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Trademark Appeal Case

周知商標と称呼の類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2011−890003(T2011−890003/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第5349741号商標(以下「本件商標」という。)は、「ファッショニスタ」の片仮名を標準文字で表してなり、平成22年4月27日に登録出願され、第28類「おもちゃ,人形,囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具」を指定商品として、同年7月27日に登録査定、同年8月27日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

本件商標に対して、請求人は、自己の使用に係る以下の商標を引用する。

1 引用商標Aは、「Fashionistas」の欧文字からなるものである。

2 引用商標Bは、「ファッショニスタ」の片仮名からなるものである。

なお、引用商標A及び引用商標Bをまとめていうときは、以下「引用商標」という。

第3 請求人の主張

1 請求の趣旨

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第80号証を提出した。

2 請求の理由

(1)商標法第4条第1項第10号の該当性について

ア 概要

引用商標Aは、遅くとも本件商標の出願日前から外国及び日本国において周知の商標である。また、本件商標から生じる称呼「ファッショニスタ」は、引用商標Aから生じる自然的称呼「ファッショニスタス」と称呼上極めて類似する。

また、本件商標は、出願日以前より日本国において周知な引用商標Bと同一であり、引用商標について請求人が使用している商品と本件商標の指定商品中「おもちゃ,人形」とは同一又は類似の関係にある。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。

イ 引用商標の周知性について

商標法第4条第1項第10号所定の「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」とは、我が国において商標として使用された結果「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識され」るようになった商標をいうだけではなく、主として外国で商標として使用され、それが報道された結果、我が国において「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識される」ようになった商標を含むものと解される。

その理由とするところは、商標法第4条第1項第10号に定める要件が商標登録拒絶事由、商標登録無効事由とされた立法趣旨には、商品の出所の混同を防止することが含まれることが明らかであり、この立法趣旨からみれば、主として外国で商標として使用され、それが我が国において、価値のある商品、権威のある商品を表示する商標として報道、引用された結果、我が国において「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識され」るようになった商標と、我が国において商標として使用された結果「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識される」ようになった商標とを区別して、前者の商標またはこれに類似する商標の登録を認めることによる商品の出所の混同を容認する理由はなく、また、後者にのみ限定する文言もないためである。

本件についてこれを見ると、米国・ヨーロッパを主とする外国で商標として広く使用され、それが報道された結果、また、我が国における使用と相俟って、本件商標の出願日(2010年8月27日)以前より、我が国における需要者の間に広く認識されるようになっていたと確信する。以下に、その事実を詳述する。

(ア)事実1:多国籍企業である請求人の製造、販売する玩具は、日本国内で市場を形成している海外ブランドのひとつであること

請求人である「マテル・インコーポレーテッド(Mattel,Inc.以下「マテル社」という。)」は、アメリカ合衆国カリフォルニア州に本拠を置き、2009年純売上高54億ドルを超える世界最大規模の玩具メーカーである。世界43カ国に拠点をもっており、マテル社の製品は、現在世界150カ以上の国や地域で販売されている(甲5及び6)。

日本市場へは1960年代より進出しており、マテル社は、日本国内で市場を形成している海外玩具ブランドのひとつである。マテル社の代表的なブランドである「バービー(ドール)」は、「2003年現代用語の基礎知識」、「英辞郎 on the Web」、「研究社新英和犬辞典」及び「英和商品名辞典」等に掲載されていることから、請求人の主力製品として著名なことは、詳述するまでもなく明らかである(甲7ないし11)。

(イ)事実2:引用商標Aは、我が国のファッションドールに大きな影響を与えてきた、すなわち、長年にわたって日本のおもちゃ産業分野の企業関連者やファッションドールファンが強く関心を寄せてきた「バービー(ドール)」シリーズの名称であること

引用商標Aが使用されている「バービー(ドール)」は、年間セールスおよそ1473億円の世界一のシェアを誇る商品である。1959年ニューヨークのトイフェアで発表されて以来、10代のファッションモデルという位置付けで、ファッション性はきわめて高く、時代を敏感に反映してきた。そのため、純国産のファッションドールが作られた60年代後半から今日まで、我が国のファッションドールに大きな影響を与えてきた(甲12及び13)。

現在、バービー(ドール)は、世界中の何百万人もの少女にとって欠かせない存在となる一方、大人がおしゃれなコレクションとして買い求めるバービーコレクターラインも充実している。そのため、国内のおもちゃ産業分野の企業関連者のみならず大人のファッションドールファンが、常に、バービー(ドール)のニューラインに強い関心を寄せていることには疑いがない。

(ウ)事実3:引用商標Aは、遅くとも2009年5月8日には米国において使用され、2009年秋頃には既に、外国において一定の評価を得ていたこと

引用商標Aが表示されたバービー(ドール)は、2008年に中国において製造が開始され(甲14)、遅くとも2009年5月8日には米国において販売されていた(甲15)。その後、「Fashionistas」は、ファッショナブルなブランドとして展開され(甲16ないし18)、2009年のバービー(ドール)の人気シリーズとして新たに加えられた(甲19及び20)。

2009年9月11日より米国においてテレビ広告を大々的に放映するや(甲21及び22)、「Fashionistas」は、2009年10月1日の世界最大のビジネスウェブサイト「CNNMoney.com」のホッテスト・ホリデー・トイズ(最も人気のあるクリスマスプレゼント用おもちゃ)に取り上げられている(甲23)。

(エ)事実4:引用商標Aが使用されたバービー(ドール)は、2009年に世界各国で盛大に開催されたイベントの多くに展示又は紹介され、これらのイベントは海外メディアにより大々的に報じられていたこと

バービー(ドール)「Fashionistas」が発売された2009年は、バービーの生誕50周年にあたり、マテル社は、バービーを文化的ブランドとして世界に売り込む年だと宣言。世界中でイベントが盛大に開催されていた。バービー(ドール)「Fashionistas」は、これらのイベントにおいて展示されていたことから、発売当初より、世界中のおもちゃ産業分野の企業関係者やファッションドールファンが注目していたことは明らかである(甲24及び25)。

バービー(ドール)「Fashionistas」が展示されたイベントとして、以下のようなものがある。

a ヨーロッパで開催された記念イベント

2009年7月9日ドイツ・ベルリンの大通りに面した角地に立つファッショナブルなデパートで記念パーティー開催されていた(甲26及び27)。

b 米国で開催された記念イベント

2009年9月11日ニューヨーク・トレードセンターの人気ブティックでファッションイベント開催されていた(甲28及び29)。

c その他のイベント

その他、バービー(ドール)「Fashionistas」の発売イベントとして、2009年11/12月発行マテル社のグローバル・ニューズレターで紹介されているものだけでも次のようなものがある。

(i)フランス―Barbie Fashionistas

2009年9月〜12月 バービー(ドール)「Fashionistas」の発売を機に、二段階キャンペーンを行っていた。これにより、バービー(ドール)の店舗販売量を41%まで引き上げられていた。

(ii)イギリス&アイルランド―Do the Barbieツアーバス

2009年8月〜10月 バービー(ドール)「Fashionistas」の発売応援として、YoutubeとFacebookにビデオを掲載していた。また、雑誌やウェブサイトにおいて、クイズやコンテストと共に人形を紹介していた。

10月 30個以上のアトラクションと15以上のショッピングモールで、バービー(ドール)「Fashionistas」と踊るというユニークのイベントを開催していた。

(iii)ブラジル―Barbie&Melissa

2009年9月 250人以上のゲストが訪れたミニ・ファションショーで、バービー(ドール)「Fashionistas」を紹介していた。

(iv)ポーランド―ワルシャワファッションウィーク

2009年10月 ニューヨークファッションウィークに続き、ワルシャワでも、バービー(ドール)「Fashionistas」からアイデアを得た6つのデザインを披露していた。

(v)中国―House of Barbie/Barbie Fashionistas発売イベント

2009年11月 バービー(ドール)「Fashionistas」の発売を記念し、「Fashionistas」としてドレスアップした16人のモデルを招待し、ファッションショーを先導していた。

(vi)メキシコ―Barbie Fashionistas

2009年11月 ファッショナブルなショッピングモールで、6人の等身大のバービー「Fashionistas」によるイベントを開催していた。また、これに連動し、テレビ・インターネットで「Fashionistas」を紹介。総売り上げは44%アップしていた。

(vii)中南米―Barbie Fashionistas

2009年11月 バービー(ドール)「Fashionistas」は、3週間続けて中南米の数々のショッピングモールを訪れ、新しい商品を紹介していた。

(viii)スペイン―Fashionistas

2009年11月 バービー(ドール)「Fashionistas」の発売記念イベント会場に500人以上の女の子を訪れ、売り上げは65%アップしていた。

(ix)その他

カナダ、ペルー及びチリ等でもイベントを開催し、売り上げをのばしていた。

(オ)事実5:我が国において開催された2009年9月5日ないし2009年10月4日のイベント及び2010年1月24日のドールショウ等にも、引用商標が表示されたファッションドールが展示又は紹介されていたこと

a 我が国におけるバービー(ドール)生誕50周年記念イベント

日本においても、バービー(ドール)の生誕50周年を記念し、2009年3月ないし2009年8月に名古屋を皮切りに横浜など各地を巡回した「バービールーム」(甲30及び31)、2009年3月9日に東京帝国ホテルにて開催された「Barbie ピンクセレブレーション!50周年記念発表会‘09」(甲32及び33)、2009年9月5日ないし2009年10月4日に横浜人形の家で開催された「バービー50周年記念展 in Yokohama」(甲34及び35)及び2009年12月8日ないし12月27日に松屋銀座で開催された「Barbie & Ken 50th Anniversary バービー展」など様々なイベントが開催され(甲36)、我が国のおもちゃ産業分野の企業関連者及びファッションドールファンが注目していた。

これらのイベント中、バービー(ドール)「Fashionistas(ファッショニスタ)」が紹介された「バービー50周年記念展 in Yokohama」は、国際観光文化施設として親しまれ、平成21年に172,922人もの人が来場している「横浜人形の家」の斬新で人気のある企画として開催されたものであり(甲37)、バービー(ドール)「ファッショニスタ(Fashionistas)」はこのイベントと相俟って、日本国内のおもちゃ産業分野の企業関連者及びファッションドールファンの間に広く知られることとなった。

