Trademark Appeal Case
著名図形と地名の商標類似
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2009−900178(T2009−900178/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5205202号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、2007年9月20日アメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約4条による優先権を主張して、平成19年11月20日に登録出願、第39類、第41類、第43類及び第45類に属する別掲(2)に記載のとおりの役務を指定役務として、同21年1月20日に登録査定、同年2月20日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立の理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、申立の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第61号証(枝番を含む。)を提出した。
1 引用商標
申立人の引用する国際登録第945144号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、2007年3月26日にイタリア国においてした商標登録出願に基づきパリ条約4条による優先権を主張して、2007年9月26日に国際商標登録出願、第8類、第9類、第14類、第16類、第18類、第25類、第28類、第33類、第34類、第41類及び第43類に属する別掲(4)に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成21年5月29日に設定登録されたものである。
2 申立の理由の要点
本件商標は、下記の(1)ないし(6)により、その登録を取り消されるべきものである。
(1)商標法第4条第1項第11号違反について
本件商標は、「THE VENETIAN」の欧文字より「ヴェネツィア」の称呼・観念を生じ、「有翼のライオンの図形」より「有翼ライオン」の称呼・観念を生ずる。
一方、引用商標は、「CASINO’ DI VENEZIA」の欧文字より「ヴェネツィア」の称呼・観念を生じ、欧文字の中央に配された「有翼のライオンの図形」より「有翼ライオン」の称呼・観念を生ずる。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼・観念を共通にする類似の商標である。
また、本件商標の第41類及び第43類の指定役務は、引用商標の第41類及び第43類の指定役務と同一又は類似である。
(2)商標法第4条第1項第15号違反について
本件商標の出願時において、「聖マルコの有翼ライオン」は、ヴェネツィア市を象徴するものとして我が国及び世界中で著名であり、また、異議申立人は、当該「有翼ライオン」を有したハウスマークを自己の商品・役務に使用して著名となっている。
本件商標構成中の「有翼ライオンの図形」は、右前足で保持する対象が「盾」か「本」かの差異はあるものの、「聖マルコの有翼ライオンの図」及び異議申立人ハウスマーク中の「有翼ライオンの図」に酷似している。
したがって、本件商標がその指定役務に使用された場合、役務の出所についてヴェネツィア市、あるいは異議申立人の役務であるとの狭義若しくは広義の混同を生ずるおそれがある。
(3)商標法第4条第1項第19号違反について
本件商標は、ヴェネツィア市を象徴する「聖マルコの有翼ライオン」及び「聖マルコの有翼ライオン」を主要部とする異議申立人が所有する世界的に著名なハウスマークと類似する商標であり、「聖マルコの有翼ライオン」は、ヴェネツィア市及び申立人の業務に係る役務を表示するための商標として機能している。
そして、本件商標権者が、「聖マルコの有翼ライオン」とヴェネツィア市との関連性を知らずに当該シンボルを偶然採択したものとは考えられず、世界有数の観光地であるヴェネツィア市のシンボルとしての「聖マルコの有翼ライオン」の著名性にフリーライドしようとする意図を持って出願したものといえるから、本件商標は、不正の目的で出願されたものと推認される。
(4)商標法第4条第1項第7号違反について
「聖マルコの有翼ライオン」は、国際的にヴェネツィア市を象徴する存在とみなされ、また、イタリア国の公的機関が自己のシンボルとして採用している文化的な資産であるから、これをイタリア国若しくはヴェネツィア市と何ら関係もなく、許諾も得ていない本件商標権者が、本件商標を使用・登録することは、剽窃行為であって、イタリア国との国際信義に反し、かつ公序良俗を損なうものである。
(5)商標法第4条第1項第2号違反について
本件商標は、商標法第4条第1項第2号に基づき経済産業大臣が指定した別掲(6)ないし(9)のとおりの引用記章1ないし4(甲4ないし甲7)と、「有翼ライオン」の称呼及び観念を共通にする類似のものである。
(6)商標法第4条第1項第16号違反について
本件商標は、その構成中に、「THE VENETIAN」の文字を有し、また、ヴェネツィア市のシンボルである「聖マルコの有翼ライオン」の図を有することから、本件商標がその指定役務に使用された場合、役務の質について、ヴェネツィア市と関連する者によって提供される役務、あるいは、ヴェネツィア風の物品を用いて提供される役務であるとの誤認を生ずるおそれがある。
