Trademark Appeal Case
周知商標の不正出願
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2009−900353(T2009−900353/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5237474号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成20年10月29日に登録出願され、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成21年5月1日に登録査定、同年6月12日に設定登録されたものである。
2 引用標章
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する標章は、別掲2のとおりの構成(ただし、星が着色されている以外は、本件商標とほぼ同一の図形商標。以下「使用標章」という。)よりなるものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第19号、同第10号又は同第7号に違反して登録されたものであるから、本件商標の登録は、同法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号ないし第74号証(枝番を含む。ただし、枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出した。
(1)理由1(商標法第4条第1項第19号違反)
使用標章は、申立人が製造・販売するベビーウェアやマタニティウェアのブランド「X−girl Stages」(以下「本件ブランド」という。)の商品やウェブサイト等において、2002年以降本件ブランドの定番マークとして幅広く使用されており、その結果、ベビーウェア等を取り扱う取引業者や消費者の間で広く認識されるに至っている。
本件商標は、この使用標章と全く同一の商標であり、かつ、「不正の目的」をもって使用するものである。
(2)理由2(商標法第4条第1項第10号違反)
ア 申立人の本件ブランドのベビーウェア等は、多くのファッション雑誌や育児雑誌に取り上げられるなど、今日においては日本国内の需要者の間で広く認識されているとともに、使用標章も本件ブランドの定番マークとして、ブランド設立当初より、ほとんどすべての商品に付され、今では需要者の間で広く認識されていることは明らかである。
イ また、申立人は、本件ブランドの定番マークとして、使用標章の他に、ハートの図形標章(ハート型の枠の中に顔を描いたもので、本件ブランドの名称である「X girl Stages」の頭文字を使用して、左目を「X」、右目を「G」、舌を「S」の文字でデザインされている。以下「図形標章」という。)も使用している。
商標権者は、本件商標と同時に、この図形標章と全く同一の商標も同日付けで出願している。このように、商標権者は、本件商標だけにとどまらず、図形標章も共に出願しているが、いずれの商標も需要者の間で周知となっていることに鑑みれば、商標権者は、これらが正当な権利者によって未だ日本で出願されていないことを奇貨として、先取り的に出願したことは明らかである。
(3)理由3(商標法第4条第1項第7号違反)
ア 商標権者は、需要者の間で広く認識されていた使用標章と図形標章を申立人が既に使用していることを認識しながら、申立人による使用を排除するため、又は申立人による商標出願を妨害することを目的に、それらと全く同一の商標を出願したものである。
このように不正の目的で他人の標章を冒用し出願した商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する。商標権者は、出願の取り下げを要求する通知書(甲第53号証)を受領した後に、さらに、申立人が既に使用している標章をわざわざ出願していることからすると、商標権者には、申立人による商標の使用を排除し、申立人の商標出願を妨害することを目的とした明らかな悪意が認められる。
イ また、商標権者は、申立人の商標に限らず、甲第58号ないし第74号証に示す証拠のとおり、他社が使用している商標も多数剽窃のうえ出願していることからすると、非常に悪質であるといえる。
4 当審における取消理由
当審において、登録異議申立に基づき平成22年4月27日付けで商標権者に対して通知した取消理由は、要旨以下のとおりである。
(1)使用標章の周知性について
ア 甲第2号ないし第16号証は、申立人会社の各種カタログ(写し)であるが、そのうち、本件商標の登録出願前のカタログ(甲第2号ないし第14号証)は、以下のとおりである。
(ア)甲第2号証には、表紙の中央右側に本件ブランドと、その下に「FALL & WINTER 2003」の表示が、また、3枚目のTシャツの胸部及び腹部に、使用標章が表示されている。
(イ)甲第4号証の4枚目及び7枚目のTシャツの胸部及び腹部に、使用標章が表示されている。
(ウ)甲第5号証の8枚目のTシャツの胸部に、使用標章が表示されている。
(エ)甲第6号ないし第10号証及び第12号ないし第14号証のカタログ中のTシャツ等にも、使用標章が表示されている。