請求人は、かかる主張を増強するため、簡易にインターネットにより検索し、「ファッショニスタ(Fashionistas)」に関する次のようなブログが更新されていることに注目した。

(a)2009年9月17日付けブログ「百花繚乱センシバンコウ バービー50周年記念展行ってきました」(甲38)

「ショーケースには今後発売の予定があるメインラインの『ファッショニスタ』、コレクティブルの『2009 ホリディ』『ハイディ・クルム』、シルクストーンの『スタニングイン・ザ・スポットライト』も展示されていました。(略)日本では来年春発売予定だそうです。」

(b)2010年3月1日付けブログ「まいにちがもっとHappy♪ バービー・ファッショニスタ サッシー」(甲39)

「横浜人形の家で開催されていたバービー展で来年発売予定というコーナーでファッショニスタを見たときの写真を発掘。ファッショニスタ楽しいですよ。」

b 我が国におけるドールショウ

請求人は、少なくとも2010年1月24日に東京都立産業貿易センターで開催された人形専門展示販売会「ドールショウ27」(甲40及び41)及び2010年3月20日ないし5月9日に横浜人形の家にて開催された「キャラクタードール展」(甲42及び43)において、バービー(ドール)「ファッショニスタ(Fashionistas)」を展示していた。

(カ)事実6:日本国におけるバービー(ドール)「ファッショニスタ(Fashionistas)」の発売日(平成22年2月21日)に合わせ(甲44)、新聞・雑誌・テレビ・イベントなどの広告媒体をとおして、次のような広告宣伝活動を行っていたこと

a 新聞又は雑誌広告

マテル社2010上半期ベストアイテムとして、新聞又は雑誌に、バービー(ドール)「ファッショニスタ(Fashionistas)」に関する広告を掲載していた。

(i)平成22年2月1日発行 週刊玩具通信「Weekly Toy News」(甲45)

(ii)平成22年3月23日発売 「ZIPPER(ジッパー)(5月号)」(甲46)

(iii)平成22年4月7日発売 「ママジェリー(5月号増刊)」(甲47)

b テレビ広告

平成22年3月13日〜4月11日 視聴可能世帯数「700万」世帯突破する「カートゥーン・ネットワーク」にて、計164回に渡って広告を放映していた(甲48ないし50)。

c インターネット・携帯サイト広告

上記テレビ広告と連動し、インターネット・携帯サイトにおいて広告を掲載していた。

(i)平成22年3月9日〜4月30日 「カートゥーン・ネットワーク」ウェブ及びモバイルサイト(甲51ないし53)

(ii)2010年3月20日〜4月18日応募期間ファッショニスタが使用された2010年春休みキャンペーンプレゼント(甲54ないし56)

d イベントによる広告活動

平成22年3月25日〜4月7日 ファッション・フードスペース「ソラド原宿」のスイーツバイキング「スイーツパラダイス SoLaDo 原宿店」において、期間限定で、「Barbie Cafe(バービーカフェ)」として営業し、レジカウンター下のショーケースや棚の上などに、「ファッショニスタ(Fashionistas)」中心にバービー(ドール)を展示していた(甲57及び58)。

3月27日 中学生向けファッション雑誌「ピチレモン」のモデルがゲスト出演し、バービー「ファッショニスタ(Fashionistas)」のワンピースを着るなどイベントを盛り上げる様子が、多くのメディアに取り上げられていた(甲59及び60)。

e 上記事実を総合的に判断すると、請求人の「Fashionistas」商標は、本件商標の出願時である2010年4月27日以前に、米国・ヨーロッバ等の諸外国においてファッションドール関連商品の販売者及び一般需要者の間で著名なものとなっており、我が国においても、請求人の「Fashionistas」商標を使用した商品は、おもちゃ産業分野の企業関連者及びファッションドールファンを中心とする一般需要者において、世界的に有名なバービー(ドール)の新シリーズとして注目を集め、多くのファッションドールファンによるブログに更新される状況にあった。そして、本件商標の出願時までには、マテル社の日本法人によって、請求人の「ファッショニスタ(Fashionistas)」商標を使用した商品は日本国における一般需要者に販売されていたものであり、同社の宣伝広告活動により、世界的に有名なバービーのサブブランドとして広く認識されるようになったと認められる。

請求人がインターネットを利用して簡単に検索したところ、この主張の正当性を増強する多数のブログが発見された(甲61ないし72)。

ウ 商標及び商品の類似性

本件商標から生じる称呼「ファッショニスタ」は、引用商標Aから生じる自然的称呼「ファッショニスタス」と、僅かに語尾の「ス」音の有無に差異を有するにすぎない。そのため、本件商標と引用商標Aは、互いに聞き間違えられるおそれのある極めて類似する関係にあることは明らかである。そして、請求人が引用商標Aについて使用している商品と本件商標の指定商品中「おもちゃ,人形」とは同一又は類似するものである。

また、本件商標は引用商標Bと同一であり、請求人が使用している商品は本件商標の指定商品中「おもちゃ,人形」とは同一又は類似するものである。

エ 結論

以上のとおり、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の出願日より前に需要者の間に広く認識されている引用商標と同一又は極めて類似するものであって、その商品又はこれに類似する商品について使用するものであるため、商標法第4条第1項第10号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第19号の該当性について

ア 引用商標Aの外国における周知性

仮に、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するとは認められないとしても、上述のとおり、米国及び欧州共同体に商標登録された引用商標Aは(甲73及び74)、米国・ヨーロッパを主とする諸外国では、2009年より多大な宣伝広告費をかけることにより(甲19ないし29)、需要者間において広く知られ、高い名声、信用、評判を獲得するに至っていたことは、明らかである。

イ 被請求人の不正の目的

被請求人は、請求人のバービー(ドール)と競合するファッションドール「リカちゃん」及び「ジェニー」を製造、販売している、いわば競業会社である(甲75)。そのため、2009年末頃には既に、被請求人は、バービー(ドール)「Fashionistas」が世界各国で一定の評価を得て販売されており、日本国に市場を持つ請求人により我が国においても発売される見込みであること、すなわち、請求人が引用商標を人形に使用するであろうことを認識する立場にあったことは、次の(ア)ないし(エ)の事実から一目瞭然である。

そして、被請求人の商標使用上における模倣行為をみれば、本件商標をおよそ独自に採択し、独自に使用しているなどとはいえず、このことは、「不正の目的」が実在することの証明になると確信する。

(ア)事実1

バービー(ドール)「Fashionistas(ファッショニスタ)」が展示されたイベントは、外国及び日本において盛大に開催され、それらの情報はマスメディアに大きく取り上げられていた(甲24ないし36、甲40ないし43、甲57ないし60)。

(イ)事実2

バービー(ドール)「Fashionistas(ファッショニスタ)」が展示されていた我が国のイベント中、少なくとも「バービー50周年記念展 in Yokohama(2009年9月5日〜2009年10月4日開催)」、「ドールショウ27(2010年1月24日開催)」及び「キャラクタードール展(2010年1月24日開催)」には、被請求人のファッションドール「リカちゃん」も展示されていた(甲40及び43)。

(ウ)事実3

被請求人のファッションドール「ジェニー」は、請求人からライセンスを取得し開発された「タカラバービー」が元となっており、両者は共に、ファッション性を重視した商品展開となっている。そのため、両者の購買層は重複しており、世界一のシェアを誇るバービー(ドール)のニューラインに、被請求人が常に関心を寄せていることは容易に推測される(甲75及び78)。

(エ)事実4

本件商標は、この「ジェニー」に使用されている。そればかりか、請求人のバービー(ドール)「ファッショニスタ(Fashionistas)」は、ファッション性にこだわった個性豊でテーマのある人形6体のバリエーションで展開されている(甲76及び77)のに対し、被請求人のジェニー「ファショニスタ」は、クール系「ジェニー」と4人の異なったファッションテイストのキャラクターにより展開されており、両者は、極めて近似したコンセプトにより宣伝活動が繰り広げられている(甲78及び79)。

ウ 結論

以上のとおり、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして本件商標の出願日より前に外国における需要者の間に広く認識されている引用商標Aと極めて近似するものであって、不正の目的をもって使用するものであるため、商標法第4条第1項第19号に該当するといわざるをえない。

(3)商標法第4条第1項第7号の該当性について

また、仮に引用商標Aが、商標法第4条第1項第10号及び同第19号に該当すると認められないとしても、上述のとおり、請求人と競業関係のある被請求人が、外国における請求人の引用商標Aの存在を知りながら、これに極めて類似する本件商標を出願したのは明らかである(甲7、13、40、43、75及び79)。

市場の国際化、グローバル化に伴って、外国商標を外国の商標所有者に無断で日本で登録出願する者が増え、このような悪意の商標登録をそのまま認めることは国際信義に反するという観点から、商標法は従来より、一般条項として商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に当たるものとしてこれを無効としてきた(甲80)。

被請求人の上記の使用状況及び出願の経緯からするならば(甲7、13、40、43、75及び79)、被請求人が、引用商標と同一又は極めて近似する本件商標を強いて採択、出願したのは偶然の一致とは到底考えられない。そのため、本件商標を出願したのはマテル社の評判・名声を借用して不正な利益を得るために使用する目的をもってなされたと疑わざるをえない。

したがって、被請求人が本件商標の設定登録を受ける行為は、商取引の秩序を乱し、国際信義に反するものであり「公の秩序」を害する行為にあたるため、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するといわざるを得ない。

(4) むすび

以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同第10号及び同第19号の規定に該当するにもかかわらず登録されたものであるから、本件商標の登録は同法第46条に基づき無効とされるべきである。

