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Trademark Appeal Case

不使用取消と使用の有効性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成8年審判第8343号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第730970号商標(以下「本件商標」という。)は、「天味」の漢字を縦書きしてなり、旧第32類「加工穀物、その他の加工食料品、食肉、卵、食用水産物、野菜、果実」を指定商品として、昭和42年1月25日に登録され、その後、平成8年第7724号審判の審決確定により、指定商品中、「卵、食肉、肉製品、加工水産物(かつお節、削り節、とろろこんぶ、干しのり、焼きのり、干しわかめ、干しひじき、寒天を除く)、かつお節、削り節、とろろこんぶ、干しのり、焼きのり、干しわかめ、干しひじき、寒天、加工野菜および加工果実、乾燥卵、カレーライスのもと、スープのもと、ふりかけ、お茶づけのり、なめ物、とうふ、凍りどうふ、あぶらあげ、こんにゃく、なっとう、豆乳」に係る登録が取り消されたもので、現に有効に存続するものである。

2 請求の趣旨

請求人は、本件審判において、本件商標の指定商品中、「加工穀物、すし、べんとう、サンドイッチ、即席菓子のもと、こうじ、酵母、イーストパウダー、ベーキングパウダー、酒かす」に係る登録は取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める旨を申し立てている。

3 請求の理由

請求人は、以下のように、本件商標の取消理由等を述べている。

(1) 被請求人は、本件商標を、その指定商品中「加工穀物、すし、べんとう、サンドイッチ、即席菓子のもと、こうじ、酵母、イーストパウダー、べーキングパウダー、酒かす」については継続して3年以上日本国内において使用していない。

本件商標について専用使用権は存在せず(甲第1号証)、また、通常使用権者として本件商標を使用している者も存在しない。したがって、本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品中、前示の商品につき使用されていないものである。

よって、請求人は、商標法第50第1項の規定に基づき、請求の趣旨どおりの審決を求める。

(2) 請求人は、同人の商標登録出願(商願平6−86042)が係属している。そこで、登録商標を調査したところ、本件商標の登録があり、請求人の商標登録出願に係る商標が登録されないおそれがある。

したがって、請求人は、本件審判請求につき、法律上の利害関係を有するものである。

4 答弁に対する弁駁1

(1) 平成8年9月11日付け答弁書に対し、以下のとおり弁駁する。

乙第1号証は、会社登記簿謄本であり、これによれば、被請求人がかつて有限会社はつ花の代表取締役であったこと、そして、平成3年4月30日付けで取締役に退いたことは判るが、そのことをもって、有限会社はつ花が被請求人から通常使用権の許諾を受けているとの証明になるものではない。

被請求人が有限会社はつ花との間で通常使用権の設定契約を本件審判請求の予告登録(以下「本件予告登録」という。)の日の3年前より本件予告登録の日までの間を含んで、通常使用権の設定契約を結んでいたという客観的な資料(例えば、通常使用権の設定契約書等)の提出がない限り、有限会社はつ花は通常使用権者の地位を認められないとするのが相当である。

(2) 乙第2号証は、平成8年8月26日付けで撮影した写真であり、「乾燥そばめん」の4種類についても、商品の配置等及び最初の写真との兼ね合いから考えて、同日に撮影されたものと判断するのが自然である。

してみると、本件予告登録の日が平成8年7月16日であることから考えて、乙第2号証は、本件予告登録の日以後における指定商品についての本件商標の使用を示すにすぎないものである。

(3) 乙第3号証は、「乾燥そばめんの販売概略数及び売上金額」と題された書面で、記載内容を証明しているのは、有限会社はつ花であり、その事実はともかくとして答弁書によれば、被請求人から通常使用権の許諾を受けているとされる者である。

したがって、本件審判において、有限会社はつ花は、被請求人側との間で利害関係を有しているので、そのような者が前記の証明をしても、信憑性は疑わしいと言わざるを得ない。