第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、別掲(1)に示すとおり、「V」の欧文字を表示した盾に右前足を掛けた翼を有するライオンと思しき図形(以下「本願図形」という。)とその左に小さく「THE」の文字を配し、その下に、大きく「VENETIAN」の文字を配した構成よりなるところ、当該図形部分は、我が国において一般に親しまれた図形ともみられないものであるから、これよりは特定の称呼及び観念は生じないものというのが相当である。そして、構成中の「THE VENETIAN」の文字部分よりは、構成文字に相応して、「ザベネチアン」の称呼及び「ベニス人の」のごとき観念を生ずるものである。
これに対し、引用商標は、別掲(3)に示すとおり、濃いグレーの横長長方形を上下に三分割し、上部の帯状の矩形内に「KEEP PLAYING」の文字を配し、中央の幅広の矩形内に、数字の「21」及び「2」を白抜きにて表した濃度の異なる略台形の図形を交互に連続的に配し、下部の帯状の矩形内に、背景と同系色にて「CASINO’」の文字(「O’」の文字中に表された文字は判読不能)、「四足の動物と思しき図形」及び「DIVENEZIA」の文字を一連に表し、その下に、小さく「AN INFINITI EMOTION」の文字を配した構成よりなるところ、構成中の「四足の動物と思しき図形」は、その細部が判別し難いものであり、また、我が国において一般に親しまれた図形ともみられないものであるから、これよりは特定の称呼及び観念は生じないものというのが相当である。
そして、構成中の「KEEP PLAYING」の文字は、「遊び続ける」の意味合いを理解させるものであって、その構成文字に相応して「キーププレイング」の称呼を生じ、同「CASINO’ DIVENEZIA」の文字は、「ベネツィアのカジノ」の意味合いを理解させるものであって、その構成文字に相応して「カジノディベネツィア」の称呼を生じ、同「AN INFINITI EMOTION」の文字は、「無限の感動」の意味合いを理解させるものであって、その構成文字に相応して「アンインフィニティエモーション」の称呼を生ずるものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観において大きく相違し、称呼及び観念を全く異にするものであるから、類似するものとすることはできない。
なお、申立人は、本件商標及び引用商標からは、「ヴェネツィア」及び「有翼ライオン」の称呼・観念を生ずる旨主張しているが、本件商標及び引用商標の称呼及び観念は、上記のとおりであるから、申立人の主張は採用できない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)ヴェネツィア市における「聖マルコの有翼ライオン」の著名性について
申立人は、「聖マルコの有翼ライオン」は、ヴェネツィア市を象徴するものとして、著名である旨主張する。
申立人提出の証拠によれば、9世紀にヴェネツィア商人がエジプトから聖マルコの遺体を持ち帰ったことから、ヴェネツィアは聖マルコを守護聖人としたこと(甲8)、キリスト教において、福音書の著者はそれぞれ動物をシンボルとしており、ライオンがマルコのシンボルとなっていること(甲10)、そのため「マルコのライオン」は、ヴェネツィアの紋章とされ、本を前足で押さえ翼をもった形で表され、「サン・マルコのライオン」、「マルコの有翼の獅子」とも呼ばれていること(甲10ないし甲12)、そして、現在においても、ヴェネツィア市は、聖マルコのライオンをフラッグ、バナー、紋章、印章に採用していること(甲16ないし甲19)、およびガイドブックにもヴェネツィアのシンボルとして聖マルコの獅子像が記載されていること(甲14、甲24、甲25)が認められる。
しかしながら、ヴェネツィア市がシンボルとして使用する「聖マルコの有翼ライオン」は、その態様が様々であり、例えば、甲第16号証に示された紋章(1942年及び1996年採用)、印章(1942年及び1997年採用)、バナー(1996年採用)及び甲第25号証の222頁に掲載されている市の紋章とされる図は、いずれも、本を持ち左右に翼を広げ正面を向いて座ったライオンの図であって、必ずしも歩行姿勢のもののみではないこと、また、歩行姿勢のものであっても様々な態様で表されていることからすれば、「聖マルコの有翼ライオン」の態様を特定することはできない。
してみれば、ヴェネツィア市が聖マルコのライオンを様々な態様で紋章等に使用していることは認められるものの、申立人提出の全証拠によっても、特定の「聖マルコの有翼ライオン」がヴェネツィア市を象徴するものとして、本件商標の出願時及び査定時において、需要者の間に広く認識されるに至っていたものとはいい難い。
そして、我が国におけるキリスト教の普及度からすれば、本件商標に接する需要者が、これを直ちに「聖マルコの有翼ライオン」と認識するものとはいえないし、ましてや「ヴェネツィア市」を想起するものとは到底いえない。
そうとすれば、本件商標をその指定役務に使用しても、需要者をして、ヴェネツィア市あるいは同市と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し、役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
(2)申立人ハウスマークの著名性について
