Trademark Appeal Case
清濁音による称呼類似
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2011−900077(T2011−900077/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5372217号商標(以下、「本件商標」という。)は、「タッポー」の片仮名及び「TAPPO」の欧文字を上下二段に横書きしてなり、平成21年12月2日に登録出願され、第1類「工業用除菌剤,工業用消臭剤,防かび剤,その他の化学品」及び第5類「除菌剤(工業用及び洗濯用のものを除く。),消臭剤(工業用及び身体用のものを除く。),殺菌剤」を指定商品として、同22年8月25日に登録査定、同年12月3日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の指定商品中の「第1類 全指定商品」についての登録の取消しを求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第91号証を提出している。
(1)引用商標について
申立人は、1984年(昭和59年)頃から、界面活性剤(消泡剤、破泡・抑泡剤、脱泡・抑泡剤、破泡剤、脱泡剤、抑泡剤、表面調整剤、浸透性向上剤等)に、「ダッポー」、「Dappo」の語を含む商品名を付して、日本全国に広く、営業活動及び販売活動を行っており、その結果、「ダッポー」、「Dappo」の語(以下「引用商標」という。)は、申立人の界面活性剤を表示するものとして少なくとも平成21年(2009年)11月以前から、界面活性剤を扱う業界(樹脂、塗料、インキ、二次電池、電解液、接着剤、製紙、電子基板、消泡剤、セメント、熱媒、凝集剤、ソルダーレジスト、各種フィルム、各種産業の排水)を含む広い需要者において、日本全国に広く認識されていた。
(2)商標法第4条第1項第10号の該当性について
本件商標は、「タッポー」の文字と「TAPPO」の文字とを普通に用いられる方法により二段書きしてなるものであるから、これより「タッポー」の称呼を生ずることは明らかである。
他方、引用商標は、「ダッポー」、「Dappo」の文字からなるものであるから、いずれからも「ダッポー」の称呼を生じることは明らかである。よって、本件商標と引用商標とは、称呼において、「タ」及び「ダ」の一文字が異なる。
しかし、「タ」及び「ダ」は、静音と濁音との相違にすぎないから、「タッポー」と「ダッポー」とは称呼において極めて類似するものである。
そして、引用商標は、界面活性剤(消泡剤、破泡・抑泡剤、脱泡・抑泡剤、破泡剤、脱泡剤、抑泡剤、表面調整剤、浸透性向上剤等)に用いられているから、本件商標の指定商品と抵触する。
してみれば、本件商標は、申立人の商品を表示するものとして需要者の間に広く認識された商標に類似し、その商品と同―又は類似するものに使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるから、取り消されるべきである。
(3)商標法第4条第1項第15号の該当性について
ア 上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、称呼において極めて類似するものであり、引用商標は、界面活性剤(消泡剤等)に用いられているから、本件商標の指定商品と抵触すると思料するが、万が一、本件商標と引用商標とが非類似であったとしても、以下の事情等を勘案すれば、本件商標は、申立人の商品と混同を生ずるおそれのある商標である。
イ 本件商標の商標権者は、愛知県愛知郡東郷町を拠点とするものである。一方、引用商標を使用している申立人は、京都市を本拠とするものであるが、生産工場及び研究所を愛知県東海市に置くものである。
また、本件商標の商標権者も、引用商標を使用している申立人も、工業化学品のサプライヤーである。
さらに、本件商標の指定商品(工業用除菌剤,工業用消臭剤,防かび剤,その他の化学品)の譲渡先と、引用商標を付した界面活性剤の譲渡先{界面活性剤を扱う業界(樹脂、塗料、インキ、二次電池、電解液、接着剤、製紙、電子基板、消泡剤、セメント、熱媒、凝集剤、ソルダーレジスト、各種フィルム、各種産業の排水)}とは互いに抵触する。
ウ 本件商標と引用商標とが非類似であったとしても、上記の事情などを勘案すれば、本件商標は、申立人の商品と混同を生ずるおそれのある商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、取り消されるべきである。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中の「第1類 全指定商品」について、商標法第4条第1項第10号又は同第15号に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。
3 当審の判断
(1)引用商標の周知性・著名性について
ア 申立人は、1984年(昭和59年)頃から、界面活性剤(消泡剤、破泡・抑泡剤、脱泡・抑泡剤、破泡剤、脱泡剤、抑泡剤、表面調整剤、浸透性向上剤等)に引用商標を使用して、日本全国に広く営業活動及び販売活動を行っており、引用商標が需要者に広く認識されている旨主張し、証拠を提出している。
イ そこで、甲各号証について検討するに、以下の事実が認められる。
