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Trademark Appeal Case

「天使の」結合商標の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2010−890032(T2010−890032/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第5266577号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5266577号商標(以下「本件商標」という。)は、「天使のチョコリング」の文字を標準文字で表してなり、平成20年11月7日に登録出願、第30類「チョコレートを加味してなるリング状の菓子及びパン」を指定商品として、 同21年8月5日に登録査定、同年9月18日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第54号証(枝番を含む。)を提出した。

1 引用商標

(1)請求人が引用する登録第1457789号商標(以下「引用商標1」という。)は、「天使」の漢字を横書してなり、昭和41年4月8日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同56年3月31日に設定登録がなされ、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに平成13年5月23日に指定商品を第30類「菓子及びパン」とする指定商品の書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

(2)同登録第4278662号商標(以下「引用商標2」という。)は、「てんし」の平仮名を標準文字で表してなり、平成9年9月30日に登録出願、第30類「茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,ウースターソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,化学調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,穀物の加工品,アーモンドペースト,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ,即席菓子のもと,酒かす」のほか、第29類、第31類及び第32類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として、同11年6月4日に設定登録がなされ、その後、商標権一部取消審判があった結果、同15年7月29日にその指定商品中「第31類 ドライフラワー」について、その登録を取り消す旨の審決がなされ、同審決は同年9月8日に確定し、その確定登録が同年10月8日になされ、さらに、同21年6月2日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

(3)同登録第4707979号商標(以下「引用商標3」という。)は、「てんし」の平仮名を標準文字で表してなり、平成14年9月18日に登録出願、第30類「茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物(豆を除く。)を主原料とする粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状・ゼリー状の加工食品」のほか、第29類、第31類及び第32類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として、同15年9月5日に設定登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

(4)同登録第5033542号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲のとおり、「てんし」の平仮名、「天使」の漢字及び「テンシ」の片仮名を上下三段に横書してなり、平成18年4月13日に登録出願、第30類「茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物(豆を除く。)を主原料とする粉状・粒状・錠剤状・カプセル状・液体状・ゼリー状の加工食品」を指定商品として、同19年3月16日に設定登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

(5)同登録第4598690号商標(以下「引用商標5」という。)は、「天使のショコラ」の文字を標準文字で表してなり、平成13年10月22日に登録出願、第30類「ココア,チョコレートの風味を有する菓子及びパン,チョコレートの風味を有する即席菓子のもと」を指定商品として、同14年8月23日に設定登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

(6)同登録第4598691号商標(以下「引用商標6」という。)は、「天使のチーズスフレ」の文字を標準文字で表してなり、平成13年10月22日に登録出願、第30類「チーズスフレの菓子,チーズスフレの菓子のもと」を指定商品として、同14年8月23日に設定登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

以下、これらを一括していうときは、「引用各商標」という。

2 請求の理由

(1)商標法第4条第1項第11号該当性について

ア 指定商品の類否

本件商標に係る第30類の指定商品「チョコレートを加味してなるリング状の菓子及びパン」は、引用商標1ないし4の指定商品「菓子及びパン」、引用商標5の指定商品「チョコレートの風味を有する菓子及びパン」、及び引用商標6の指定商品「チーズスフレの菓子」とは、生産部門、販売部門、原材料及び品質、用途(食用)ならびに需要者(一般消費者)が共通するため、これらに類似する商品であることは明らかである。

よって、本件商標の指定商品は、引用各商標の指定商品に類似するものである。

イ 本件商標と引用各商標の類否

(ア)本件商標及び引用各商標の構成

本件商標は、「天使のチョコリング」の文字を横書きした商標である。ここで、本件商標の「天使」は、「神の使者として派遣され、神意を人間に伝え、人間を守護するもの」(甲第8号証)、すなわち「神の御使い」の意味合いを有する語として我が国で一般に知られているものである。また、「チョコリング」は、「チョコレート菓子」の略称である「チョコ」と、「輪」という形状を表す「リング」を結合した複合語であって、後に述べるとおり、菓子を含む食料品の分野では、「チョコレートを使用したリング状の食品」や「リング状(輪状)のチョコレート菓子」といった程度の意味合いで広く一般に用いられている。さらに、本件商標構成中の「の」は、連体格を表す格助詞である。したがって、本件商標は、「天使」と「チョコリング」の2語を格助詞の「の」で結合してなる結合商標と自然に理解・認識されるものである。