(4) 乙第4号証の1及び2は、大小2種類の包装紙であり、それぞれの包装紙に「天味そば」の文字が付してあることは認められる。

しかしながら、この包装紙は、「はつ花」という商標が使用される「そばめん」を包装するためのもので、左上側にある「天味そば」は、「はつ花」の姉妹品として「天味そば」があることを紹介するものにすぎず、また、右側に記載されている「天味そば」は、干しそばとして「天味そば」か新発売されたことを紹介するものにすぎないので、この「天味そば」の文字は、商標的使用態様による使用とは認められない。

また、この包装紙は、下側の中央に「ゆでてご座いますので、お早くご風味の程を」と記載していることから考えると「乾燥そばめん」を包装するためのものではないと判断され、「天味」の文字が付してあっても、被請求人の主張する指定商品「乾燥そばめん」についての本件商標の使用には該当しないとするのが自然である。

更に、前示の包装紙は、調製日が空欄であることから、未だ実際に商品を包むのに用いられていないものと考えられ、このような包装紙に登録商標を付しても、商標の使用とは認めらない(特許庁編「工業所有権法逐条解説〔第13版〕」900頁)。

そして、調製日が空欄であり、その使用期日を特定することができない。

(5) 乙第6号証は、「天味乾燥そばめんの由来を記載したしおり」であり、確かに、そのしおりには、「天味そば」の文字が付してあることは認められる。

しかしながら、このしおりには日付の記載がない。

(6) 乙第7号証は、「そばつゆ缶包装用の厚紙化粧箱」であるので、本件審判で請求した指定商品とは無関係であり、しかも厚紙化粧箱に記載されている「天味」の文字は、商標的使用態様による使用ではない。

(7) 乙第8号証の1及び2は、「和紙風の包装用化粧袋」であり、この化粧袋の裏面を見たところ、「9.−3」との記載があり、この記載は「9月3日」を示したものと見受けられる。

しかしながら、平成何年の9月3日かは不明である。

(8) 乙第9号証の1乃至3は、「大小3種類の厚紙製包装用化粧箱の蓋」であり、各々に「天味そば」の文字が付されていることは認められる。

しかしながら、大小3種類の厚紙製包装用化粧箱の蓋は、「未だ実際に商品を包装するに用いられていないもの」に該当するので、商品の包装に登録商標を付する行為には当たらないとするのが相当である。

また、厚紙製包装用化粧箱の蓋には日付の記載がない。

(9) 乙第11号証、同第12号証、同第14号証及び同第15号証は、「株式会社昭文社発行のガイドブック「旅・王・国(15)箱根」等の抜粋の写しであり、それぞれの乙各号証から、「はつ花」がそばを主とする飲食物の提供を行っていることは認められるが、「天味」を付した「そばめん」を製造・販売していることについては記載がない。また、それぞれの雑誌に「せいろそば」、「手打ちそば」又は「とろろそば」の写真が示されているが、これらの「そば屋」等の店内で提供されるそばは、本件商標の指定商品ではなく、仮にその器等に「天味」の文字が付してあっても、それは本件商標の使用とは認められない。

(10) 乙第13号証は、「株式会社昭文社」発行のガイドブック「11 日本旅文庫 箱根・湯河原」の抜粋の写しであり、これには、「おみやげには、“天味そば6人用900円」といった記載があることは認める。

しかしながら、このガイドブックの発行日が1991年9月4日で、本件予告登録の日から5年も前のものであり、その後、「そばめん」の土産物の販売を中止することは少なからずあることである。

4−2 答弁に対する弁駁2

平成8年12月27日付け答弁書に対し、以下のとおり弁駁する。

(1) 商標法第50条第2項に規定する「被請求人が証明しない限り」と規定における「証明」の意義については、審判が民事訴訟法の規定を数多く準用している準司法的手続であることから鑑みて、民事訴訟法の「証明」と同意義であると解するのが相当であり、同法における「証明」の意義について、最高裁の判決(昭和50年10月24日)では、『裁判官が当該事項について確信を得た状態、またはそのための当事者の証拠提出の努力をいう。よって、証明の程度は、裁判官が合理的な疑いを挟まない高度な蓋然性が必要である。』とされている。

