Trademark Appeal Case
称呼類似と長音の有無
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2010−29099(T2010−29099/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、平成21年7月21日に登録出願された商願2009−54917を原出願とし、商標法第10条第1項の規定による新たな商標登録出願(分割出願)として、第20類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、同22年1月28日に登録出願、その後、指定商品については、当審における同年12月24日付けの手続補正書により、第20類「家庭用家具,クッション,まくら,マットレス,うちわ,せんす,買い物かご,スリーピングバッグ,ベンチ」と補正されたものである。
2 引用商標
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するものとして、拒絶の理由に引用した登録第4395194号商標(以下「引用商標」という。)は、「CAPER」の欧文字を横書きしてなり、平成11年8月21日登録出願、第20類「事務用家具」を指定商品として、同12年6月30日に設定登録され、その後、平成22年7月13日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
3 当審の判断
(1)本願商標と引用商標の類否について
本願商標は、別掲のとおり、図案化した三角形を左に90度回転したごとき図形を2つ並べ、その右側に「Kaepa」の欧文字を横書きしてなるものである。
そして、本願商標の構成にあっては、左側に配された図形部分と右側に配された文字部分とは、左右に明確に分かれ、視覚上分離して看取されるものであり、観念上においても、図形部分と「Kaepa」の文字部分とを、常に一体不可分のものとして観察しなければならない特段の事情も見出せないものである。
そうとすれば、本願商標は、その構成中の図形部分と文字部分がそれぞれ独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものである。
しかして、「Kaepa」の文字よりは、直ちに親しまれた特定の語を想起させるものではなく、造語として認識されるものである。
そして、前記のような造語からなる商標の場合には、我が国で親しまれたローマ字読み又は英語風の発音に倣って称呼されることが一般的であるところ、本願商標からはローマ字読みに「カエパ」、英語風に「ケイパ」の称呼を生ずるものというのが相当である。
したがって、本願商標は、その構成文字に相応して「カエパ」あるいは「ケイパ」の称呼を生ずるものというべきであって、特定の観念を生じないものというのが相当である。
他方、引用商標は、前記2のとおり、「CAPER」の欧文字を書してなるところ、その構成文字に相応して英語読みに「ケイパー」の称呼を生ずるものであり、この点については請求人も争うところではない。しかして、引用商標は、「飛び跳ねること」及び「フウチョウソウ科の低木の蕾(つぼみ)を酢漬けにしたもの。強い酸味とかすかな苦みを持つ。スモーク‐サーモンなどに添えるほか香辛料に用いる(もの)」との観念を生ずるものである。
そこで、本願商標と引用商標との類否について検討するに、本願商標から生ずる「ケイパ」の称呼と、引用商標から生ずる「ケイパー」の称呼とを比較すると、両者は語頭を含む「ケイパ」の音を共通にし、相違するところは、語尾音における長音「ー」の有無にすぎない。
そして、当該差異音である長音は、それ自体が独立した1音として明確に発音されるものではなく、その前音である「パ」に吸収され、明確には聴取され難い微弱音となることから、長音の有無が、称呼全体に及ぼす影響は決して大きいものとはいえず、両者をそれぞれ一連に称呼した場合には、全体としての語調、語感が近似し、互いに聞き誤るおそれがあるものといわなければならない。
次に、観念についてみるに、本願商標からは、特定の観念を生ずるものではないから、観念において比較することはできない。
してみれば、本願商標と引用商標とは、外観において相違し、観念において比較できないとしても、本願商標から生ずる「ケイパ」の称呼と引用商標から生ずる「ケイパー」の称呼の点において互いに相紛らわしい類似の商標というべきである。
また、商標法第4条第1項第11号における商品の類否については、東京高裁の平成16年7月26日判決において、「・・・商標法4条1項11号に規定する指定商品の類否は,取引の実情に照らし,それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により,それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同されるおそれがあるか否かによって判断されるべきである(旧商標法〔大正10年法律第99号〕2条1項9号の適用事案に係る昭和36年最判及び昭和39年最判参照。なお,同項10号〔現行商標法4条1項13号に相当〕の適用事案に係る最高裁昭和43年11月15日第二小法廷判決・民集22巻12号2559頁も同旨。)。・・・」(平成15年(行ケ)第456号)と判示されているところである。
そこで、以上の観点から本願商標と引用商標の指定商品の類否についてみるに、本願商標の指定商品「家庭用家具」と引用商標の指定商品「事務用家具」について、同一の営業主から販売されている取引の実情が、例えば、以下のインターネット情報からもうかがわれるところである。
ア イトーキのインターネットウェブサイト(http://www.itoki.jp/products/)からは、オフィス向けの家具の他、学習机を取り扱っていることがうかがわれる。
イ 株式会社岡村製作所のインターネットウェブサイト(http://www.okamura.co.jp/product/soho/index.html)からは、同社の製品として事務用の家具のほかに、家庭向けの学習家具を製造販売していることがうかがえる。
ウ コイズミファニテック株式会社のインターネットウェブサイト(http://kagu.koizumi.co.jp/)からは、同社の製品として学習机のほかに、オフィスチェアーを取り扱っていることがうかがえる。
