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Trademark Appeal Case

周知温泉地名と商標の混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2011−900217(T2011−900217/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5399963号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5399963号商標(以下「本件商標」という。)は、「湯川温泉 漁火館」の文字を書してなり、平成22年9月2日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与,布団の貸与,タオルの貸与」及び第44類「入浴施設の提供,美容,理容,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり」を指定役務として、平成23年2月9日に登録査定、同年3月18日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由(要点)

(1)商標法第4条第1項第10号該当性

「湯川温泉」は、少なくとも北海道函館市及びその周辺においては「ゆのかわおんせん」と称呼され、「湯の川温泉」とも表記されるものである(甲1、甲4、甲7ないし甲9)。「湯川温泉」及び「湯の川温泉」は、1653年に松前藩が開いた温泉が発祥であり、現在でも、函館に宿泊する年間300万人のうち、180万人ほどは「湯川温泉」及び「湯の川温泉」に宿泊し、「湯川温泉」及び「湯の川温泉」は、函館観光の拠点となっている(甲2)。

そして、フリー百科事典ウィキペディアの「湯の川温泉(北海道)」の記事に「湯の川温泉・・・北海道函館市湯川町にある温泉。」とあるとおり(甲10)、「湯川温泉」及び「湯の川温泉」は、北海道函館市湯川(ゆのかわ)を住所とする地区に所在する温泉旅館・ホテル22軒を中心として成り立っている(甲10、甲2)。

したがって、「湯川温泉」及び「湯の川温泉」は、北海道函館市湯川(ゆのかわ)を住所とする地区に所在し、主として函館湯の川温泉旅館協同組合に所属する温泉旅館群の役務を表示する商標として、少なくとも北海道函館市及びその周辺において需要者間に広く知られた商標である。

本件商標は、「湯川温泉」商標を含む商標であって、これに「漁火館」を付加したものにすぎず、本件商標のうちの「湯川温泉」の部分は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから、商標の類似判断に当たっては、「湯川温泉」の部分を抽出して判断を行うことが妥当と考えられる。

そして、本件商標のうちの「湯川温泉」の部分を抽出し、周知の「湯川温泉」商標と対比した場合、両者は外観、観念、称呼をいずれも同じくするものである。よって、本件商標は、周知の「湯川温泉」の商標に全体として類似する。

また、本件商標は、宿泊施設の提供、入浴施設の提供等、当該周知の「湯川温泉」商標と同一・類似の指定役務に使用するものである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第15号該当性

ア 函館湯の川温泉との混同

上記のとおり、「湯川温泉」商標は、北海道函館市湯川(ゆのかわ)を住所とする地区に所在し、主として函館湯の川温泉旅館協同組合に所属する温泉旅館群の役務を表示するものである。

本件商標は、北海道函館市湯川(ゆのかわ)を住所とする地区に所在し主として函館湯の川旅館協同組合を所属とする温泉旅館群の役務を表示するものとして周知の「湯川温泉」商標を含むものであり、これに「漁火館」を付加したものにすぎない。

また、商標権者は、北海道函館市内において温泉旅館を経営する者である。したがって、商標権者は、本件商標を、函館市内において宿泊施設の提供、入浴施設の提供等、「湯川温泉」商標と同一の指定役務に使用することが予想される(甲3)。しかし、商標権者の経営する温泉旅館の所在地は、北海道函館市根崎町であり、北海道函館市湯川を住所とする地区には所在していない。また、商標権者が提供している温泉は、湯川温泉(湯の川温泉)とは異なる温泉である(甲3ないし甲6)。

旅行専門誌の記事においても、商標権者は「湯の川温泉」のカテゴリーではなく、これとは区別された「函館」のカテゴリーにおいて紹介されている(甲7)。

以上述べたように、商標権者は、北海道函館市湯川地区に所在せず、かつ、湯川温泉(湯の川温泉)とは成分の異なる温泉を提供する温泉旅館であり、旅行専門誌の記事においても商標権者の提供する温泉は「湯の川温泉」のカテゴリー外と扱われている。それにもかかわらず、商標権者は、「湯川温泉」を含む本件商標を、湯川温泉(湯の川温泉)と同じ函館市内において宿泊施設の提供、入浴施設の提供等、「湯川温泉」商標と同一の指定役務に使用することが予想される。