してみると、被請求人は、まず、乙第2号証については、その写真の撮影に際して被請求人が何らかの手を加えることが可能なことは事実であるからして、このような本件予告登録後に撮影した写真を見た場合に、合理的な疑いを挟ませることなく本件予告登録前の本件商標の使用の事実を認めさせることができるとは到底思われない。

したがって、本件商標の使用を証明することができるのは、あくまでも本件予告登録前に撮影した写真に限られるので、乙第2号証の写真は、仮にその本件商標の使用を疎明することができるとしても、本件商標の使用事実を間接的な場合でも証明したとはいえないとするのが相当である。

また、被請求人は、乙第3号証における答弁として、自己証明であっても、販売個数等をこれほど具体的に証明することができるのは販売者以外には不可能であることを理由として、証拠としての信憑性は十分に具備していると主張しているが、販売事実を証明できる者は、あくまでも被請求人とは利害関係のない第三者によるもの又は捏造、改変が不可能な、その当時の取引書類(例えば、請求書、物件受領書等)に限られ、乙第3号証のように被請求人と利害関係の結びつきの強い者の証明書は、到底前記の「証明」の意義を満たすものではないとするのが相当である。

更に、乙第4号証の1から同第14号証では、本件商標の使用事実を認め得るものとしても、本件商標の使用時期が不鮮明又は期間外である。

(2) 商標法第50条第2項の登録商標の証明に関して提出される「証明書」は、不使用取消審判制度が形骸化しないように、同法第3条第2項の「特別顕著性」に対する証明書と同様に、単に「〜であることを証明する。」だけの証明書を排除するという取り扱いがなされるべきと解するのが相当である。

してみると、乙第17号証の1ないし3において、『証明願は、添付した写真のとおり、自己の商品「乾燥そばめん」に商標「天味」を付して、昭和40年から現在まで継続して販売していることに相違ないことを証明願います。』との記載に対し、一言「上記のとおり相違ないことを証明する。」等と記載されているだけであり、また、添付した写真は、本件予告登録後に撮影された乙第2号証のものと同一のものであることは明らかであるので、決して客観的な根拠が明示されたものとは言うことができない。

このため、乙第17号証の1ないし3は、証明書として採用することができず、仮に採用することができたとしても、証明書の証明内容に対して信憑性が疑われるので、前記の「証明」の意義から考えて、合理的な疑いを挟まない程度に「本件予告登録前3年以内」における本件商標の使用事実を認めさせることができるとは到底思えない。

5 答弁の趣旨及び理由

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める旨答弁し、以下のようにその理由を述べ、乙第1号ないし同第18号証(枝番号のものを含む。)を提出した。

5−1 請求人の主張に対する答弁

(1) 被請求人から通常使用権の許諾を受けた有限会社はつ花(神奈川県足柄下郡箱根町湯本635番地所在)が、本件商標をその指定商品中の「乾燥そばめん」について、本件予告登録前3年以内に使用している事実がある。

(2) 乙第1号証ないし同第14号証で示した如く、本件商標「天味」は、被請求人から通常使用権の許諾を受けた有限会社はつ花において、本件予告登録前3年以内に、指定商品中の商品「乾燥そばめん」について使用しており、この使用は商標の具有する自他商品の識別標識としての機能が、本件商標とは本質的に変更されたものではなく、かつ、商取引の社会通念上からも、その同一性を損なうものではない。

よって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に該当しないことは明らかである。

5−2 弁駁に対する答弁

平成8年11月14日付け弁駁書に対し、以下のとおり答弁する。

(1) 有限会社はつ花は、被請求人である商標権者・小宮義一から通常使用権の許諾を受けている唯一の通常使用権者である。有限会社はつ花と被請求人・商標権者の小宮義一との間には、本件商標につき通常使用権の設定契約がなされている。

通常使用権は、専用使用権とは異なり当事者間の契約に基づいて発生する債権であるから、当事者間においては通常使用権の設定登録の有無を必要とせず、契約成立の時からその効力が発生するものであり、その設定契約は書面であることをも必要とするものではない(乙第16号証)。

