結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2010−890058(T2010−890058/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第5149460号の2商標(以下「本件商標」という。)は、「プラノックス」の片仮名と「PLanox」の欧文字とを上下二段に横書きしてなり、平成19年9月26日に登録出願、同20年7月11日に設定登録された登録第5149460号商標の商標権の分割に係るものであって、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,失禁用おしめ,防虫紙,乳糖,乳幼児用粉乳」を指定商品として、同21年3月25日に商標権の分割移転の登録がなされたものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証(枝番を含む。)を提出した。
請求人が引用する登録第4170873号商標(以下「引用商標」という。)は、「PLAVIX」の欧文字を横書きしてなり、1993年7月28日フランス共和国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成6年1月26日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同10年7月24日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。
本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に違反してされたものであるから、無効とされるべきである。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 称呼の比較
本件商標は、欧文字「PLanox」の上段に表音と認められる片仮名「プラノックス」と書してなるところ、その片仮名に応じて「プラノックス」の称呼が生じる。―方、引用商標は、「PLAVIX」の欧文字に則して「プラビックス」の称呼が生じる。
そこで、両称呼を比較すると、両者は促音を含む5音という短い称呼であるところ、語頭の2音「プラ」及び末尾の2音(促音を含む)「ックス」の合計4音を共通にしており、このように5音中4音の一致が称呼全体に与える影響は大きいと思料する。また、本件商標と引用商標の唯一の差異音である第3音「ノ」と「ビ」は比較的印象に残りにくい中間に位置し、聴別し難いことから、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、その語調、語感が相似たものとなり、聞き誤るおそれがある。
イ 外観の比較
本件商標の欧文字部分である「PLanox」の語頭3文字「PLA」と末尾1文字である「X」は、引用商標「PLAVIX」の語頭3文字及び末尾1文字と同一であって、その文字数も共に6文字であり、外観上において注意を惹きやすい語頭3文字と末尾1文字が共通しており、両商標は外観において、互いに類似している。
ウ 指定商品の比較
本件商標の指定商品は、薬剤及び医療関連商品であり、引用商標の指定商品「薬剤」と同じであるか、或いはこれらの商品と少なくとも、生産部門、販売部門、及び需要者において共通するものである。
よって、本件商標に係る指定商品は、引用商標に係る指定商品と同一又は類似するものである。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、その称呼及び外観において類似する商標であり、また、本件商標と引用商標の指定商品は、同一又は類似するものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の周知・著名性
請求人は、2004年にフランス国サノフィ・サンテラボ社とアベンティス・ファーマ社との合併により設立され、2009年連結決算では、医薬品企業で世界第3位、欧州第1位である293億600万ユーロの売上を計上する世界有数の製薬会社であり、グローバルに活動する企業である(甲第3号証)。
引用商標「PLAVIX」は、請求人の業務に係る一般名を硫酸クロピドグレルとする抗血小板剤を表示する商標として、1998年米国、1999年欧州諸国での発売に続いて、2006年日本での販売開始時点において、既に世界85カ国において使用されていたものであって、2005年には世界で6,600億円を売り上げ(甲第4号証、甲第5号証の1)、世界売上第2位に挙がっている(甲第6号証の1及び2)。
そして、インターネット上でも抗血小板剤「プラビックス」に関する情報は数多く検出され、インターネット検索エンジン「グーグル」によれば、「プラビックス、サノフィ」の検索条件で、約6,130件がヒットする(甲第7号証)。また、請求人は、引用商標と同じ「PLAVIX」商標をフランス、オーストラリア、カナダ、香港、シンガポール、タイ、英国、及びアメリカにおいても商標権を獲得している(甲第8号証)。
ところで、日本では本件商標の出願日(平成19年9月26日)前である2006年5月から発売が開始され(甲第9号証)、現在も継続的に販売されている。2007年には日本で実に6,100万ドル(約67億円)を売り上げ、本件商標の出願時点には医療用医薬品の分野において既に周知性を獲得していたと容易に推認できる(甲第10号証)。また、本件商標の登録日(平成20年7月11日)を含む2008年度においても売上高92億ドルを超えており世界売上第2位に挙がっている(甲第11号証)。