第4 被請求人の主張

1 答弁の趣旨

被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第43号証(枝番号を含む。)を提出している。

2 答弁の理由

(1)無効理由1「(商標法第4条第1項第10号)について」に対する反論

ア 引用商標の周知性

(ア)引用商標の周知性の否定

引用商標Aについては、本件商標と「称呼上極めて類似する」とまではいえないが、仮に、引用商標Aが本件商標と類似するとしても、そもそも、引用商標に関しては、その使用・広告等の実績に関する証拠が極めて少なく、バービー(ドール)「ファッショニスタ(Fashionistas)」(以下「請求人商品」という。)に関する販売実績・市場シェアに関する証拠は殆ど提出されていない。また、引用商標の使用・広告等に関するものと思われる証拠についても、そもそも、引用商標とは全く無関係な証拠や、配布数量や配布範囲(対象)等が不明確なものばかりであり、これらの証拠では、世界のいずこにおける周知性も認定し難い。更に、日本における宣伝広告については、ブログ上の書き込み程度の資料が大半を占め、一般雑誌等への広告については、配布数量が極めて僅少なものを含めても3誌(紙)に止まり、そもそも、周知性立証の基礎とできるような証拠はない。それらの広告は、回数はそれぞれ一回限りであって、広告期間も極めて短く、かつ、請求人商品の発売日も、本件商標の出願日前2か月程であるから、特段の事情がない限りかかる短期間で引用商標が周知にはなりようがないし、更に、著名である(審判請求書12ページ13行目)とは到底いえない。かかる商標に関しては、審決でも、一貫して周知性は否定されているので、以下の各項目において、適宜言及する。

(イ)商標法第4条第1項第10号(以下「10号」という。)の解釈基準と周知の程度

請求人は、10号の所定の解釈として、「『他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標』とは、我が国において商標として使用された結果「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識され」るようになった商標をいうだけではなく、主として外国で商標として使用され、それが報道された結果、我が国において「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識される」ようになった商標を含むと主張する。

これは、10号の適用については、引用商標の、我が国における周知性を基礎とすべきであるという主張であるから、被請求人も異とするものではない。10号の規定の適用については、「本号の規定を適用するために引用される商標は、商標登録出願時に(略)、我が国内の需要者の間に広く認識されていなければならない」のであり、「外国の商標の我が国内における周知性の認定にあたっては、当該商標について外国で周知なこと、数カ国に商品が輸出されていること又は数カ国で役務の提供が行われていることを証する資料の提出があったときは、当該資料を充分に勘案するものとする」に過ぎない(乙1及び2)。換言すれば、「国外のみで周知(ないしこれを超えて極めて著名なもの)であっても、国内で知られていないものは、本号に該当しない」(乙3)。登録主義を採用する我が国では当然の基準と考える。

後述のとおり、請求人商品は、「全国にわたる主要商圏の同種商品取扱い業者の間に相当程度認識されているか、あるいは、狭くとも一県の単位にとどまらず、その隣接数県の相当範囲の地域にわたつて、少なくともその同種商品取扱業者の半ばに達する程度の層に認識されている」事実もないし、かかる事実を基礎付ける証拠も提出されていない。

(ウ)引用商標の周知性の立証について

上記基準に鑑みると、請求人の提出する証拠は、到底引用商標の周知性を基礎付けるものではない。

a 請求人主張の「(ア)事実1」及び「(イ)事実2」に対する反論

甲第5号証及び同第6号証は、引用商標とは何ら関係のない資料である。

上記両証拠は、いずれも米国内の限定された者へのみ配布された資料、又は、米国内のサイトであって、我が国の需要者に向けた資料・サイトではない。加えて、これらの証拠は、請求人の会社概要に関する情報であるから、引用商標の周知性判断には直接的には関係がない。

甲第7号証ないし同第13号証は、請求人の「バービー(ドール)」商品(以下「バービー商品」という)に関する一連の記事又は辞書類等であるが、引用商標の記載は一切なされていない。

b 請求人主張の「(ウ)事実3」に対する反論

請求人商品が、米国においては2009年5月以降販売され、また、請求人が、請求人商品についてファッショナブルなブランドとして展開しようとした意図は一応推認できるが(甲14ないし18)、これらの証拠は、引用商標の周知性とは全く関係がない。特に、甲第16号証ないし同第18号証は、いわゆるデザイン画であって、需要者の目に直接触れるものではない。また、甲第19号証及び同第20号証は、請求人の米国向けカタログであることは一応推認できるが、その配布数量、配布対象が不明である。甲第21号証及び同第22号証について、請求人は、2009年9月11日より米国においてテレビ広告を大々的に放映したことを示す証拠として提出するが、これらの証拠は何らテレビ広告の実際の放映を証するものではなく、またその放映の頻度も明らかでない。したがって、そもそもいずれの証拠も周知性の判断資料として意味のあるものではない上、これら米国における情報が、どのように「報道された結果我が国において『他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識される』」ようになったというものであるのか、請求人は全く明らかにしていない。

甲第23号証のように米国のウェブサイトで小さく1回紹介されたことがあるからといって、当然に当該商標が我が国において周知になることはない。

c 請求人主張の「(エ)事実4」に対する反論

甲第24号証ないし同第29号証が、2009年7月ないし同年12月に行われた請求人商品又はこれに関連するファッションショウに関する資料であることは推認できるが、そもそも、これらのショウは日本で実施されたものではない。また、それぞれのショウの入場者数等も不明であるから、引用商標の周知性の判断資料としては、意味のあるものとは思われない。

これらのショウの記事は、請求人が発行する2009年11/12月の「GLOBAL NEWSLETTER」において紹介されているが、その配布先や数量も不明である。これらの情報は、電子媒体として配信されているようでもあるが、そもそも日本の需要者がこれを見る機会は乏しいと思われる。

d 請求人主張の「(オ)事実5」に対する反論

甲第30号証ないし同第33号証は、請求人のバービー商品に関する記事であるが、これらの記事には、そもそも引用商標について言及すらされていない。即ち、甲第30号証ないし同第32号証は、「バービー生誕50周年記念イベント」に関する記事であるが、引用商標には全く言及されていない。

また、甲第33号証についても、帝国ホテルにおいて「バービー50周年記念パーティー」が行われたことは判るが、引用商標については、全く訴求されていない。

この点は、甲第34号証ないし同第37号証においても全く同様である。即ち、甲第34号証は、「バービー50周年記念展 in Yokohama」のポスターと思われるが、引用商標については、全く表示されていない。

また、甲第35号証ないし同第37号証においても、バービー商品に関する記事であるにもかかわらず、引用商標については、全く触れられていない。

このように、引用商標は、2009年9月時点において、請求人も大々的な広告を行っておらず、ショウ等でも訴求しておらず、その結果、需要者も引用商標については認識していない。したがって、請求人が主張する「(引用商標は)このイベントと相俟って、日本国内のおもちゃ産業分野の企業関係者及びファッションドールファンの間に広く知られることとなった」という事実はない。我が国における、引用商標の使用に言及した証拠(ただし、請求人の広告等ではない)は、甲第38号証及び同第39号証以降にごく少数提出されているだけである。

甲第38号証及び同第39号証は、いずれも、バービー商品のファンのブログと思われる。このブログは、本件商標の出願から6か月ないし1か月前の記事であるから、かかる個人ブログが2件発見されたからといって、当該記事中に記載された商標が、我が国の需要者に周知となったとはいえない。日本における引用商標が、日本に紹介された記事は、甲第38号証が最も時期的に古い証拠であるから、結局のところ、2009年9月と2010年3月1日の2回だけ、外国における引用商標Aがファンの一部に認知されたことがわかるに過ぎない。かかる証拠をもって、引用商標が我が国において、周知となったとは到底いえない。

甲第40号証については、引用商標に関する資料ではない。

甲第41号証は、撮影者も撮影状況も不明な写真が添付されているが、「もう・・・なんでもありのお店作り」であり、展示品に引用商標が付されているとも思われない。

甲第42号証は、請求人商品の絵柄は表示されているが、引用商標は表示されていない。

甲第43号証も同様に、請求人商品は表示されているが、単に「バービー人形」としか表示されておらず、引用商標は表示されていない。

以上のとおり、甲第30号証ないし同第43号証中には、個人ブログの2件についてのみ引用商標に対する個人的な言及がなされているだけである。一方、各種のイベント情報のように、当然に引用商標が表示又は言及されるべきものについても、引用商標の表示又は記載はない。したがって、請求人の提出する証拠からは、引用商標は、この時期(2009年3月ないし2010年4月30日)においても、全く市場に認知されておらず、ましてや周知という程度には至っていない。

e 請求人主張の「(カ)事実6」に対する反論

甲第44号証は、「バービー ファッショニスタ アーティー」、及び、「バービー ファッショニスタ ワイルド」に関する記事であるが、上記のとおり、いずれも「バービー」と一連の商標として表示されている。また、これらの記事は、いずれも、2010年12月3日にプリントされているが、請求人商品は、この時点で発売から10か月を経過しているにもかかわらず、それぞれ注目度は「0.00」であり、コメント数も「0」である。発表したウェブが需要者に全く注目されていない媒体であるのか、又は、請求人商品自体が全く注目されていないのかは不明であるが、そのいずれであっても、引用商標が全く市場に認知されてないことは、請求人が提出する証拠からも明らかである。

甲第45号証は、2010年2月1日付けのいわゆる業界紙であり、請求人商品が掲載されていることを認めるにやぶさかではないが、多数商品の1つとして小さく表示されているに過ぎず、「Barbie」が商標的態様で表示されている一方で、「ファッショニスタ」の語は極めて小さく記述的に表示されているに過ぎない。また、同紙は、全国販売数が公称でもわずか7000部程度であって(乙13)、かかる少量配布紙へ1回(しかも、きわめて小さく付記的に)掲示されたことをもって、我が国において、引用商標が周知となったとは言えない。そうでなければ、日本においては、かかる少量配布の業界紙に小さく付記的に1回表示されただけであっても、そこに表示された全ての語が、商標として周知となるといった、おおよそ承認しがたい理論となる。

甲第46号証の雑誌は、2010年3月23日の発売、甲第47号証の雑誌は2010年4月7日の発売であって、本件商標の出願日の概ね1か月前に市場に出たものであるから、掲載態様等にも鑑みると、かかる掲載事実によって引用商標が一挙に周知になるとは思われない。

同様に、平成7年審判第20950号の審決(乙14)で説示している。本件の周知性に関する証拠は、これらの審判において提出された証拠よりも圧倒的に僅少(短期)であることは言うまでもなく、かかる一連の審決に比較しても、引用商標の周知性は否定されるべきである。

