Trademark Appeal Case
著名公益標章の類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2010−26515(T2010−26515/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「AMEDAS」の欧文字を横書きしてなり、第1類「化学品」を指定商品として、平成21年10月16日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『AMEDAS』の文字を普通に用いられる方法で書してなるものであるが、これは、我が国の気象庁が、地域的に細かく気象観測をするために、1974年から全国に展開している事業である地域気象観測システムを表示する著名な標章『AMeDAS』(AMeDAS=Automated Meteorological Data Acquisition System)と同一又は類似のものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第6号について
商標法第4条第1項第6号(以下「本号」という場合がある。)において、「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」は、商標登録を受けることができない旨規定している。
工業所有権法逐条解説[第18版](特許庁編集 社団法人発明協会発行)によれば、「六号の立法趣旨はここに掲げる標章を一私人に独占させることは、本号に掲げるものの権威を尊重することや国際信義の上から好ましくないという点にある。なお、本号は八号と異なり、その承諾を得た場合でも登録しないのであるから単純な人格権保護の規定ではなく、公益保護の規定として理解されるのである。」と説明されている。
また、知的財産高等裁平成20年(行ケ)10351号判決(判決言渡日 平成21年5月28日)(以下「知財高裁判決」という。)において、「商標法4条1項6号の規定は、同号に掲げる団体の公共性にかんがみ、その権威を尊重するとともに、出所の混同を防いで需要者の利益を保護しようとの趣旨に出たものであり、同号の規定に該当する商標、すなわち、これらの団体を表示する著名な標章と同一又は類似の商標については、これらの団体の権威を損ない、また、出所の混同を生ずるものとみなして、無関係の私人による商標登録を排斥するものであると解するのが相当である。」旨判示されている。
そこで、以上の観点から本件について検討する。
(2)本願商標の本号の該当性について
ア 「AMeDAS」の著名性について
「AMeDAS」(以下「引用標章」という。)について、気象庁のホームページにおける「アメダスの概要について」の項目には、「アメダス(AMeDAS)とは『Automated Meteorological Data Acquisition System』の略で、『地域気象観測システム』といいます。雨、風、雪などの気象状況を時間的、地域的に細かく監視するために、降水量、風向・風速、気温、日照時間の観測を自動的におこない、気象災害の防止・軽減に重要な役割を果たしています。アメダスは1974年11月1日から運用を開始し、現在、降水量を観測する観測所は全国に約1,300ヶ所あります。このうち、約840か所(約21km間隔)では降水量に加えて、風向・風速、気温、日照時間を観測しているほか、雪の多い地方の約300か所では積雪の深さも観測しています。」と記載されている(http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/amedas/kaisetsu.html)。
そして、「AMeDAS」(アメダス)の語は、例えば、広辞苑等多数の辞書、書籍に掲載されているばかりでなく、テレビ等で放送される毎日の気象情報やインターネットの気象情報において頻繁に使用されていることは周知の事実であって、我が国の国民の間に広く知られているものである。
そうとすれば、「AMeDAS」の文字は、気象庁が1974年より行っている気象観測の事業であって、その気象観測における「地域気象観測システム」を表示する標章として一般に広く知られているものということができる。
してみれば、「AMeDAS」の文字は、気象庁が行っている公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する著名な標章と認められるものである。
イ 本願商標と引用標章との類否について
本願商標は、「AMEDAS」の文字よりなるところ、その構成文字に相応して「アメダス」の称呼を生ずるものである。
また、本願商標は、「アメダス(地域気象観測システム)」を表示する標章の「AMeDAS」とは、その構成中の3文字目の「E」と「e」において相違するものの、その相違は、大文字と小文字の違いにすぎないものであり、残りの綴り字の全てが共通であるから、「アメダス(地域気象観測システム)」を連想し、想起することも決して少なくないものというべきである。
してみれば、本願商標は、「アメダス(地域気象観測システム)」の観念を生ずるものとみるのが相当である。
