Trademark Appeal Case
公共財産と商標登録
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2011−900114(T2011−900114/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5379903号商標(以下「本件商標」という。)は、「きつねの嫁入り」の文字を横書きしてなり、平成22年7月2日に登録出願、第30類「すし,べんとう,穀物の加工品,調味料,茶,コーヒー,香辛料,即席菓子のもと」を指定商品として、同年12月2日に登録査定、同年12月24日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立ての理由の要点
本件商標は、「きつねの嫁入り」の文字からなるものである。
「きつねの嫁入り」は、山口県下松市花岡の法静寺境内にある福徳稲荷社で、毎年11月3日に行われる稲穂祭のメイン行事名であり、稲穂祭は、昭和25年に復活して以来、60年もの間継続して行われ、下松市を代表する文化として定着し親しまれ、その「きつねの嫁入り」行列は、新聞、テレビ、写真集、観光案内パンフレット、小学校の副読本等で紹介されている。
また、地域興し、観光振興のために、「きつねの嫁入り」にまつわる商品が製作・販売されている。
「きつねの嫁入り」行列の祭りは、単に一宗教法人の活動に基づくものではなく、地方公共団体・公的機関・民間団体・一般市民・観光客等の多数の者が関与した、地域興し・観光振興の側面を有する公共的施策に基づくものであり、公共性が高く、「きつねの嫁入り」の名称は公共的財産というべきものであって、特定人の独占に馴染むものではない。
本件商標権者は、上記事実を熟知しながら、本件商標の指定商品について「きつねの嫁入り」の標章が商標登録されていないことを奇貨として本件商標を先回り的に出願しており、公共の施策に乗じた名称使用による不当な利益の独占を図る意図がある。
したがって、本件商標は、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして、到底容認し得ないような場合に該当するものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
3 当審の判断
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 申立人11名のうち8名は、山口県下松市の伝統行事「きつねの嫁入り」の全国PRを基軸に、広く下松市の観光・産業・文化等の発掘と宣伝活動により下松市の町興し・活性化に寄与することを目的とするボランティア団体「プロジェクトF」の会員であり、プロジェクトFは、上記「きつねの嫁入り」の写真集の制作・展示・販売、下松観光のPR等を行ったほか、財団法人やまぐち県民活動きらめき財団に対し平成22年度県民活動団体活動助成事業助成金の交付申請を行い、同財団から補助金を受け、下松市の観光DVDを制作し、該DVDは下松市に贈呈された(甲第2号証ないし甲第7号証及び甲第81号証ないし甲第84号証)。
イ 上記行事「きつねの嫁入り」は、山口県下松市花岡の法静寺境内にある福徳稲荷社で毎年11月3日に行われる稲穂祭のメイン行事であり、キツネの面を付けた新郎新婦を中心に約600人の嫁入り行列が街道を練り歩くことで知られ、祭の見物客(観光客)は毎年3万人に達する。
稲穂祭は、昭和25年に復活して以来、60年もの間継続して行われている行事であって、下松市を代表する文化として定着し親しまれ、その「きつねの嫁入り」は、新聞、テレビ、写真集、下松市観光協会の会報、観光案内パンフレット、市民全戸配布のガイドブック、山口県観光連盟の刊行物・ウェブサイト等で紹介されているほか、下松市の小学校の副読本等でも紹介されている(甲第14号証ないし甲第76号証)。
ウ 上記行事「きつねの嫁入り」に関連したテレホンカード、絵本、和紙人形が作成されたほか、平成21年2月3日ないし6日に東京ビッグサイトで開催された東京ギフトショーに「きつねの嫁入り」の和紙人形、写真集等が展示された(甲第47号証、甲第99号証及び甲第100号証)。
また、平成22年8月19日には、新たな下松ブランドとしての「きつねの嫁入りの稲荷ずし」及び「元祖牛骨下松ラーメン」について下松市役所でプレス発表され、同年9月18日ないし20日に下松市内におけるイベント「道の駅フェスタ」で販売された。さらに、それに先立つ同年7月1日に、「花岡福徳稲荷」と称する弁当(稲荷ずし)が山陽自動車道下松サービスエリア上り線で15個販売され、同サービスエリア下り線では同年7月16日に販売が開始された(甲第89号証ないし甲第95号証ないし甲第98号証及び甲第120号証)。
エ 一方、「きつねの嫁入り」に関する祭として、きつねの面やメイクを施した人々による嫁入り行列が下松市に限らず全国各地で行われている(甲第101号証ないし甲第110号証)。
(2)上記(1)の事実を総合すると、山口県下松市花岡の法静寺境内にある福徳稲荷社では、稲穂祭の行事として「きつねの嫁入り」行列が行われ、様々な媒体により紹介されることにより、観光客を集めているものといえる。
しかしながら、「きつねの嫁入り」の文字(語)については、「狐火が多く連なって嫁入り行列の提灯のように見えるもの。日が照っているのに雨の降る天気。」(広辞苑第六版)を意味するものであるが、日本では狐火やきつねにまつわる伝説が多く、そのような伝説が残る地域は下松市のみならず全国各地に存在し、祭りやイベントで「きつねの嫁入り」行列が行われ、観光の対象となっていることが認められる。
そうとすると、「きつねの嫁入り」の名称自体が、山口県下松市で行われる「きつねの嫁入り」行列の関係者の公共的財産となっているものと認めることは相当でない。
そして、下松市で行われる「きつねの嫁入り」行列は、福徳稲荷社が主催するものであるし、また、プロジェクトFは、下松市の観光・産業・文化等の発掘と宣伝活動により下松市の町興し・活性化に寄与することを目的とするボランティア団体であって、「きつねの嫁入り」の写真集やDVDの作成等を行い、当該DVDを下松市に贈呈したことが認められるものの、これらをもって、「きつねの嫁入り」行列を下松市の公共的施策と位置付けることはできない。
さらに、新たな下松ブランドとしての「きつねの嫁入りずし」等に関するプレス発表が下松市役所で行われたのは、本件商標の登録出願日の後である平成22年8月19日であることから、「花岡福徳稲荷」の弁当(稲荷ずし)が、下松サービスエリアで本件商標の登録出願前の平成22年7月1日に販売されているとしても、本件商標の出願時点においては、地域興しを担う新たな下松ブランドとしての位置付けがなされていたと認めることはできない。
(3)そうとすれば、下松市在の本件商標権者は、毎年11月3日に行われる稲穂祭「きつねの嫁入り」行列の存在を熟知していたといえるとしても、本件商標の登録出願時に、「きつねの嫁入り」行事が下松市の公益的施策であると認識していたということはできず、「きつねの嫁入り」の標章が「すし、べんとう」等について商標登録されていないことを奇貨として、下松市の公共的な施策の遂行を阻害し、不当な利益の独占を図るために、本件商標を先取り的に登録出願したと認めることはできない。
してみれば、本件商標は、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあるとはいえず、その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものともいえない。
そして、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字ではないし、その使用等が他の法律によって禁止されているものでもない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
(4)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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