Trademark Appeal Case
IFRSの周知性と混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2011−900172(T2011−900172/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5389415号商標(以下「本件商標」という。)は、「日本IFRS協会」の文字よりなり、平成22年7月30日に登録出願、第36類「国際財務報告基準に関する事業の運営」及び第41類「国際財務報告基準に関する教育・研修」を指定役務として、同年12月28日に登録査定、同23年2月10日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
(1)商標法第4条第1項第7号について
ア 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、独立した、非営利の民間組織であり、その主要な活動は、申立人の基準設定機関である国際会計基準審議会(IASB)を通じて、明瞭で理路整然とした会計原則に基づいた、高品質で実用的な、世界各国で受け入れられる単一の経営報告基準を開発することにより、国内の会計基準に統一性をもたらす国際財務報告基準(International Financial Reporting standards:IFRSs)を設定することであり、2001年から、その利用と厳格な適用の普及活動をしており、現在約120カ国で申立人の独自の会計基準を必要とし、あるいはその利用を認めている。
申立人の提供する役務等には、「IFRS」の文字よりなる商標及び別掲のとおりの構成よりなる商標(これらを合わせ、以下「申立人商標」という。)が使用され、申立人商標は、申立人の提供する役務等を表示するものとして、本件商標の登録出願時には、取引者、需要者の間に広く認識されていた。
イ 本件商標は、国際会計基準審議会(IASB)によって設定される会計基準の総称「IFRS」を含むものであるので、国際会計基準審議会と何等かの関係があるものとも認められない者に対し登録を認め独占使用を許すことは、公正な競業秩序を害するとともに、社会公共の利益に反するものである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、申立人の周知商標と類似するものであり、かつ、申立人の提供する役務と同一又は類似する役務について使用するものである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、申立人の周知商標「IFRS」を商標中に含むものであるので、本件商標がその指定役務について使用された場合、申立人の業務に係る商品及び役務と需要者層を共通にするから、役務の提供の出所について混同を生ずるおそれがある。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(4)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、申立人の周知商標と類似するものであり、かつ、不正の目的をもって使用をするものである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
(5)むすび
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号に違反してされたものであるから、取り消されるべきである。
3 当審の判断
(1)「IFRS」の著名性
申立人の提出に係る甲第2号証、甲第5号証及び甲第6号証によれば、申立人(国際財務報告基準財団)は、その一組織であり、国際財務報告基準(IFRSs)の設定機関である国際会計基準審議会(IASB)を通じ、世界的に共通の会計基準を開発し、これを世界各国に普及等を行う非営利の民間組織であって、国際財務報告基準とは、国際会計基準(IAS)、解釈指針委員会(SIC)解釈指針書等、国際財務報告基準書(IFRS)、国際財務報告基準解釈指針委員会(IFRIC)解釈指針からなる会計基準群の総称と認めることができる。
そして、我が国においては、2007年(平成19年)8月8日に、企業会計基準委員会が、IASBと会計基準の全面共通化を合意し、2011年(平成23年)6月までに日本基準と国際会計基準の違いを解消することを合意したことを正式発表し、2009年(平成21年)6月、日本の金融庁企業会計審議会は、一定の要件を満たす企業に対し2010年(平成22年)3月期の年度から国際会計基準による連結財務諸表の作成を容認する方針を示したこと、さらに、2015年(平成27年)ないし2016年(平成28年)に、国際財務報告基準(IFRS)の強制適用がされる予定であること、その結果、我が国において、2015年ないし2016年に向けた国際財務報告基準(IFRS)の強制適用に対応するための準備が行われている実情にあることを認め得るところである。
以上のとおり、「IFRS」は、申立人の推し進める国際財務報告基準(International Financial Reporting Standard)の略称を表すものとして、本件商標の登録出願日(平成22年7月30日)には、我が国の各種業界における企業、企業の財務書類の作成等を取り扱う法人・事務所等の間においては、ある程度認識されていたものと認めることができる。しかしながら、これらの範囲を超えてなお、一般需要者の間にまで広く認識さえていたものと認めることができず、かつ他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者に広く認識されいる商標ということもできない。
(2)本件商標と申立人商標との比較について
本件商標は、「日本IFRS協会」の文字を書してなるところ、構成各文字は同書、同大、等間隔で表されているから、構成全体から見ても、外観上一体的に看取されるものである。
また、本件商標は、「日本IFRS協会」という名称の協会を認識させるものである。
そうとすれば、本件商標は、一体不可分の商標を表したと認識されるものであるというべきである。
してみれば、本件商標から「IFRS」の文字部分を分離、抽出し、これから生ずる称呼、観念をもって取引に資されることはないといえるものであるから、本件商標と「IFRS」の文字を要部とする申立人商標とは、称呼、観念及び外観のいずれもの点からみても相紛れるおそれのない非類似商標というべきである。
(3)商標法第4条第1項第7号について
申立人は、「本件商標は、国際会計基準審議会(IASB)によって設定される会計基準の総称『IFRS』を含むものであるので、国際会計基準審議会と何等かの関係があるものとも認められない者に対し登録を認め独占使用を許すことは、公正な競業秩序を害するとともに、社会公共の利益に反するものである。」旨主張しているので、以下検討する。
上記(2)のとおり、本件商標は、その構成中に「IFRS」の文字を含むとしても、一体不可分の商標を表したものと認識されるものであって、「IFRS」の文字部分のみが独立して把握、認識されるものではないから、申立人のいう「国際会計基準審議会と何等かの関係があるものとも認められない者に対し登録を認め独占使用を許すことは、公正な競業秩序を害するとともに、社会公共の利益に反するものである。」とはいえないものである。
さらに、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではないし、その使用が他の法律によって禁止されているものとも認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
(4)商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号について
上記(1)及び(2)のとおり、申立人商標は、国際財務報告基準の略称「IFRS」を表すものとして、本件商標の登録出願時には、我が国の各種業界における企業、企業の財務書類の作成等を取り扱う法人・事務所等の間においては、ある程度認識されていたものと認めることができるが、これらの範囲を超えてなお、一般需要者の間にまで広く認識されていたものと認めることができず、かつ、他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標ということもできないものである。
また、本件商標と申立人商標とは、類似するところのない別異のものと認められる。
さらに、本件商標をその指定役務に使用しても、これより直ちに、申立人商標を連想、想起させるものとはいえないから、需要者をして、申立人又は申立人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように役務の出所について誤認を生じさせるおそれはないというべきである。
さらにまた、本件商標は、これをその指定役務について使用することが、申立人商標の周知性に便乗し、不正に利益を得ようとする意図があるということもできないから、不正の目的をもって使用するものということもできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号に該当するものと認めることはできない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号に違反してされたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する
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