Trademark Appeal Case
地名普通表示の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2010−13894(T2010−13894/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第21類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成20年10月22日に登録出願され、その後、指定商品については、原審における同21年6月26日付けの手続補正書により、第21類「ガラス製飲料用容器,ガラス製食品用容器,なべ,フライパン,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),家庭用コーヒー抽出器(電気式又は貴金属製のものを除く。),家庭用コーヒードリッパー(電気式又は貴金属製のものを除く。),家庭用コーヒーミル(電気式又は貴金属製のものを除く。),食器類(貴金属製のものを除く。),きゅうす,コップ,皿,サラダボール,茶碗,ディッシュカバー,デカンター,湯飲み,コーヒーポット(電気式のものを除く。),ティーポット,コーヒーサーバー(電気式のものを除く。),家庭用飲料水用サーバー,食品保存用ガラス瓶,アイスペール,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器,ガラス製調味料用容器,花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。)」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『iwaki』の欧文字を、やや図案化して横書きしてなるところ、当該文字は、ありふれた氏である『岩城』若しくは『岩木』の文字を欧文字で表記したものと容易に認識されるものである。してみれば、本願商標は、ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審における審尋
原審における平成21年4月16日付け拒絶理由通知をもって通知された理由1に係る本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとの点について、当審において、本願商標は、同号にも該当するものと判断し、職権に基づく証拠調べをした結果、本願商標を構成する「iwaki」及び当該文字に通ずる「IWAKI」の各文字が福島県いわき市を表示するものとして一般に採択、使用されている別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、相当の期間を指定して、平成23年2月24日付け審尋において証拠調べの結果を通知するとともに、当該証拠調べの結果を総合すると、本願商標を構成する「iwaki」の文字は、福島県いわき市を表示するものとして、一般に広く使用されているものであるから、本願商標を、その指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、当該文字から容易に福島県いわき市を想起し、単に商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示したものと認識するものというべきである。してみれば、本願商標は、商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当するものといわなければならない。よって、本願商標は商標法第3条第1項第3号にも該当するものと判断せざるを得ないから、前記の理由1は解消されていない旨をあらためて通知し、請求人に対し意見を述べる機会を与えた。
4 審尋に対する請求人の意見
前記3の審尋に対し、請求人は、平成23年7月20日付け回答書において、要旨、以下のように回答した。
(1)福島県いわき市は、「いわき」ないし「いわき市」と表記されてこそ市名として正式な表記であり、同市を観念する。
(2)各辞書の記載は、「いわき」という平仮名の有する意味の一つにすぎず、「いわき」との表記であっても、福島県いわき市のみを想起しない。
(3)インターネットのURLは、英数字及びハイフンからなる文字列であることを要するために、第3レベルドメイン部分に「いわき」に関わる表記を「iwaki」と表記しているにすぎず、「いわき市」の表記として「iwaki」が一般に通用しているとはいえない。
(4)本願商標を構成する文字は、従来のフォントにはない、書体自体に特徴あるデザインを施しているから、「普通に用いられる方法で表示する」には該当しない。
5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなるところ、やや図案化がなされているとしても、いまだ普通に用いられる方法の域を出ない方法で「iwaki」の欧文字を書してなるものと容易に看取されるものである。
そして、前記3の審尋に開示した証拠調べの結果のとおり、「iwaki」又は当該文字に通ずる「IWAKI」が、福島県いわき市を表示するものとして一般に採択、使用されている実情があるものである。