これに対し、引用標章「AMeDAS」は、その構成文字に相応して「アメダス」の称呼及び「アメダス(地域気象観測システム)」の観念を生ずるものである。
そこで、本願商標と引用標章とを比較するに、外観においては、本願商標は、「AMEDAS」の文字よりなるものであり、引用標章は、「AMeDAS」の文字よりなるものであるから、両者は、その構成中の3文字目の「E」と「e」において相違するものである。しかし、その相違は、大文字と小文字の「E(e)」にすぎないものであり、残りの綴り字の全てが共通であるから、両者は、非常に近似しており、外観上類似するものである。
称呼においては、本願商標は、引用標章と同じ「アメダス」の称呼を生ずるものであるから、「アメダス」の称呼を共通にする称呼上類似の商標である。
観念においては、本願商標は、その構成文字から、「アメダス(地域気象観測システム)」を連想し、想起する場合もあるというべきであり、また、引用商標は、「アメダス(地域気象観測システム)」の観念を生ずるものであるから、両者は、ともに、「アメダス(地域気象観測システム)」の観念を共通にするものであって、観念上類似するものである。
してみれば、本願商標は、引用標章と外観、称呼及び観念のいずれにおいても、相紛らわしい類似の商標というべきものである。
なお、請求人は、「我が国の気象庁が、地域的に細かく気象観測をするために1974年から全国に展開している事業である地域気象観測システムを表示する著名な標章『AMeDAS』と本願商標自体が類似であることは之を否定するものではありません。」と述べており、「アメダス(AMeDAS)」の標章の著名性及び本願商標との類似性について自認しているものである。
したがって、本願商標は、「アメダス/AMeDAS(地域気象観測システム)」を表示する著名な引用標章と類似の商標といわなければならない。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、「本願商標は、第1類の『化学品』について使用するものであり、地域気象観測システムと云う観測事業について使用するものではない。」旨の主張をしている。
しかしながら、本号は、商標を使用する商品及び役務については、その要件とはなっておらず、本件商標は、その構成態様からして、上記(2)で認定したとおりであって、著名な公的な引用標章に類似するものである。
イ 請求人は、「本願商標は、第1類『化学品』に属する防水、防湿剤について、『AMEDAS』の商標を付して1987年以来現在に到るまで継続して使用している。その間、何人も気象庁の気象観測に用いられる『AMeDAS』の標章と取引社会において誤認混同を来したことは全くない。」旨の主張をしている。
しかしながら、たとえ、請求人が現在に到るまで継続して本願商標を使用してきたからといって、また、取引社会において誤認混同がないからといっても、本号の趣旨によれば、その規定に該当する商標については、出所の混同を生ずるものとみなして、無関係の私人による商標登録を排斥するものであると解するのが相当である。
そして、気象庁若しくはその機関における気象観測の事業において使用される「地域気象観測システム」を表示する標章「AMeDAS」と類似する本願商標は、それらに表象される主体の権威を損ね又はその象徴性を希釈化しあるいは公共性、公衆性を害するおそれがあるというべきものである。
ウ 請求人は、「本願商標と同一の『AMEDAS』の商標を登録第2203682号及び登録第2199242号として現に有している。而して、双方とも、気象庁が気象観測の事業として『AMeDAS』の標章を使用し始めてから10数年後の出願に係るものであり、当時も気象観測に使用される気象庁の『AMeDAS』は既に一般取引社会においても周知されていたのであるが、本願の指定商品と気象観測の事業とは取引社会においても、全く誤認ないし錯覚されることは一切ないと云う事実に徴し、上記商標が許可登録されたものと確信する。」旨の主張をしている。
しかしながら、現在における引用標章の著名性は、上記登録商標の登録時(平成元年)から20年以上経ており、当時とは比較にならないほどである。そして、現在、著名な公的な引用標章に類似する本願商標は、本号に該当し商標登録できないものである。
よって、上記に関する請求人の主張は、いずれも理由がない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、気象庁若しくはその機関における気象観測といった公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章として著名な「AMeDAS」と類似する商標というべきものである。
そうとすれば、本号の立法趣旨や知財高裁判決の判示内容からすれば、「AMeDAS」の標章とは無関係の一私人たる請求人が、本願商標を独占することは、公益保護の観点からも適当であるとはいえない。
したがって、本願商標が商標法第4条第1項第6号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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