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Trademark Appeal Case

代理人による商標無断登録

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年審判第31328号
審判種別不服
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第3370370号商標の登録は取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第3370370号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲(イ)に表示したとおりの構成よりなり、平成6年3月8日登録出願、第9類「録画済みビデオディスク及びビデオテープ」を指定商品として、平成10年10月9日設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録は、これを取り消す」との審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第18号証を提出している。

本件商標は、請求人が香港において有する商標権と類似するものであって、請求人の代理人が、請求人の承諾を得ないで、正当な理由なくして登録を受けた商標であり、商標法第53条の2の規定に該当し、取り消されるべきものである。

(1)請求人は、香港においてテレビジョン放送、並びにそれらの録画ビデオ(以下「TVB録画ビデオ」という。)の制作、販売を主たる業務とする会社である。請求人は、パリ条約の同盟国(甲第3号証)である香港において、1982年8月18日に、別掲(ロ)に表示した商標(以下「請求人商標」という。)に関し商標権を取得し現在まで継続して保有している(甲第2号証)。

(2)請求人は、TVB録画ビデオを香港のみならず海外でも販売するため、請求人の子会社であるHK−TVB INTERNATIONAL LIMITED(以下「HK−TVBI」という。)に対し、1981年6月1日に、香港内外においてTVB録画ビデオの放映、販売をすることに関して、請求人を代理して契約交渉をし、サブライセンス契約を締結する権限を与えた。契約期間は1年間、ただし自動更新される(甲第4号証)。さらに、1990年4月15日に、HK−TVBIは、請求人の子会社であるオランダ国法人CONDOR ENTERTAINMENT B.V.(以下「CEBV」という。)に対し、日本においてTVB録画ビデオを販売し、サブライセンス契約を締結する権限を与えた。契約期間は1年間だが、1992年4月22日付け契約書によりその後期間の定めなしに変更された(甲第5号証)。以上の証拠より、請求人は、TVBIを通じてCEBVに対し、TVB録画ビデオの複製・頒布を許諾していることは明らかである。

(3)1992年4月13日に、CEBVは、三栄商事株式会社(以下「三栄商事」という。)との間で、日本国内でのTVB録画ビデオカセットテープのレンタル、販売に関する独占的ライセンス契約を締結した(甲第6号証の1)。このライセンス契約において三栄商事は、サブライセンス契約を締結する権利をも取得した。また、当該契約書において、三栄商事は請求人及びCEBVが保有する商標或いは登録出願手続中の商標を無効にするような行為を行ってはならず、かつサブライセンシーにもその旨同意させなければならないこと、また、三栄商事は、請求人或いはCEBVが保有する商標と同一又は類似のマークを使用してはならない旨合意した。この甲第6号証の1のライセンス契約によって、三栄商事は、請求人の日本における総代理店としての地位を取得した。1992年以降も同様の地位を継続している(甲第6号証の2、同号証の3及び同号証の4)。

(4)三栄商事は、1992年に、被請求人との間で、TVB録画ビデオの複製、頒布を内容とする著作権代理使用権契約を締結した。この契約において、三栄商事は、被請求人に各TVB録画ビデオテープを40セットまで複製を許可した(甲第7号証の1)。三栄商事は当該契約に基づいて、TVB録画ビデオの各録画番組のマスタービデオ(甲第9号証)並びに複製テープに貼付するための請求人商標付きのインデックス(甲第10号証)を各録画番組のマスタービデオ毎に各40セットを被請求人に交付し、被請求人は、三栄商事から交付されたマスターテープから複製したTVB録画ビデオの複製物に前記インデックスを貼付してユーザーに頒布している。その後被請求人と三栄商事との間で毎年契約を更新しており(甲第7号証の2、同号証の3及び同号証の4)、本件商標の出願当時、被請求人は、三栄商事を通じて請求人とTVB録画ビデオ複製・頒布の契約関係にあったことを示している。したがって、被請求人は、TVB録画ビデオテープ複製、頒布並びに請求人商標付きインデックスの使用許諾に関して、三栄商事を介して、請求人の代理人の関係にある。

甲第11号証は、被請求人が、三栄商事のサブライセンシーであり、請求人の代理店であることを広告した新聞の写しである。

甲第12号証及び同第13号証は、請求人代表者及び三栄商事代表者が各々これらの事実関係を詳述している。

(5)ところで、商標法53条の2に規定する「商標に関する権利を有する者の代理人若しくは代表者」は、字義通りにとらえて、法律上の代理権限があるもののみと解するべきではなく、「代理店、特約店、委託販売業者、総代理店等、広く海外における輸入先である商標所有者の商品を輸入し販売し広告する者が含まれる」(網野誠「商標(新版)」甲第15号証)のであり、「契約に基づき継続的な法的関係があるか、少なくても、継続的な取引から慣行的な信頼関係が形成され、外国の商標権者の販売体系に組み込まれている者であることを要するものというべきである」(「注釈商標法」小野昌延編)とするのが通説である。

また、本条は、本人と何らかの信頼関係にあるものがその信頼関係に反して本人の商標を自らの名で登録を行うことを禁止するパリ条約による要請から制定された条項であることを鑑みると、本条の適用を、代理権を授与された代理人のみならず、商標権所有者と被請求人との間に契約或いは慣行上、信頼関係を形成する特別の関係にあるものをすべて包含して解釈されるべきである。