甲第48号証ないし同第50号証は、「カートゥーン・ネットワーク」(以下「CN」という)、及び、これと連動した、インターネット等サイトの広告である。まず、CNについては、視聴可能世帯数「700万」とあるが、そもそも、引用商標の周知性判断においては、どのような表示(CM)が、どの程度の需要者に視認されたのかが重要であることは言うまでもない。この点、請求人の証拠には、この視聴率に関するデータが皆無である。

このCMは、2010年3月13日ないし同年4月11日という本件商標の出願の1か月程度前に極めて短期に放送されたに過ぎないから、特別の事情が無い限り、かかる短期のスポットCMで、当該CMに使用された商標が周知とはなりえない。加えて、CNは、有料の有線TVであり、通常のTV広告に比較して極端に視聴率が低いから、上記特段の事情があるのであれば、それらの事情を明らかにし、かつ、甲第48号証ないし同第50号証に関する視聴率も明らかにすべきである。なお、直近の国勢調査(人口速報集計結果の要約)によれば、2010年の我が国の世帯数は概算5000万世帯であり(乙15)、CNが聴取できる世帯は、最大限でも日本全国の世帯数の14%である。更に、米国の実績の古いデータではあるが、(本国の)CNの視聴率は当該年度で最も高かった数字でも4〜4.5%に止まっており(乙16)、米国に比較してケーブルテレビの普及度が低いと思われる日本では、CNの視聴率は、最大でも1%程度という意見もある(乙17)。そうすると、仮に甲第49号証に表示されたCMが全て放映されたとしても、その視聴率は、全世帯の0.1%強(700万世帯×視聴率1%÷5000万世帯)から最大でも0.6%強(700万世帯×視聴率4.5%÷5000万世帯)程度であって、米国の年間最高数値を無条件に日本に引きなおしたとしても、全世帯の1%にも遙かに満たない。また、CMの内容も、甲第50号証に明らかなように、画面上には、引用商標は全く表示されていない。もともとこのCMは、表題にも明らかなように、一定のWEBへ需要者を誘導することを目的とするものであって、引用商標を需要者に印象付けるという意図がないようにも思われる。請求人提出の証拠には一般のTV広告の資料は一切提出されていないが、本件商標の1か月前に、甲第48号証ないし同第50号証のCMに引用商標を表示せずに流しただけなのであれば(推定視聴率は1%にも満たない)、むしろ、引用商標が周知たりえない証拠として評価されるべきである。

このように、CNは、「特定の契約者に有料で提供する放送事業者より放映されるもので、必ずしも一般の消費者に広く提供される番組であるとはいい難く」、しかも、引用商標は画面に表示されず、数字に対する客観的な裏付けがなく、視聴可能世帯数はあくまで、「実際の視聴者数ではなく、視聴可能な数」に止まり視聴率等の証拠も提出されていないから、「これら提出に係る証拠によっては、請求人の業務に係る役務を表すものとして、需要者の間に広く知られているとは認められない」というべきである。

なお、甲第51号証は、「バービー企画概要」の文字とおり、社内における企画書であるから、需要者の目に触れるものではなく、周知性立証の証拠にはならない。また、この企画書にも明らかなとおり、請求人が主として訴求している商標は、「バービー」又は「Barbie」であって、引用商標は、「CUTIE」等の個々の商品名よりも更に小さく、目立たないように表示されているに過ぎない。

これは、甲第52号証及び同第53号証も全く同様であって、これらの表題が「バービーファッショニスタ」になっていることからも明らかである。

この点は、甲第54号証ないし同第56号証についても、ほぼ同様であって、「バービーファッショニスタ賞」の表示が多用されていることからも明らかである。以上のとおり、請求人は、そもそも、日本における極めて短期の広告活動においてすら引用商標の訴求はしてこなかった。その結果、引用商標が、特定の「商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」にならなかったものと思われる。

甲第57号証は、ファッション・フードスペース「ソラド原宿」に関する記事であるが、表題は、「バービーカフェ」であり、「ファッショニスタカフエ」ではない。記事の内容も、「バービー(Barbie)」のみが訴求・認識され、引用商標については、全く言及されていない。

甲第58号証も全く同様であり、「バービー(Barbie)」のみが訴求され、引用商標は、記事の中には1語もない。添付された一連の証拠(写真)を見ても、「Barbie/バービー」が全面に表示されており、引用商標はどこにも表示されていない。

甲第59号証及び同第60号証の紹介記事等においても、「Barbie Cafe(バービーカフェ)」、「店内の棚もすっかりバービーワールド」と表示されて、引用商標は全く表示されていない。

その結果、甲第61号証以下の証拠においても、引用商標は全く露出していないか、又は、バービーファッショニスタ等のようにバービーの語と一体となって引用商標が認識されている。換言すれば、請求人提出の証拠からも、市場においては、引用商標が単独で周知性が確立しているとはいえない。

甲第70号証のスレッドを見ても、2009年11月21日以降、同年4月27日までの間に180件の書き込みはあるが、書き込みでは「バービー」又は「Barbie」の語が多数使用され、一方、「ファッショニスタ」を単独の語(請求人商品を表示する語)として表示されたスレッドは僅か8件に止まる。したがって、一般市場において引用商標が周知であるとは到底いえない。

甲第71号証についても、事情は全く同じであり、「ファッショニスタバービーのドレス」、「関節ありのボディになったファッショニスタバービーをBICさんで買いました!」と記載され、甲第72号証についても、「バービーファッショニスタ アーツィー」、「バービー・ファッショニスタというシリーズの、『アーツィー』さんです」等記載されている。これらのブログでは、引用商標を単独で使用している箇所は皆無であり、極めて限定的なファンですら、引用商標を単独の商標としては認識していない。

イ 商標及び商品の類似性

引用商標が使用されている「人形」が、本件商標の指定商品中の「おもちゃ・人形」と同一又は類似であることは認める。また、引用商標Aと本件商標の類似性については、請求人の主張を認めるに吝かではない。引用商標Bと本件商標とが、それぞれ称呼を同一とする同一又は類似の商標であることも認める。

ウ 小括

上述のとおり、引用商標については、そもそも我が国において周知というには遠く及ばないので、本件商標が10号に該当するという請求人の主張は失当である。繰り返しになるが、引用商標については、その使用・広告等の実績に関する証拠が殆どない。また、請求人商品に関する販売実績や市場シェアに関する証拠は皆無である。被請求人の調査では、いわゆるドール市場における請求人のシェアは、バービー商品以外の全ての商品を含めても4.6%であり(乙11)、請求人商品に関する広告は、2010年2月1日付けの発行部数公称7000部の業界紙(乙13)に1回小さく表示されたことと、本件商標の出願日前1か月前に2誌に1回づつ他の商品に混在する形で掲載されたこと、及び、推定視聴率が全世帯の1%に遙かに満たないと推定される有料のケーブルTVに引用商標を表示しないで1か月放映されたことがあるだけである。その他の資料は、引用商標とは全く関係のない証拠や、配布数量や配布範囲(対象)等が不明確な証拠であり、特に、日本における宣伝広告については、ブログ上の書き込み程度の資料が大部分である。これらのブログにおいてすら、請求人商品は、「Barbie(バービー)」としてしか認識されていないし、せいぜい、これと引用商標が一体となって需要者に認識されており、純粋に、引用商標が、単独で需要者に認識されていない。かかる商標については、審決においても、一貫して周知性が否定されてきたし、かかる判断は極めて当然のものであると考える。したがって、かかる宣伝方法で、本件商標の出願前2か月に発売された請求人商品に使用された引用商標が周知・著名にはなり得ない。

(2)無効理由2「(商標法第4条第1項第19号)について」に対する反論

ア 引用商標Aの、諸外国における周知・著名性

(ア)引用商標Aに関する宣伝広告費

請求人は、「多大な宣伝広告費をかけることにより」引用商標Aが、「需要者の間において広く知られ、高い名声、信用、評判を獲得するに」至ったと主張するが、そもそも、その「多大な宣伝広告費」については、全く明らかにされていない。また、広告については、ある程度長期に行うことで、「広く知られ、高い名声」を得る可能性はあるが、請求人商品は、米国において2009年5月に販売を開始したのであるから、本件商標の出願の日までには1年足らずの実績しかない。更に、請求人商品は、日本においては、2010年2月の販売開始であるから、本件商標の出願日までには僅か2か月しかない。また、請求人が提出する証拠では、引用商標に関する広告は、積極的にはなされていない。したがって、かかる証拠から、引用商標Aの「高い名声」を認定することはできない。外国における引用商標Aに関する証拠は、甲第14号証ないし同第29号証であるが、現実には、殆ど広告はなされてない。そこで、繰り返しになるが、以下のとおり、簡潔に反論する。

(イ)引用商標Aの周知性の立証について

甲第14号証は、請求人商品の写真である。請求人商品のパッケージに右上に極めて小さく引用商標Aが付されていることは認められるが、かかる商品の写真1枚では、外国における周知性の資料にはならない。かかる商品が、米国において、どの程度の販売シェアを保有し、どの程度の販売金額となったのかの証拠を提出すべきである。この点、請求人は、「引用商標Aが使用されている「バービー(ドール)」は、年間セールスおよそ1473億円」であると述べるが、俄かには首肯しがたい。引用商標Aを商標として付した商品(請求人商品)が、2009年5月ないし2010年4月までの1年間で、1473億円の売上げがあったのであれば、国別、商品別の販売数量、及び、金額の資料があるはずであるから、これを提出されたい。この記載は、単に「Barbie」商標を付した商品の総額をいっているようにも思われる。もしそうであれば、本件は、引用商標Aの周知性について争われているのであるから、これとは異なる「Barbie」商標と引用商標を峻別して主張すべきである。

甲第15号証からは、2009年5月8日に、引用商標Aの使用を開始したことは推認されるが、単なる商標の書誌情報であるから、引用商標Aの周知性認定の証拠にはならない。

甲第16号証ないし同第18号証はいわゆるデザイン画であって、需要者の目に直接触れるものではないことは上述のとおりである。したがって、引用商標Aの周知性の判断とは、そもそも関係がない。