上述のように、商標「PLAVIX」は、請求人の業務に係る抗血小板剤である「薬剤」を表示する商標として、少なくとも医療用医薬品の需要者・取引者の間で広く知られているといえる。
イ 引用商標と本件商標との類似性
上記(1)のとおり、引用商標「PLAVIX」と、本件商標とは、外観及び称呼において類似する商標であり、たとえ、両商標間の相違点を勘案してもなお、本件商標からは引用商標を連想させるものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の「混同を生ずるおそれのある商標」に該当するものである。
また、引用商標は、医薬品の成分名称に由来するものでなく、請求人が独自に採択した創造商標であって、それ自体特定の観念を生じさせない造語であり、加えて、両商標は、語頭3文字「PLA」と末尾1文字「X」において共通するものであるから、本件商標と引用商標とは、何らかの関係、たとえば、同じシリーズに係る商標であるという印象を生じさせるのに十分な類似性を有するといえる。
ウ 指定商品について
本件商標の指定商品と、請求人が扱う「薬剤」とは、ともに医療現場で使用されるものであり密接に関連性を有しているため、上述のように引用商標と類似する本件商標がその指定商品に使用された場合、需要者が請求人の業務に係る商品と混同するおそれがある。
エ 医療用医薬品の取引実情
引用商標が使用される医療用医薬品の業界では、薬剤名の誤認に起因して、誤って異なる薬剤が処方されるなどの国民の生命に関わる危険が存在する。甲第12号証は、厚生労働省医薬食品局安全対策課が医療現場における実際のヒヤリ・ハット事例を収集したものであり、この資料には、医療機関が「メイラックス」と、同じベンゾジアゼピン系の抗不安薬である「メレックス」や「ソラナックス」などとを誤認し、誤って異なる薬剤を患者に販売したという事例などが記載されている。
このように、同じ系統の薬剤でも多数の商品が存在することから、医師、薬剤師のような専門家をもってしても、医療現場においてその名称を区別することは容易ではないことが判る。したがって、商品を取り扱う需要者・取引者が専門家であるからといって、出所の誤認混同を起こす可能性を否定することはできない。
オ 裁判例
医療用医薬品についての引用商標の周知著名性、引用商標と本件商標との類似性、両商標に係る商品の関連性の強さ、取引者・需要者の共通性などを考慮して、商標法第4条第1項第15号該当性が肯定された裁判例として、東京高裁平成16年(行ケ)129号、東京高裁平成16年(行ケ)256号、東京高裁平成16年(行ケ)341号、知財高裁平成17年(行ケ)10418号、知財高裁平成18年(行ケ)10427号を挙げる。
カ 誤認のおそれ
上述した、引用商標の周知・著名性、需要者・取引者の共通性、及び引用商標は請求人が独自に採択した創造商標であることに加えて、両商標の類似性及び医療用医薬品における取引実情を総合的に考慮すると、本件商標がその指定商品について使用された場合、これに接する需要者・取引者は、当該商品が、請求人の業務に係る商品であると誤認するおそれがあるというべきである。
仮に、当該商品が、請求人自身の業務に係る商品であると誤認されることはないとしても、請求人が外国の製薬企業であり、日本での販売は請求人の日本法人が行っているという事実を考慮すると、需要者・取引者は、その商品を請求人の日本法人とは別の資本関係、若しくは業務提携関係にある者の業務に係る商品であると誤認する可能性もあるというべきである。
このように、請求人の抗血小板剤を表示するものとして周知著名な引用商標と類似する本件商標を、請求人とは無関係に使用する行為は、本件商標がその指定商品について使用された場合、これに接する需要者・取引者は、当該商品が請求人の業務に係る商品であると誤認するおそれを引き起こすものであり、看過することはできない。
キ 小括
よって、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接した需要者・取引者は、請求人又は同人と資本関係、或いは業務提携関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生ずるおそれは十分に存在するため、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第19号について
上述のとおり、引用商標「PLAVIX」は世界的に知名度を確立していたといえ、引用商標と本件商標とは、外観及び称呼において、互いに類似する商標であって、何らかの関係、たとえば、同じシリーズに係る商標であるという印象を生じさせるのに十分な類似性を有するといえる。
また、上述のとおり、本件商標と引用商標の指定商品は同一又は類似するものである。
そして、被請求人は、請求人の抗血小板剤を表示するものとして周知著名な引用商標と類似する本件商標の存在を知りうる立場にあったにもかかわらず、あえて引用商標に類似する本件商標を商標として採択し、権利を取得したものであり、かかる行為は不正の目的があることが明らかである。たとえ、被請求人は本件商標権を後に譲渡により取得したものであったとしても、そのことにより不正の目的が治癒されるものではない。