一方、引用商標1ないし4は、その構成文字に照応して「テンシ」の称呼及び「神の御使い」の観念を生じることが明らかな商標であって、一体にのみ観察されるものである。また、引用商標5の「ショコラ」は、「チョコレート」を表すフランス語「chocolat」の片仮名表記(甲第8号証)であり、引用商標6の「スフレ」は、「卵白などを泡立てて加え、ふんわりと仕上げた菓子や料理」を表すフランス語「souffle」の片仮名表記であって、「チーズスフレ」はその代表的な菓子の名称(甲第8号証)であるから、引用商標5及び6は、本件商標と同様に、「天使」の漢字と「ショコラ」又は「チーズスフレ」の2語を格助詞の「の」で結合してなる結合商標と認識されるものである。

(イ)本件商標の要部

「天使」は、宗教に基礎をおく想像上の存在であって、本来、食料品とは全く関連性のない語であるから、本件商標の「天使」は、食料品の品質、原材料や等級などを表す形容詞的な部分でなく、本件商標の指定商品との関係において自他商品識別機能(識別力)を十分に発揮する部分である。

他方、本件商標の登録査定時である平成21年(2009年)8月5日前に発行された新聞雑誌記事(甲第13号証及び甲第14号証)をみると、「チョコリング」は、広く一般に用いられている事実が確認でき、食料品の分野において、「チョコレートを使用したリング状の菓子またはパン」といった程度の意味合いで広く一般的かつ恒常的に用いられているといえる。このことから、本件商標の「チョコリング」は、「チョコレートを加味してなるリング状」という性状を特定した本件指定商品との関連性が極めて強い部分であることは明らかである。したがって、本件商標は、互いに何ら観念的な結びつきを有しない「天使」と「チョコリング」を格助詞の「の」で単純に結合させただけのものであるから、上記2語が「分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標」に当たる。

かかる事実にかんがみれば、本件商標の「チョコリング」は、指定商品との関係において識別力を発揮しない部分であることは明白といえる。

以上を前提として、「取引者や一般の需要者が商品購入時に通常払うであろう注意を基準として」考察すると、本件商標の「チョコリング」は、「商品識別機能を有するとは認められないような付記や付飾部分」(東京高裁昭和58年11月7日刑三部判決、甲第11号証)に当たることは明らかであるから、本件商標の要部は「天使」である。

また、引用商標5の「ショコラ」及び引用商標6の「チーズスフレ」は、上記(ア)で述べた意味合いを有する菓子類に関する普通名称(甲第8号証)であって、その指定商品との関係で商標の形容詞的部分といえるから、引用商標5及び6も、「天使」を要部とする商標である。

(ウ)本件商標と引用各商標の類否

そこで、本件商標の要部である「天使」を引用各商標と対比すると、両商標からは、いずれも「テンシ」の同一称呼及び「神の御使い」との同一観念が生じる。したがって、本件商標は、引用各商標とは要部から生じる称呼及び観念が同一である類似商標である。

ウ 小括

以上のとおり、本件商標は、引用各商標と称呼及び観念が同一である類似商標であり、引用各商標に係る指定商品と類似する商品を指定商品とするものであって、引用各商標の後願に係るものであるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

(2)商標法第4条第1項第15号該当性について

本件商標とエンゼルマーク及び企業シンボルたる天使(エンゼル)が、いずれも需要者の注意を惹き印象に残りやすい「テンシ」の称呼及び「神の御使い」の観念を生じる点において高い類似性を有すること、請求人の業務にかかる商品であることを表す著名なエンゼルマークが我が国において1世紀以上の永きに亘って使用された結果、エンゼルマーク及び天使(エンゼル)の企業シンボルは、本件商標の出願時及び登録査定時には、請求人の業務にかかる商品であることを指称する著名性を獲得していたこと、請求人のエンゼルマークは、我が国で最初に採用された明治38年当初において、極めて斬新かつ独創的なものであったこと、本件商標の指定商品及び指定役務とエンゼルマーク及び天使(エンゼル)の企業シンボルが使用されて著名性を獲得した商品が、いずれも菓子類を中心とする飲食料品に関するものであって関連性が高いこと、飲食料品は日常的に売買費消される商品であって、需要者がその取引に当たって払う注意力はさほど高いものではなく、また、エンゼルマーク及び企業シンボルたる天使(エンゼル)に通じる「天使」の文字を有する本件商標に接した多くの需要者が、当該商品等が請求人の業務に係るものと認識すると考えられる取引の実情があること、及び特許庁の商標審査基準を総合して考慮すると、本件商標をその指定商品等に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、本件商標の「天使」に着目し、ここから請求人の著名なエンゼルマークや天使(エンゼル)の企業シンボルを想起・連想し、あたかも請求人若しくはその関連会社の取り扱い業務に係る商品であるかのごとく認識して取引にあたると考えられるため、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(3)結び