甲第19号証ないし同第22号証は、請求人のカタログ、及び、ウェブサイト画面等であることは一応推認できるが、カタログであれば配布数量、テレビ広告であればその放映の頻度等が重要であるところ、それら一切が不明であるから、そもそも周知性認定の証拠とはいえない。また、甲第23号証は、請求人商品が、他の15商品と共に、「Hottest holiday toys」として選出されたという事実を証するものではあるが、「Hottest holiday toys」の選出方法や対象範囲も不明であって、この選出の事実自体によって、当該商品に使用された商標の周知性が証されるものではなく、また選出の事実がウェブサイトで紹介されたからといって周知性を獲得するものでもない。

甲第24号証ないし同第29号証は、2009年7月ないし同年12月に行われた請求人商品又は請求人商品に関連するファッションショウの資料であるとは推認できるが、それぞれのショウの入場者等も不明であって、これだけでは、引用商標Aの周知性の判断資料とすることはできない。甲第24号証ないし同第29号証では、それぞれの国で1回ずつイベントが行われたことは推認できるが、一方で、各国で1回イベントを開くことで、当該国又は世界中に当該イベントで使用された商標が周知になるというのも経験則に反する。

イ 本件商標の採択の経緯

(ア)本件商標の採択が決定されたのは、遅くとも2009年3月であること

被請求人は、本件商標を、被請求人が製造販売する人形ブランド「リカちゃん」シリーズ、及び同じく「ジェニー」シリーズに関する商品名として使用している。被請求人が、本件商標の採用を検討したのは、2009年に入って直ぐのことであり、2009年3月には、外部の特許事務所に本件商標の商標調査の依頼を行っている(乙22の1ないし3)。即ち、本件商標は、引用商標Aの使用開始時の2009年5月8日より以前に、具体的に商品名として採択を検討していたのであって、被請求人が「2009年末頃には、バービー(ドール)「Fashionistas」が世界各国で一定の評価を得て販売され・・・請求人が引用商標を人形に使用するであろうことを認識」した結果、本件商標を採択したという請求人の主張は事実に反する。この点を詳述すれば、被請求人は、他人の商標権を尊重することの重要性と、他人の商標権を侵害するリスクを充分に承知しており、商品名(商標)の採択に際しては、必ず他社の商標出願・登録の有無を確認している。乙第22号証の1について更に詳細に述べれば、被請求人の「リカちゃん」、「ジェニー」を企画・開発する部門(以下「リカちゃんグループ」という)の担当者が、2009年3月27日に、被請求人知的財産部門担当者に、商標「ファッショニスタ」についての商標調査依頼を行い(乙22の2)、本件商標の商標調査の結果は、2009年3月31日に同事務所より、被請求人宛に送付された(乙22の3)。

以上のとおり、被請求人は、2009年5月の請求人商品の販売を知り、ましてや、2009年末頃の請求人の情報を得て、本件商標を採択したわけではない。

(イ)本件商標は、被請求人が独自に採択したものであること

そもそも、「ファッショニスタ」の語は、2005年頃から、主としてファッション関連の業界内の造語(ファッションのトレンドに敏感な人、ファッションリーダー程度の語義を有する多義語)として散見されるようになった(乙23の1ないし29)。したがって、引用商標も、請求人が案出した語からなるものではない。リカちゃんグループでは、人形、又は、その付属品に関するアイデアをファッション業界のトレンドを参考にして考案することがあり、そのため、国内の主要なファッション誌や子供向け雑誌を定期購読している。

これらの購入誌の内、例えば、「ヴォーグ ニッポン3月号」(2009年)には、表紙にも「ファッショニスタが提案する/春の着こなしup&downベストバイ」と表記され、「ファッショニスタも夢中!?/みなぎり生命力を体感。」、「ファッショニスタの新常識2009。」といった記事が掲載されている(乙25の6)。かかる雑誌の購読は、2009年以前から現在に至るまで継続して行われている。

「ファッショニスタ」の語は、造語とはいっても、既にファッション業界では2005年頃から使用されており、被請求人のリカちゃんグループは、上記のファッション関連のメディアや雑誌等に触発されて、これを2009年秋発売予定の「リカちゃん」人形用に使用する商標として採用することに決定したのである。このように、被請求人が本件商標を「リカちゃん」人形用に採択したことは、極めて合理的である。繰り返せば、かかる検討作業が行われたのは2009年の初旬からであって、外部の事務所に本件商標の商標調査を依頼したのが2009年の3月であるから(乙22の2)、繰り返しになるが、請求人の主張する、2009年5月の請求人商品の販売を知り、あるいは、2009年末頃の請求人商品の情報を得た結果、本件商標を採択したという主張は、事実に反する。

(ウ)本件商標を使用した「リカちゃん」人形のカタログの配布時期は2009年7月であること

被請求人は、本件商標の調査結果が良好であったことから、最終的には、「スター★ファッショニスタ」(ドレスに星柄をあしらったことからかかる商品名とした)を「リカちゃん」人形の商品名として広告宣伝を企画した。乙第26号証は、2009年7月16日に東京ビッグサイトにおいて開催された「東京おもちゃショー」にて被請求人が頒布した「マーケティングガイド&新製品インフォメーション2009 10月〜12月」である。このカタログには、同年10月発売予定として、「スター・ファッショニスタ」が掲示されている。

このカタログは、被請求人のカタログ印刷の委託先である株式会社水上印刷で製作され、2009年7月15日に被請求人に納入された(乙27)。

上記「東京おもちゃショー」の後、被請求人は、2009年10月に「リカちゃんカタログ」を発行し(乙28)、その「ドレスシリーズ」のページには、「スター★ファッショニスタ」のコーディネートセットを同年11月に発売予定であることが記載されている。このカタログは、2009年7月頃に、被請求人が、株式会社ティーツーアイエンターテイメント(現・株式会社タカラトミーエンタメディア)に製作を委託し(納期:2009年10月1日)、概ね納期とおりに、被請求人に納品された(乙29及び30)。

(エ)本件商標の「ジェニー」人形への採択時期は2009年10月であること

上記時期をほぼ同じくして、2009年10月から、「リカちゃんグループ」において、2010年の4月に発売予定の「ジェニー」人形の新商品名の検討が開始され、既に「リカちゃん」で採用していた「ファッショニスタ」も候補にあがった。その理由は、(i)乙第25号証(それぞれ枝番含む)にも紹介されているとおり語感が良好であり、(ii)「ファッショナブルな人形シリーズというイメージを訴求しやすく、(iii)人形に使用しても違和感がなく、(iv)加えて、既に商標調査も済んでいることから他社の商標権を侵害するリスクが低く、(v)「リカちゃん」の「スター★ファッショニスタ」の広告と相俟って、需要者である女児に早期に商品名に馴染んでもらえると考えたことが挙げられる。

このため、リカちゃんグループは、念のため、この時点で再度、「リカちゃん」同様の再調査を行った。即ち、2009年10月29日に、「リカちゃんグループ」から、被請求人知的財産部門担当者に商標調査を依頼し(乙31の1)、その翌日、被請求人から外部特許事務所(光陽国際特許法律事務所)にこの調査を依頼し(乙31の2)、同調査の結果を、2009年11月5日に受領した(乙31の3)。この調査結果を受け、被請求人は、本件商標を「ジェニー」の人形名にも採用することを決定した。「リカちゃんグループ」では、2009年晩秋には、60期(2010年度)の「ジェニー」関連商品の発売計画表を作成しており、その11月13日の版には「ファッショニスタ」シリーズを、2010年4月から発売する予定であった(乙32)。その後、2009年の年末頃までに、パッケージ及び販促物に関するデザインの制作を行い、同年12月24日には、「リカちゃんグループ」から、パッケージ及び販促物に関するデザイン制作を委託した、株式会社工画堂スタジオに対して、本件商標を販促物のデザインに挿入するよう指示している(乙33)。なお、被請求人は、2010年4月21日及び22日に、東京・都立産業貿易センター台東館において行われた、タカラトミーグループの商談会において、「ファッショニスタジェニー」を発表したが(甲78)、乙第34号証は、その際配布したカタログである。

この時点で、被請求人は、単に使用の可否のみの確認ではなく、商標登録出願が必要であると考え、2010年4月27日に本件商標を出願した。

請求人は、たまたま、本件商標の出願が、請求人商品の発売時期と重複しているという一事をもって、「およそ独自に採択し、独自に使用しているなどとはいえ(ない)」と断定するが、それが誤りであることは、上記経緯に鑑み、明らかである。

してみれば、本件商標は、引用商標Aを使用した請求人商品の日本における販売開始日(2010年2月)はおろか、請求人が主張する「2009年末頃には、バービー(ドール)「Fashionistas」が世界各国で一定の評価を得て販売された」時期よりも、更には、請求人が引用商標Aを米国において使用し始めたと主張する2009年5月8日よりも以前に、その使用を前提とした準備を始めているのである。

したがって、本件商標が、あたかも、請求人商品の販売の結果、これを見て商標の剽窃を行なったかのような主張や、「不正の目的」が実在するといった根拠のない主張が失当であることも明らかである。

(オ)イベント等に関する請求人の認識は誤りであること

請求人は、「不正の目的」が実在することの証明として、前記のとおり事実1ないし事実5を主張するので、ここで、それが事実に反することについても簡潔に述べる。

a 請求人主張の「(ア)事実1」に対する反論

引用商標Aが、複数国でイベントに使用されたことは推認できるが、各国で1回イベントを開くことのみをもって、引用商標Aが、当該国又は世界中に周知にはならないことは上述のとおりである。また、それらを報じた記事についても、その配布先や数量等が一切不明であり、更に、それぞれのイベント、それぞれの記事においては、引用商標Aは、極めて小さく付記的に表示されてのみであって、引用商標Aが、当然に外国において周知・著名であるといった証明にはならないことも、上述のとおりである。

b 請求人主張の「(イ)事実2」に対する反論

被請求人は、既に、2009年3月には、使用を前提とする本件商標の商標調査を行っており、独自に商品企画を進めているのであるから、それよりも1年近く後の事実によって、「不正の目的」が実在することにはならない。また、これらのショウについて、被請求人が、当然に引用商標Aを知っていたかのような主張も併せて誤りである。

