Trademark Appeal Case
周知商標CATと類似判断
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2010−900350(T2010−900350/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5342653号商標(以下「本件商標」という。)は、標準文字で「eco−CAT」と表してなり、平成21年9月16日に登録出願、同22年6月11日に登録査定がされ、第11類「業務用室内空気湿度調整機,業務用除湿機,その他の暖冷房装置,家庭用室内空気湿度調整機,家庭用除湿機,その他の家庭用暖冷房装置,乾燥装置」を指定商品として、同22年8月6日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、その申立ての理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第14号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)申立人が本件商標の登録異議の申立ての理由に引用する商標は、各々、別掲(1)ないし(4)に示すとおりの商標及び商品を登録商標及び指定商品の範囲とする登録第398749号商標(以下「引用商標1」という。)、同第1551140号商標(以下「引用商標2」という。)、同第2476927号商標(以下「引用商標3」という。)及び同第4138519号商標(以下「引用商標4」という。)であり、いずれも有効に存続しているものである(以下これらをまとめて「引用商標」という場合がある。)。
(2)申立人の周知著名性
ア 申立人は、1925年に米国で設立されたものであって、現在、23力国に110の製造拠点を有し、全世界で活動している。また、我が国においては、1963年に三菱重工との合弁会社であるキャタピラー三菱を設立、その後、1986年に新キャタピラー三菱を設立して、現在に至っている。さらに、販売会社等の系列会社も有するものである。
イ 申立人は、建築及び鉱業機械、ディーゼル及び天然ガスエンジン並びに産業用ガスタービンエンジンの世界最大の製造会社である。申立人の製品と部品は、米国の42工場と米国外にある58工場で生産され、約200か国で販売されており、その売上げの半分以上は、海外顧客からのものである。申立人は、220のディーラーの世界規模ネットワークを有しており、そのうちの63のディーラーは米国にあり、また、157のディーラーは米国以外に存在している。
ウ 申立人は、ニューヨーク証券取引所に上場しているところ、該市場においては、CATで指標されている。また、申立人は、いわゆる「NYダウ」を構成する米国の代表的な会社であるところ、ダウ平均株価の趣旨に照らせば、それを構成する会社として選出されていることは、申立人が米国を代表する周知著名企業であることの証である。
エ 社名でもある商標「caterpillar」は、ビジネスウィーク誌によれば、2002年以来、グローバルブランド100のうちの一つであり、2007年におけるその価値は、50億5900万米ドルに値するとされている(甲第4号証)。
オ 以上によれば、申立人は、我が国において、また、国際的にも名声を有する周知著名な企業である。
(3)商標「CAT」の周知著名性
ア 商標「CAT」は、申立人のメインのマークであって、1949年以来使用しているものであり(甲第5号証)、また、ドメイン名も“cat.com”として登録している(甲第6号証)。商標「CAT」は、世界約200か国で販売されている申立人の商品のほとんどに使用しており、その商品群は、建築及び鉱業機械、ディーゼル及び天然ガスエンジン並びに産業用ガスタービンエンジン、発電機、それらの部品と多肢にわたっている。申立人は、商標「CAT」について、世界中で商標登録を有しており、また、我が国においても、多数の商標登録を有している(甲第7号証)。
イ 申立人及びその我が国における合弁会社新キャタピラー三菱(2008年8月1日付けでキャタピラージャパン株式会社に社名変更)による、引用商標を使用した商品の我が国における売上げは、2004年度(2004年4月〜2005年3月。以下同様。)が「1億2409万9719米ドル」、2005年度が「1億3194万6004米ドル」、2006年度が「1億4704万6246米ドル」、2007年度が「1億4451万5045米ドル」である。また、申立人の2003年から2007年までの過去5年の売上げは、「アニュアルリポート」(甲第8号証)の35頁に示されているとおりであり、2007年(12月31日を期末とするもの)は、約450億米ドルである。
ウ 申立人及びその系列会社は、引用商標を使用したエンジンを、我が国を含む世界各国で多数納品している。
エ 申立人は、世界中で、引用商標を使用した商品について広告宣伝活動を行っており、その媒体は、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ及びトレードショー等多肢にわたる(甲第9号証)。我が国における宣伝広告費は、2005年以降、毎年7000万円から1億円に及ぶものである。さらに、合弁会社新キャタピラー三菱は、毎年、引用商標を冠に有する「CAT Ladies Golf Tournament」を開催している(甲第10号証)。
オ 引用商標が周知著名であることは、米国特許商標庁やスペイン特許庁、ドイツ・ハンブルグ地裁等において認定されており、また、ドメイン名に係る仲裁事件においても同様である(甲第11号証)。
(4)本件商標と引用商標との類似性
本件商標は、小文字で表された「eco」の欧文字と大文字で表された「CAT」の欧文字とをハイフンで結合するという構成からなるところ、その構成に照らせば、本件商標が「eco」の欧文字部分と「CAT」の欧文字部分とに分離して認識されることは明らかである。
また、「CAT」の欧文字部分は、前述の周知著名商標である引用商標と同一であり、本件商標に接した需要者は、本件商標の後半部の「CAT」の欧文字部分を抽出して認識し、該部分から生じる称呼「キャット」をもって本件商標を指標するものと考える。