以上のことから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するというべきであるから、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録は無効とされるべきである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、請求人の前記第2の主張に対し何ら答弁をしていない。

第4 当審の判断

1 商標法第4条第1項第11号該当性について

商標法第4条第1項第11号に係る商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかも、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。

しかるところ、複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合において、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、原則として許されない。他方、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などには、商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも、許されるものである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照。同旨判決平成21年(行ケ)第10380号同22年5月12日判決言渡)。

これを本件についてみるに、本件商標は、「天使のチョコリング」の文字を標準文字で表してなるところ、各文字の大きさ及び書体は同一であって、その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものではあるが、構成全体をもって親しまれた事物、事象を表すとみるべき格別の事情を見いだし得ないものであり、その文字種の相違により「天使」、「の」及び「チョコリング」の各文字からなる結合商標と解されるものである。

しかして、本件商標の構成中の「天使」の文字は、「神の使者として派遣され、神意を人間に伝え、人間を守護するというもの。」(甲第8号証:「広辞苑 第六版」)を意味する語であり、本件商標の指定商品との関係では、商品の品質等を表すものではなく、十分に自他商品の識別標識としての機能を発揮し得るものである。

これに対し、本件商標の構成中の「チョコリング」の文字は、「チョコ」の文字部分が「チョコレート」を表す略語として知られ、また「リング」の文字部分が「菓子又はパンの形状がリング状であること」を表す語として一般に知られており、これら全体として「チョコレートを加味してなるリング状の菓子又はパン」を表すものとして、菓子又はパンを取り扱う業界において取引上普通に使用されているものであって(甲第13号証及び甲第14号証)、商品の品質又は形状を表すものであるから、自他商品の識別力を有しないものであり、また、本件商標の構成中の「の」の文字は、格助詞であって独立して自他商品の識別力を有するものではない。

そうすると、本件商標は、その構成中の「天使」の文字が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから、本件商標のうち「天使」の文字部分だけを、引用各商標と比較して商標そのものの類否を判断することも、許されるものというべきである。

したがって、本件商標は、構成全体から「テンシノチョコリング」の称呼を生ずるほかに、「天使」の文字に相応して、「テンシ」の称呼をも生じ、「天使」の外観、「神の使者として派遣され、神意を人間に伝え、人間を守護するというもの。」の観念を生ずるものである。

他方、引用商標1は、「天使」の漢字を横書した構成からなるものであり、また、引用商標4は、別掲のとおり、「てんし」の平仮名、「天使」の漢字及び「テンシ」の片仮名を上下三段に横書した構成からなるところ、その中段に書された「天使」の文字部分は、その上下に書された「てんし」及び「テンシ」の各文字部分と比較して縦横ともにほぼ2倍の大きさがあり顕著に表されているものであるから、その構成中の「天使」の文字が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるものであり、「てんし」及び「テンシ」の各文字は、かかる「天使」の文字から生ずる読みを表したものと認められる。

してみれば、引用商標1及び4は、いずれも「天使」の文字に相応して、「天使」の外観、「テンシ」の称呼及び「神の使者として派遣され、神意を人間に伝え、人間を守護するというもの。」の観念を生ずるものである。

以上によれば、本件商標と引用商標1及び4とは、外観において、「天使」の漢字を共通にし、「テンシ」の称呼及び「神の使者として派遣され、神意を人間に伝え、人間を守護するというもの。」の観念を同じくするものであるから、本件商標は、引用商標1及び4とは外観、称呼及び観念のいずれにおいても同一とする類似の商標である。

そして、本件商標は、第30類「チョコレートを加味してなるリング状の菓子及びパン」を指定商品とするのに対し、引用商標1は、第30類「菓子及びパン」を指定商品とし、引用商標4は、第30類「菓子及びパン」を含むものであるから、本件商標の指定商品と引用商標1及び4の指定商品とは、同一又は類似するものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

2 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その余の請求人の主張について論及するまでもなく、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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