2010年1月24日に東京都立産業貿易センターで開催された「ドールショウ27」は、主にコアなドールファン向けに開催されたもので、複数の企業の他、個人サークルによるカスタムドールの展示、販売が行われる性質のイベントである。被請求人は、4階の「4あ−01」ブースに出展を行ったが、被請求人が出展したのは「リカちゃん」ではなく、被請求人が日本で販売する、大人向け商品の「ブライス」である。被請求人社内では、女児向けの人形を扱うリカちゃんグループと、大人向け商品を扱う「ブライスグループ」は明確に区別されており、当然のことながら、マーケティングや商品開発に関する考え方や戦略は全く異なる。そのため、人的交流も薄い。また、4階の「4あ−02」ブースでは、確かに「リカちゃん」が展示されているが、これは被請求人による出展ではない。出展をしたのは、リカちゃんキャッスル株式会社(現・リトルファクトリー株式会社)である(乙35)。リカちゃんキャッスル株式会社は、前身を株式会社タカラいわき工業といい、被請求人の前身会社である株式会社タカラの子会社であったが、2006年2月28日付けで、株式会社タカラが保有する株式会社タカラいわき工業の全株式を同社に譲渡して、被請求人とは全く資本関係のない会社となった。被請求人は、リカちゃんキャッスル株式会社に対し、「リカちゃん」及び「ジェニー」キャラクターを使用した商品を企画、製造、販売する業務を許諾しているに過ぎず、上記出展行為も含め、一切の事業はリカちゃんキャッスル株式会社が独自に行っている。なお同社が製造販売する「リカちゃん」人形は、被請求人が女児向けに製造販売する「リカちゃん」人形とは異なり、ドールファンの大人向けの仕様で、単価も概ね5,000円前後からの高価格帯商品となっている。

2010年1月24日に横浜人形の家で開催された「キャラクタードール展」において、「リカちゃん」人形の展示の事実はあるが、これも被請求人による出展ではない。出展をしたのは、株式会社タカラトミーエンタメディア、及び、玩具コレクターの北原照久氏である。

なお、甲第42号証は、本展示会を告知するための案内看板のレイアウトであり、細かい文字が不鮮明で判読が難しいが、これを拡大すると、展示品を提供した各企業等の名称がクレジットされており、請求人の日本法人であるマテルインターナショナル社や株式会社タカラトミーエンタメディアの名称はあるが、被請求人の名称はない(乙36)。

2009年9月5日から10月4日にかけて横浜人形の家で開催された「バービー50周年記念展 in Yokohama」については、被請求人の調査によるところ、この展示会は、マテルインターナショナル社及び玩具コレクターの北原照久氏、関口泰宏氏が所蔵する、歴代の「バービー」人形を展示したイベントであり、本展示会において「リカちゃん」人形の展示事実はない。少なくとも被請求人は「リカちゃん」人形その他の人形の展示等は行っていない。

c 請求人主張の「(ウ)事実3」に対する反論

請求人が述べるように(16ページ17行目)、元々「ジェニー」人形は、請求人から「バービー」についてのライセンスを受けた被請求人の前身企業である株式会社タカラが開発し、1982年に我が国において販売を開始した「タカラバービー」が元となっていることは認める。しかしながら、かかる事実のみから、本件商標について、被請求人が「不正の目的」を有するかのような請求人の主張は不当である。そもそも本件商標は、上述のとおり、請求人商品の米国における販売以前から企画されていたのであるし、請求人商品が「世界各国で一定の評価を得て販売された2009年末頃には、既に、「スター★ファッショニスタ」商品は市場に出ていたのである。一方、下記のとおり、請求人商品は、日本市場においては受け入れられておらず、被請求人の「リカちゃん」及び「ジェニー」の方が圧倒的に知名度も高いから、安易な模倣を行う必要性も合理性もない。

そもそもバービー商品(ただし、和製)は、1962年から、我が国において請求人自ら「バービー」を販売していたが、当初から我が国においては販売不振が続き、1960年代から70年代にかけて市場には全く受け入れられていない(乙37)。このため、請求人は株式会社タカラ(以下「タカラ」という)と提携する必要に迫られ、「タカラバービー」が誕生した。この提携について、モダンドール研究家の中村双葉氏は、「日本でのバービーの売れ行きに頭を痛めていたマテル社と、リカちゃんとは別のラインのファッションドール開発の可能性を探っていたタカラの思惑がうまく絡み合い、ライセンス契約が結ばれたものだろう」と評している(乙36)。

しかしながら、1986年には、請求人とタカラは契約を解消し、以降「バービー」と「ジェニー」は各々独自の道を歩むことになった。「バービー」は、タカラとの提携解消ほどなく、株式会社バンダイとの合弁会社マーバコーポレーションを設立し、「マーババービー」を発売するが、「売れ行きが好調とはいえず」、「小売店でこれら(マーババービー)の新製品を置いているところは極めて少なかった」という状況が続き、その結果同商品は、1989年に販売を終了し、併せて、マーバコーポレーションも解散した。その後、株式会社バンダイを我が国における販売代理者として一時「バービー」を販売し、2004年以降は請求人の日本法人であるマテルインターナショナル社(東京都台東区所在)が販売を継続しているが、以下に述べるように、我が国の人形市場においては、「バービー」は日本市場には受け入れられておらず、その結果、一貫して低いシェアに留まっている。この点は、乙第11号証に明らかであるし、請求人商品が一貫して、我が国では受け入れられてこなかったことは、甲第7号証、乙第37号証及び同第38号証に明らかである。

d 請求人主張の「(エ)事実4」に対する反論

請求人は、本件商標が「ジェニー」に使用され(リカちゃんにも使用されている)、「ファッション性」にこだわった・・・テーマのある人形6体のバリエーションで展開され」、これに対して、被請求人の「ジェニー」についても、4人の異なったファッションテイストのキャラクターにより展開されている」から、「請求人が引用商標を人形に使用するであろうことを認識」していたと主張するようであるが、事実に反する。

即ち、甲第76号証及び同第77号証は、いずれも2010年2月頃の情報と思われるが、上記のとおり、本件商標については、2009年から企画が開始されていたことは再々述べるとおりであり、ジェニーについても、2009年11月には、異なるファッションテイストの複数のキャラクターの展開を行っている。したがって、これらの企画が、その後の請求人商品についての「認識」に左右されることはない。

ウ 不正の目的

(ア)本件商標の使用企画時期は、請求人商品の米国販売時期よりも前であること

上述のとおり、被請求人が、本件商標の使用を企画したのは、請求人商品が米国で販売された時期よりも更に前である。この点は、再々述べたところであるから、ここでは繰り返さないが、この一事をもってしても、被請求人に「不正の目的」がないことは明らかである。

(イ)審決に鑑みても、被請求人の不正の目的は認定されるべきではないこと

引用商標は、外国においても周知とは言い難く、特に我が国においては、殆ど広告もなされなかったことから、請求人も、引用商標については、その存在を知らなかった。

(ウ)被請求人が、引用商標を認知したのは2010年5月であること

上記のとおり、引用商標は、我が国において殆ど広告もなされておらず、請求人も、引用商標の存在を知らなかった。このため、被請求人の「リカちゃんチーム」の関係者が、請求人商標の存在を認知したのは、2010年5月3日が初めてである。その後の経緯については、以下のとおりである。

a 被請求人のリカちゃんグループの担当者が、2010年5月3日の14時30分から16時30分にかけて玩具小売店「トイザラス 池袋店」を巡回していたところ、店内で本件商標が付された「バービー」人形が陳列されていたのを発見し、翌5月4日に、事実が担当者の上司に報告された(乙42)。

b 上記報告については、その後の対応について、リカちゃんグループと知的財産部門間で頻繁に連絡が行われている。現時点で残されている情報は少ないが、その一旦は、乙第43号証に示されている。乙第43号証は、2010年6月4日に、被請求人内のリカちゃんグループの担当者が、被請求人知的財産部門担当者に宛てて、「(マテルに対し)日本国内でのファッショニスタの使用中止を求める」ことの可能性について照会し、これを受け、知的財産部門担当者は(被請求人商標が公開前だったため)、「マテル(請求人)はファッショニスタを日本で商品展開しているにも関わらず、現在まで商標出願しておらず、タカラトミー(被請求人)が先に商標出願した可能性が高い」、「おもちゃの名前は似たり寄ったりになるケースも少なくないので、これは、よくあること」と述べつつも、「使用中止を求める姿勢で臨むべき」と回答している。

c この点は、被請求人内で対応を協議したが、最終的には、被請求人側が、本件商標の商品名としての使用を中止することを決定した。大きな理由は、乙第43号証のメール連絡で指摘されているとおり、本件商標の採択、企画、及び、商品発表等は、被請求人の方が先であるものの、被請求人の商品の発売は請求人商品の後になることから、たとえ被請求人が本件商標を有していたとしても、需要者からは、被請求人の商品が、あたかも請求人商品に便乗したかのような誤ったイメージを持たれることを懸念したからである。

d その結果、現時点では、本件商標は、2010年9月から販売を開始した「ジェニー」シリーズの販売促進のためのカタログやDVD内映像の一部、及び、既に販売開始済みの「リカちゃん」シリーズの人形用洋服の商品名(ただし使用態様は「スター★ファッショニスタ」)に使用されているに留まる。

以上の理由から、被請求人は、市場の混乱を避け、また、「あたかも請求人商品に便乗したかのようなイメージを持たれることを懸念」して、敢えて本件商標の使用を避けたのであって、これをもって『「不正の目的」が実在する』という請求人の主張は、極めて遺憾である。被請求人は、当業界のリーディングカンパニーとしての自覚から、従来より他社の商標権、著作権等との抵触を避けるよう努力を重ねており、乙第43号証に明らかなとおり、商標権を保有しながらも自らの使用を制限し、競業秩序にも配慮してきたのであるから、請求人の、事実とは全く異なる推量を以って、被請求人の「不正の目的」を言うことは厳に控えるべき行為と考える。

エ 小括

以上より、引用商標Aは、外国における周知性は認められないし、他方、本件商標の採択・出願の経緯に鑑みれば、被請求人に不正の目的がないことも明らかであるから、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当しない。

