Trademark Appeal Case
称呼類似・要部抽出・周知性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2010−900420(T2010−900420/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
登録第5357532号商標(以下「本件商標」という。)は、「iStock」の文字を標準文字で表してなり、平成21年11月24日に登録出願、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル,電子出版物」、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」及び第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を指定商品及び指定役務として、同22年9月8日に登録査定、同年10月1日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議の申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第5232792号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ISTOCKPHOTO」の文字を標準文字で表してなり、同じく、登録第5232791号商標(以下「引用商標2」という。)は、「アイストックフォト」の文字を標準文字で表してなり、いずれも、平成19年12月5日に登録出願、第38類、第41類、第42類及び第45類に属する別掲に記載のとおりの役務を指定役務として、同21年5月22日に設定登録されたものである。
3 登録異議の申立ての理由(要点)
(1)商標法第4条第1項第11号について
引用商標1の「ISTOCKPHOTO」は、申立人の関連会社である「アイストックフォト リミテッド・パートナーシップ」(以下「アイストックフォト社」という。)の創案による造語からなり、そのカタカナ表記に相応する引用商標2の「アイストックフォト」とともに、本件ライセンスサービスに関して使用する商標として前記第38類、第41類、第42類、第45類の指定役務について出願、登録を受けたものである。
引用商標1及び2はいずれもその構成より一体の商標として看取され「アイストックフォト」の称呼を生じる。
また引用商標1及び2の称呼「アイストックフォト」が(促音を含め)8音であり、本件ライセンスサービスの対象又はその提供の用に供される「PHOTO」「フォト」(写真)にあたる部分が役務の内容を暗示する語とみなされ、引用商標1及び2はそれぞれ「ISTOCK」「アイストック」を要部として又は簡略化され「アイストック」の称呼等により取引に供される場合も少なくない。
ゆえに、引用商標1及び引用商標2からは「アイストックフォト」の称呼に加え「アイストック」の称呼が生じる。
一方、本件商標「iStock」もその構成から自然に「アイストック」と称呼される。
そうすると本件商標は、引用商標1及び2とは「アイストック」の称呼を共通とし、また外観においても特に引用商標1とは要部の構成文字を同じくする類似商標というべきである。
さらに、本件商標の指定商品、指定役務には、アイストックフォト社が実際に本件ライセンスサービスに使用している引用商標1及び2の指定役務と用途や需要者の範囲が一致し、密接な関連性を有する類似の商品、役務がある。
ゆえに、本件商標の指定商品、指定役務については、商標法第4条第1項第11号の規定に反して登録されたものといわなければならない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア アイストックフォト社について
アイストックフォト社は、2000年にスタートしたオンラインによる写真画像や映像等のライセンスサービスを提供するウェブサイト「iStockphoto」(甲4)を運営しており、同サイトは数百万単位のメンバー(登録ユーザー)を抱え、現在世界で最もアクセスされるサイトといわれている(甲5)。
同社が提供するライセンスサービスは、企業広告やパンフレットなどの販促資料、ウェブサイト、雑誌、新聞、テレビ、CMなどの媒体において使用される写真等の画像・映像を予め撮影・ストックしておき、顧客の目的に応じてその利用権(著作権その他の知的財産権のライセンス)を許諾・販売するサービスをオンラインにより提供するものである(以下「本件ライセンスサービス」という。)。
イ 「iStockphoto」商標の周知性について
(ア)アイストックフォト社が本件ライセンスサービスを提供する「iStockphoto」は、数百万を超えるメンバー(登録ユーザー。2009年1月時点で410万人以上)及び、写真、イラスト、ビデオ等の素材を出品する多くのコントリビュータ(2009年1月時点で6万7000人以上)を抱え、世界中で取引が行われている(甲4、甲5)。
(イ)日本における状況をみても、近年日本語サイトを充実させたこともあって、アイストックフォト社の本件ライセンスサービスサイト「iStockphoto」(http://www.istockphoto.com/、http://nihongo.istockphoto.com/(日本語))への2008年以降の日本からのアクセス・訪問回数及びビジター数は下記のとおりである。
