Trademark Appeal Case
長音と促音の称呼類似
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2011−900296(T2011−900296/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5410647号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲Aのとおりの構成からなり、平成22年9月10日に登録出願され、第35類に属する別掲Bのとおりの役務を指定役務として、同23年3月30日に登録査定、同年5月13日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第47号証(枝番号を含む。)を提出している。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 引用商標
申立人が引用する登録商標(甲第2号証ないし甲第12号証)は、登録第4346971号商標(以下「引用商標1」という。)、登録第4446907号商標(以下「引用商標2」という。)、登録第5196814号商標(以下「引用商標3」という。)、登録第5016888号商標(以下「引用商標4」という。)、登録第5017380号商標(以下「引用商標5」という。)、登録第5033281号商標(以下「引用商標6」という。)、登録第5044215号商標(以下「引用商標7」という。)、登録第5052948号商標(以下「引用商標8」という。)、登録第5196817号商標(以下「引用商標9」という。)、登録第5196816号商標(以下「引用商標10」という。)及び登録第5196818号商標(以下「引用商標11」という。)であり、それらの商標の構成、登録出願日、設定登録日及び指定商品又は指定役務は、別掲Cのとおりであって、いずれも現に有効に存続しているものである。
なお、引用商標1ないし11を一括していうときは、以下「引用商標」という。
イ 本件商標と引用商標との類否について
引用商標は、アルファベットの「agete」をデザイン化した文字、又はこれに「アガット」、「CLASSIC」、「FIRST」若しくは「SELECTION」の文字を併記ないし付記したものであって、これらは「agete」の語を主要部とするものであり、「アガット」の称呼が生じる。
これに対し、本件商標は、「アガート」の片仮名と「Agate」の欧文字を上下に併記した構成からなるものであり、これより「アガート」の称呼が生ずる。
そこで、両称呼を比較すると、両者はその構成音数を同じくし、第2音「ガ」に続くものが長音であるか促音であるかの差に過ぎず、この差異音は中間部に位置するばかりでなく、いずれも前の音「ガ」に吸収されやすい音であって、明瞭に発音され難く、両者の称呼をそれぞれ一連に称呼する場合にはその語調語感が近似し、彼此聞き誤るおそれがある。
加えて、両商標の「Agate」と「agete」は、語頭が大文字と小文字の相違、3文字目が「a」と「e」の相違があるほかは共通し、外観的にも紛らわしい構成である。
なお、両商標は、共に特定の意味観念を想起しない造語であり、観念においては比較に及ばない。
よって、本件商標は、引用商標に類似する。
また、本件商標の指定役務と引用商標の指定商品及び役務とは類似する。
そして、比較する商標の構成音数を同じくし、中間部にて相違する1音が長音と促音の相違の構成を持つ事例において両商標が類似とされた審決例がある(甲第13号証ないし甲第16号証)。
(2)商標法第4条第1項第15号について
アルファベットの小文字の「agete」をデザイン化した商標(以下「agete商標」という。)は、申立人が使用許諾する申立人の子会社である株式会社エーアンドエス(以下「エーアンドエス社」という。)により、商品「アクセサリー」の商標として全国的に使用を展開しており、特に、若い女性を主とする需要者層には「アガット」の称呼で広く知られ、親しまれているブランドである。エーアンドエス社は、2008年4月に申立人のアクセサリー部門であるアガット事業部が分社独立して設立され、アクセサリー(身飾品及び時計)の店頭での小売販売、通販カタログによる通信販売、インターネットでのオンラインショッピングを業務とするアクセサリー専門店であり、北海道から九州まで全国に合計85店舗を有し、しかも各店舗は各有名百貨店ないしは有名名店ビルに存在している。(甲第17号証ないし甲第47号証)
以上のように、「agete商標」は、アクセサリーについて日本国内において広く知られたブランドであるということができるから、本件商標がその指定役務に使用された場合、特に、「agete商標」と商品ジャンルを同じくするか、又は近似し、しかも需要者層が共通する商品の小売又は卸売の業務において行われる便益の提供について使用されるときは、その取引者・需要者をして、申立人の子会社の関連会社又は同社と何らかの関連を有する者の業務と誤認し、その役務の出所について混同を生ずるおそれがある。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであり、その登録は取り消されるべきものである。
3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、別掲Aのとおり、「アガート」の片仮名と「Agate」の欧文字とを上下二段に横書きした構成からなるところ、該「アガート」及び「agate」の各文字が直ちに、我が国で特に親しまれているような外来語ないし外国語といえるようなものでなく、また、一般に欧文字と仮名文字とを併記した構成の商標においては、その仮名文字部分が欧文字部分の称呼を特定すべき役割を果たすものと無理なく認識できるときは、仮名文字部分より生ずる称呼がその商標より生ずる自然の称呼とみるのが相当である。