(3)「無効理由3(商標法第4条第1項第7号)について」に対する反論

ア 本件商標は商標法第4条第1項第7号(以下「7号」という。)に不該当であること

被請求人は、平成8年の商標法改正によって19号が新設されたことから、本件について、重ねて7号の主張をするのは妥当ではないと考える。しかしながら、仮に、7号が、請求人の主張のとおりの要件を基準とすべきものであったとしても、なお、本件商標が7号に該当するとは考えないので、以下に、反論する。

(ア)引用商標が、本件商標と同一又は類似であることは、被請求人も認める。

(イ)しかしながら、本件商標は、請求人商標を知って「強いて採択、出願した」ものではない。そもそも、引用商標は、「引用商標の周知性」及び、「引用商標Aの、諸外国における周知・著名性」で反論したとおり、本国においても周知とはいえず、ましてや、我が国における周知性は認められない。したがって、本件商標は、請求人商標を知って「強いて採択、出願した」ものではない。そもそも本件商標は、「本件商標の採択の経緯」』に明らかなように、造語商標ではあるが、2005年頃からファッション業界においては使用されていた語を、人形の商標として転用したものである。そして、被請求人は、本件商標について2009年3月には商標調査を外部の事務所に委託しているのであるから、請求人が主張する、2009年末頃の、請求人商品に関する情報を得た結果、採択したものではないことは明らかである。

(ウ)その後の出願の経緯も、「被請求人に不正の目的はない」』記載のとおりであり、むしろ、被請求人は、請求人の商標権侵害行為にもかかわらず、敢えて、市場の混乱を避けるために、被請求人の本件商標の使用の方を制限しているのであるから、「マテル社の評判・名声を借用して不正な利益を得るために使用する目的をもってなされた」という主張は事実に反して失当である。

(エ)なお、付言するに、被請求人は、請求人に比較して、市場シェア、キャラクターの認知度等について、圧倒的に需要者に支持されていることは客観的にも明らかであり、敢えて、請求人の評判や名声を借用する理由もないし、その意思もない。

イ 小括

以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第7号にも該当しない。

(4)結び

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号及び同第19号のいずれにも該当しないことが明らかであるから、本件審判の請求は成り立たない。

第5 当審の判断

1 商標法第4条第1項第10号の該当性について

(1)本件商標と引用商標との類否について

ア 本件商標と引用商標Bとは、共に「ファッショニスタ」の片仮名からなるから、これより「ファッショニスタ」の称呼を生ずるものであり、また、該文字が「ファッションに敏感な人」の意味を有する英語「fashionista」の表音と認められることからすれば、「ファッションに敏感な人」の観念が生ずるものと認められる。

そうとすると、本件商標と引用商標Bとは、外観、称呼及び観念を同じくする同一の商標と認められる。

また、引用商標Aは、「Fashionistas」の欧文字からなるところ、該文字が「ファッションに敏感な人」の意味を有する英語「fashionista(s)」の複数形(s)と認められるから、構成文字に相応して「ファッショニスタス」の称呼及び「ファッションに敏感な人(達)」の観念を生ずるものと認められる。

そこで、本件商標から生ずる「ファッショニスタ」の称呼と引用商標Aから生ずる「ファッショニスタス」の称呼を比較すると、両者は、末尾において「ス」の音の有無に差異を有するが、称呼識別上重要な語頭からの6音を同じくするものであるから、両者を一連に称呼するときは、語感、語調が相近似したものとなり、彼此聞き誤るおそれがある類似の商標と認められる。

また、観念については、本件商標から生ずる「ファッションに敏感な人」の観念と引用商標Aから生ずる「ファッションに敏感な人(達)」の観念とは、類似するものと認められる。

してみれば、本件商標と引用商標Aとは、外観において相違するとしても、称呼及び観念において類似するものであるから、これらを総合的に判断すれば両者は類似する商標と認められる。

イ 請求人は、請求人商品「人形」に引用商標を使用しているところ、該商品は、本件商標の指定商品中「おもちゃ,人形」の範ちゅうに属する同一又は類似の商品であると認められる。

(2)引用商標の周知性について

ア 外国における引用商標の周知性について

(ア)外国における引用商標の使用について

米国の登録簿(甲15)によれば、引用商標Aは、遅くとも2009年5月8日ころには米国において「人形、人形用衣服及び人形用装飾品」などに使用が開始されていたものと推察される。

そして、請求人の2009年春の商品カタログ(甲19)には、バービー(ドール)に関連して引用商標Aが表示されていること、請求人のバービー(ドール)に関連したカタログ抜粋(甲20)には、「Barbie」のロゴマークが表示され、多数の商品アイテム中に「BARBIE FASHIONISTAS Doll Assortment」の項に「BARBIE FASHIONISTAS Glam Doll/Cuite Doll/Girlty Doll/Wild Doll/Sassy Doll/Artsy Doll」の表示がなされていることが認められるが、こららは、いずれも「BARBIE」を主として作成されたものであり、引用商標Aのみでの使用は認められず、また、そのカタログの配布地域、配布数量、配布時期は不明である。

広告画面のプリント(甲21)には、「Barbie FASHIONISTA/Barbie.com」「Barbie Fashionistas/September 11,2009/2009 MATTEL,INC.」及び「FASHIONISTAS」の表示がされていること及びウェブサイト「Totally Jem!」(甲22)には、「Barbie Fashionistas」や「The Fashionistas Barbie dolls」の表示がなされていることが認められるが、引用商標Aのみで使用されているとは認められず、その広告の方法、目的、時期などは不明である。

2009年10月1日付けの「CNNMoney.com」(甲23)には、記事中「Hottest holiday toys」の見出しに「Barbie Fashionistas」の表示がなされていることは認められるが、引用商標Aが単独で商標として紹介されている記事は認められない。

2009年11/12月付け「GLOBAL NEWSLETTER/November/December 2009/volume 7」(甲24)には、各ページの上部に「Barbie」の文字が大きく表示され、バービー(ドール)の販売開始から50周年に当たる2009年に諸外国で、これを祝うイベントが2009年の9月から12月にかけて開催されたことが報じられている(甲24「抄訳」)。この記念イベントの内容は、統一されているわけではなく、記念パーティー、人形の展示会又はバスツアーなど様々であり、開催期間についても1日から複数月間まで様々である。また、全てのイベントにおいて引用商標Aを使用した人形が紹介されている旨が報じられているのではなく、「Barbie」ドールに関する記述にとどまるものも少なくない。この英語レターの発行部数、配布先などは不明である。

「THE BARBIE VOICE/2010 VOLUME 11」(甲25)には、諸外国におけるバービー(ドール)に関する記事中に「Fashionistas」の表示が認められるが、これが単独で商標として紹介されている記事は認められない。また、この記事の発行部数、配布先などは不明である。

「Barbie」ドールのイベント情報(甲26)によれば、その記事中に「Barbie Fashionistas」の記載及び外国のデパートのウインドーに「Barbie」ドールが展示されたことが認められるが、展示期間等は不明である。

(イ)外国における引用商標の周知性の認定について

諸外国における引用商標の使用については、前記認定によれば、引用商標Aが米国においては2009年5月8日ころから使用が開始されたことは認められる。しかしながら、本件商標の登録出願時までは1年にも満たない比較的短い期間であること、バービー(ドール)等において販売実績があるとしても、引用商標Aが付された請求人商品の販売実績、市場シェア及び宣伝広告費などに関する証拠は提出されておらず、その具体的な事実は明らかにされていないこと、米国内における広告その他の国における請求人商品の広告又はイベント記事には、引用商標Aが「Barbie」の語又はその他の語とともに表示されることが多く、これが単独で表示されることは極めて少ないこと、引用商標Bの使用は全く認められないこと、「バービー(ドール)50周年記念」イベントの参加人数は多くの場合明らかにされておらず、このイベントを報じた「GLOBAL NEWSLETTER」(甲24)の配布数量、配布先などは明らかでないこと等の事実が認められる。

したがって、これらの事実を総合すると、米国をはじめとする諸外国のいずれかの国において、本件商標の登録出願当時、引用商標が周知・著名性を獲得していたとは認められないし、また、本件に係る全証拠によっても、諸外国において、本件商標の登録出願当時、引用商標が周知・著名であったとは認められない。

イ 我が国における引用商標の周知性について

(ア)我が国における引用商標の使用について

a 我が国におけるバービー(ドール)生誕50周年記念イベント

甲第30号証ないし同第37号証によれば、バービー(ドール)の生誕50周年を記念し、2009年3月21日ないし同年4月5日ジェイアール名古屋タカシマヤ、同年8月10日ないし同月16日横浜赤レンガ倉庫1号館、同年3月9日東京の帝国ホテルで「Barbieピンクセレブレーション!50周年記念発表会'09」、同日同ホテルで「バービー50周年記念パーティ」及び同年9月5日ないし10月4日横浜人形の家で「バービー50周年記念展」などのイベントが開催されたことが認められるが、これらを紹介する甲各号証には引用商標を使用した請求人商品についての記述は全くされていない。

なお、2010年12月8日ないし同月27日に銀座の松屋銀座で開催された「Barbie & Ken 50th Anniversary バービー展」は、本件商標の登録出願後のイベントである。

b 我が国におけるドールショウ

2010年1月24日に東京都立産業貿易センターで人形専門展示販売会「ドールショウ27」(甲40及び41)及び2010年3月20日ないし5月9日に横浜人形の家で「キャラクタードール展」(甲42及び43)が開催されたことは認められる。

そして、請求人は、「ドールショウ27」及び「キャラクタードール展」でバービー(ドール)「ファッショニスタ(Fashionistas)」を展示していた旨主張するが、甲第41号証5枚目ないし8枚目は、作成者及び写真の撮影者が不明であり、特に写真については「ドールショウは会場写真が厳禁なので/まずは お店の雰囲気だけでも/春に発売のドールの画像を撮ってきました・・・」(同5枚目)と記載されており、「ファッショニスタ」がどのように展示されていたか、その使用状況が明らかでない。

そうとすれば、「ドールショウにて バービー画像付き3/4ページ」(同7枚目)掲載の写真に付された「ファショニスタ1」ないし「ファショニスタ6」の表示もどのように展示され、「ファッショニスタ」を使用されていたか疑問である。