してみれば、本願商標は、「iwaki」の欧文字を普通に用いられる方法で表してなるにすぎず、福島県いわき市を表示するものと容易に需要者に認識させるものであるから、本願商標をその指定商品について使用するときは、これに接する取引者、需要者をして、その商品が福島県いわき市で製造、販売されたものであること、すなわち、商品の産地、販売地を表示したものと認識させるにとどまるものである。
したがって、本願商標は、商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第1項第4号について
本願商標は、前記(1)のとおり、普通に用いられる方法の域を出ない方法で「iwaki」の欧文字を書してなるものと容易に看取されるものである。
そして、原審説示のとおり、「岩城」あるいは「岩木」の姓は、我が国においてありふれた氏と認められ、日常の商取引において氏を表す場合には、必ずしも漢字のみに限らず、ローマ字等で表示する場合も決して少なくないものであるから、本願商標を構成する「iwaki」の文字は、ありふれた氏である「岩城」あるいは「岩木」を欧文字で表記したものと認識するとみるのが相当である。
してみれば、本願商標は、ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、標法第3条第1項第4号に該当するものである。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、その沿革について、1883年(明治16年)に岩城硝子製作所として日本で最初の民間ガラス製品製造工場として操業を開始し、1921年(大正10年)に個人企業から合資会社に改められ、1937年(昭和12年)に東京都蒲田区(現在の東京都大田区)矢口町に岩城硝子株式会社として改組した親会社が、1976年(昭和51年)に家庭用品の販売会社として設立した、株式会社東京ハウスウエア、株式会社名古屋ハウスウエア及び株式会社大阪ハウスウエアの三社が統合されて設立された会社であり、その後、旭硝子株式会社の資本参加を得て現在は同社の完全子会社として、食器などの岩城硝子の特殊ガラス家庭用品を販売する(第2号証)と述べる。また、請求人の使用する商標について、当初の「岩城硝子」の使用を経て、1972年(昭和47年)頃から「IWAKI GLASS」の商標の使用を開始し、1989年(平成1年)頃から岩城硝子の全商品カタログ及びテレビ放送におけるコマーシャルに登録商標(登録第4327410号、以下「本件従来商標」という。)を使用していた(第3号証)ところ、本件従来商標の態様は、その2箇所の「i」の文字に中抜きの縦線があり、「a」の腹部の弧状を描く線の一端が途切れて開放されており、「k」の右側「く」の字型部分が左側垂直部分と接しないで離れているなど各構成文字の書体自体に特徴あるデザインを施しているものであったが、その後、「企業の力強さ、ブランドの強さ、シンボルの強さ」をコンセプトに商標の態様をリニューアルするべく、本件従来商標の態様を基礎にして、その「i」の文字の中抜きの縦線を黒塗りにし、かつ全体の文字をやや幅広にした本願商標の態様を作り上げ、現在までの使用に至っている(第4号証)との歴史的な事実を述べる。そして、前記の事情から、極めて長い業務歴史のある岩城硝子のハウスマークとして、食器などの岩城硝子の特殊ガラス家庭用品について長い使用の歴史がある標章「iwaki」は、広く重要者(審決注:「重要者」とあるのは「需要者」の誤記と認める。)・取引者に浸透しており、商標に化体された業務上の信用は極めて大なるものがあり、食器などの岩城硝子の特殊ガラス家庭用品に使用される本願商標の欧文字「iwaki」からは、個人の姓である「岩城」や「岩木」などを想起させるものではなく、広く知られた岩城硝子の業務主体を想起させると判断するのが自然であると言えるのではないかと主張する。
しかしながら、本願商標と本件従来商標とは、その構成態様を異にするものというべきであって、本件従来商標に化体した業務上の信用を、本願商標についても同様であると解すべき余地はない。
また、請求人は、本件従来商標を基礎として「企業の力強さ、ブランドの強さ、シンボルの強さ」をコンセプトに商標の態様をリニューアルするべく本願商標を作出したと主張する。
しかしながら、本願商標の採択の事情といった請求人の主観的な意図によって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同4号に該当するとの本件の判断が左右されるものではない。
さらに、請求人は、「本願商標の欧文字『iwaki』からは、・・・広く知られた岩城硝子の業務主体を想起させると判断するのが自然」であると主張する。
しかしながら、請求人提出に係る商品カタログ(第4号証)によっても、本願商標は、2008年、2009年及び2010年の当該カタログに表示されているにすぎないものである。そして、当該カタログがどの程度制作され、頒布されたのかも明らかではなく、その他に本願商標の使用を立証する的確な証拠の提出もなされていない。そうとすれば、商品の産地、販売地を表示するものとして、あるいは、ありふれた氏を表示するものとして需要者が一般に認識し、本来的に、自他商品の識別標識としての機能を果たさない本願商標が、岩城硝子の業務主体を想起させるものということはできない。
