Trademark Appeal Case
周知商標との類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2011−900095(T2011−900095/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5375023号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成22年8月11日に商標登録出願,第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,靴下,スカーフ,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,マフラー,帽子,その他の被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,平成22年11月5日に登録査定,同年12月10日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は,以下のとおりであり,現に有効に存続しているものである。
(1)登録2206060号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,昭和62年2月9日に商標登録出願,第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,平成2年1月30日に設定登録されたものであり,その後,2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ,また,平成22年8月18日に,第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服,洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,防暑用ヘルメット,帽子」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
(2)登録2220803号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,昭和62年2月9日に商標登録出願,第22類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,平成2年4月23日に設定登録されたものであり,その後,2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ,また,平成22年6月9日に,第18類「傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」及び第25類「靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
(3)登録2233342号商標(以下「引用商標3」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,昭和62年2月9日に商標登録出願,第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,平成2年5月31日に設定登録されたものであり,その後,2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ,また,平成22年8月18日に,第14類「身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品」,第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」,第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」,第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」及び第26類「腕止め,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,ボタン類,造花(「造花の花輪」を除く。),つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
(4)登録2607371号商標(以下「引用商標4」という。)は,「TOMMY HILFIGER」の欧文字からなり,昭和61年11月10日に商標登録出願,第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,平成5年12月24日に設定登録されたものであり,その後,商標権の存続期間の更新登録がなされ,また,平成15年8月20日に,第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
(5)登録2187365号商標(以下「引用商標5」という。)は,「TOMMY HILFIGER」の欧文字からなり,昭和62年2月2日に商標登録出願,第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,平成元年11月28日に設定登録されたものであり,その後,2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ,また,平成22年1月6日に,第8類「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール器,マニキュアセット」,第14類「身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品」,第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」,第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」,第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」及び第26類「腕止め,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,ボタン類,造花(「造花の花輪」を除く。),つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