2008年:1,305,757回
2009年:1,272,718回
2010年:2,043,552回
2011年(1月1日から3月29日まで):595,675回
(ウ)アイストックフォト社の本件ライセンスサービス「iStockphoto」に関する日本における宣伝広告費は概算で下記のとおりである。
2008年:664万円
2009年:996万円
2010年:863万2000円
2011年:4415万6000円見積
(エ)この間の日本における売上(概算)は下記のとおり飛躍的に増加している。
2008年:3212万1000円
2009年:6025万8000円
2010年:1億1404万2000円
2011年(1−2月):2182万9000円
(オ)アイストックフォト社は、ユーザーが事前にクレジット(専用通貨)を購入し手頃な価格で高品質の素材を入手、使用でき、コントリビュータはロイヤリティ(使用料)収入を得られる仕組みをつくりあげた。また「iStockphoto」でライセンスが供与され、その契約条件の範囲内で使用されるコンテンツによって著作権、商標その他の知的財産権が侵害されないことを保証する法的保証制度をはじめて整え、素材の検索機能においても業界を革新してきた。
このように2000年から本件ライセンスサービスを提供し使用してきた結果、また前述した日本語サイトの充実、ビジター数の増加や宣伝広告・販促活動を通じて、「iStockphoto」商標は、既に本件商標出願時(平成21年11月24日)には、日本を含めた世界各国のアイストックフォト社の本件ライセンスサービスにかかる需要者、取引者に広く知られるに至った周知商標といえる。
ウ 商品・役務の関連性について
アイストックフォト社が提供する本件ライセンスサービス「iStockphoto」の提供や利用には、電気通信・インターネット環境、コンピュータ機器が必要であり、ユーザーは、写真等の素材(ファイル)をインターネットを利用して検索、ダウンロードし、これを電子的形態を含めた出版、書籍やビデオの制作において使用する。したがって、本件商標の指定商品、指定役務中には、アイストックフォト社が提供している本件ライセンスサービスとは用途や需要者の範囲が一致し、密接な関連性を有するものを含むものである。
エ 出所の混同のおそれについて
以上によれば、「iStockphoto」商標は、アイストックフォト社の創案による造語かつ商号商標(ハウスマーク)であり、世界で最もアクセスされる本件ライセンスサービスサイトにおいて10年以上にわたって使用され、同サービスの需要者に広く知られた商標である。
そして、「iStockphoto」商標は、本件ライセンスサービスの対象又はその提供の用に供される「photo」(写真)にあたる部分以外の「iStock」の部分が自他商品役務の識別標識として機能する場合があり、ゆえに本件商標「iStock」はアイストックフォト社の商標「iStockphoto」と同一又は極めて類似する商標というべきである。
実際に、ウェブサイト検索ポータルサイト「Yahoo!」「Google」において、「istockphoto」及び「istock」の語を検索した場合にヒットするページはいずれもほぼ全てがアイストックフォト社の本件ライセンスサービス「iStockphoto」に関するものである。これはアイストックフォト社が本件ライセンスサービスにおいて使用し需要者らに広く知られた「iStockphoto」商標が簡略化されて「iStock」(アイストック)として認識、把握され、また実際に取引に供されていることを示す証左である。
こういった取引の実情に照らして、本件商標「iStock」がアイストックフォト社の本件ライセンスサービスと密接な関連性を有する商品及び役務を想起し、アイストックフォト社の業務にかかる商品や役務ではないかと誤認し、その商品又は役務の出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、第9類、第41類及び第42類の指定商品、指定役務について商標法第4条第1項第15号の規定に反して登録されたものといわなければならない。
(3)まとめ
以上述べたとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び第15号の規定に違反してなされたものであり、同法第43条の2第1号の規定により、その登録は取り消されるべきである。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「iStock」の文字からなるものであるところ、これは特定の意味合いを有しない造語といえるものであるから、その構成文字に相応して「アイストック」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
これに対して、引用商標1は、「ISTOCKPHOTO」の文字からなるものであるところ、構成各文字は、同じ書体、同じ大きさ、等間隔で一体的に表されており、かつ、これは特定の意味合いを有しない造語といえるものであるから、その構成文字に相応して「アイストックフォト」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