よって、本件商標は、請求人の抗血小板剤を表示するものとして周知著名な引用商標と類似し、その存在を知ったうえで、これを取得する行為は不正の目的があることが明らかであり、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。
(1)称呼の比較
本件商標と引用商標とを対比すると、本件商標からは欧文字「PLanox」の表音として「プラノックス」なる称呼を生じ、引用商標からは欧文字「PLAVIX」に則して「プラビックス」なる称呼を生じる。両商標は中間に位置する「ノ」と「ビ」との音に差異を有し、当該「ノ」の音は舌尖を前硬口蓋に接して発する鼻子音〔n〕母音〔o〕との結合した音節であり、一方、「ビ」の音は両唇を合わせて破裂させる有声子音〔b〕と母音〔i〕との結合した音節であって、両者は清音と濁音を生じて音質が明らかに異なる音であることに加え、それぞれ促音を伴うことによって強く発音・聴取されるものである。かかる差異は、称呼全体の音感に及ぼす影響は小さいものではなく、それぞれを一連に称呼するときは、全体の音感が相違し、相紛れることなく聴別できるものである。
(2)外観の比較
また、本件商標の欧文字「PLanox」は「PL」に後続する綴りが小文字の「anox」であるのに対して、引用商標の欧文字「PLAVIX」は「PL」の後続綴りが大文字「AVIX」であるから、両者の綴りの全体から受ける印象は全く相違するものであり、両商標の構成全体をみても、本件商標では「PL」部分が強調された印象を与えるが、引用商標ではかかる印象を与えることはないから、両商標は相紛れるおそれはない。
(3)観念の比較
さらに、本件商標と引用商標とは、ともに造語であり、観念の点で比較することができないから、観念上も相紛らわしいものとすることはできない。
(4)小括
したがって、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、引用商標と同一のものではなく類似するものでもないから、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
なお、本件商標は、引用商標との対比において、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものでない旨の異議決定がされている(乙第1号証)。
本件商標は、上述のとおり、引用商標と類似するものではなく、本件商標を第5類の指定商品に使用しても、とりわけ外観及び称呼の点から引用商標に係る商品を十分に識別できる特徴を備えるものである。加えて、本件商標の出願時及び登録査定時において、引用商標をうかがわせる商品(抗血小板薬)が日本国内で販売されていた事実はあるものの、当該商品は、甲第4号証や甲第9号証にも記載されているように、引用商標の標章を付したものではなく、片仮名で「プラビックス錠」と表記して取引及び販売されていた実態がある。
このため、本件商標の指定商品に接する需要者や取引者が、引用商標の権利を保有する請求人及び同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る引用商標の商品を想起したり、商品の出所について混同を生じるおそれはない。
また、本件商標は、引用商標と非類似のものであり、商品の出所の混同を生じさせるおそれもないから、不正の目的を有するものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当するものではない。
請求人が本件審判請求をすることの請求人適格については当事者間に争いはないので、本案に入って審理する。
(1)甲各号証について
ア 甲第3号証は、フリー百科事典「ウィッキペディア(Wikipedia)」のウェブページであり、「サノフィ・アベンティス」の見出しの下、「...2009年連結決算では医薬品企業で世界第3位・欧州第1位である293億600万ユーロの売上を計上している。」との記載があり、「主な製品」の項に「プラビックス○(○の中に「R」の記号)(クロピドグレル)」の記載がある。
イ 甲第4号証は、「薬事日報ウェブサイト」であり、「新薬・新製品情報」の見出しの下、「2006年5月17日(水)、「サノフィ・アベンティスは8日、世界的に広く用いられている大型製品で、抗血小板剤『プラビックス』(一般名:硫酸クロピドグレル)を発売した...日本では、75mg錠と25mg錠の2規格を発売した。...既に欧米ほか世界85カ国で販売されており、...2005年には世界で20億ユーロ(サノフィ・アベンティス分のみ)を売り上げている。」の記載とともに、「プラビックス」と表示された包装箱と錠剤の写真が掲載されている。
ウ 甲第5号証の1は、「医薬・医療マーケティング研究所」のウェブページであり、「◆2006年5月15日 日経産業新聞」の見出しの下、「...治験は抗血栓症薬で、昨年世界の全医薬品で2番目に多く売れた『プラビックス』と対照する...サノフィ・アベンティスなどが販売する同薬は昨年の世界売上高が6,600億円。」及び「◆2006年10月31日 サノフィ・アベンティス 減収減益、プラビックス問題響く」の見出しの下、「仏サノフィ・アベンティスが10月31日発表した06年7−9月期決算によると、売上高は前年同期比4.2%減の69億100万ユーロ、純利益は11.6%減の16億9900万ユーロと減収減益になった。アポッテクス社が8月に米国でプラビックスの後発品を発売したことで、同国での全売上(米提携先のブリストル・マイヤーズスクイブの売上げを含む)が42%減少した。」の記載がある。