(6)登録2357619号商標(以下「引用商標6」という。)は,「TOMMY HILFIGER」の欧文字からなり,昭和62年2月2日に商標登録出願,第22類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,平成3年12月25日に設定登録されたものであり,その後,商標権の存続期間の更新登録がなされ,また,平成14年10月30日に,第18類「傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄」,第25類「履物」及び第26類「靴飾り(貴金属製のものを除く。),靴はとめ,靴ひも,靴ひも代用金具」とする指定商品の書換登録がなされたものである。
(7)登録4702443号商標(以下「引用商標7」という。)は,別掲3のとおりの構成からなり,平成14年11月28日に商標登録出願,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,平成15年8月22日に設定登録されたものである。
以下,上記登録商標をまとめていうときは「引用商標」という。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第7号及び同第15号に違反して登録されたものであるから,取り消されるべきであると申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第26号証を提出した。
<申立ての理由>
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の独創性
引用商標1ないし引用商標3は,赤,白,青の三色の図形よりなる独創的な創造標章であり,世界的に有名なデザイナーアパレルブランドのトミーヒルフィガーグループの代表的なブランドのロゴとして広く認識されている。 引用商標4ないし引用商標6は,「TOMMY HILFIGER」の文字からなる商標で同ブランド名を表したものであり,引用商標7は「H」と「HILFIGER」の文字を二段に表したものである。
イ 引用商標の周知性
(ア)トミーヒルフィガーグループは,1985年以来,高品質な男性用・女性用・子供用の被服やデニムウェアのデザイン・販売を行い,30億ユーロ規模の世界的なアパレルメーカーに成長した。現在,アメリカ合衆国,カナダ,ヨーロッパ,中南米,アジア太平洋地域を含む65力国以上で商品を販売している(甲第9号証)。
(イ)2009年9月30日までの6ヵ月間の世界売上は,前期比3.5%増の7億7200万ユーロに達し,2009年9月末時点で世界中に約950店舗を有し,そのうち約50%は自社所有の直営店である(甲第10号証)。2009年9月には,ニューヨーク市内5番街に「トミーヒルフィガー」最大の旗艦店をオープンした(甲第11号証)。
(ウ)日本における2006年度の売上高は151億円であり,2006年度までの過去3年間で収益は年率20%以上(甲第13号証),2009年3月末での日本での売上も順調に増加しており,トミーヒルフィガーグループ全体の成長に貢献している(甲第14号証)。
(エ)現在,日本全国の大手百貨店や専門店内等にトミーヒルフィガーグループの店舗を約150店舗以上有しており,2012年には東京・原宿にアジア最大規模の大型旗艦店の出店も予定されている(甲第15号証及び甲第16号証)。
以上より,本件商標の出願時(2010年8月11日)および査定時(2010年12月10日)において,引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示する商標として我が国においても広く認識されていたものである。
ウ 本件商標及び引用商標の類似性
(ア)本件商標
本件商標は,赤・青・白からなる図形とその下に「HbyFIGER」の文字を書してなるところ,図形部分と文字部分を常に一体不可分のものと認識すべき理由はなく,図形部分と文字部分は各々独立して出所識別標識として機能し得る。本件商標の図形部分は,左側に太い青色部分があるものの,青色部分は「H」と「F」の文字を象ったものと見ることができる。
(イ)引用商標
引用商標1ないし3も,赤,白,青の三色からなる図形であり,青色の横長長方形を上下に配し,その間に中央から左側を白色に,右側を赤色に配色してなる。トミーヒルフィガーブランドは,アメリカの独創性や多様性を象徴したものとして,国,人種,職業に関係無く多くの人に愛されており,赤,白,青からなるトミーヒルフィガーのロゴ(引用商標1ないし3)は,「オールアメリカンスピリット」のシンボルになっている(甲第17号証)。 また,該ロゴは,航海用の旗をイメージして作られたもので,イニシャルの「T」と「H」の文字を象って現在のロゴになったといわれている(甲第18号証)。
引用商標4ないし6は,「TOMMY HILFIGER」の文字からなり,引用商標7は「H」と「HILFIGER」の文字を二段書きにしてなる。
(ウ)本件商標と各引用商標との比較
本件商標の図形部分は,引用商標1ないし3と同じ赤,白,青の三色が使用されていて,引用商標1ないし3を左へ90度回転させた図形は本件商標の図形部分のうち「H」を象ったと思しき部分にそのまま重なることから,本件商標の図形部分は引用商標1ないし3をその構成中に取り入れたものと看取することができる。
さらに,「HbyFIGER」の文字部分は,請求人のブランド名「TOMMY HILFIGER」の文字のうち,「HILFIGER」の2文字目と3文字目を小文字の「by」に置き換えたものにすぎず,外観上相当紛らわしいものといえる。
したがって,本件商標の図形部分がトミーヒルフィガーの代表的ロゴと同じ赤,青,白の三色で,かつ,引用商標1ないし3を包含する態様であることと,文字部分が引用商標4ないし7の「HILFIGER」の文字のうち二文字を変えたにすぎないことから,本件商標は全体として,我が国で広く知られているトミーヒルフィガーブランドを想起させるものであり,各引用商標とは相当程度類似性が高いものということができる。
エ 本件商標と引用商標の指定商品の類似性
本件商標の指定商品は,引用商標のいずれかの指定商品と同一又は類似するものである。
オ 需要者の共通性
本件商標は,アメリカンカジュアルブランド名として若い男性向けの商品に使用されている(甲第19号証)。
他方,引用商標に係るトミーヒルフィガーブランドは,男性用,女性用及び子供用被服を扱っており,カジュアルからビジネス仕様までバラエティーに富んだスタイルを提供している(甲第20号証)。
そうとすれば,本件商標及び引用商標に係る主な商品は被服であり,ブメリカンカジュアルを含む点で分野も共通することから,需要者層も共通するといえる。
カ 出所の混同のおそれ
(ア)上述のとおり,本件商標と引用商標は,類似性が極めて高く,同一又は類似の指定商品に使用されるものであり,かつ需要者を共通にするものである。