してみれば、被請求人自身が設立して代表取締役であった有限会社はつ花の代表取締役の地位を、平成3年4月30日に次男の小宮憲二に譲ると同時に取締役に就任し(乙第1号証)、未だ会社の運営に携わっている現状からすれば、被請求人・商標権者の小宮義一はその後の有限会社はつ花に対し、本件商標の使用につき通常使用権の許諾をしていることは容易に推認することができる。

(2) 乙第2号証の写真は、通常使用権者である有限会社はつ花の店舗において、本件商標「天味」を付した商品「乾燥そばめん」を他の商品と共に陳列販売している状況と本件商標「天味」を付した商品「乾燥そばめん」を箱詰した4種類を写したものであるが、請求人が指摘するとおり、陳列販売している状況写真の3枚には「96 8 26」の撮影日が写されていることは事実である。

これらの写真は、通常使用権者・有限会社はつ花が現在も本件商標「天味」を付した商品の「乾燥そばめん」を陳列販売している事実と、その本件商標「天味」を付した商品の「乾燥そばめん」には箱詰めした4種類がある事実を証明することにより、本件予告登録の日以前から使用していることを間接的に証明するためのものである。

(3) 乙第3号証は、通常使用権者・有限会社はつ花が、本件予告登録の日以前から登録商標の「天味」を付した「乾燥そばめん」を販売していた事実を証明するもので、自己証明とはいえ外部に対して月別ごとの販売個数と売上金額までもを具体的に証明できることは、販売者本人以外には不可能なことからして、証拠としての信憑性は十分に具備している。

(4) 乙第4号証の1及び2の大小2種類の包装紙は、「はつ花」の商標で販売している「茹そばめん」用のものであり、乙第4号証の1は茹そばめん容量450g用の包装紙で、その右側下端部には平成6年2月に30,000枚を印刷したことの表示として、「6.2.30.000」の文字が小さく記載されており、この包装紙が本件予告登録の日以前から使用されていたことか明らかである。

請求人は甲第4号証を提出して、乙第4号証の1及び2は商標の使用ではないと主張しているが、乙第4号証の1及び2の包装紙は、確かにこれ自体は未使用の包装紙であるが、前記のとおりこれと同じ包装紙を長年使用している事実からして、明らかに使用に該当する包装紙であり、これは請求人が法解釈を誤ったことによる主張である。

(5) 乙第6号証のしおりは、箱詰した乾燥そばめんに添えるものであるが、広く一般に商品に添えるしおりには作成年月日を記載しないのが普通であり、請求人の「このしおりには日付の記載がなく、本件予告登録前3年以内」の使用を客観的に立証していないとの主張は妥当なものとは思えない。

(6) 乙第8号証の1及び2の和紙風の包装用紙袋は、金色が自然薯造り乾燥そばめん容量300グラム、緑色がコンフリー造り乾燥そばめん容量300グラムをそれぞれ包装するもので、その裏面の下部に記載されている「9.−3.」の数字は賞味期限の平成9年3月迄を表示しており、通常使用権者・有限会社はつ花は、商品が「乾燥そばめん」であることを考慮して、その賞味期限を製造から丸1年としていることによる表示である。

(7) 乙第9号証の1、2及び3の厚紙製包装用化粧箱の蓋は、2種類の「乾燥そばめん」と「そばつゆ缶」をもセットとして包装するものであることは明らかで、請求人は厚紙製包装用化粧箱の蓋に日付の記載がないと主張しているが、一般に商品を包装した厚紙製包装用化粧箱の蓋に日付を記載することはないと思われる。

(8) 乙第11号証ないし同第15号証は、観光案内書の出版社が「そば処はつ花」をこぞって掲載している箱根地区の観光案内書であり、通常使用権者・有限会社はつ花の経営する「そば処はつ花」が、箱根町の湯本において有名な老舗であること及び「天味印の乾燥そばめん」を販売していることの証明をするものである。

5−3 弁駁に対する答弁2

平成9年3月17日付け弁駁書(第2回)に対し、以下のとおり答弁する。

(1) 乙第2号証について

乙第2号証は、正に、被請求人が「証明」に関し最高裁の判決(昭和50年10月24日)に沿って、審判官の心証形成の一資料となることを意図したものである。

そもそも、商標権者が商標権の設定登録後において正当に登録商標を使用しているにも拘わらず、商標登録の取消審判が何時請求されるかも知れないことを予期し、万一審判請求があった場合でも、その審判請求の予告登録前の撮影であることに適合させるため、一定期間毎に登録商標に係る指定商品の使用状態を写真撮影しておくようなことはしていないし、そのようなことをすること自体が極めて異常な状態としか理解することができない。