さらに、本件商標の前半部に位置する「eco」の欧文字部分は、「ecology」の和製英語の短縮版であって、人間生活と自然との調和などを表す考え方として、「eco」の欧文字が接頭語としてしばしば用いられており(甲第12号証)、本件商標の指定商品との関係では、単にその特質等を記述する語にすぎず、識別力の極めて弱いものである。このことは、該指定商品の一部が属する類似群コード「09A06」において、語頭部に「eco」又は「ECO」の欧文字を有する商標が362件も併存登録されていることからも明白である(甲第13号証)。
してみれば、本件商標は、その構成中の「CAT」の欧文字部分が独立して要部を形成するものであるから、その構成文字全体に相応する「エコキャット」の称呼を生ずるほか、該「CAT」の欧文字部分に相応する「キャット」の称呼をも生ずるものである。
他方、引用商標は、「キャット」の称呼を生ずるものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、称呼において類似するものであり、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、周知著名である引用商標と類似するものであるから、混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
また、引用商標は、特にトラクター並びにその部品及び附属品に関しては著名であるが、本件指定商品によってカバーされる「乗物用エアコンディショナー」は、トラクターに常備されるものなので、その取引者・需要者は重なっており、本件商標に接した取引者・需要者は、申立人といわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信するおそれがあり、いわゆる広義の混同を生ずるおそれがある。申立人が「乗物用エアコンディショナー」を製造販売している(甲第14号証)ことからも、上記の広義の混同のおそれの存在は明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第19号について
本件商標に接した需要者は、引用商標の著名性故に引用商標を想起するものであり、本件商標権者は、明らかに申立人所有の著名引用商標の顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する目的で使用するものであるといえる。かかる不正の目的は、本件商標が、申立人会社所有の周知著名な引用商標を語頭に有する構成からなることからも明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
4 商標法第4条第1項第8号について
引用商標は、申立人ホームページのドメイン名であり、ニューヨーク証券取引所での略称も「CAT」となっている。したがって、引用商標は、申立人の著名な略称であり、本件商標はその要部にかかる申立人の著名な略称を含むものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
5 商標法第4条第1項第7号について
全国的に著名な引用商標を含んだ本件商標の使用・登録を容認することは、申立人の著名な商標が有する出所表示機能を稀釈化するばかりでなく、申立人の著名商標に化体した業務上の信用にただ乗りすることを認めることとなり、健全な取引秩序の維持という商標法の目的に反することになる。
さらに、引用商標には、これまで長年にわたり培ってきた「ブランド」としての顧客吸引力が備わっている。
したがって、本件商標が申立人の業務と同一の他社の商品について使用されると、申立人の商標の持つ「ブランド」としての顧客吸引力が損なわれ、これが、申立人の商標の標識としての品質保証機能の弱化につながる。
このように、本件商標が申立人の引用商標の顧客吸引力へただ乗りし、当該顧客吸引力を不当に利用するものであることは、諸般の事情を勘案すれば明白なことである。
したがって、本件商標は、取引秩序を乱すものというべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
第3 当審の判断
1 本件商標
本件商標は、標準文字で「eco−CAT」と表してなるところ、その構成中の「eco」及び「CAT」の各欧文字は、前者が小文字で、後者が大文字で表されているものの、いずれも同じ書体、同じ大きさにより表され、「−」(ハイフン)を用いて結合することにより、外観上まとまりよく一体的に表されているものであり、また、その構成全体から生ずる「エコキャット」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そうとすれば、本件商標は、その構成中の「eco」の文字が「環境に配慮すること。」等の意味を有する語であるとしても、かかる構成においては、該文字部分が商品の品質等を具体的に表示するものとして直ちに認識されるとまではいい難く、また、殊更該文字部分を捨象し、その構成中の「CAT」の文字部分のみをもって取引に資するとみるべき特段の事情も見いだし得ない。
してみれば、本件商標は、その構成全体をもって、特定の語義を有することのない一連の造語を表したものとして認識されるというのが相当であるから、その構成文字全体に相応する「エコキャット」の称呼のみを生ずるものである。
2 引用商標
引用商標1及び引用商標2は、各々、別掲(1)及び(2)に示すとおり、いずれも「CAT」の欧文字を普通に用いられる方法で書してなるものであるところ、該文字は、その文字綴りからして容易に「キャット」の読み及び「猫」の意味を有する英語「cat」を大文字で表したものとして認識されるものであり、また、申立人の提出に係る証拠を総合してみても、該文字が、その認識を超えて、申立人又は申立人の使用に係る商標を想起させると認めるに足る事実を見いだすことはできないから、両引用商標は、各々、その構成文字に相応する「キャット」の称呼及び「猫」の観念を生ずるものとみるのが相当である。
