとすれば、当該商標が周知となっている商品と出願商標の指定商品との関係は、直接には問題にはならず、ただ、両商品の関係が、他の要素(例えば、出願人の方に、周知商標の存否に関係なく、出願商標を指定商品に使用する意思や必要があったか否か、など)ともからんで、不正の目的の有無を判断するための一要素となるにすぎないというべきである」(東京高等裁判所平成14年(行ケ)第97号 平成14年10月8日判決参照)と判示されているものである。
そうとすると、使用商標は、取消理由通知に記載のとおり、福島交通株式会社が、「鉄道による輸送,車両による輸送,道路情報の提供,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ」等に関する役務の提供に、永年にわたって使用し、本件商標の登録出願時及び査定時において、同社の業務を表すものとして需要者間に広く認識されているものと認められる。
そして、商標権者は、福島交通株式会社の株主であったこと、福島交通株式会社の再建に係る一連の経緯について一定の事情を知り得る立場にあったこと、その後、商標権者は株主ではなくなったこと、及び、本件商標登録の出願は福島交通株式会社の許可なく行われたこと等の事実を総合して勘案すれば、商標権者は、偶然に「福島交通」の文字を採択したものとみることはできない。
そうとすれば、商標権者は、「福島交通」の文字について、これが有する信用又は名声に便乗して利益を得ようとする目的をもって、本件商標の登録出願をしたものと推認せざるを得ないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
また、本号は、「只乗り(フリーライド)のみならず、稀釈化(ダイリューション)や汚染(ポリューション)の防止をも目的とする規定」との上記判決の趣旨に照らせば、商標権者による不正の目的をもって使用した事実の有無や福島交通株式会社の再建の状況如何が、不正の目的をもって使用することを防止することをも目的とする本号の規定の判断に、影響を及ぼすものではない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は、商標法第43条の3第2項により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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