甲第1号証は、消泡剤「ダッポーSN−シリーズ」及び「ダッポーH−シリーズ」についての1984年度ないし2009年度における申立人作成の販売実績一覧表であって、申立人の各年度ごとの販売年間数量、製品数及び送付先数を内容とするものであるが、いずれの数値についても単位が示されていないことから、これらの数値の具体的内容が不明であるばかりでなく、同表によっては我が国における消泡剤についての申立人の市場占有率、他社と比較した売上金額や顧客数の多寡など、周知性を認定するのに必要な販売実績情報が不明である。
甲第2号証は、平成11(1999)年10月一か月間のダッポーに関する注文書であるが、これらの注文書によれば、注文の品名欄には、いずれも片仮名「ダッポー」が使用されていること、品名欄には、「品名(フルネーム)」と様式上記載されていることもあり、「ダッポー」の文字に「SN」又は「H」の欧文字と3桁の数字を付加した標章が記載されていることが認められるが、注文者の名称及び住所表示は多くの部分が黒く塗りつぶされて判読不能のため、注文者は名古屋市及び大阪市の事業者が多いように推察されるが、注文者の地域分布及び同一事業者が複数回注文しているか否かなどについては不明であり、またデータは10年以上も前のもののみであり、本件商標の登録出願時及び登録査定時における周知・著名性を認定する資料としては適切さに欠ける。
甲第3号証ないし甲第22号証は、「ダッポー」製品についての技術資料であり、各資料の冒頭には「ダッポー」の文字に「H」又は「SN」の欧文字と3桁の数字を付加した標章が表示されていること、その下には商品名が表示されていること、その商品名のうち甲第10号証ないし甲第21号証の商品名については「排水用脱泡・抑泡剤」、「溶剤系塗料用脱泡・抑泡剤」又は「溶剤系脱泡・抑泡剤」のように「脱泡」の文字が含まれていることが認められる。これらの資料は、申立人が説明するとおり、営業活動において製品の説明として使用したものであることは推認できるが、さほど多くの部数が頒布されたとは認められない。
甲第23号証ないし甲第39号証は、申立人の会社概要と製品紹介のカタログの抜粋であるところ、甲第24号証及び甲第25号証のカタログは英文で作成されており、特にこのカタログについての使用法について述べるところがなく、一般に国内における販売促進用に英文カタログは使用されていないので、これらカタログが国内の需要者に対して配布されたとは認められないが、その余の甲各号証には、「紙パルプ産業用ケミカルス」、「塗料、インク、エマルジョン&ラテックス、顔料、フェライト&セラミックス、建材、産業用ケミカルス」などの用途により分類されて「ダッポー」製品が紹介されており、その表示は「ダッポー」の文字に「H」又は「SN」の欧文字と3桁の数字を付加した標章によりされていること、甲第35号証ないし甲第39号証のカタログにおける製品の特長・用途などの説明には「鉱物油系抑泡・脱泡剤」、「アクリル、ウレタン塗料用脱泡・抑泡剤」、「エポキシ系シーラー用脱泡・抑泡剤」などのように「脱泡」の文字が使用されていることが認められる。これらのカタログは、企業活動において通常行われている会社概要及び製品紹介の目的で作成され、頒布される範囲のものと認められる。
甲第40号証は、申立人の製品一覧を掲載したウェブサイトであるが、掲載日が不明であり、紙出力の日が本件商標の登録査定日後の2011年3月4日であるから、引用商標の周知・著名性を認定する証拠として適切でない。
甲第41号証は、「紙パルプ技術タイムス」1994年10月号に掲載された「製紙工業における消泡剤について」と題する技術論文であり、同論文中には排水用消泡剤ダッポーHシリーズの代表例として6商品が紹介されている。その表示は、「ダッポー」の文字に「H」の欧文字と3桁の数字を付加した標章によりされている。
甲第42号証ないし甲第44号証は、1994年9月10日、1997年8月11日及び1999年12月19日発行の「紙パルプ技術タイムス 増刊号/技術アニュアル 機械・資材・薬品総覧」であり、いずれの版にも申立人の消泡剤「ダッポー」製品6件が紹介されている。その表示は、「ダッポー」の文字に「H」の欧文字と3桁の数字を付加した標章によりされている。
甲第45号証は、非売品の書籍であり、引用商標の周知・著名性を認定する証拠として適切でない。
甲第46号証は、1991年8月30日株式会社シーエムシー発行の書籍「塗料添加剤の市場実態と展望」であり、同書には溶剤系用消泡剤として「ダッポー」製品9件が紹介されている。その表示は、「ダッポー」の文字に「SN」の欧文字と3桁の数字を付加した標章によりされている。
甲第47号証ないし甲第91号証は、公開特許公報であるが、そのうち甲第47号証ないし甲第89号証については、消泡剤として「ダッポー」の文字に「SN」の欧文字と3桁の数字又は4桁の数字(甲64・66・67・70)を付加した標章として多くの事例において引用されているほか、「ダッポーSNシリーズ」の文字を表した標章(2件、甲54・76)、「ダッポーシリーズ」の文字を表した標章(4件、甲57・59・72・83)及び「ダッポー」の文字に「H」の欧文字と3桁の数字を付加した標章(1件、甲71)として引用されていることが認められる。なお、甲第90号証及び甲第91号証は、本件商標の登録出願後に公開された公開特許公報である。そして、引用件数は、昭和62年に1件、平成4年に2件、同7年及び同10年に各1件、同11年に2件、同12年ないし同14年に各1件、同15年ないし同21年の各年に平均4.7件が引用されていることが認められる。