したがって、請求人の登録商標の使用を証明することができるのは、あくまでも予告登録前に撮影した写真に限られる旨の主張は失当である。

(2) 乙第3号証について

平成7年5月から同8年4月までに至る1年間の本件商標「天味」を付した商品「乾燥そばめん」の売上概算表であり、これは本件予告登録の日前に本件商標「天味」を使用していた事実の立証を補強するためのもので、乙第2号証の店内販売状況の写真からも分かるように、多種類の商品があり、それらの売上及び来店して食した食事代の売上等の全てを日毎に記録したキャッシュレジスター(CASH REGISTER)におけるロール形状の売上記録紙から、相当の時間をかけて該当商品の売上個数と売上金額を抽出して作成したものであり、請求人の言うような単なる数合わせ的なものではない。

また、請求人の販売事実を証明できる者は、あくまでも被請求人とは利害関係のない第三者によるもの又は捏造、改変が不可能な、その当時の取引書類(例えば、請求書、物件受領書等)に限られる旨の主張は、被請求人において販売する商品の性質上、購入者や食事者等から請求書や物件受領書等を発行したり受け取ることはないので、そのような書面の提出は不可能であり、請求人の主張は失当である。

(3) 乙第17号証の1ないし3について

請求人は、乙第17号証の1ないし3につき、請求人が引用した発明協会発行「商標審査基準の解説」の記載が明らかに相違していると共にその解釈も間違っている。単に乙第17号証の1ないし3の証明書のみによる立証ではないことを当然に理解すべきである。

また、乙第17号証の1ないし3の証明願に関し、証明願から証明者の証明までの時間が短いことにつき、証明書の証明内容に信憑性が疑われる旨を主張しているが、証明願から証明までの時間が長いか短いかで証明内容に対する証明の真正さが左右されるものではない。

6 審尋書に対する回答

被請求人は、平成10年3月12日付け審尋書に対して次のように回答した。

(1) 乙第3号証に関する審尋について

被請求人は、通常使用権者・有限会社はつ花が、平成7年5月から同8年4月までの間に「乾燥そばめん」を販売したことの立証として、「乾燥そばめんの販売概略数及び売上金額」(乙第3号証)及びその販売事実を裏付ける客観的な証左として、当該期間内における数日分の「店売控票」(乙第3号証の1)を提出する。

この「店売控票」は、通常使用権者・有限会社はつ花が、売上の際に記録した日毎の売上記録で、品名欄に記入された品名は略記されている。「乾燥そばめん」は、店内での小売のみであるから、納品書、請求書等は発行していない。

(2) 乙第4号証の1に関する審尋について

被請求人は、本件商標の使用を立証するため、通常使用権者・有限会社はつ花が使用している本件商標を付した包装紙(乙第4号証の1)を提出しているところ、その包装紙における右下に表示した小文字による「6.2.30.000」の数字は、この包装紙の印刷年月(平成6年2月)と印刷枚数(30.000枚)である。

このことを裏付ける客観的な証左として、印刷した「協和印刷株式会社」発行の「請求書写」(乙第4号証の1の1)及びその代金支払いを扱った「さがみ信用金庫湯本店」保管の「総合振込受取書写」(乙第4号証の1の2)を提出する。

(3) 乙第8号証の1及び乙第8号証の2に関する審尋について

自然著造り乾燥そばめん包装用袋(300g人り)と自然薯及びコンフリー造り乾燥そばめん包装用袋(300g人り)の、各和紙風の包装用化粧袋における裏面の下部に表示した「9.−1.」、「9.−3.」の各数字は賞味期限の年月を表示したものであり、このことは上部の枠内4段目に「賞味期限 枠外下部に表示」と記載してあることからも明らかである。