してみると、本件商標は、特定の観念を生じない造語からなるものであり、その構成中の片仮名部分が欧文字部分の称呼を特定したものと無理なく認識できるものであるから、本件商標よりは「アガート」の称呼を生ずるものといわなければならない。
一方、引用商標は、別掲Cのとおり、デザイン化された「agete」の欧文字、又は、これと「アガット」、「CLASSIC」、「FIRST」若しくは「SELECTION」の各文字とを上下二段に横書きした構成よりなるものであって、その構成態様からして、引用商標は、その「agete」の欧文字自体が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるということができる。また、その綴りからは特定の外国語ほかの既成の語を見いだすことはできないが、申立人の主張ないし同人提出に係る雑誌などによれば、アクセサリー店舗の名称として「アガット」との片仮名表記などの掲載が認められるところであって、これを否定すべき格別な理由もないところであり、その主張及び使用事実に照らし、引用商標「agete」の欧文字からは「アガット」の称呼が生じるものであり、また、特定の観念を生じない造語ということができる。
そこで、本件商標と引用商標との類否を検討すると、外観においては、本件商標は「アガート」の片仮名及び「Agate」の欧文字からなるのに対して、引用商標は、デザイン化された「agete」の欧文字、又は、これと「アガット」、「CLASSIC」、「FIRST」若しくは「SELECTION」の各文字とにより構成されるものであって、全体の外観から受ける視覚的印象においては明らかな相違があり、さらに、本件商標の構成中の「Agate」と引用商標の構成文字である「agete」とを分離、抽出し、これを時と所を異にして離隔的に観察しても、短い5字綴りでの第3字における「a」と「e」の字形の相違は、通常の注意力をもってすれば容易に識別でき、両者の外観を見誤ることはないものといわなければならない。
また、称呼においては、本件商標の称呼が「アガート」であるのに対し、引用商標「agete」の称呼は「アガット」であるところ、両称呼は、確かに、中間における「ガ」に付随する音が長音か促音の差異を有するにすぎないとしても、前者の「アガート」における長音は「ガ」の母音(a)が滑らかに伸ばされるものであり、その称呼は、全体として穏やかな語調、語感として聴取されるものであるのに対し、後者の「アガット」における促音は前音「ガ」を強音化させ、その称呼全体は、響きの強い語調、語感として聴取されるものである。
そうすると、両称呼は、中間部分における差異とはいえ、この差異が長音又は促音を含め4音という短い音構成からなる両称呼に与える影響は決して小さいものとはいえず、両者は、これをそれぞれ一連に称呼するも、相紛れるおそれはないものとみるのが相当である。
なお、申立人は、審決例を挙げ、「アガート」の称呼と「アガット」の称呼は類似する旨申し立てているが、審決で取り上げられている商標は、いずれも本件とは商標を異にするばかりでなく、商標の類否の判断は、各商標につき個別具体的に判断されるべき性質のものであるから、申立人が主張するような事例があるからといって、本件商標と引用商標についての上記判断が左右されることにはならない。
そして、観念においては、両商標からは同一の観念が生じることはなく、類似するとの点は見いだせない。
その他、本件商標と引用商標とを類似するものとすべき理由は見いだせない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
したがって、本件商標と引用商標との指定役務及び指定商品との類否について論及するまでもなく、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
申立人の提出した証拠(甲第17号証ないし甲第47号証)を検討するに、申立人の関連会社であるエーアンドエス社により、全国的に展開している「アクセサリー」の専門店の店舗名称ないし商品「アクセサリー」の商標として、「agete商標」が使用されている事実を申立人ないしエーアンドエス社の会社案内(甲第17号証及び甲第18号証)や、申立人代表者の陳述書(甲第19号証及び甲第20号証)及び雑誌の掲載(甲第27号証ないし甲第46号証)などから認めることができる。
しかしながら、提出された雑誌での広告などの掲載(抜粋)は、2005(平成17)及び2006(平成18)年に発行されたものが各1回、2007(平成19)年に発行されたものが6回、2008(平成20)年に発行されたものが5回、2009(平成21)年に発行されたものが3回、及び2010(平成22)年に発行されたものが4回であり、その各誌での掲載は継続的なものでなく、かつ、その回数もさほど多いものでもない。
してみれば、「agete商標」は、本件商標の登録出願時において、これらの雑誌での掲載や展開店舗によって、これがアクセサリー店舗の名称ないし商品「アクセサリー」の商標として、若い女性を主とする需要者層にはある程度知られていたといえるとしても、この程度の証拠からは、我が国において、商品「アクセサリー」に係る需要者に広く認識されていたものとみるのは困難といわざるを得ないものである。
そして、上記(1)で述べたように、本件商標とデザイン化された「agete」の欧文字を有する引用商標とは、互いに紛れるおそれのない非類似の商標といえるものであることからすれば、それと同様に、本件商標と「agete商標」も非類似の商標といえるものであるから、商標権者が本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者が「agete商標」を連想、想起することはないというべきであり、該役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれはないと判断するのが相当である。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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