Trademark Appeal Case
方言の識別力と周知性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2009−900319(T2009−900319/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5231576号商標(以下「本件商標」という。)は、「いちゃりば兄弟」の文字を標準文字で表してなり、平成20年8月1日に登録出願、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、平成21年4月23日に登録査定、同年5月15日に設定登録されたものである。
2 本件登録異議申立ての理由
本件登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第35号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)本件商標について
本件商標である「いちゃりば兄弟」は、「行逢えば兄弟」の沖縄方言で、島言葉として広く使われ、「兄弟」は「ちょーでー」と読み、全体の称呼は「いちゃりばちょーでー」である。
その観念は、「行逢えば兄弟」すなわち一度知り合えば皆友達、ひとたび知り合えば皆兄弟も同然といったものである。
(2)第三者の使用について
ア 申立人は、平成17年5月15日より福岡市に沖縄風の居酒屋を営業しており、「いちゃりば兄弟 行集談四郎商店」(以下「引用商標1」という。)を店舗名として使用してきた(甲第2号証ないし甲第21号証)。「いちゃりば兄弟 行集談四郎商店」は、申立人の展開する著名なラーメン店「一風堂」とともに雑誌で紹介され(甲第25号証ないし甲第27号証)、また、申立人のウエブサイトにおいて、著名な「一風堂」の系列店として認識されている。
イ 本件商標の出願時点で、「いちゃりば兄弟 焼とり 前佛」(以下「引用商標2」という。)を店舗名とする、沖縄の雰囲気が楽しめる焼とり店が名古屋市内に2店存在していた(甲第30号証、甲第30−2号証、甲第31号証)。
ウ 平成10年から福岡県大牟田市に、「いちゃりばちょーでー」(以下「引用商標3」という。)を店舗名とする沖縄料理店が営業している(甲第32号証、甲第32−2号証、甲第32−3号証)。
エ 大阪市大正区に「いちゃりば」(以下「引用商標4」という。)を店舗名とする沖縄料理店が存在する(甲第33号証の2)。
(3)理由の要点
本件商標を出願した時点で、引用商標1ないし3が他人の店舗名称として広く使用されていた。そして、引用商標1及び2は、店舗名称にそれぞれ「いちゃりば兄弟」を含んでいる。また、引用商標3の「いちゃりばちょーでー」は、「行逢えば兄弟」の沖縄方言であり、ひとたび出逢えば皆兄弟のようなもの、一度知り合えばみんな友達、といった意味である。沖縄方言では、兄弟を「ちょーでー」と発音する。すなわち、「いちゃりば兄弟」は「いちゃりばちょーでー」と、称呼、観念が同一である。
さらに、本件商標「いちゃりば兄弟」は、その言葉の意味合いから、沖縄風の居酒屋や沖縄料理店では、店舗名のみならず、その店舗の経営理念を示すものとして、広く日常的に使用されている言葉である(甲第34号証)。また、引用商標4が店舗名として使用され、親しまれている。
したがって、本件商標を店舗名として独占排他的に登録することは、それらの飲食店の提供するサービスを阻害することになるので、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
また、本件商標は、他人の名称を含むことから同法第4条第1項第8号に該当する。
さらに、引用商標1及び2が、それぞれ他人の名称として広く知られていたものであるから、本件商標は、同法第4条第1項第10号にも該当する。
3 当審の判断
(1)本件商標について
本件商標は、「いちゃりば兄弟」の文字よりなるところ、申立人が述べるように、これが沖縄方言として「ひとたび出逢えば皆兄弟のようなもの」程の意味合いを有し、また「イチャリバチョーデー」と称呼される場合があるとしても、申立人の提出した証拠によっては、さほど知られた方言ということもできないから、一般の需要者がこれを広く知り得ているとはいい難いものである。
してみれば、本件商標は、その構成文字に相応して「イチャリバキョウダイ」の称呼を生じ、特定の観念を生じない造語よりなるものとみるのが相当である。
(2)引用各商標について
ア 引用商標1は、「いちゃりば兄弟 行集談四郎商店」の文字を書してなるところ、申立人提出の甲第2号証ないし甲第5号証、甲第7号証ないし甲第16号証、甲第20号証、甲第21号証、甲第23号証、甲第24号証及び甲第27号証によれば、申立人は、平成17年(2003年)5月15日に福岡市中央区に、引用商標1を店名とする沖縄風居酒屋を開店し、以来、現在に至るまで同店名を使用していることは伺えるものの、1店舗のみの上記使用をもって、引用商標1が需要者の間に広く知られているものとは認められない。
