Trademark Appeal Case
防護標章の周知性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2009−12270(T2009−12270/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願標章
本願に係る防護標章登録を受けようとする標章(以下「本願標章」という。)は、別掲1に表示するとおりの構成よりなり、第36類、第37類、第38類、第39類、第40類、第42類及び第43類に属する別掲2に記載の役務を指定役務とし、登録第4207102号商標(以下「原登録商標」という。)に係る防護標章登録出願として、平成19年8月20日に登録出願されたものである。
第2 原登録商標
原登録商標は、本願標章と同一の構成よりなり、平成9年7月25日に登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として、同10年11月6日に設定登録され、その後、同20年6月10日に商標権の存続期間の更新登録がなされたもので、現に有効に存続しているものである。
第3 原査定の拒絶理由の要旨
原査定は、「本願標章は、他人がこれを本願の指定役務に使用しても役務の出所について、混同を生じさせる程に需要者間に広く認識されているものとは認められない。したがって、本願標章は、商標法第64条に規定する要件を具備しない。」旨認定、判断し、その登録を拒絶したものである。
第4 当審の判断
1 商標法第64条第1項について
防護標章登録制度に係る商標法第64条第1項は、「商標権者は、商品に係る登録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合において、その登録商標に係る指定商品及びこれに類似する商品以外の商品又は指定商品に類似する役務以外の役務について他人が登録商標の使用をすることによりその商品又は役務と自己の業務に係る指定商品とが混同を生ずるおそれがあるときは、そのおそれがある商品又は役務について、その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。」旨規定する。
そこで、以下、これを本件についてみる。
2 本願標章と原登録商標との同一性について
本願標章と原登録商標とが同一のものであること、同じく本願標章の出願人(請求人)と原登録商標の商標権者が同一人であること、かつ、原登録商標が有効に存続していることは、出願書類及び商標登録原簿の記載に照らし、これを認めることができる。
3 原登録商標が需要者の間に広く認識されているか否かについて
請求人は、原登録商標が自己の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている旨述べ、原審における平成20年12月8日付け意見書において、甲第1号証ないし同第210号証、当審における同21年7月6日付け審判請求書において、甲第211号証ないし同第388号証及び同23年2月21日付け回答書において、甲第389号証ないし同第489号証(当審における同21年7月6日付け審判請求書において提出された甲第1号証ないし同第178号証及び同23年2月21日付け回答書において提出された甲第1号証ないし同第101号証は、提出済みの号証の番号に続けて読み替えた)を提出している。
そこで、請求人の提出した資料を検討するに、請求人は、1905年(明治38年)に「水野甘苦堂」を創業し、1923年(大正12年)に「株式会社朋友商会」として設立され、その後、1964年(昭和39年)に「ホーユー株式会社」に社名を変更し、資本金9千8百万円、売上高412億円(2006年10月期)、総資産668億円(2006年10月期)、従業員数843名(2006年11月)で、ヘアカラー・頭髪化粧品等の製造、販売を事業内容とする企業であり、国内の愛知に2つの生産拠点を有し、営業所としては、国内に札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の7カ所、海外に中国、アメリカ、タイ、インドネシア、韓国、シンガポール、イギリスの7カ所を有している。請求人の製造、販売に係る商品は、主に、ヘアカラー(染毛剤)であるところ、一般消費者向け市場の商品の一つとして、原登録商標を付した商品「白髪用染毛剤」がある(甲第5号証)。
なお、原登録商標は、商品「茶髪・黒髪用染毛剤」には使用されていない(甲第6号証)。
ところで、請求人の製造、販売する商品のうち商品「白髪用染毛剤」については、商品全体の市場規模が1990年(平成2年)の498億円(うち、家庭用が329億円)から、2006年(平成16年)の1,073億円(うち、家庭用が730億円)と拡大している中、請求人は、メーカーシェア(ホーユー)及びブランドシェア(ビゲン)が、共に1990年(平成2年)から2006年(平成18年)まで(1998年(平成10年)、2001年(平成13年)を除く。)の各年において業界第1位の地位にある(甲第8号証ないし同第14号証)。
そして、原登録商標は、平成23年2月21日付回答書によれば、1994年(平成6年)2月1日より使用を開始し、2008年(平成20年)現在、日本国内においては女性用の商品「白髪用染毛剤」等(「ビゲン スピーディーカラー クリーム(液状ジェル)」、「ビゲン 香りのヘアカラー クリーム(乳液)」、「ビゲン クリームトーン」、「ビゲン ヘアカラー」、「ビゲン 生え際かくし」及び「ビゲン トリートメントシャンプー&リンス」)の商品パッケージ等において使用されている(甲第6号証及び同第7号証)。
また、原登録商標を使用した広告、宣伝等については、新聞において、全国紙及び地方紙で、1999年(平成11年)4月から7月の間に3紙、2007年(平成19年)4月から2008年(平成20年)10月の間に22紙に掲載された(甲第52号証及び同第485号証ないし同第487号証)。
テレビコマーシャルにおいて、1997年(平成9年)3月から2003年(平成15年)9月の間に、関東地区で49回分、2001年(平成13年)4月から2003年(平成15年)9月の間に、関西地区で23回分、2003年(平成15年)10月から2008年(平成20年)11月の間に、全国で21回分のコマーシャルがそれぞれ放映された(甲第51号証及び同第405号証)。
雑誌において、1994年(平成6年)4月から1998年(平成10年)12月の間に35誌、2001年(平成13年)1月から2007年(平成19年)3月の間に13誌、2007年(平成19年)4月から6月の間に17誌に掲載された(甲第34号証、同第58号証及び同第59号証、同第61号証ないし同第63号証、同第65号証、同第404号証及び同第447号証ないし同第481号証)。