エ 甲第5号証の2は、サノフィ・アベンティスとブリストル・マイヤーズスクイブが6月19日に発表したプレスリリースを日本語に翻訳再編集した、報道関係者宛ての2007年6月21日付け書面の写しであり、「サノフィ・アベンティスとブリストル・マイヤーズ スクイブ/米国におけるプラビックス○(○の中に「R」の記号)の特許訴訟に勝訴」の見出しの下、「...米国では2011年11月まで本製品の主要特許権が保護されることになったことを本日発表しました。」の記載がある。
オ 甲第6号証の1は、2006年7月のデンドライトジャパン株式会社のニュースリリースの写しであり、「世界の大型医薬品売上ランキング 2005」の見出しの下、「医薬品売上世界ランキングTop40(成分別)2005」を表題とする表の2段目に「順」が「2」、「製品名」が「プラビックス」、「一般名」が「クロピドグレル」、「薬効等」が「抗血小板薬」、「メーカー名」が「サノフィ・アベンティス/BMS」、「2005年」が「6,223(百万ドル)」、「伸び率」が「10%」と記載がある。
カ 甲第6号証の2は「メディカル・プラネット」のウェブページの写しであり、「クローズアップ新薬」の見出しの下、「プラビックス」の項に「...プラビックスは、...2005年度の世界医薬品売上ランキングは、リピトールに次いで第2位。」の記載とともに、「プラビックス」と表示された包装箱と錠剤の写真が掲載されている。
キ 甲第7号証は、2010年7月6日にプリントアウトされたインターネット検索エンジン「グーグル」による「プラビックス サノフィ」を検索キーとした検索結果の頁であり、ヒット件数が約6,130件である旨の記載がある。
ク 甲第8号証は、請求人が取得している商標「PLAVIX」に係るフランス、オーストラリア、カナダ、香港、シンガポール、タイ、英国、及び米国の商標登録証等の写しである。
ケ 甲第9号証は、請求人のプレスリリースを和訳編集した、報道関係者に宛ての2006年5月9日付け書面の写しであり、「抗血小板剤『プラビックス○(○の中に「R」の記号)錠75mg、25mg』新発売」の見出しの下、「...日本で...抗血小板剤プラビックス○(○の中に「R」の記号)錠...の発売を開始したことを発表しました。...1998年米国、1999年欧州諸国での発売に続いて、現在、世界85カ国において販売されています。...サノフィ・アベンティスは世界では第3位、ヨーロッパでは第1位の製薬会社です。」の記載があり、当該商品の概要には、発売日: 2006年5月8日」の記載がある。
コ 甲第10号証は、2010年7月20日にプリントアウトされたMLリソース:血栓溶解剤,抗血栓剤」のウェブページであり、「市場」の項の表中に「●Plavix(clopidogrel)/【2007】...通年では、日本におけるPlavix(R)(プラビックス)の売上高は、前年同期の1,100万ドルに対し、6,100万ドルとなりました。」の記載がある。
サ 甲第11号証は、2009年7月のユート・ブレーン株式会社のニュースリリースの写しであり、「世界の大型医薬品売上高ランキング 2008」を見出しとする表の2段目に「順」が「2」、「製品名」が「プラビックス」、「一般名」が「クロピドグレル」、「薬効等」が「抗血小板薬」、「メーカー名」が「サノフィ・A/BMS」、「2008年」が「9,291(百万ドル)」、「前年比」が「12%」、「2007年」が「8,325(百万ドル)」との記載がある。
シ 甲第12号証は、「第15・16回ヒヤリ・ハット事例収集結果」を表題とする「平成18年9月21日/医薬食品局安全対策課」の記載のある書面の写しであり、別添2の「3」に「具体的内容」として「『メレックス』を処方する予定が『メイラックス』の処方を指示した。さらに、実際処方されたのは『ソラナックス』であった。」とあり、「背景・要因」として「いずれも名称が類似している。」とされた事例などの記載がある。
(2)以上の被請求人の提出に係る甲各号証及び答弁の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 請求人は、2009年(平成21年)連結決算では、293億600万ユーロの売上げを計上し、医薬品企業で世界で第3位、欧州第1位の製薬会社である(上記(1)ア及びケ)。
イ 抗血小板剤「プラビックス」は、1998年米国、1999年欧州各国で発売され、2006年5月には世界85か国において販売され、その世界売上高は、2005年に6,223百万ドル(約6,600億円)、2007年に8,325百万ドル、2008年に9,291百万ドルであり、2005年及び2008年における医薬品売上世界ランキング(成分別)で第2位であった(上記(1)ウ、オ、カ、ケ及びサ)。
ウ 我が国において抗血小板剤「プラビックス」は、2006年(平成18年)5月に発売が開始され、その売上高は、2006年に1,100万ドル、2007年に6,100万ドル(約67億円)であった(上記(1)イ、ケ及びコ)。
また、同商品の包装箱には「プラビックス」の表示はあるが、「PLAVIX」の表示は確認できない。