引用商標が需要者に広く知られているものであることを考慮すれば,本件商標に接した需要者は,引用商標に係るトミーヒルフィガーブランドを想起し,本件商標の付された商品が申立人の業務に係る商品又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の商品であると誤認し,商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(イ)インターネットによれば,本件商標の商標権者のホームページで紹介されている取扱店舗の一つで,「『HbyFiger』は,TOMMY HILFIGERの元チーフデザイナー『マイケル・カッスル』が立ち上げたブランドです。・・・TOMMY HILFIGERの設立者であるトミー氏とマイケルが一緒になって従来のTOMMY HILFIGERと違ったコンセプトで,TOMMY HILFIGERを超えるブランドとして『H by Figer』ブランドをスタートしました。」との紹介がされている(甲第21号証)。インターネットショッピングサイトにおいても「掘り出し物が見つかるショッピングモールカラメル」や「fashionfactory−おしゃれ工場−」において同様の紹介がされている(甲第22号証及び甲第23号証)。その他,「SELECT SHOP NEO」や「すえひろ屋」では「『H by FIGER』は,TOMMY HILFIGERの元チーフデザイナー『マイケル・カッスル』が立ち上げたブランド」との紹介がされており,「LAX OUTFITTERS」では「TOMMY FILHIGERの兄弟ブランド」といった宣伝が見られる(甲第24号証ないし甲第26号証)。これらの宣伝の事実から,本件商標を付した商品を販売するに際して,申立人と関係がある者の商品であると積極的に宣伝されてきたことが窺えるものである。
しかし,このような宣伝は,申立人が長年かけて築き上げてきた名声や信用を無断で利用するものというべきであり,本件商標と各引用商標との類似の程度及び需要者の共通性を鑑みれば,本件商標の付された商品が申立人と何らかの関係がある者の商品であると,本件商標に接した需要者に誤認・混同を生じさせるものということができる。
キ むすび
以上より,本件商標がその指定商品に使用された場合,需要者に申立人の業務に係る商品又は申立人と経済的若しくは組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認され,その商品の需要者が商品の出所について混同するおそれがある。
したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号の規定に違反してなされたものであるから,取り消されるべきである。
(2)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は,上述のとおり,その図形部分に引用商標1ないし3を包含し,その文字部分は引用商標4ないし7の構成文字のうち二文字を別の文字に置き換えたにすぎないことから,需要者に広く知られている引用商標に由来し,これを剽窃してなされたものといわざるをえない。加えて,本件商標に係る商品についてのインターネットによれば,申立人と関係がある者の商品であると複数のサイトで宣伝されている事実がある(甲第21号証ないし甲第26号証)。
そうとすれば,本件商標は,その構成中に申立人の需要者・取引者に広く知られている引用商標を取り入れて,申立人と関係があるかのように宣伝することによって,本件商標に接する需要者・取引者にトミーヒルフィガーブランドを想起させ,顧客の購買意欲を刺激する意図より構成されているものと考えられる。すなわち,本件商標は,引用商標の周知・著名性にフリーライドする目的をもって登録出願されたものといわざるをえない。本件商標からは,申立人の周知著名商標の名声を僭用して不正な利益を得ようとする不正の意図が推認されるものであり,本件商標をその指定商品に使用することは,商取引の秩序を乱すものである。
以上より,本件商標の登録出願の経緯には社会的相当性を欠くものがあり,商取引の秩序を乱し,ひいては社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号の規定に違反して登録されたものであるから,取り消されるべきである。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の周知,著名性について
申立人の主張及び提出に係る周知性に関する証拠によれば,以下の事実が窺える。
(ア)トミーヒルフィガーグループは,1985年以来,高品質な男性用・女性用・子供用の被服やデニムウェア等の商品の販売を行い,30億ユーロ規模の世界的なアパレルメーカー及び小売企業であって,現在,アメリカ合衆国,カナダ,ヨーロッパ,中南米,アジア太平洋地域を含む65力国以上で商品を販売しており(甲第9号証),2009年9月30日までの6ヵ月間の世界売上は,前期比3.5%増の7億7200万ユーロに達し,2009年9月末時点で世界中に約950店舗を有するものである(甲第10号証)。そして,2006年度の売上高は151億円であり,2006年度までの過去3年間で収益は年率20%以上増加していること(甲第13号証),2009年3月末での日本での売上も順調に増加しており(甲第14号証),現在,日本全国の大手百貨店や専門店内等にトミーヒルフィガーグループの店舗を約150店舗以上有している(甲第15号証)。
(イ)「MODE PRESS」によれば,2009年9月には,ニューヨーク市内5番街に「トミーヒルフィガー」の旗艦店をオープンしたこと(甲第11号証),2012年には東京・原宿にアジア最大規模の大型旗艦店の出店も予定されている(甲第16号証)旨の記載がある。
(ウ)週刊ファッション情報ホームページによれば,「トミー・ヒルフィガー【Tommy Hilfiger】」と記載して「トミーヒルフィガーのデザインはアメリカの独創性や多様性を象徴したものであり,世界的に幅広く受け入れられています。」「赤,白,青からなるトミーヒルフィガーのロゴは,いまや“オールアメリカンスピリット”のシンボルになっているといえるでしょう。」との記載がある(甲第17号証)。
以上よりすれば,本件商標の出願時(2010年8月11日)および査定時(2010年12月10日)において,引用商標1ないし3又は「TOMMY HILFIGER」は,申立人の業務に係る商品を表示する商標として我が国においても一定程度知られているといえるものである。
しかしながら,申立人提出に係る証拠を勘案しても,我が国における使用開始時期,営業の規模(売上高等),広告宣伝の方法,回数及び内容等を証する書面の提出はなく,そうとすれば,申立人提出に係る証拠によっては,本件商標の登録出願時及び査定時において,引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして著名であるとまでは認めることができない。
イ 本件商標について