そして、その構成中の「PHOTO」の文字が「写真」の意味を有するものであるとしても、「STOCK」の文字と結合した「STOCKPHOTO」の文字部分が「蓄積された写真、画像等(データ)」ほどの一体的な意味合いで使用されていることからすれば、かかる構成態様の引用商標1にあって「ISTOCK」の部分に限定して自他商品、役務の識別機能において支配的な印象を与える部分であるということはできないものであって、むしろ、一体不可分の造語からなるものというのが相当である。また、本件商標より生ずる「アイストックフォト」の称呼も無理なく、一連に称呼し得るものである。
次に、引用商標2は、「アイストックフォト」の文字からなるものであるところ、構成各文字は、同じ書体、同じ大きさ、等間隔で一体的に表されており、かつ、これは特定の意味合いを有しない造語といえるものであるから、その構成文字に相応して「アイストックフォト」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
そして、その構成中の「フォト」の文字が「写真」の意味を有するものであるとしても、「ストック」の文字と結合した「ストックフォト」の文字部分が「蓄積された写真、画像等(データ)」ほどの一体的な意味合いで使用されていることからすれば、かかる構成態様の引用商標2にあって「アイストック」の部分に限定して自他商品、役務の識別機能において支配的な印象を与える部分であるということはできないものであって、むしろ、一体不可分の造語からなるものというのが相当である。また、本件商標より生ずる「アイストックフォト」の称呼も無理なく、一連に称呼し得るものである。
してみれば、引用商標1及び2は、それぞれ、その構成文字に相応して「アイストックフォト」の称呼のみを生じるものであり、かつ、特定の観念を生じさせない一連の造語として看取されるものというのが相当である。
そこで、本件商標と引用商標1及び2について比較するに、外観においては、本件商標と両引用商標とは、その外観構成が明らかに相違するものである。
また、称呼においては、本件商標から生ずる「アイストック」の称呼と両引用商標から生ずる「アイストックフォト」の称呼とは、その構成音数が相違する上、後半で「フォト」の音の有無の明らかな相違によって、相紛れることなく区別し得るものである。
さらに、観念においては、本件商標と両引用商標とは、ともに特定の観念を生じない造語であって、観念について比較できないものであるから、観念上相紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれからみても、引用商標1及び2に類似する商標と判断することはできない。
したがって、本件商標は、引用商標1及び2をもって、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものということはできない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
申立人提出の証拠によれば、商標「iStockphoto」及び「アイストックフォト」が、申立人の関連会社に係る役務について使用をされていることを窺い知ることができる。
しかしながら、その証拠は、申立人及び申立人の関連会社(アイストックフォト社)のウェブサイト、アイストックフォト社による「iStockphoto ニュースレター」、フリー百科事典ウィキペディアの「iStockphoto」に関する記事などであって、両引用商標が具体的に宣伝、広告された例は極めて乏しく、雑誌、新聞などによるものは提出されていない。また、申立人は、アイストックフォト社がライセンスサービスを提供する世界中の登録ユーザーは、2009年1月時点で410万人以上とのことであるが、我が国の登録ユーザーは明らかにされていない。
さらに、同社による日本の売上高は、2008年からのものが示されているが、2010年で1億1,400万円程度である。
以上からすれば、上記両商標が需要者の間で広く認識されるに至っていたと認めることはできない。
しかして、本件商標が両引用商標に類似する商標と認められないこと、前記(1)のとおりであり、本件商標と上記両商標とを更に関連付けてみるべき格別の理由も見出せないから、結局、本件商標は、これら商標とは別異の出所を表示するものとして看取されるものといわざるを得ない。
してみれば、本件商標をその登録出願時及び査定時において、その指定商品及び指定役務に使用しても、申立人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品及び役務であるかの如く、その出所について混同されるおそれはなかったというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものということはできない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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