この賞味期限の表示は、商品が「乾燥そばめん」であることから、通常使用権者・有限会社はつ花は、その製造年月から1年後の年月を表示することに決めている。したがって、賞味期限「9.−1.」と表示されたものは、平成8年1月に製造したものであり、また、賞味期限「9.−3.」と表示されたものは、平成8年3月に製造したものである。

7 当審の判断

(1) 本件審判請求に対して、被請求人が本件商標「天味」は、被請求人から通常使用権の許諾を受けた有限会社はつ花において、本件予告登録前3年以内に、取消請求に係る指定商品中の商品「乾燥そばめん」について使用している旨主張するのに対して、請求人は、被請求人が有限会社はつ花との間で通常使用権の設定契約を本件予告登録の日の3年前より本件予告登録の日までの間を含んで、通常使用権の設定契約を結んでいたという客観的な資料(例えば、通常使用権の設定契約書等)の提出がない限り、有限会社はつ花は通常使用権者の地位を認められない旨主張する。

しかしながら、被請求人の主張及び乙第1号証によれば、被請求人・小宮義一は、有限会社はつ花の創立者であること、本件商標の設定登録の日、昭和42年1月25日には有限会社はつ花が存在したにもかかわらず、小宮義一の名義で本件商標の登録を受けたこと、小宮義一は平成3年4月30日までは有限会社はつ花の唯一の代表取締役であって、その後も取締役としての地位にあること、そして、被請求人・小宮義一の住所と有限会社はつ花の住所とが現在も同じであることに照らせば、有限会社はつ花は、少なくとも小宮義一が代表取締役を辞任するまでは被請求人が経営する個人企業とみられるものであって、このような者の間にあっては、企業と個人が表裏一体のものとして営業活動に当たっているのが常であり、そこでは、登録の名義人としては代表者個人の名義にしたものの、明確な許諾契約なしに同人が経営する有限会社はつ花が本件商標を使用してきたものと推認されるものである。そして、商標法上、このような場合でも、両者の間で黙示の通常使用権の許諾があったものと解されていることは、被請求人の主張するとおりであるから、有限会社はつ花は、本件商標について、設定登録後以来、代表者の地位を次男に譲った後も通常使用権者の地位を継続しているというべきである。

したがって、この点に関する請求人の主張は理由がない。

(2) 請求人は、被請求人が立証した指定商品「乾燥そば」についての本件商標の使用を本件予告登録前3年以内のものでない旨主張する。

被請求人提出の乙各号証によれば以下の事実が認められる。

(ア) 乙第13号証によれば、平成3年9月4日発行のガイドブックに、通常使用権者が「天味そば」をお土産用に販売している旨が掲載されていること。

(イ) 乙第4号証の1及び2、同第6号証、同8号証の1及び2並びに同第9号証の1、2及び3は、乾燥そば用の包装紙、しおり、包装箱又は包装用化粧袋、同第7号証はそばつゆ用の包装箱であるところ、これらには「天味そば」の標章が付されていること。

(ウ) 乙第4号証の包装紙にある「6.2.30.000」の数字が、当該包装紙が「平成6年2月に30,000枚印刷したもの」であることを示すものであること(乙第4号証の1の1及び2)。

(エ) 乙第8号証の1及び2に付された「9.−1.」、「9.−3.」の数字が乾燥そば製造後1年の賞味期限「平成9年1月」、「平成9年3月」を示すものであること。

(オ) 乙第18号証の1ないし24によれば、「平成6年1月19日から同7年12月13日」までの間「天味そば(干そば)」について新聞広告がされていること。

以上の各事実に、店内の販売状況を写した写真(乙第2号証)、乾燥そばめん販売概略数及び売上げ金額(乙第3号証及び同号証の1)並びに箱根町長等の証明書(乙第17号証の1、2及び3)を考慮すれば、通常使用権者・有限会社はつ花が、本件予告登録前3年以内に、本件取消請求に係る指定商品「乾燥そば」について、本件商標を使用していたとみるべきであり、一部の証拠が予告登録前3年以内のものでないこと、包装紙等が未使用のものであること又は使用者本人等の証明であることをもって前示の事実を覆すことはできないといわなければならない。

8 結論

以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すことはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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