イ 甲第17号証は、平成21年9月11日付け申立人会社の法務担当「中村巧」の陳述書であるところ、「1.本件商標の盗用・剽窃出願」、「2.当社における同一商標の使用」、「3.同一商標の使用期間、使用地域(店舗数)など」、「4.『X−girl Stages』ブランドの売上高」、「5.『X−girl Stages』ブランドの広告宣伝活動」、「6.最後に」の各項目が設けられ、各項目の内容に沿って、例えば、「2.当社における同一商標の使用」には、上記甲第2号証ないし甲第16号証の各種カタログが挙げられており、同じく、「3.1 使用開始時期」には、「当社は、2002年5月のブランド創設当初より、本件マークA(審判注:使用標章)をブランドの定番マークとして、...」と記載されており、同じく、「4.『X−girl Stages』ブランドの売上高」には、「2002年度 97,000,000円から、2008年度 869,000,000円」の売上高を示す表が掲載され、同じく、「5.1 ファッション雑誌などへの掲載」には、2007年1月発行から2009年7月発行のまで、小学館や祥伝社などの雑誌29種類が挙げられ、同じく、「5.2 当社における『X−girl Stages』ブランドの広告宣伝費」(注:5.2は、5.3の間違いと思われる。)には、「2002年度 5,000,000円から2008年度 18,000,000円」の広告宣伝費を示す表が掲載されている。
ウ 甲第18号証は、ピスネームの写し(注:グーグルによれば「タグ」のこと、と説明あり。)で、使用標章が表示されている。
エ 甲第19号証は、申立人が「ブランドマーク」と主張する本件ブランド「X−girl Stages」のホームページの写しであるが、表紙及び2、3、5頁に、使用標章が表示されている。
オ 甲第20号ないし第51号証は、雑誌「tocotoco vol. 01」(2007年1月)から、雑誌「X−girl Stages 2009 Fall&Winter」までの各種雑誌のコピーであるが、そのうち、本件商標の登録出願日前のものは、甲第20号ないし第34号証であって、甲第31号及び第32号証には、使用標章が表示されている。そして、甲第48号証ないし甲第51号証の雑誌中にも、使用標章が表示されている。
カ 甲第53号証は、申立人から本件商標権者「(有)ハーベイ・ボール・スマイル・リミテッド」宛の内容証明郵便「通知書」、内容証明郵便と共に別便で発送した「書類送付書」及び「配達証明書」である。
キ 甲第54号証は、「ジャス・インターナショナル(株)」の上記カの「通知書」に対する「回答書」であるが、同人の主張によれば、商標権者は、同人の関連会社であり、同人は商標権者の代理人である旨の説明がなされている。
ク 甲第55号ないし第74号証は、他の登録出願若しくは登録商標の情報及び楽天ほかのホームページの写しであって、申立人の主張によれば、剽窃して登録出願したか、登録したとする情報である旨述べている。
上記した甲各号証によれば、本件商標の登録出願前の甲第2号ないし第14号証のカタログ中のTシャツ等に、使用標章と事実上同一視できる商標が表示されていることが認められ、本件商標の登録出願前の雑誌である甲第31号及び第32号証並びに登録出願日後の甲第48号ないし第51号証の雑誌にも、使用標章が表示されていることが認められる。
そして、本件商標の登録出願日後である甲第17号証の申立人会社の法務担当「中村巧」の陳述書には、ブランドの定番マークとしての使用標章の使用開始時期が、2002年5月のブランド創設当初からであること、ブランドの売上高が2002年度が97,000,000円であり、2008年度が869,000,000円であること、ブランドの広告宣伝費が2002年度が5,000,000円であり、2008年度が18,000,000円であるとする表が掲載されており、使用標章を付した商品の売上高、使用標章に関する単独の広告宣伝費が明らかでないとしても、相当程度の広告宣伝費を費やしているといえるものである。
そうすると、前記した甲各号証及び申立人の主張を総合すれば、使用標章は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、日本国内における需要者の間に広く認識されていた商標と認められるものである。
(2)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 使用標章について
使用標章は、前記(1)で認定したとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されている標章と事実上、同一と認められるものである。
イ 本件商標と使用標章との比較
本件商標は、別掲1のとおり、星形に目と口を描いて顔を擬人化したごとき構成からなるものである。
これに対し、使用標章は、別掲2のとおり、黄色や白色等で着色された星に目と口を描いて顔を擬人化したごとき構成からなるものであって、着色の有無を除けば、本件商標と事実上、同一の商標といえるものである。
ウ 不正の目的
以上のとおり、別掲1の構成からなる本件商標を、商標権者が偶然に創案したものとは到底考え難く、商標権者による本件商標の取得には、使用標章が日本国内における需要者の間に広く認識されている商標であることを認識した上で、これに積極的にフリーライドし、その顧客吸引力を利用しようとするものであり、不正の利益を得ようとする不正の目的をもって使用するものと推認せざるを得ない。
エ まとめ
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるというべきであるから、同法第43条の3第2項によって、取り消されるべきである。
5 商標権者の意見
前記4の取消理由に対し、商標権者は、次のように意見を述べている。
(1)申立人は、商標権者の「本件商標」を、「従前より使用している商標を剽窃のうえ出願した」等の主張を行っているが、そもそも「使用標章」自体が独創的、オリジナリティーがあるとは思えない。