なお、申立人は、顧客名簿(甲第35号証)を提出し、福岡以外にも、九州地方、沖縄、山口県などの隣接地域はもとより、東京にも顧客が多数存在する旨主張しているが、同名簿の総数をみても、わずか二百数十人に過ぎず、これをもって周知とはいうことができない。
また、申立人は、同人の展開するラーメン店「一風堂」の著名性故に、系列店の店名である引用商標1が広く認識されるに至っている旨主張するが、仮に、系列店が著名であったとしても、それをもって引用商標1が広く知られているとは到底認めることはできない。
イ 引用商標2は、「いちゃりば兄弟 焼とり 前佛」の文字を書してなるところ、申立人提出の甲第30号証、甲第30−2号証、甲第31号証及び甲第33号証によれば、愛知県名古屋市に引用商標2を店名とする焼とり店が2店舗存在することは確認できるものの、上記証拠をもって引用商標2が需要者の間に広く知られているものとは認められない。
ウ 引用商標3は、「いちゃりばちょーでー」の文字を書してなるところ、申立人提出の甲第32号証、甲第32−2号証、甲第32−3号証及び甲第33号証によれば、福岡県大牟田市に引用商標3を店名とする沖縄料理店が存在することは確認できるものの、上記証拠をもって引用商標3が需要者の間に広く知られているものとは認められない。
エ 引用商標4は、「いちゃりば」の文字を書してなるところ、申立人提出の甲第33−2号証によれば、大阪市大正区に引用商標4を店名とする沖縄料理店が存在することは確認できるものの、数回の新聞記事をもって当該店名が親しまれているとまではいえない。
(3)商標法第3条第1項第6条について
上記(2)アないしエによれば、引用商標1は福岡市に1店舗、引用商標2は名古屋市に2店舗、引用商標3は大牟田市に1店舗、引用商標4は大阪市に1店舗存在するのみであり、これらがありふれた店名であるということはできない。
また、申立人提出にかかる、電話帳検索結果(甲第33号証)においても、「いちゃりば」の文字を含む飲食店は、引用商標2ないし3を含む13件(引用商標1はヒットしていない。)足らずであり、そのうち「いちゃりば兄弟」の文字を含む店舗は1店舗のみである。
してみれば、本件商標を構成する「いちゃりば兄弟」の文字は、本件の指定役務において多数使用されているものではないから、本件商標は、ありふれた店名を表したものということはできない。
さらに、本件商標が、沖縄風の居酒屋や沖縄料理店において、その店舗の経営理念を示すものとして、広く日常的に使用されている実情にあるとは、申立人提出の全証拠によっても認めることはできない。
そして、上記(1)のとおり、本件商標は、特定の観念を生じない造語よりなるものというのが相当であるから、自他役務の識別標識としての機能を十分に果たし得るものであって、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものではない。
(4)商標法第4条第1項第8号について
最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決(平成16年(行ヒ)第343号)は、「商標法4条1項は,商標登録を受けることができない商標を各号で列記しているが,需要者の間に広く認識されている商標との関係で商品又は役務の出所の混同の防止を図ろうとする同項10号,15号等の規定とは別に,8号の規定が定められていることからみると,8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標は,その他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。」と判示しているところ、引用商標1ないし4は、いずれも単なる店舗名であって、商標法第4条第1項第8号の保護の対象である、人格を有するところの自然人の氏名又は法人の名称ではないし、これらの著名な略称でもない。
してみれば、本件商標は、他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含むものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものではない。
(5)商標法第4条第1項第10号について
上記(2)ア及びイのとおり、引用商標1及び2は、需要者の間に広く知られているものとは認めることはできない。
そうとすれば、引用商標1及び2の構成中の「いちゃりば兄弟」の文字部分も同様に、これ自体が周知性を具備しているものと認めることはできない。
したがって、引用商標1及び2が需要者の間に広く認識されている商標といえない以上、仮に本件商標が引用商標1及び2に類似し、また、その指定役務を共通にするとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものということはできない。
(6)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第6号、同法第4条第1項第8号及び同第10号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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