Trademark Appeal Case
称呼の類似性:語尾音の吸収
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2010−29615(T2010−29615/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、平成21年2月20日に登録出願された商願2009−11935を原出願とする商標法第10条第1項の規定による商標登録出願(分割出願)として、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,アイマスク,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,帽子,防暑用ヘルメット,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),仮装用衣服」を指定商品として、同21年9月17日に登録出願されたものである。
2 引用商標
原査定において、本願商標の拒絶の理由に引用した登録第1066218号商標(以下「引用商標」という。)は、「SOLBEE」の欧文字と「ソルビー」の片仮名とを上下二段に併記してなり、昭和46年4月22日登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載されたとおりの商品を指定商品として、同49年5月16日に設定登録され、その後、同59年6月20日、平成6年9月29日及び同16年4月20日の三回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、指定商品については、同年6月16日に、第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服」とする指定商品の書換登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
3 当審の判断
(1)本願商標と引用商標との類否について
本願商標は、別掲のとおり、右の上部を円弧状に切り欠き、様式化された太陽とその光線の如き3つの三角形を表した隅が丸い朱色の矩形中の左下方に、「Solby」の欧文字を白抜きで表した構成からなるものである。しかして、当該太陽のごとき図形と文字部分とは、視覚上分離して把握され、また、これらを常に不可分一体のものとしてのみ把握、認識しなければならない格別の事情も見出せないものであるから、それぞれ独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものというのが相当である。
そうとすると、簡易、迅速をたっとぶ取引の実際にあっては、本願商標に接する取引者、需要者は、その構成中に顕著に表され印象に残る「Solby」の文字部分に着目して、当該文字部分をもって、取引に資することも決して少なくないものというのが相当である。
してみれば、本願商標は、その構成中の「Solby」の文字部分に相応して英語風に「ソルビィ」の称呼を生じるものである。そして、当該文字部分は、直ちに親しまれた特定の語を想起させるものではないから、一種の造語として認識され、特定の観念を生じないものというのが相当である。
これに対し、引用商標は、前記2のとおり、「SOLBEE」の欧文字と「ソルビー」の片仮名とを上下二段に併記してなるところ、当該欧文字よりは、直ちに親しまれた特定の語を想起させるものではない上に、我が国で広く親しまれた外国語にも見当たらないことから、一種の造語として認識され、特定の観念を生じないものというのが相当である。しかして、欧文字の造語からなる商標の場合には、我が国で親しまれたローマ字読み又は英語風の発音に倣って称呼されることが一般的であるところ、引用商標の構成と同一の綴りからなる英語は見当たらないものの、我が国で広く親しまれた英語「soldier」(ソルジャー)から前半の「sol」の文字部分を「ソル」と、また、同様に英語「bee」(ビー)から後半の「bee」の文字部分を「ビー」と称呼して、全体として英語風に「ソルビー」の称呼を生ずるものというのが相当である。加えて、下段に書された「ソルビー」の片仮名も上段の欧文字の称呼を特定したものと無理なく理解できるものである。そうすると、引用商標は、その構成に相応して「ソルビー」の称呼を生ずるものというべきである。