申立人は、別掲(5)のハウスマークを2006年6月9日に発表(甲33)し、マルコポーロ空港のターンテーブル(甲35)、運河の船(甲36)、カジノ場の入り口(甲37)、申立人ウエブサイト(甲40)に使用し、また、申立人は、イタリアプロサッカーチーム「SSCヴェネツィア」のメインスポンサーとなり(甲38)、我が国においても申立人のハウスマークを付したユニフォームが販売されている(甲39)。また、申立人のハウスマークを構成中に有する引用商標を各国に登録し(甲41)、さらに、ハウスマークをデザインに含んだ意匠登録も行っている(甲43、甲44)ことから、申立人のハウスマークは、世界的著名性と我が国での周知性を獲得している旨主張する。
しかしながら、申立人がハウスマークを発表した日から本件商標の登録出願の日(平成19年(2007年)11月20日)までは、わずか1年5ヶ月ほどであり、この間に申立人がハウスマークを使用したとするのは、イタリア国内の数カ所に過ぎず、また、申立人のウエブサイトは、その利用者数も不明であり、さらに、申立人のハウスマークを付したユニフォームは、その販売地域、販売数量、売上高等が明らかでない。その他、申立人がハウスマークを使用して広告宣伝を行った回数、地域、方法、規模、費用などの詳細は一切明らかになっていないから、申立人提出の全証拠によっても申立人のハウスマークの著名性を認めることはできない。
また、各国において、申立人のハウスマークを構成中に含む商標登録及び意匠登録がされたとしても、そのことをもって当該ハウスマークが周知であるということはできない。
そうとすれば、申立人のハウスマークは、本件商標の出願時及び査定時において、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されるに至っていたものとは到底いうことができない。
してみれば、本件商標をその指定役務に使用しても、需要者をして、申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し、役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第19号について
(1)上記2(1)のとおり、ヴェネツィア市が象徴として使用しているとする「聖マルコの有翼ライオン」は、その態様が様々であり、一概に特定できないものである。そして、上記1のとおり、本件図形からは、特定の称呼及び観念を生ずるものではないから、本件商標と「聖マルコの有翼ライオン」とは、類似するものとすることはできない。
(2)上記2(2)のとおり、申立人のハウスマークは日本国内及び外国における需要者の間に広く認識されるに至っていたものとは認められないものである。そして、申立人のハウスマークを構成中に含む引用商標と本件商標が類似しないことは上記1のとおりであるから、結局、本件商標と申立人のハウスマークとは、類似するものとすることはできない。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号について
「聖マルコの有翼ライオン」が、ヴェネツィア市の象徴として紋章や印章に使用され、また、海軍旗や商船旗のデザインの一部に使用されているとしても、それらの態様は様々であり、一概に特定されるものとはいえない。
また、翼を有するライオンの像は、例えば、世界遺産であるヨルダンのペトラ遺跡や(http://mphot.exblog.jp/6286068/)、同ネパールのチャング・ナラヤン寺院(http://www5f.biglobe.ne.jp/〜st_octopus/POI/Nepal/ChangNarayan.htm)にも存在する。
そして、本件図形からは特定の称呼及び観念を生ずるものではないから、本件商標を登録することが、直ちに国際信義に反するということもできない。
その他、本件商標は、その構成において、きょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与える標章からなるものではないから、構成上公序良俗を害するおそれがあるものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第2号について
申立人は、本件商標は、別掲(6)ないし(9)に示す、引用記章1ないし4(甲3ないし甲7)と、「有翼ライオン」の称呼及び観念を共通にする類似の商標であると主張する。
しかしながら、引用記章1ないし4は、その構成の一部に翼を有するライオンの図がモチーフの一つとして採用されているとしても、これらの記章から「有翼ライオン」の称呼及び観念を生ずるものとすることはできない。そして、上記1のとおり、本件図形からは、特定の称呼及び観念は生じないものである。
その他、本件商標と引用記章1ないし4と類似するものとする事情はみあたらない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第2号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第16号について
本件商標構成中の「THE VENETIAN」の文字は、特定の役務の質や役務の提供地を表示したものではないし、また、本件図形は特定の観念を生ずるものではないから、本件商標をその指定役務に使用しても、役務の質について誤認を生じさせるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第2号、同第7号、同第11号、同第15号、同第16号及び同第19号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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