また、甲第42号証には、キャラクタードール展において「バービー」が出展されている旨が掲載されているが引用商標の表示はされておらず、さらに本件商標の登録出願後の2010年4月30日に掲載されたものである。

してみれば、甲第40号証ないし同第42号証によっては、前記展示会においても請求人が引用商標の使用をしていたと認めることはできない。

甲第43号証には、「バービーは、・・・これから発売される最新バービーまで『歴代のバービー』を紹介。」と記載され、引用商標は表示されていない。

c 新聞又は雑誌広告

平成22年2月1日付け業界紙「Weekly Toy News 週刊玩具通信」(甲45)には、「Barbie/バービーファッショニスタ/アソートメント」の項に「遂に、ドールを超えた!? 個性こそ最大の武器。あなたはどのファッショニスタ? マテル・インターナショナルから、コンセプト・デザインされた、ピボタル・ドール、Fashonistas(ファッショニスタ)が新登場!」との広告がされている。なお、同紙は全国販売数が7000部程度である(乙13)。

平成22年3月23日発行の雑誌「ZIPPER(ジッパー)5月号」(甲46)には、「Barbie」の広告がなされていることは認められるが、引用商標については、小さく、不鮮明なため付記的に表示されているものと認められる。

平成22年4月7日発行の雑誌「ママジェリー(5月号増刊)」(甲47)には、「Brbie」の見出しのもと、6体(WILD、ARTSY、SASSY、GLAM、CUTE、GIRLY)の人形写真とともに、引用商標の広告がされていることが認められる。

d テレビ広告

請求人は、平成22年3月13日〜4月11日「カートゥーン・ネットワーク」にて、計164回に渡って広告を放映していた(甲48ないし50)旨主張するが、甲第49号証ないし同第50号証は、テレビ広告の放映を証明するものではなく、広告案を証明するにすぎないものであり、甲第50号証の広告案には「あなたはどのファッショニスタ」とのナレーションがあるが、引用商標の表示がなく、甲第48号証ないし同第50号証によっては引用商標のテレビ広告が放映されたとにわかに認められない。

e インターネット・携帯サイト広告

甲第44号証には、「バービー ファッショニスタ アーティー」及び「バービー ファッショニスタ ワイルド」に関する記事であり、「2010年2月21日発売中」との記載があるが、いずれも「バービー」との一連の商標として表示されている。

甲第51号証は、インターネット・携帯サイトで放映した広告ではなく、2010年1月27日現在の未だ企画概要であり、甲第52号証は、掲載データは2010年9月23日に更新されたものであり、さらに甲第53号証は文書の作成日が不明であるから、これらの甲各号証は、甲第51号証に記載された実施期間に実施されたことを証明するものとして足りるものではない。

甲第54号証ないし同第56号証には、賞品として「バービーファッショニスタ賞、ファッショニスタのお人形」などの表示がされているが、請求人が行った広告とは認められないものである。

f イベントによる広告活動

甲第57号証ないし同第60号証には、「バービーカフェ」の表題のもとに「バービー」又は「Barbie」の表示がされていても、引用商標は表示されていない。

g ブログ

甲第38号証、甲第39号証、甲第61号証ないし同第72号証によれば、引用商標はブログにおいて掲載されていることが認められるが、これらによっては引用商標の使用態様、使用時期、使用数量及び使用範囲などの客観的な状況把握が困難であり、引用商標がブログにおいて単に掲載されている事実によっては、周知性の認定に際して重要視することはできない。

(イ)我が国における引用商標の周知性の認定について

我が国における引用商標の使用については、前記認定によれば、請求人が請求人商品の販売を開始したのは、平成22年2月21日ころであり、請求人商品の販売開始から本件商標の登録出願時までは約2か月と極めて短い期間であったこと、我が国におけるバービー(ドール)生誕50周年記念イベント及びドールショウが東京、名古屋、横浜で開催されたが、証拠からは引用商標の使用事実が確認できないこと、業界紙又は雑誌の広告については、平成22年2月1日付け業界紙に1回、同年3月23日及び4月7日発売の雑誌に2回の合計3回掲載されたにすぎないこと、有料放送におけるテレビ広告がされたことがうかがえるが、放映の事実を立証していないこと、仮に、テレビ広告が放映されたとしても、2010年3月13日から同年4月11日までの短期間であること、インターネット・携帯サイト広告については、広告期間が確認できず、広告を放映したことを立証するものではないこと、イベントによる広告活動については引用商標が表示されていないこと及びブログの掲載では、ブログの数量も少なく請求人の引用商標の使用を正確に把握し得ないこと等の各事実が認められる。

以上の認定事実に加え、請求人商品の日本における販売実績、市場シェア及び宣伝広告費などに関する証拠は提出がないことも総合考慮すれば、引用商標は、本件商標の登録出願の時において、我が国において使用された結果「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者間に広く認識され」るようになったとは到底いえない。

そうすると、引用商標は、我が国において、本件商標の登録出願当時、請求人の業務に係る「人形」などを表示する商標として周知であったとはいえないものである。その他の本件全証拠によっても、我が国において、本件商標の登録出願当時、引用商標が周知・著名あったとは認められない。

(3)小括

以上のとおり、本件商標は、その登録出願当時、引用商標が周知性を有するものでなかったから、本号に該当するといえるための要件の一である「他人の業務に係る商品(中略)を表示するものとして需要者の間に広く認識されている」商標の要件を欠くことになり、商標法第4条第1項第10号の規定に該当しない。

2 商標法第4条第1項第19号の該当性について

(1)引用商標の著名性について

引用商標は、前記1(2)のとおり、本件商標の登録出願当時、我が国及び外国において周知・著名性を有しないものである。

(2)不正の目的について

被請求人は、ファッションドール「リカちゃん」「ジェニー」を、請求人は、「バービー」ドールを製造、販売している同業者であるが、ファッションドールとは「着せ替え衣装をもった人形たちの総称。年齢はハイティーンにキャラクター設定され、ドレスやアクセサリー小物にいたるまで『おしゃれ』をキーワードに構成されている。」(甲13)であり、「バービー」ドールは、「1984年までに約2億5000万個が売れ、人形の衣装も毎年2000万着が売れている。」(甲11)との記載からも、人形と着せ替え衣装とは密接な関係にあることが認められる。

そして、「ファッショニスタ」の語は、2005年頃から主としてファッション関連の業界内の造語(ファッションのトレンドに敏感な人、ファッションリーダー程度の語義を有する多義語)として散見されるようになり(乙23の1ないし11、13ないし21)、その後一般誌においても、「ファッショニスタ」の語が掲載されるようになっていたことが認められる(乙25の1ないし39)。

してみれば、ファッションドール業界では、このようなファッション関連のメディアや雑誌等の動向を注目し、参考にしているということができるから、被請求人の主張のとおり、被請求人が、ファッション情報を参考に、2009年秋発売予定の「リカちゃん」人形用の衣服に使用する商標の一として「ファッショニスタ」を選定し、同年3月27日に「ファッショニスタ」について商標使用の可否を調査し、その結果(乙22の1ないし3)を踏まえて、2009年3月31日ころ、本件商標の採用を決定したものとみることができる。

その後、2009年7月16日に東京ビッグサイトにおいて開催された「東京おもちゃショー」において被請求人が頒布したカタログには、同年10月発売予定として「人形用のドレス」に「スター・ファッショニスタ」商標が使用され(乙26及び27)、また、同年10月に発行したリカちゃんカタログのドレスシリーズのページには、「コーディネートセット」を同年11月に発売予定であるとして「スター★ファッショニスタ」商標が使用されていることが認められる(乙28ないし30)。

これを足掛りに、被請求人は、2009年10月から、翌年の4月に発売予定の「ジェニー」人形の新商品名の検討を開始し、2009年10月30日に「ファッショニスタ」について商標使用の可否を調査し、同年11月5日に使用可との調査の結果を得た(乙31の1ないし3)もので、本件商標を「ジェニー」の人形名にも採用することを決定し、その後販売に向けた準備を進め(乙32及び33)、2010年4月21日・22日、東京・都立産業貿易センター台東館において行われたタカラトミーグループの商談会において「ファッショニスタジェニー」を発表し(甲78)、カタログ(乙34)を配布し、新商品の発売予定時期に合わせて、同月27日に本件商標を出願したものと認められる。

してみれば、請求人商品の販売が米国で開始された2009年5月8日よりも前である同年3月27日には、既に「リカちゃん」人形用の着せ替え衣装に使用する商標として、「ファッショニスタ」について商標使用の可否の調査を依頼し、使用可との調査結果を踏まえて、同年11月には発売予定にしていたこと、及び「ジェニー」人形の新商品名についても、我が国で販売開始される2010年2月21日より前の2009年11月5日に、「ファッショニスタ」について商標使用の可否の調査を依頼し、使用可との調査結果を踏まえて、採択していることが認められるから、本件商標を不正の目的をもって使用するものとして商標登録を受けたとはいえないというのが相当である。

(3)小括

以上のとおり、本件商標は、引用商標と同一又は類似の商標であると認められるとしても、引用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願の時に日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていた商標とは認められないものである。

そして、前記(2)において認定したとおり、本件商標が外国で周知な他人の商標と同一又は類似の商標について、わが国で登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせたり、外国の権利者の国内参入を阻止したり、国内代理店契約を強制したりする等の目的で、先取り的に出願した場合など、本件商標が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正競争の目的や不正の目的をもって出願・登録されたものであることを認めるに足る証左はない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものとはいえない。

3 商標法第4条第1項第7号の該当性について

本件商標は、その構成において公序良俗に反するものではないことはもとより、前記2(2)のとおり、本件商標の採択の背景や被請求人が本件商標を出願するに至った経緯を併せみれば、被請求人による本件商標の出願が著しく社会的妥当性に欠けるものであるとはいえない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものということはできない。

4 結論

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同第10号及び同第19号に違反してされたものでないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものではない。

なお、請求人は、平成23年7月11日及び同年同月15日付けで、上申書を提出しているが、その内容を検討するも、前記判断に影響を与えるものとみることはできないから、審理再開の必要は認めないものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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