そこで、本願商標と引用商標の称呼を対比するに、両者は、称呼の識別上重要な語頭の「ソル」の音を共通にし、比較的聴取し難い語尾において「ビィ」と「ビー」の音の差異を有するにすぎないものである。しかして、その差異音とても、いずれも「ビ」の音に吸収されて明瞭に聴取し難いものであることから、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、音感が近似し、かれこれ聴き誤るおそれが十分あるものといわなければならない。
してみれば、本願商標と引用商標は、外観が相違し、観念においては比較できないとしても、称呼において相紛れるおそれのある類似の商標といわなければならない。
また、本願商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似のものである。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標についての採択の理由を、要旨、「請求人のコンセプトである『子供が生まれ、育み、一緒に生きていく過程を通じて、愛、生きる喜び、意味、意義を真剣に考え続け、家族みんながよりよい人生を歩んでいこうとする考え方』から、太陽(sol)と赤ちゃん(baby)を掛け合わせて創作した造語『solby』に図形を組み合わせている(甲1及び甲2)。また、『子は鎹』のたとえにあるとおり、幼子の存在は、家庭の中に喜びや和やかな雰囲気を生み出す力があることから、本願商標は『太陽のようにキラキラ輝く赤ちゃん』をイメージした造語『solby』の文字に向かって、太陽の光がサンサンと輝き、『solby』の文字の周囲にも温かさが広がっている様を描いているから、請求人が人々に伝えたいメッセージが表現されている。」旨述べ、「本願商標は、ベビー用品・ベビー雑貨等を主な業種とする請求人が、ベビーの持つ愛らしさや和やかさの雰囲気を本願商標に託し、看取する者に全体的に一つのまとまった図形として認識させ、ベビー用品等の取り扱いを印象づけるよう工夫している。したがって、全体の構成を著しく異にする本願商標と引用商標は、看取する者の印象・連想・記憶においてもその差異を十分に認識することができ、称呼が近似するとしても、総合的に勘案すれば両商標を類似するとしなければならない程度には達していない」旨主張する。
しかしながら、本件の争点となる商標法第4条第1項第11号に係る商標の類否判断において、請求人が商標を採択した趣旨ないし理由は、その類否判断に影響を与えるものでないことは、同号の条文に照らし、また、請求人の引用する最高裁判所の判例(最高裁昭和39年(行ツ)第110号、同43年2月27日第三小法廷判決)の判示する内容に照らしても明らかである。
イ 請求人は、原査定は、文字部分から生ずる称呼の類否についてのみ判断することに終始し、外観・観念について著しく相違することを看過したものであり、図形と文字とが一体となっているか否かの実質的な検討を欠いたまま、本願商標と引用商標とが称呼によってのみ類似するとした判断は、明らかに妥当性を欠く旨主張し、前記の最高裁判所の判例及び裁判例(東京高裁平4(行ケ)第93号)を引用する。
しかしながら、本件の審理は、原査定の正否を判断することが目的ではなく、本願商標について、商標法所定の登録要件に照らして、商標登録を許容すべきか否かを判断することが目的であるところ、本件における商標の類否判断については、前記(1)のとおり、判断するものである。そして、本願商標のように、図形と文字の結合したいわゆる結合商標の類否判断については、一つの商標中に商品の出所識別標識として機能する部分が二以上ある場合には、一つの称呼、観念が他人の商標の称呼、観念と同一または類似であるとはいえないとしても、他の称呼、観念が他人の商標のそれと類似するときは、両商標はなお類似するものと解するのが相当である(最高裁昭和37年(オ)第953号、昭和38年12月5日第一小法廷判決参照)。
ウ 請求人は、自己の業務内容及び取扱商品について縷々述べ(甲2、甲5及び甲6)、その取引者は、請求人の直営店並びに販売代理店、また乳幼児コーナーを設けているデパートであり、需要者は、いわゆる一般消費者であり、それらの需要者は直接販売店へ出向くか若しくはインターネット上の通信販売等で購入する(甲7ないし甲9)。一方、引用商標の商標権者は、高分子化学メーカーであるから、同社の主な取引者は、アパレルメーカーや取扱業者等専門業界に限られ、一般消費者とは異なるものと推測することができる(甲10)。なお、引用商標権者のホームページ中の商品検索機能を利用して引用商標を検索したところ、同商標が指定商品に付されて使用されている事実は確認できない(甲11)。したがって、本願商標と引用商標とは取扱商品が異なり、その取引者又は需要者においても相違するから、本願商標と引用商標とは、商品の出所の誤認混同は生じない旨主張する。
