Trademark Appeal Case
「緑のカーテン」の記述性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2009−900462(T2009−900462/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第5266578号商標(以下「本件商標」という。)は、「緑のカーテン」の文字を標準文字で表してなり、平成20年11月21日に登録出願、第20類「植物の茎支持具,植物の支柱形茎支持具,蔓性植物用の蔓支持ネット」及び第21類「家庭園芸用植木鉢,家庭園芸用プランター,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ」を指定商品として、平成21年8月5日に登録査定、同年9月18日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由(要旨)
本件商標は、「緑のカーテン」の文字からなる標章を普通に用いられる方法で表示したにすぎないものであり、「緑のカーテン」は、植物を窓の外や外壁に沿って生育させて太陽光を遮るものとして、一般に知られ、普通に使用されているので、本件商標を指定商品中「植物の茎支持具,植物の支柱形茎支持具,蔓性植物用の蔓支持ネット,家庭園芸用植木鉢,家庭園芸用プランター,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ」に使用した場合には、当該指定商品の品質、用途或いは形状を表示するにすぎないものであって、自他商品識別標識として機能を果たさないものであり、また、前記以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、本件商標の登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである。
第3 取消理由通知
当審は、別掲のとおり、平成22年12月27日付けで商標権者に対し、相当の期間を指定して意見書を提出する期間を与え、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき取り消すべきものである旨通知した。
第4 取消理由通知に対する商標権者の意見(要旨)
1 商標法第3条第1項の規定に該当するか否かの判断時期は査定時である。
(1)商標法第3条第1項の規定に該当するか否かの判断時期は査定時であり、本件商標の場合は、登録査定の起案日である平成21年8月5日である。
(2)取消理由通知書の理由欄の1(1)において、申立人の提出した甲第2号証に関し、〔「緑のカーテン(ナチュラルウッド)ゴーヤの苗付」の見出しのもと、「庭がなくても作れる『緑のカーテンキット』。ゴーヤ苗を4株セットにしてお届けいたします!」の記載及びその「内容」の欄に「・枠(1段目、2段目、3段目)」「・アーチ」及び「・ネット」等の記載があり、「緑のカーテン」に使用する枠、アーチ、ネット等が販売されている。〕の記載があるとし、「緑のカーテンキット」の記載のあることが強調されている。
また、同理由欄の1(2)において、申立人の提出した甲第4号証に関し、〔「緑のカーテン植え込みセット・軒下用[プランター・土・肥料・ネットのセット]」の見出しのもと、「緑のカーテンでエコ&省エネ!緑のカーテンを作るのに最適なプランターと用土・肥料・つるもの用ネットのお得なセットです。南向きで日当たりのよい軒下は、夏に照り返しで温度が高くなります。そんな場所にこのセットを使ってつる性植物を栽培すれば、壁やサッシにあたる日差しを和らげ、熱を遮る効果があります。・・・」の記載及び「セット内容」の欄に「・ハンディプランター65タイプ ダークブラウン(長さ65cmプラスチックプランター)1個」「・軒まで届く花すだれ・プランター用0.6m×2.7m(つる性植物用ネット・10cm中細角目・無結節グリーン)1枚」及び「・花すだれ固定用支柱 長さ120cm 2本」等の記載があり、「緑のカーテン」に使用するプランター、つる性植物用ネット、固定用支柱等が販売されている。〕の記載があるとし、「緑のカーテン植え込みセット」の記載のあることが強調されている。
甲第2号証が「緑のカーテンキット」の記載を強調すると共に、甲第4号証が「緑のカーテン植え込みセット」の記載を強調するものであることは、申立人が、異議申立書の申立ての理由の要約の証拠の欄で、甲第2号証及び甲第4号証に関して、「『緑のカーテン』」の標章を付した商品(プランター、ネット、支柱等)を販売するウェブページの一部抜粋」と、証拠の説明を行なっていることから見て明らかである。
(3)ところで甲第2号証及び甲第4号証において、日付の記載と思われるものは、唯一、何れも右下にある「2009/10/29」のみである。この記載が2009年10月29日を意味しているとするならば、この記載は一般に、ウェブページの検索日を表示したものと理解するのが妥当である。
かかることから、甲第2号証及び甲第4号証が、検索日である2009年(平成21年)10月29日に存在したことは分かるが、本件商標に係る査定日(平成21年8月5日)の時点で公知になっていたか否かは全く不明である。
(4)したがって、甲第2号証と甲第4号証は、本件商標が商標法第3条第1項第3号の規定に該当するか否かの証拠として採用することはできないものである。