イ 請求人は、本願商標のデザインに関する原査定の説示について、本願商標の各構成文字の書体は、本件従来商標の態様を基礎にして、さらに力強い特徴あるデザインを施したものであるから、かかる判断が妥当するものではないとし、一方、会社の製品コンセプトや企業イメージの刷新から、商標自体の構成態様をリニューアルして行くことは企業活動においては一般化しており、かかる状況下で、それまで長い期間にわたって保護されていた商標に化体された業務上の信用がほんのわずかの文字自体の表示の変更によって最早保護されない、というのでは合理性を欠くと言えるのではないかと主張する。
しかしながら、本願商標は、前記(1)のとおり、図案化がなされているとしても、本願商標に接した需要者が「iwaki」の欧文字からなることを容易に看取しうる程度のものにすぎない。また、請求人も審判請求の理由中で本願商標が「iwaki」の欧文字からなることを否定していない。
また、前記アのとおり、本件従来商標と本願商標は、その構成態様を異にするものであって、請求人の主張する「ほんのわずかの文字自体の表示の変更」ということはできない。
さらに、本願商標が本件従来商標を基礎に新たなデザインを施したものであるとしても、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同4号に該当するか否かは、個別かつ具体的に判断をなすべきものであるから、当該登録商標が存することを前提とする請求人の主張は、その前提において当を得ないものというべきである。
ウ 請求人は、本願商標と構成文字を共通にする登録商標は、本件従来商標以外にも見出せるとして、商標登録の事例を挙げている。
しかしながら、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同4号に該当するか否かは、個別かつ具体的に判断をなすべきものであることは前記イのとおりであって、本件の判断が他の商標登録の事例の存在に拘束され、左右されるものではない。
したがって、前記の請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(4)平成23年7月20日付け審尋に対する回答書について
ア 請求人は、福島県いわき市は、「いわき」ないし「いわき市」と表記されてこそ市名として正式な表記であり、同市を観念する旨請求人は主張する。
しかしながら、本件の争点となる商標法第3条第1項第3号にいう商品の産地、販売地を表示する商標であるか否かは、その地名の正式な表記であることを要件とするものではないから、請求人の主張は失当である。
イ 請求人は、各辞書の記載は、「いわき」という平仮名の有する意味の一つにすぎず、「いわき」との表記であっても、福島県いわき市のみを想起しない旨主張する。
しかしながら、辞書に「いわき」の見出しのもと、複数の記載があるとしても、そのことを理由に、本願商標に接する需要者が、本願商標が商品の産地、販売地を表示するものと認識しないということはできないから、請求人の主張は失当である。
ウ 請求人は、インターネットのURLは、英数字及びハイフンからなる文字列であることを要するために、第3レベルドメイン部分に「いわき」に関わる表記を「iwaki」と表記しているにすぎず、「いわき市」の表記として「iwaki」が一般に通用しているとはいえない旨主張する。
しかしながら、インターネットウェブサイトの利用がごく一般的といえる今日において、そのURLに「iwaki」の文字が含まれ、かつ、そのURLに係るインターネットウェブサイト等を運営・使用する者が、福島県いわき市等であることからすれば、結果として、本願の指定商品の需要者は、「iwaki」の文字をもって、福島県いわき市を表示するものと一般に認識するにいたるものというのが相当である。
エ 請求人は、本願商標を構成する文字は、従来のフォントにはない、書体自体に特徴あるデザインを施しているから、「普通に用いられる方法で表示する」には該当しない旨主張する。
しかしながら、前記(3)イのとおり、本願商標に、従来のフォントにはない、書体自体に特徴あるデザインが施されているとしても、本願商標に接した需要者が「iwaki」の欧文字からなることを容易に看取しうる程度の図案化にすぎず、また、請求人も本願商標が「iwaki」の欧文字からなることを否定していない。そうとすれば、本願商標は、いまだ、商標法第3条第1項第3号及び第4号にいう「普通に用いられる方法で表示する」ものといわざるを得ない。
したがって、前記の請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(5)平成23年7月20日付け審理再開申立書について
請求人は、審理終結通知後の平成23年7月20日付け審理再開申立書を
もって、同日付の前記4の審尋に対する回答書を提出するとともに、審理再開の申立をしている。
しかしながら、請求人は、何ら新たな証拠を提出することもなく、前記4のとおりの主張をなすものであって、当該主張については、前記(4)のとおりに判断するところ、その主張をもって本件の判断を左右するものではないから、本件について審理再開の必要はないものと判断する。
(6)まとめ
以上からすれば、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同第4号に該当するものとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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