しかしながら、本願の指定商品と引用商標の指定商品とは、同一又は類似の商品であることが、本願の願書の記載及び引用商標に係る商標登録原簿の記載に徴すれば明らかというほかはなく、そうとすれば、商品の需要者も同一というほかはないから、請求人の主張は失当と言わざるを得ない。
また、引用商標が使用されていないとしても、本件の争点となる商標法第4条第1項第11号の条文に照らし、商標の現実の使用が同号の適用のための要件ではないことは明らかである。そうすると、請求人の主張により、本願商標は出所の混同を生じない商標であるということはできない。
エ 請求人は、本願商標を付した商品は、他の商品とは異なり、赤ちゃんが直接身につけるものであるから、購入する者はより注意を払う傾向にあり、需要者は直接販売店へ出向くかインターネットで商品を見て購入するところ、本願商標は商標を耳よりも目で捉える機会が多くなり、称呼や観念と比較して外観が果たす役割は大きい旨主張する。
しかしながら、本願の指定商品の分野の取引において、称呼による取引は全く行われていないとするような事情は見当たらない。確かに、今日においては、インターネットを中心とする「視覚」に訴える情報媒体が普及することによって、広告・商品表示等において、図形の持つ情報伝達力が重要性を増しているということができるが、そうであるからといって、文字の持つ情報伝達力が重要であることには変わりはない。
オ 請求人は、商品の出所について関心が高い昨今においては、取引者や需要者の間では、商品の出所を表示する商標の異同について相当の注意を払うものであると裁判例でも認められていることからすれば、本願商標と引用商標とは、全体の外観・文字の構成による「by」と「BEE」という観念においては著しく異なり、わが国における欧文字の普及度に照らせば、本願商標の全体的な外観を誤認混同する可能性は著しく低い旨主張する。
しかしながら、本願商標と引用商標の全体的な外観が相違するとしても、本願商標中の文字部分「Solby」は、本願の指定商品との関係において、その文字部分のみで商品の出所識別標識としての機能を果たすものというべきであるから、当該文字部分を引用商標と対比し商標そのものの類否を判断することが本件においては、適切なものというべきである。
カ 請求人は、本願商標と引用商標は、外観において両者は明らかに相違するだけでなく、本願商標は全体的に赤と白のコントラストが看取する者の注意を引くように印象的に描かれているため、単に赤地に白抜きの文字の組み合わせであるとの判断には止まらず、全体の色使いやバランスにおいても、図形と文字とがデザインとして有機的な関連性を有するから、これらは一連一体に結合してなるものとみるべきであり、両者は視覚的に全く異なる印象を与えるものといえる上に、本願商標は外観の果たす役割は大きいとみるべきである旨主張する。
しかしながら、本願商標中の「Solby」の文字は、地色に白抜きで顕著に表されており、当該文字部分が図形中に埋没しているものでもなく、また、当該文字部分と本願商標を構成する図形部分とが有機的な関連性を有するものということもできない。また、前記のとおり、本願商標中の「Solby」は、独立して商品の出所識別標識として機能するものというべきである。加えて、前記エのとおり、商取引において、文字の持つ情報伝達力は、依然として重要である。そうすると、本願商標中の「Solby」の文字部分に相応して生ずる称呼と引用商標の称呼とが相紛らわしい以上、本願商標と引用商標の外観上の差異を考慮してもなお、前記のとおり、本願商標と引用商標とは類似の商標というべきである。