2 理由欄の1(3)〜(6)及び2(1)〜(8)、3(1)〜(4)には「緑のカーテン」の語の使用態様が示されているが、「緑のカーテン」の語が、単独で、プランター等の本件商標の指定商品そのものに関して使用されていることを示す記載は全く存在しない。即ち、
(1)理由欄の1(3)〜(6)及び2(1)〜(8)、3(1)〜(4)の夫々に記載されているのは、理由欄の4の第1段落の前半に記載されているように、「緑のカーテン」は、「アサガオやゴーヤなどの蔓性の植物を建物の外側に生育させ、窓や壁に作った自然のカーテン状のもの」の意味合いで使用されていることを示すに過ぎず、「緑のカーテン」の語が、単独で、プランター等の本件商標の指定商品そのものに関して使用されていることを示す記載は全く存在しない。2009年(平成21年)10月29日の時点において(本件商標の登録査定時ではない)、甲第2号証にあるように、「緑のカーテン」の文字と「キット」の文字を組み合わせた「緑のカーテンキット」なる語と、甲第4号証にあるように、「緑のカーテン」の文字と「植え込みセット」の文字を組み合わせた「緑のカーテン植え込みセット」なる語が存在するに過ぎない。
(2)つまりは、本件商標に係る指定商品「植物の茎支持具、植物の支柱形茎支持具、蔓性植物用の蔓支持ネット、家庭園芸用植木鉢、家庭園芸用プランター、家庭園芸用の水耕式植物栽培器、じょうろ」について、これらが、「緑のカーテン」単独の商標で販売されている事実は全く存在しない、ということである。
(3)以上のように、「緑のカーテン」の語が単独で、本件商標に係る指定商品について、その用途、品質等を直接的且つ具体的に表示するために取引上普通に使用されているという事実は存在しない。
3 理由欄の4には、『以上の事実を総合すれば、本件指定商品を取り扱う業界において、本件商標「緑のカーテン」は、「アサガオやゴーヤなどの蔓性の植物を建物の外側に生育させ、窓や壁に作った自然のカーテン状のもの」の意味合いで、本件商標の登録出願時はもとより、登録査定時においても一般に広く使用されており、また、緑のカーテン用の支柱、ネット、プランター等が存在し、販売されている実情にある。』と認定されている。しかしながら、「本件指定商品を取り扱う業界において」、「緑のカーテン」の語が単独で、本件商標に係る指定商品について、その用途、品質等を直接的且つ具体的に表示するために取引上普通に使用されているという事実は存在しない。
(1)甲第5号証には、「プランターやネット、つっかえ棒」等の商品について「緑のカーテン」の語が単独で取引上普通に使用されている事実を示す記載は、存在しない。
(2)理由欄の2(1)記載の新聞記事情報には、「緑のカーテンを作るために、ナイロン製のネット、竹垣を用意すること」が記載されているだけであり、「ナイロン製のネット、竹垣」について「緑のカーテン」の語が単独で取引上普通に使用されている事実を示す記載は、存在しない。
(3)理由欄の2(4)記載の新聞記事情報には、「緑のカーテンを作るために深めのプランター、支柱、ネットなどを用意すること」が記載されているだけであり、「プランター、支柱、ネットなど」について「緑のカーテン」の語が単独で取引上普通に使用されている事実を示す記載は、存在しない。
(4)理由欄の2(6)記載の新聞記事情報には、「緑のカーテンを作るためにプランターやネットなどを用意すること」が記載されているだけであり、「プランターやネットなど」について「緑のカーテン」の語が単独で取引上普通に使用されている事実を示す記載は、存在しない。
(5)理由欄の2(7)記載の新聞記事情報には、「緑のカーテンを作るために支柱、ネット、ポットなどを用意すること」が記載されているだけであり、「支柱、ネット、ポットなど」について「緑のカーテン」の語が単独で取引上普通に使用されている事実を示す記載は、存在しない。
(6)理由欄の2(8)記載の新聞記事情報には、「緑のカーテンを作るために竹などの支柱、園芸用のネットなどを用意すること」が記載されているだけであり、「支柱、園芸用のネットなど」について「緑のカーテン」の語が単独で取引上普通に使用されている事実を示す記載は、存在しない。
(7)かかることから、「本件指定商品を取り扱う業界(ユーザ一間においてではなく、本件指定商品を製造する業界、その流通の業界と解される)」において、本件商標「緑のカーテン」の語が単独で、本件商標に係る指定商品について、その用途、品質等を直接的且つ具体的に表示するために登録出願時はもとより登録査定時においても一般に広く使用されている事実はなかった。
4 まとめ
以上のように「緑のカーテン」の語は、それが仮に一般に使用されていたとしても、あくまでも、「アサガオやゴーヤなどの蔓性の植物を建物の外側に生育させ、窓や壁に作った自然のカーテン状のもの」の意味合いで使用されていたに過ぎず、「緑のカーテン」の語そのものを、本件指定商品を取り扱う業界において、「本件商標の登録査定時」において、商品の用途、品質等を直接的且つ具体的に表示するものとして取引上普通に使用されていた事実はなかったのであり、商品の用途、品質等を直接的且つ具体的に表示するとの認識もなかった。