ウ 商標法第4条第1項第10号及び同第15号の適用における引用商標の周知・著名性の有無の判断は、査定又は審決時のみならず、商標登録出願時においても該当しているか否かについてなされなければならないところ、上記イによれば、甲各号証からは、引用商標中の「ダッポー」の片仮名による表示が長年にわたって使用されていることは認められるものの、引用商標の周知・著名性の有無の判断に使用できる程度の客観的な証拠が見当たらず、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時において、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第10号の該当性について
本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するといえるためには、少なくとも引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていること、すなわち、いわゆる周知性を有しなければならないところ、引用商標は、上記(1)のとおり、周知性を有するものとは認められないものである。
また、本件商標と引用商標との類否についても検討するに、本件商標は、「タッポー」の片仮名及び「TAPPO」の欧文字を上下二段に横書きしてなるところ、該文字は、いずれも我が国において既成語としては知られていないものであり、特定の意味合いを想起させない造語と認められるものである。
他方、引用商標は、「ダッポー」の片仮名又は「Dappo」の欧文字からなるものであるから、いずれからも「ダッポー」の称呼を生じることは明らかである。そして、引用商標も本件商標と同様に、特定の意味合いを想起させない造語と認められるものである。
そこで、本件商標と引用商標とを比較するに、本件商標から生じる「タッポー」の称呼と引用商標から生じる「ダッポー」の称呼とは、称呼における識別上重要な要素を占める語頭音において「タ」の音及び「ダ」の音の明らかな差異を有するものであり、この差異が第2音に促音、第4音に長音を含むわずか4音という短い音構成からなる両称呼の全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいえないから、両称呼を一連に称呼した場合においても、全体の語調、語感を異にし、聞き誤るおそれはないものといわなければならない。
また、本件商標を構成する「タッポー」の片仮名及び「TAPPO」の欧文字と引用商標の「ダッポー」の片仮名又は「Dappo」の欧文字とを片仮名どうし又は欧文字どうしで比較した場合においても、それらの構成中の冒頭の文字である「タ」と「ダ」又は「T」と「D」について顕著な差異を有するから、一般人が通常の注意力をもってすれば、その差異は容易に把握、認識され得るものであって、互いに見誤るおそれはなく、両商標は、外観において容易に区別し得るものである。
さらに、両商標は、共に特定の観念を生じないものであるから、本件商標は、引用商標と観念上紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標といわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号の該当性について
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するものであるが、万が一、そうでないとしても、本件商標は同第15号に該当するものである旨主張している。
しかしながら、引用商標は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時において、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
また、上記(2)のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標といわざるを得ないものである。
さらに、引用商標は、「ダッポー」又は「Dappo」の文字からなるものであるところ、上記(1)のとおり、甲各号証によれば、我が国において「Dappo」の欧文字からなる商標を使用している事実は認められないものであり、また、「ダッポー」の片仮名は、「脱泡剤」等に使用されているものであって、「脱泡」の読みを片仮名表記したと認識させる場合も有り得るから、「ダッポー」の片仮名からなる引用商標がさほど独創性の高い商標であるということはできない。
以上のことを併せみれば、商標権者が本件商標を本件申立てに係る指定商品である第1類「工業用除菌剤,工業用消臭剤,防かび剤,その他の化学品」に使用しても、これに接する取引者・需要者をして、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるとはいえないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当しない。
(4)結論
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中の第1類「工業用除菌剤,工業用消臭剤,防かび剤,その他の化学品」について、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に違反してされたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。