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Trademark Appeal Case

公序良俗違反と地域名商標

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2010−18380(T2010−18380/J1)
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、「おわら風乃舞」の文字を標準文字で表してなり、第30類「米」を指定商品として、平成21年3月3日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、『おわら風乃舞』の文字を標準文字で表してなるものである。ところで、八王子市では、商店街の活性化を目的に、富山県八尾町に伝わる民謡行事『おわら風の盆』を元とした、『越中八尾おわら風の舞in八王子』を開催しており、本場の踊りをみることができるとして人気を博している。そして、インターネット情報等によると、『おわら風の舞』の文字からは、このイベントを理解するものといえる。そうすると、本願商標は、『越中八尾おわら風の舞in八王子』に通じる『おわら風の舞』の文字と類似するものであるから、このようなものを個人である出願人が自己の商標として採択使用することは、地域活性事業の円滑な推進を害するおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断

(1)本願商標

本願商標は、前記1のとおり、「おわら風乃舞」の文字を書してなる。該文字は全体としても、「おわら」及び「風乃舞」の各構成文字においても、既成語として辞書類への記載はない。

(2)商標法第4条第1項第7号について

商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、商標登録を受けることができないと規定する。ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、a.その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、b.当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、c.他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、d.特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、e.当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(知的財産高等裁判所 平成17年(行ケ)10349 同18年9月20日判決)。

(3)原査定は、本願商標は、「越中八尾おわら風の舞in八王子」(以下「八王子のイベント」という。)に通じる「おわら風の舞」の文字と類似するものであるから、このようなものを個人である出願人が自己の商標として採択使用することは、地域活性事業の円滑な推進を害するおそれがあるとして、本願を拒絶したものである。そこで、これを上記判決に当てはめてみるに、原査定は、本願商標を指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反することになる(上記b)、又は、本願商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない(上記e)と判断したと考えられるので、この点について以下に検討する。

(4)富山市八尾地区の祭り「おわら風の盆」及び八王子のイベントについて

ア 「越中八尾おわら風の盆」について

富山県富山市八尾地区の祭りである「おわら風の盆」(以下、「八尾地区の祭り」という。)は、300年以上の歴史(元禄15年(1702年)が起源とされる)を有するもので、民謡にあわせて踊り(舞い)、町流し、輪踊り等が行われる祭りとして全国的に有名であり、特に、夕方から夜にかけて、八尾地区の町並み等を背景とした踊り手達が、民謡にのって無言で舞う風景が幻想的であるとして知られているものである。

なお、該祭りの舞いには、「女踊り」、「男踊り」などの名称があるが、それらが「おわら風の舞」と称されている事実は見当たらない。また、「おわら」の語源については、江戸時代に「おわらい(大笑い)」という言葉を差しはさんで町内を練り回ったことなど諸説あるが、現在において特定の意味合いを表すものとは認識されていない。

イ 八王子のイベント「越中八尾おわら風の舞in八王子」について

八王子のイベントは、有名な八尾地区の祭りの雰囲気を来場者に感じてもらうことを特長とし、地元商店街等への集客効果を期待しているもので、東京都八王子市の八王子駅北口周辺において、地元商店街振興組合が中心となって、毎年9月中旬の一日に開催されているものである。該イベントでは、例年、本場の八尾地区の祭りの踊り手を招き、町流し、輪踊り等が行われており、来場者数は、100人ほどの踊り手を含めて3万人程度(2008年9月20日 読売新聞東京朝刊)である。

該イベントの開催は、2004年(平成16年)が初めてであり、昨年(平成22年)まで7回開催されているが、現在のイベントの名称である「越中八尾おわら風の舞in八王子」を採択したのは、2008年(平成20年)からであり、それ以前の名称(名称中)には「おわら風の舞」の語は使用されていない。なお、それ以前は「おわら風の盆」等の語が使用されていた。また、現在のイベントの名称となった平成20年以降においても、該イベントを表すときに「おわら風の舞」の部分のみを略称として使用している事実は認められない。

そして、該イベントの会場においては八尾地区の祭りの公式グッズは販売しているが、該イベントの名称そのものを地域の特産品や土産物に使用するなどして、積極的に地域の活性化を図ろうとするような活動は見当たらない。

(5)本願商標の指定商品は「米」であるところ、八王子のイベントの会場を含む八王子市の平成20年農業産出額は米と麦をあわせて約4000万円であり、米については、八王子高月地区産の米を「高月清流米」と称して販売している事実(八王子市の農林業と農業委員会の概要 平成22年9月 八王子市産業振興部農林課 八王子市農業委員会事務局)が見受けられるが、同市において「おわら風の舞」の語を使用して、米の生産、販売を行っている事実は見当たらない。

(6)商標法第4条第1項第7号の適否

前記(4)及び(5)で認定した事実によれば、八王子のイベントは、八王子駅北口周辺の商店街の組合等が、該イベントの集客効果により商店街の活性化を図ることを目的に開催しているイベントである。そして、来場者数も約3万人であって、同市の人口(約55万人)等を考慮すると、その来場者は、八王子市周辺の者を中心とすると考えられ、広く各地から参加しているというような事情は認められない。さらに該イベントの開催数はわずかに7回(7年)であり、しかも現在のイベントの名称を使用したのは、平成20年からであることからすると、該イベント及びその名称は、八王子市及びその周辺を除いては、広く知られているとは認められない。しかも、該イベントの主催者等が、イベントの名称から「おわら風の舞」の部分を略称として使用している事実も認められないから、当該部分がそのイベントの略称として知られているとも認められない。

そうすると、当該イベント及びその名称が広く知られているとまではいえず、その地域の観光資源として保護すべき事情もないから、請求人が、本願商標を指定商品である「米」について使用することが、社会公共の利益に反するとはいうことはできない。

また、八王子のイベントの開催目的は上記のとおりであり、イベントの名称や略称を地域の特産物などに使用し地域経済の活性化を図る事を目的とするものであるというような事情は窺えない。しかも、八王子市の米の生産量は、非常に少なく、八王子のイベントが商店街の活性化を目的として開催されていることからすると、該イベントの主催者等がその名称等を米に使用することは考え難い。

そうとすると、請求人が本願商標を指定商品である「米」について使用することが、八王子地域の地域活性事業の円滑な推進を害するおそれがあるともいうことができない。

そして、請求人は、「おわら風の盆」の開催地である富山市八尾地区において、米の生産、販売を行っている者であり、請求人が本願商標を採択した理由は不明であるものの、「おわら風の盆」は、幻想的な舞が知られていることから、地元の祭りにあやかって「舞」の語を使用した商品名として採択することは不自然とはいえず、上記のとおり、八王子のイベントが広く知られているとは認められないことからすると、八王子のイベントの著名性への便乗若しくはその名称(略称)に係る商標の登録を得てそれを独占することを目的として本願商標を登録出願したとは考え難い。

そうとすると、本願商標について、不正の目的をもって商標登録を受けようとしたということはできない。

してみれば、本願商標を指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということはできず、本願商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないようなものであるということもできない。

その他、本願商標が、商標法第4条第1項第7号でいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するという理由は発見できないので、同号に該当するとはいえない。

(7)したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。

その他、政令で定める期間内に、本願について拒絶の理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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