キ 請求人は、本願商標は、一般的に特定の観念を生じさせない造語であると認識すべきところ、本願商標を付した商品を紹介している請求人のカタログやホームページから「太陽のようにキラキラ輝く赤ちゃん」の観念を連想させる(甲2及び甲6)。一方、引用商標は、引用商標権者の事業内容である化成品・樹脂・繊維事業等から考察すれば、前半の「SOL」からは「コロイド溶液」の観念を生じ(甲12)、後半の「BEE」からは、「basal energy expenditure」の略語で「基礎エネルギーの消費量」の観念を生じさせるから(甲13)、引用商標権者が取扱業者等専門業界を相手に取引している実情から勘案すると、引用商標からは「コロイド溶液の基礎エネルギー消費量」の観念が生じるとみるべきである。また、単に一般的に考察した場合には、引用商標の前半部「SOL」からは「太陽」の観念が生じ、後半部「BEE」からは「蜂」の観念が生じるから、引用商標からは「太陽の蜂」の観念も生じるといえる(甲12及び甲13)。したがって、引用商標は「コロイド溶液の基礎エネルギー消費量」若しくは「太陽の蜂」のように二つの観念を生じさせるから、本願商標と引用商標とは観念上非類似である旨主張する。
しかしながら、本願商標中の「Solby」の文字部分が既成の語でないとしても、本願商標から請求人の主張する「太陽のようにキラキラ輝く赤ちゃん」の観念を生じさせるものとは、請求人の挙示する証拠(甲2及び甲6)から認めることはできない。一方、引用商標についての観念は、引用商標に係る商品の需要者を基準に判断すべきであって、引用商標に係る商標権者の業務内容を前提に判断すべきものではない。そうすると、本願商標からは特定の観念が生じ無いものというのが相当であるから、たとえ、引用商標から何らかの観念が生ずる余地があるとしても、本願商標と引用商標とは観念において比較することはできず、観念上も両商標を区別することはできないものといわざるを得ない。
ク 請求人は、本願商標と引用商標との称呼について、電話における音声の取引において英字単語の説明をする場合、通常、同単語を発音するだけではなく、綴り(スペル)を併せて伝える。たとえば、本願商標から「ソルビィ」の称呼が生じたとしても、「エスオーエルビィワイ」と発音し、聞き手に発音並びにスペルの間違えが生じないように配慮する。一方、引用商標は「エスオーエルビーイーイー」または「エスオーエルビーダブルイー」と発音するから、両者は、文字のみならず単語の構成が明らかに違うことが伝わる。したがって、両商標の取引者又は需要者は、その称呼を直ちに知得することができその構成をすぐさま連想することができるから、誤認混同するはずもない旨主張する。
しかしながら、電話による音声の取引において、入念的にその欧文字のつづりを併せて相手方に伝える場合がない、と断定することはできないものの、常に必ずしも、欧文字のつづりまで伝えるものともいうことはできないから、本願商標と引用商標の称呼が相紛らわしい以上は、両商標は称呼上類似の商標というべきである。
ケ 請求人は、本願商標からは「ソルバイ」の称呼も生じるところ、当該称呼と引用商標の称呼とは、非類似である旨主張する。
しかしながら、本願商標から「ソルバイ」の称呼が生じうるとしても、「ソルビィ」の称呼も自然に生じるのであって、この点は請求人の提出する証拠(商品カタログ)中にも「Solby」の欧文字に「ソルビィ」の片仮名が付加され、実際に使用されているところである(甲2及び甲5)。そうとすると、本願商標から生ずる「ソルビィ」の自然の称呼をもって、引用商標の称呼「ソルビー」と対比するならば、両商標は称呼において相紛らわしい類似の商標というべきである。
コ 請求人は、裁判例を挙げ(甲18及び甲19)、当該裁判例は、両商標が称呼において類似しているとしても、外観・観念が異なり、さらに総合的に考察し同一又は類似の商品に使用されたとしても、商品の出所につき誤認混同を生じる虞がないとした裁判例であり、本願商標と引用商標についても同様であるとみるべき旨主張する。
しかしながら、商標の類否は、対比する両商標の具体的な構成とその指定商品との関係から、個別かつ具体的に判断をなすべきものであるところ、他の商標の類否を判断した判決に、本件の類否判断が左右されるものではなく、本件においては、前記(1)のとおり判断するものである。
よって、前記の請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(3)むすび
以上のとおり、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当なものであって、これを取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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