本件商標は,別掲1のとおり,図形と「HbyFIGER」の欧文字との組合せによりなるところ,その構成中図形部分は,横長長方形を,太さの異なる直線を用いて部分的に大きさの異なる4つの四角形に区切った特異な構成からなる,全体として幾何図形を表してなるものである。
そして,該図形の下には,「HbyFIGER」の欧文字が表されているものであり,図形部分を描いた線と,構成文字中「H」及び「FIGER」の文字部分には同じ青色の色彩が施され,図形の上部の2つの長方形部分と「by」の文字部分には同じ赤色の色彩が施され,他の長方形部分は白色で表されている。
また,本件商標の係る構成においては,図形部分と文字部分とが視覚的に分離して看取されるといえるものであり,また,その他これらが常に一体不可分のものとして把握されるとすべき特段の事情は,見受けられない。
そうとすると,本件商標は,「HbyFIGER」の部分も独立して自他商品の識別標識としての機能を有するというのが相当であり,該文字部分から,「エイチバイフィガー」の称呼を生じ,該文字は,特定の語義を有しない造語といえるものであるから,観念は生じないものである。
ウ 引用商標について
引用商標1ないし3は,別掲2のとおり,2つの青色の横長長方形を上下に配し,その間の右半分に赤色を施した構成よりなるものである。
そして,引用商標4ないし6は,「TOMMY HILFIGER」の欧文字を書してなるところ,これよりは,「トミーヒルフィガー」の称呼を生ずるものであり,その指定商品との関係において,アメリカ合衆国ニューヨーク州出身のファッションデザイナー「TOMMY HILFIGER」氏若しくはトミーヒルフィガーグループの業務に係る被服等の商品に使用する商標であるとの観念を抱かせるものである(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%9F%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%92%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%AC%E3%83%BCを参照)。
また,引用商標7は,別掲3のとおり,図案化された「H」と,「HILFIGER」の欧文字を表してなるものであり,「HILFIGER」の文字部分より「ヒルフィガー」の称呼をも生ずるものであり,該文字は,特定の語義を有しない造語といえるものである。
エ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標1ないし3とを検討するに,本件商標の図形部分は,横長長方形を,太さの異なる直線を用いて部分的に大きさの異なる4つの四角形に区切った特異な構成からなる,全体として幾何図形を表したものとの印象を与え,さらに,その下には,「HbyFIGER」の欧文字を表してなるのに対し,引用商標1ないし3は,2つの青色の横長長方形を上下に配し,その間の右半分に赤色を施した「コ」の字を思わせる形状の図形商標として記憶,印象されるものであるから,両商標はそれぞれの全体の構成態様からして,看者に明らかに異なった印象を与えるものであり,これらを時と所を異にして隔離的に観察しても,外観において相紛れるおそれはないものである。
そして,たとえ,いずれも青色,赤色(及び白色)を用いていること,横長長方形の内側を区切った構成であることを共通にするとしても,両商標の外観は,明確に相違するものであるから,本件商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者が引用商標1ないし3を連想,想起するものとはいい難いものである。
次に,本件商標と引用商標4ないし7とを比較すると,本件商標の「HbyFIGER」の文字部分から生ずる「エイチバイフィガー」の称呼と,引用商標4ないし6から生ずる「トミーヒルフィガー」の称呼とは,語頭における「エイチバイ」と,「トミーヒル」の音の差異により,また,本件商標から生ずる「エイチバイフィガー」の称呼と,引用商標7から生ずる「ヒルフィガー」の称呼とは,語頭における「エイチバイ」と,「ヒル」の音の差異により,それぞれ明確に聴別し得るものであるから,互いに相紛れるおそれはないものである。
そして,本件商標と引用商標4ないし7とは,外観構成において顕著な相違があることから,外観上,相紛れるおそれはなく,観念については,本件商標の「HbyFIGER」の文字部分及び引用商標7から観念は生じないものであるから,本件商標と引用商標4ないし7とを比較することができない。
したがって,本件商標は,称呼,外観及び観念のいずれの点からみても,引用商標と明確な差異を有する別異の商標と判断するのが相当である。
オ まとめ
以上のとおり,引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして
著名であるとまでは認めることができない上,本件商標と引用商標とは,別異の商標というのが相当であるから,商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても,申立人の引用商標を想起,連想させるものではないものであり,申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではない。
(2)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は,前記1のとおりの構成からなるところ,その構成自体がきょう激,卑わい,差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形からなる標章でないことは明らかであるから,構成上,公序良俗を害するおそれはないものである。
そして,たとえ本件商標権者が引用商標の存在を知りながら本件商標を登録出願したものであるとしても,本件商標が引用商標を剽窃したものであることを窺わせるような事実はなく,本件商標の出願の経緯等に,その指定商品について使用することが社会公共の利益に反するものとすべき事由も見いだせない。
したがって,本件商標は,これをその指定商品について使用しても,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできないものであるから,商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではない。
(3)まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号及び同第15号に違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録は維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
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