そして、商標の識別力を有するか否かの判断において、その語が、取引上普通に使用されている事実が重視されるべきであり、そのような事実を見出すことができないときは十分自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであることは、御庁の審決例(例えば、乙第1号証の1ないし13に係る審決公報)において多々見受けられるものであり、「取引上普通に使用されている事実」の有無は識別力を判断する際に重視されるべきものである。
よって、本件商標は、本件指定商品の用途、品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標とは決して言えず、本件商標は商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものではない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号について
本件商標は、前記第1のとおり、「緑のカーテン」の文字を標準文字で表してなり、第20類「植物の茎支持具,植物の支柱形茎支持具,蔓性植物用の蔓支持ネット」及び第21類「家庭園芸用植木鉢,家庭園芸用プランター,家庭園芸用の水耕式植物栽培器,じょうろ」を指定商品とするものであるところ、前記第3の取消理由(甲第4号証を除く。)に掲げられた証拠によれば、本件指定商品を取り扱う業界において、本件商標は、「アサガオやゴーヤなどの蔓性の植物を建物の外側に生育させ、窓や壁に作った自然のカーテン状のもの」の意味合いで、本件商標の登録出願時はもとより、登録査定時においても一般に広く使用されており、また、緑のカーテン用の支柱、ネット、プランター等が存在し、販売されている実情にある。
したがって、本件商標をその指定商品について使用するときは、需要者に「緑のカーテンに使用する商品」であるという程の意味合いで容易に理解されるというのが相当であって、本件商標は、単に商品の用途、品質等を表すものと認識されるものであるから、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものである。
2 商標権者の主張について
(1)商標権者は、「甲第2号証及び甲第4号証が、検索日である2009年(平成21年)10月29日に存在したことは分かるが、本件商標に係る査定日(平成21年8月5日)の時点で公知になっていたか否かは全く不明である。したがって、甲第2号証と甲第4号証は、本件商標が商標法第3条第1項第3号の規定に該当するか否かの証拠として採用することはできないものである。」旨主張する。
しかしながら、商標に関する審理は、証拠に基づいて総合的に判断すべきものであるところ、新聞記事情報(前記第3の取消理由2(1)ないし(8))によれば、「緑のカーテン」の語は、1990年から2005年まで新聞記事にて使用されており、また、登録査定時においても使用されている。
そして、甲第2号証の印刷日(検索日)が、2009年(平成21年)10月29日であるとしても、夏に使用する商品を2009年の秋の終わり頃から販売することは極めて不自然であること及び甲第2号証の5/5頁には、「Copyright 2004−2009 第一園芸株式会社・・・」と記載されていることから、2004年から2009年にかけての内容であると認められるものであって、甲第2号証に掲載されている「枠,アーチ,ネット」等の緑のカーテン用の商品は、本件商標に係る登録査定時(平成21年8月5日)以前に販売を開始していたものと推認できるものである。
(2)商標権者は、「『緑のカーテン』の語が、単独で使用されている事実はない。商標の識別力を有するか否かの判断において、その語が、取引上普通に使用されている事実が重視されるべきであり、そのような事実を見出すことができないときは十分自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであることは、審決例(乙第1号証の1ないし13)において多々見受けられるものであり、『取引上普通に使用されている事実』の有無は識別力を判断する際に重視されるべきものである。」旨主張する。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号が、指定商品の品質、用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について、商標登録を受けることができない旨規定する趣旨は、そのような商標が商品の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・判例時報927号233頁参照)。そうすると、同号は、指定商品の品質、用途を表すものとして取引者、需要者に認識される表示態様の商標につき、そのことのゆえに商標登録を受けることができないとしたものであって、同号を適用する時点において、当該表示態様が、商品の品質、用途を表すものとして現実に使用されていることは必ずしも必要でないものと解すべきである(東京高裁平成13年(行ケ)第207号平成13年12月26日判決)。
3 まとめ
したがって、本件商標は、その指定商品について、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるから、本件商標の登録は、同法第43条の3第2項の規定によって、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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