してみれば、本願の指定商品「家庭用家具」と引用商標の指定商品「事務用家具」とは、同一営業主により製造又は販売されている等の事情により,それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同されるおそれがあるものというべきであって、類似の商品というべきである。
したがって、本願商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標は「ケイパ」と読み、辞書にはない造語であるが、「Kaepa」は一般消費者に広く認識されたブランドであるから「Kaepa」ブランドそのものが観念され、本願商標と引用商標は、観念においても明確に相違する旨主張する。
しかしながら、請求人提出に係る証拠に徴するも、本願の指定商品「家庭用家具」と引用商標の指定商品「事務用家具」に係る家具の分野において、本願商標を構成する「Kaepa」が、周知著名性を獲得した商標であることは認められないから、「Kaepa」が、一般消費者に広く認識されたことを前提とする請求人の主張は、失当である。
そうすると、本願商標をその指定商品である「家庭用家具」について使用するときは、その商品の需要者が、特定の観念を認識することはないものというのが相当であって、前記(1)のとおり、本願商標と引用商標とは、観念において比較することはできないというべきである。
イ 請求人は、本願商標と引用商標の称呼についてみると、語尾に長音の有無の差異があり、3音又は4音という短い音構成においては、長音の有無の差異が称呼全体に与える影響は大きい。長音の存在により、引用商標の「ケイパー」は語頭にアクセントがおかれ、語尾に向かって弱めにやや間延びした感じに発音されるが、本願商標の「ケイパ」は、語尾が両唇破裂音のため、「ケイパッ」のように語尾の「パ」音がはっきりと発音され、両者の全体の語調・語感は異なる上に、観念上の明確な相違も相俟って、両者を聞き誤るおそれは無いと主張する。
しかしながら、本願商標と引用商標は、称呼上重要な語頭音を含めて「ケイパ」の3音を共通にするものであって、両者は極めて短い音からなるものでもないことからすれば、語尾における長音の有無が語調、語感が相違するといえるほどの影響を有するものではなく、また、観念において比較できないことは前記アのとおりである。そうすると、前記(1)のとおり、本願商標と引用商標は、称呼上相紛らわしい類似の商標というのが相当である。
ウ 請求人は、具体的な審決の事例を挙げ(甲2)、それらは、本願の称呼の類否の判断につき十分に参酌されるべきである旨主張する。
しかしながら、商標の類否の判断は、対比する商標の具体的な構成態様と、その指定商品との関係から個別かつ具体的に判断すべきものであって、他の審決の事例によって、その判断が左右されるべきものではない。なお、請求人は、過去の審決の事例を分析して、本件の類否判断に参酌されるべきであると主張するが、当該審決の事例と本件の類否判断の対象とは、商標の構成態様が相違するものであるから、本件に適切なものということはできず、そもそも商標の類否は、前記のとおり個別かつ具体的に判断すべきであることからすれば、請求人の主張は失当である。
エ 請求人は、「Kaepa」は、1975年、アメリカの法人「Kaepa Inc.」により誕生したスポーツシューズ発信のブランドであるとし、その歴史的な事実を挙げ、「Kaepa」ブランドは、老若男女を問わず、幅広い需要者層に支持されるブランドに成長したなどとるる述べ、「Kaepa」は、アメリカはもとより、日本においても一般消費者に幅広く知られた人気のあるブランドである旨主張する。
しかしながら、前記アのとおり、請求人提出に係る証拠に徴しても、本願商標を構成する「Kaepa」の文字が、本件の争点となる家具の分野において周知著名性を有する商標とは認められない。また、本願商標の採択から現在に至るまでの経緯が請求人の主張どおりであるとしても、その経緯が本件の判断を左右するものではない。
オ 請求人は、「Kaepa」は造語であって辞書にない語である、しかも、英語としてもなじみのない独特の綴りであるため、普通に考えると日本人は「Kaepa」を「カエパ」とローマ字読みするにもかかわらず、「Kaepa」を「ケイパ」と難なく読めるのは、「Kaepa」が一般消費者に広く認識されているからにほかならず、本願商標に接する一般消費者が「ケイパ」と称呼するときには常に「Kaepa」ブランドを想起している旨を主張する。
しかしながら、本願商標を構成する「Kaepa」が、シューズについて使用された結果「ケイパ」と称呼するものと認識されているとしても、本件の争点となる家具の分野において請求人を出所とする商標として認識されているものということはできず、本願商標を「ケイパ」と称呼したからといって、本件の争点となる家具の分野において請求人に係る「Kaepa」を、商品の出所として常に想起するということはできない。
カ 請求人は、本願の指定商品「家庭用家具」が引用商標の「事務用家具」に抵触するものであるが、商品の用途が異なるので、販売対象とする消費者が異なる。一般的に、家庭用であっても事務用であっても、家具は、高価で寿命が長く、頻繁に買い替える性質のものではない。日常生活や仕事環境の快適さを左右する商品であるから、消費者は、カタログやインターネットでメーカーのこだわりやコンセプト或いは技術などについての情報を収集し、ショールームや販売店に足を運んで、サイズ、デザイン、材質、色、使い心地などを実際に見て触れて納得してから購入する。このように慎重に取引される商品に関しては、取引の実際において、口頭や電話で取引が済まされることはあり得ないとし、よって、万が一、本願商標の称呼が引用商標の称呼に類似するとしても、商品の出所について混同を生じさせるおそれは無い旨主張する。
しかしながら、本願の指定商品「家庭用家具」と引用商標の指定商品「事務用家具」とは、前記(1)に例示したとおり、同一の営業主により製造販売される場合があること等からすれば、両者に、同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同されるおそれがある商品というべきである。また、請求人は、口頭や電話で取引が済まされることはあり得ないとの主張をなすものの、その主張を裏付ける的確な証拠を提出しているわけでもない。
以上のとおり、請求人の主張は、いずれも採用することはできない。
(3)まとめ
以上よりすれば、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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