本件では、被請求人は、1992年以降日本総代理店三栄商事を通じて請求人と継続的にTVB録画ビデオを複製・頒布する契約関係にあり、請求人とは三栄商事を通じて代理人の関係にある。しかも、被請求人は、1992年以降請求人との契約に基づいて頒布するTVB録画ビデオ(甲第9号証)に示されている請求人商標を認識しているだけでなく、請求人商標付きインデックスをTVB録画ビデオの複製物に貼付し、もって請求人商標を請求人からの適正な商標使用権限付与に基づいてTVB録画ビデオに使用してきており、請求人も被請求人が三栄商事のTVB録画ビデオのサブライセンシーであることを1994年3月以前から知っており、被請求人は請求人の販売体系に組み込まれている者であった。

これらの事実を総合すると、被請求人は、その商標権所有者たる請求人との関係で、請求人所有の商標を請求人のために使用し、自己のために請求人商標を出願しないという信頼関係にあるというべきである。

(6)本件商標は、請求人商標と同一の図柄を商標として使用しており、単に図柄の下部にTVBIを付け加えたにすぎない。よって、その外観は明らかに類似するものであり、指定商品も同一又は類似のものである。

また、関係者間のどの契約書を見ても、被請求人が、本件商標を登録することを承諾する記述はなく、実際、そのような承諾を請求人は、三栄商事及び被請求人に与えてはいない。また、請求人が日本国においてTVB商標に関する権利を取得することに関心がないと主張した事実もなく、被請求人には本件商標の出願について正当事由も認められない。

(7)以上のように 本件商標は、請求人が香港において有する商標権と類似するものであって、請求人の代理人が、請求人の承諾を得ないで、正当な理由なくして登録を受けた商標であり、商標法第53条の2の規定に該当し、取り消されるべきものである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、何ら答弁をしていない。

第4 当審の判断

1 本件商標は別掲(イ)に示した構成よりなるのに対し、請求人がパリ条約の同盟国である香港において所有する請求人商標は別掲(ロ)に示した構成よりなるものであるから、本件商標は、請求人商標と文字部分を除けばほぼ同一の図形よりなるものであって、図形部分のみでも商品の識別機能を果たすものというべきであり、本件商標は、請求人商標に類似するものと認められる。

2 請求人の提出に係る証拠によれば、次の事実が認められる。

(1)1981年6月1日に、請求人は、HK−TVBIに対し、TVB録画ビデオの販売をし、放映をする権限、及び、サブライセンス契約の締結をする権限を与える契約をした。この契約は1年毎に自動更新され、1995年5月19日には一部改定されて更新された(甲第4号証)。

(2)1992年4月22日に、HK−TVBIは、CEBVに対し、日本においてTVB録画ビデオの販売をする権限、及び、サブライセンス契約を締結する権限を与える契約をした。この契約は期間の定めがない(甲第5号証)。

(3)1992年4月13日に、CEBVは、三栄商事に対し、日本においてTVB録画ビデオカセットテープのレンタルをし、販売をする権限、及び、サブライセンス契約を締結する権利を与える契約をした(甲第6号証の1)。この契約において、三栄商事は、請求人及びCEBVが有する登録商標及び登録出願中の商標を無効にするいかなる行為も行わず、かつ、サブライセンシーにもその旨同意させること、また、請求人及びCEBVが所有する商標と同一又は類似の商標を使用しないことを合意した。この契約は更新され、本件商標の出願時も有効であった(甲第6号証の2ないし同号証の4)。

(4)三栄商事は、被請求人に対し、1992年6月1日から1993年2月28日までを有効期間とする、TVB録画ビデオを複製し、頒布する権限を与える契約をした(甲第7号証の1)。この契約は更新され、本件商標の出願時も有効であった(甲第7号証の2ないし同号証の3)。

(5)上記三栄商事と被請求人との契約の結果、TVB録画ビデオを複製するために三栄商事から被請求人に対し提供されたマスタービデオテープ及び複製したTVB録画ビデオに貼付するインデックスには、請求人商標と同一と認められる商標及び「TVBI」の文字が表示されていた(甲第9号証及び同第10号証)。

(6)三栄商事の代表取締役社長は、a)上記(4)のCEBVとの契約の結果、三栄商事は請求人の我が国における総代理店となった、b)被請求人との取引について請求人の承諾があった、c)被請求人は、請求人商標を出願する権利を有していず、その許可も与えられていなかった、旨陳述している(甲第12号証)。

(7)請求人の主席マネージャーは、1994年3月以前に被請求人が三栄商事のサブライセンシーであったことを請求人は知っていた、と宣誓供述している(乙第13号証)。

3 以上、請求人とHK−TVBIとの契約から三栄商事と被請求人との契約に至る経緯、及び、TVB録画ビデオを複製し、販売するために三栄商事から被請求人に提供されたマスタービデオテープ及びインデックスに請求人商標及び「TVBI」の文字が表示されており、該TVB録画ビデオ自体は、請求人商標或いは「TVBI」の文字に関連する者の商品と認識される体裁で取引に供されていたことからすると、本件商標の出願当時、被請求人は請求人の代理店若しくは代理店に準ずる地位にあったものであり、被請求人もそれを認識していたものと認めるのが相当である。

また、本件商標が取り消されることを請求人が求め、被請求人の契約当事者である三栄商事が、被請求人に請求人商標を出願する権利はないと述べたにもかかわらず、被請求人は当該権利を有することについて主張、立証をしていないことからすると、被請求人は、正当な理由がないのに請求人の承諾を得ないで本件商標を出願したものといわざるを得ない。

4 したがって、本件商標は、パリ条約の同盟国において商標に関する権利を有する者の当該権利に係る商標と類似する商標であって、当該権利に係る商品又はこれに類似する商品を指定商品とするものであり、かつ、正当な理由もないのに当該権利を有する者の承諾を得ないでその代理人によって出願されたものと認めざるを得ないから、本件商標の登録は、商標法第53条の2の規定により取り消すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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