また、引用商標3及び引用商標4は、各々、別掲(3)及び(4)に示すとおり、黒色の太線で表された「CAT」の欧文字の下部に、該「A」の欧文字の横線部を頂点とするように三角形状の切り欠きを設け、さらに、該切り欠き部に、わずかに隙間を空けてはめ込むように、底辺の位置を該「C」及び「T」の各欧文字の下端部にそろえてなる黒色の二等辺三角形を配してなるところ、該「CAT」の欧文字及び二等辺三角形を組み合わせてなる標章は、その構成態様に照らし、視覚上、まとまりある一体的なものとして看取、把握され得るものであり、また、申立人の提出に係る各証拠によれば、該標章は、申立人又はその系列会社が自己の商品等について使用するものと色彩を異にするものの、その構成上の特徴を共通にするものであるから、両引用商標は、その構成中の「CAT」の欧文字部分に相応する「キャット」の称呼を生じ、かつ、申立人に係る商標としての観念を生じ得るとみるのが相当である。
3 商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標とは、各々、上記1及び2のとおりの構成からなるものであるから、両商標は、外観において、明らかに相違するものである。
また、本件商標からは「エコキャット」の称呼を生ずるのに対し、引用商標からは「キャット」の称呼を生ずるものであるから、両者は、その音構成及び構成音数に明らかな差異が認められ、これらを一連に称呼した場合であっても、十分に聴別し得るものである。
さらに、本件商標からは直ちに特定の観念を生ずることはないのに対し、引用商標からは、上記2のとおり、「猫」又は申立人に係る商標としての観念を生ずるものであるから、両者を比較することはできない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものということはできない。
4 商標法第4条第1項第15号について
本件商標と引用商標とは、上記3のとおり、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であるのみならず、申立人の提出に係る証拠を総合してみても、遅くとも本件商標の登録出願時において、引用商標を構成する又はその構成中の「CAT」の文字自体をもって申立人に係る取引指標たり得るほどに著名なものとまではいうことができないから、本件商標をその指定商品について使用しても、申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものということはできない。
5 商標法第4条第1項第19号について
申立人は、本件商標が申立人の著名な引用商標の顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正の目的がある旨主張するが、本件商標と引用商標とは、上記3のとおり、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であるばかりでなく、申立人の提出に係る証拠によっては、何らの証左もなく、「不正の目的をもって使用するもの」ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものということはできない。
6 商標法第4条第1項第8号について
申立人は、引用商標が申立人のホームページのドメイン名であり、また、ニューヨーク証券取引所における申立人の略称も「CAT」となっていることから、引用商標は申立人の著名な略称であり、本件商標はその要部に係る申立人の著名な略称を含むものである旨主張するが、上記2のとおり、引用商標1及び引用商標2は、容易に「キャット」の読み及び「猫」の意味を有する英語を認識させるものであるところ、申立人の提出に係る証拠を総合してみても、遅くとも本件商標の登録出願時において、「CAT」の欧文字が、その認識を超えて、申立人の略称として取引者、需要者間において広く認識されるに至っているとはいい難く、また、引用商標3及び引用商標4は、「CAT」の欧文字のみからなるものではないことからすれば、これが申立人のいうドメイン名又はニューヨーク証券取引所における略称と一致するものとは到底考え難く、申立人の提出に係る証拠によっては、その証左を見いだすこともできない。
してみれば、本件商標は、他人の著名な略称を含むものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものということはできない。
7 商標法第4条第1項第7号について
申立人は、本件商標が申立人の著名な引用商標が有する出所表示機能を希釈化するばかりでなく、該引用商標に化体した業務上の信用にただ乗りすることを認めることとなり、健全な取引秩序の維持という商標法の目的に反することになる旨主張するが、本件商標と引用商標とは、上記3のとおり、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であるばかりでなく、申立人の提出に係る証拠を総合してみても、本件商標をその指定商品に使用することが、社会公共の利益、一般的道徳観念に反するものとはいえず、また、国際信義に反するものともいえない。
さらに、本件商標が、きょう激、卑わい若しくは差別的な文字又は図形からなるものといえないことは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものということはできない。
8 むすび
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第8号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものではない。
したがって、本件商標は、商標法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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