エ 請求人などは、商標「PLAVIX」を第5類心臓血管疾患用の製薬剤などについて、フランス、オーストラリア、カナダ、香港、シンガポール、タイ、英国、及び米国の商標登録を保有している(上記(1)ク)。しかしながら、外国での商標「PLAVIX」の使用態様は不明である。
(3)上記(2)の認定事実によれば、次のとおりである。
請求人などが販売する抗血小板剤「PLAVIX」は、少なくとも米国等8か国においては「PLAVIX」の製品名(商標)で販売されたと推認し得るとしても、他の国においていかなる製品名(商標)で販売していたのか不明であるし、また、我が国において「プラビックス」の商標を付して販売されたことは認められるものの、引用商標「PLAVIX」を使用している証左は見いだせない。
その他、引用商標が、請求人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めるに足る証拠の提出はない。
そうすると、引用商標が世界の医薬品業界において、抗血小板剤の商標(製品名)として、ある程度知られていたことがうかがえるとしても、提出に係る証拠をもってしては、引用商標が、我が国において本件商標の出願の時(平成19年9月26日)ないし査定時(平成20年5月14日)において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(1)本件商標と引用商標
本件商標は、前記第1のとおり、「プラノックス」と「PLanox」の文字からなり、その構成文字に相応し、「プラノックス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
一方、引用商標は、前記第2のとおり、「PLAVIX」の文字からなり、その構成文字に相応して「プラビックス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)本件商標と引用商標との類否
本件商標から生じる「プラノックス」の称呼と引用商標から生じる「プラビックス」の称呼とを比較すると、両者は中間において「ノ」と「ビ」の音に差異を有するものである。そして、当該「ノ」の音は、舌尖を前硬口蓋に接して発する鼻子音(n)と母音(o)の結合した音節であり、また、「ビ」の音は、両唇を合わせて破裂させる有声子音(b)と母音(i)との結合した音節であって、両者は音質が明らかに異なる音である上、それぞれ促音を伴うことで強く発音・聴取されるものであることから、かかる差異が称呼全体に与える影響は大きく、両称呼はこれらをそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語調、語感が異なり明瞭に聴別し得るものである。
次に、両者の外観は、上記(1)のとおり、前者が片仮名と欧文字とを二段に表してなるのに対し、後者は欧文字からなるから、両者を全体的に観察すれば、外観上明らかに区別できるものであり、また、本件商標の欧文字部分「PLanox」と、引用商標「PLAVIX」との比較においても、いずれも6文字という比較的少ない文字構成において、第4字目及び第5字目において「no」と「VI」との綴りに顕著な差異を有するものであって、外観上相紛れるおそれはないものである。
さらに、本件商標と引用商標とは、共に特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することができない。
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの
点においても商品の出所について混同を生ずるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものと認めることはできない。
引用商標が、本件商標の登録出願前から、請求人の業務に係る「薬剤」等を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認められないことは、上記1のとおりである。
また、本件商標と引用商標とは、上記2のとおり互いに相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであり、他に商品の出所について混同を生ずるおそれがあるとすべき格別の事情も見いだすことができない。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、これに接する取引者・需要者をして、請求人又は引用商標を想起し、該商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものと認めることはできない。
本件商標と引用商標とは、上記2のとおり、非類似の商標であって、また、不正の目的をもって使用をするものと認めるに足る証拠も見いだせないから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
また、請求人は、判例を挙げているが、それらで争われている商標は、本件商標とは商標の構成等が相違し事案を異にするものであるから、上記認定に影響を及ぼすものとはいえない。
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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