単に「目と口」を「星形」の中にプラスしただけのもので、この様なものは人類が誕生して以来あらゆる国や地域で使用された事がある図形に過ぎず、申立人のものであるとの主張は誤りである。
そもそも「使用標章」の基本は、日本では昭和45年(1970年)当時大流行した「スマイリー・フェイス」であり、日本名の「ニコニコ・マーク」「ラブ・ピース」図形の亜流に過ぎない。申立人の独創性もなく権利主張が出来ないものである。
従来から、「使用標章」は、1963年末米国でハーベイが創作・著作した「スマイリー・フェイス」の一環として存在したものであり、その特徴である「目と口」をモチーフとしてただ単に修正、工夫したに過ぎなく、申立人の創作性は全くない。「著作権」の二次使用に過ぎない。
(2)申立人は、各雑誌の「使用標章」を取り上げたものを提出して、日本国内で「使用標章」が有名であると主張する。しかし、この程度の雑誌での露出が全国津々浦々の消費者が申立人の「使用標章」の商品として認識したとは言えない。商標権者がランダムに選んだ若い世代のアンケートでも誰一人としてその事実を認識してはいなかった。その理由は、使用標章が「スマイリー・フェイス」のあくまで亜流であり、さしたる特徴がないためである。
6 当審の判断
(1)本件商標は、別掲1のとおり、星形の図形に目と口を描いて顔を擬人化した如き図形からなるところ、前記4の取消理由で認定したとおり、2002年から被服等に使用されて、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、日本国内における需要者の間に広く認識されていた、顕著な特徴を有する使用標章に酷似する構成よりなるものである。
そうすると、商標権者は、本件商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されている商標と類似のものであることを承知のうえで、当該商標の顧客吸引力に便乗し不当な利益を得る等の目的のもとに出願し、権利を取得したものと推認せざるを得ないところであって、本件商標の使用により使用標章の出所表示機能を希釈化させたり、その名声等を毀損させるおそれがあるから、本件商標は、不正の目的をもって使用する商標に該当するというべきである。
したがって、前記4の取消理由は妥当なものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
(2)これに対して、商標権者は意見を述べているが、以下の理由により採用することができない。
ア 使用標章の独創性について
申立人は、商標権者が「(申立人が)従前より使用している標章を剽窃のうえ出願した」等と、商標権者が犯罪的行為をしているような主張を行っているが大変不快である。そもそも「使用標章」自体が、独創的、オリジナリティーがあるとは思えない。単に「目と口」を「星形」の中にプラスしただけのもので、この様なものは人類が誕生して以来、あらゆる国や地域で使用されたことがある図形に過ぎず、申立人のものであるとの主張は誤りである旨主張している。
しかしながら、本件商標は、別掲1のとおり、独創性の高い特徴的なデザインからなるものといい得るものであって、かつ、使用標章とほぼ同一ともいうべき酷似した構成よりなるものと認められる。
また、商標権者は、本件商標のような図形は、あらゆる国や地域で使用されたことがある図形に過ぎない旨主張しているが、それを証明する証拠の提出はない。
他方、使用標章は、申立人の商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていた商標であることは、前記4(1)「使用標章の周知性について」のとおりであって、だれもが容易に採択し得る単なる星の図形であると認めることはできない。
そうすると、商標権者が、星の図形からなる本件商標を、偶然に採択したとみることは困難であるというほかなく、むしろ、ベビーウェア等に使用されて広く認識されている使用標章について、これが使用される被服の分野において登録されていないことを奇貨として、使用標章と類似する本件商標を先取り的に登録出願し、登録を得たものと考えざるを得ない。
したがって、本件商標は、不正の目的をもって使用する商標といわなければならないから、商標権者の上記主張は採用できない。
イ 使用標章の周知性について
申立人は、雑誌の使用標章を取り上げたものを提出し、日本国内で使用標章が有名であると主張するが、この程度の雑誌での露出が全国津々浦々の消費者が、申立人の使用標章の商品として認識したとは言えない。ランダムに選んだ若い世代のアンケートでも、誰一人としてその事実を認識してはいなかった。その理由は、使用標章が「スマイリー・フェイス」のあくまで亜流であり、さしたる特徴がないためである、と主張している。
しかしながら、使用標章の周知性については、前記4(1)のとおりであって、本件商標と同一又は類似の使用標章は、申立人により、遅くとも本件商標の出願日(平成20年10月29日)より6年以上前の平成14年(2002年)5月までには採択され、それ以降、申立人の商品やウェブサイトの広告等に使用され、ファッション雑誌や育児雑誌に取り上げられ、相当程度の宣伝広告費を費やした結果、使用標章が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、日本国内における需要者の間に広く認識されていたというべきである。
したがって、商標権者のこの主張も採用することができない。
(3)結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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