業界紙等において、1999年(平成11年)1月から2005年(平成17年)12月の間に142紙に掲載された(甲第35号証、同第36号証、同第57号証、同第64号証、同第66号証ないし同第73号証、同第78号証、同第81号証ないし同第122号証、同第124号証、同第126号証ないし同第132号証、同第134号証ないし同第139号証、同第142号証ないし同第147号証、同第150号証ないし同第172号証、同第174号証ないし同第176号証、同第178号証ないし同第181号証、同第185号証ないし同第210号証、同第438号証ないし同第446号証及び同第482号証ないし同第484号証(なお、甲第188号証は、同第186号証と重複しているため、合計数から除いている。))。
請求人は、広告、宣伝費として、1996年(平成8年)11月から2010年(平成22年)10月までに、150億円以上を使用している旨述べている(甲第400号証)。
原登録商標が、請求人の商品「白髪用染毛剤」を表すものとして著名な商標であることの証明書が、2009年(平成21年)に、139社から提出された(甲第211号証ないし同第349号証)。
日本マーケティングシステムズによるブランド認知度調査によれば、60歳代で100%等、きわめて高いブランド認知度を示している(甲第41号証及び同第388号証)。
以上の認定事実によれば、請求人は、「水野甘苦堂」の名称で、1905年(明治38年)に創業、1923年(大正12年)、「株式会社朋友商会」の名称で設立、その後、1964年(昭和39年)、現社名の「ホーユー株式会社」に変更し、ヘアカラーを中心に製造、販売を行ってきており、特に、商品「白髪用染毛剤」については、メーカーシェア(ホーユー)及びブランドシェア(ビゲン)が、共に業界第1位の地位にあり、原登録商標を使用した広告、宣伝も、新聞、テレビ、雑誌、業界紙等に幅広く行われていること等に照らすならば、原登録商標は、商品「白髪用染毛剤」について、継続して使用され、現在においても、請求人の業務に係る前記商品を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されているものと認め得るものである。
4 混同を生ずるおそれの有無について
商標法第64条第1項においていう「混同を生ずるおそれ」を判断するに当たっては、原登録商標が請求人の業務に係る商品を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されていることを前提として、原登録商標の指定商品と本願標章の指定役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、本願標章の指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。
これを本件についてみるに、前記3に記載のとおり、原登録商標は、請求人の取扱いに係る商品「白髪用染毛剤」について継続して使用された結果、請求人の業務に係る商品「白髪用染毛剤」を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されているといえる。
そして、請求人の取扱いに係る商品「白髪用染毛剤」は、頭髪化粧品の一種として化粧品製造企業が生産し、ドラッグストアー、スーパー、ホームセンター等において販売されているところ、本願標章の指定役務は多岐にわたり、かつ、原登録商標の使用に係る商品「白髪用染毛剤」との関係において、生産者、販売者、提供者を異にし、また、需要者層も全く異なる等、その関連性はないものといえる。また、商品「白髪用染毛剤」と別掲2のとおりの役務という点において性質が異なり、しかも、その用途又は目的が明らかに異なり、商品の製造、販売場所と役務の提供場所も一致するものではない。
してみれば、本願標章の指定役務と原登録商標に係る指定商品とは、両者の間の性質、用途又は目的を異にするものであり、需要者も異にする。また、同一の事業者によって行われているのが一般的であるような商取引の実情は見出せないものである。
さらに、化粧品業界における同業他社が出所を強く表示する商標(ハウスマーク等)を使用し、経営の多角化を行っていることは認められるとしても、個別商品ごとの商標(いわゆるペットネーム)を使用して、役務分野において広く事業展開を行っている事実は、請求人の提出に係る証拠によっても認めることはできず、さらに、請求人が多角経営を行っているという証拠の提示もない。
そうとすれば、他人が本願標章をその指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、当該役務が請求人の取扱いに係る役務のごとく、その出所について混同を生ずるおそれはないといわなければならない。
5 請求人の主張について
請求人は、請求人が所有し、原登録商標と同一の称呼が生ずる防護標章登録と同様に本願標章も防護標章登録されるべき旨主張する。
しかしながら、それら防護標章登録に係る原登録商標と本願標章に係る原登録商標とは、それ自体の構成とその使用してきた商品の販売数量や販売期間などの著名事情を自ずと異にするものである。そして、前記防護標章登録制度の趣旨からすれば、例え、原登録商標と同一の称呼が生じ、既に著名な商標と認められる商標の存在があったとしても、あくまでも、原登録商標に係る著名性や出所の混同のおそれについて判断すべきものであって、原登録商標と異なる商標についての著名性等を加味する余地はないというべきである。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
なお、請求人は、平成23年2月21日付け回答書において、原登録商標の商品「白髪用染毛剤」に関する著名性について提出した証拠は一部であり、それらのほかにも提出可能な証拠がある旨述べているが、原登録商標の商品「白髪用染毛剤」に関する著名性に係る資料は十分であると判断し、これらの提出を求めることなく、審理を終結することとした。
6 結論
以上によれば、本願標章は、商標法第64条に規定する要件を具備しないものとして本願を拒絶した原査定は妥当であって、これを取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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