この場合、北海道函館市及びその周辺において本件商標に接した者は、本件商標の下に提供される役務が湯川温泉(湯の川温泉)のそれと同じであると誤認混同するおそれがある。

よって、本件商標は、「湯川温泉」商標により表示される役務と混同を生じるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当する。

イ 各地の「湯川温泉」との混同

「湯川温泉」の名称は、北海道函館市のほか、和歌山県東牟婁郡那智勝浦町、岩手県和賀郡西和賀町、及び石川県七尾市にも存在する。

よって、本件商標は、「湯川温泉」に「漁火館」が付加されているとしても、どこの「漁火館」であるかを識別することができないものであり、これら各地域のこれら他の「湯川温泉」に所在する他の旅館との混同を生ずる可能性がある。

よって、本件商標は、「湯川温泉」商標により表示される役務と混同を生じるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第16号該当性

上記のとおり、商標権者による役務の質は、北海道函館市湯川を住所とする湯川温泉(湯の川温泉)旅館群とは異なるものであり、また商標権者により提供される温泉も湯川(湯の川)温泉のそれとは異なるものである。

しかるに、本件商標は、これに接した者をして、商標権者による役務の質が北海道函館市湯川を住所とする湯川(湯の川)温泉旅館群と同一であり、商標権者により提供される温泉が湯川(湯の川)温泉のそれと同一であると誤認させるものである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。

3 当審の判断

(1)本件商標は、上記1のとおり「湯川温泉 漁火館」の文字を書してなるものである。

そして、宿泊施設名などを表示する場合に温泉名を付加して表す場合も多いから、本件商標からは、「湯川温泉にある漁火館」というような意味合いを看取させるものである。

(2)ところで、「湯川」は、「湯」と「川」を組み合わせてなるものであり、各地に「湯川」と称する河川があることからすると、ありふれた成語といえるものであり、また、例えば、申立人が挙げる和歌山県東牟婁郡那智勝浦町、岩手県和賀郡西和賀町、石川県七尾市(甲9)のほか、長野県茅野市の湯川地区及び長野県佐久市岩村田の湯川沿いに「湯川温泉」と称している温泉が存在している。

そうすると、湯川温泉の語からは、直ちに特定の温泉を理解、認識させるとはいうことができない。

また、申立人の提出する証拠によれば、北海道函館市湯川について、当該「湯川」の地名が「ユノカワ」と呼ばれていること(甲1)が認められ、同地区には、古くからの温泉があり、その温泉を「湯の川温泉」と称していること(甲2、甲6、甲10)、申立人「函館湯の川旅館協同組合」は、同地区に所在する22の加盟旅館の協同組合であること(甲2)、当該湯の川温泉には、年間180万人程度の宿泊があること(同)、湯の川温泉を「湯川温泉」(以下、北海道函館市湯川にある温泉(申立人及びその加盟旅館の温泉)としての「湯川温泉」を「引用商標」という場合がある。)と称する場合があること(甲8、甲9)が認められる。

しかしながら、提出された証拠によれば、北海道函館市湯川にある温泉は、「湯の川温泉」の名称で使用され、同所所在の「湯の川温泉」の名称は、相当程度知られているといえるにしても引用商標(湯川温泉)が当該地域にある温泉名を表すものとして広く認識されているとまでは認めることはできない。

(3)商標法第4条第1項第10号該当性について

前記(2)のとおり、「湯川温泉」は、我が国において、複数存在しているものであり、「湯の川温泉」が「湯川温泉」と称される場合があることは認められるものの、「湯川温泉」が「湯の川温泉」を表すものであるとまではいえず、「湯川温泉」が特定の温泉を表すものとして、需要者に広く認識されているものとはいうことができない。

また、本件商標の構成は、「湯川温泉」と「漁火館」の文字からなるところ、「湯川温泉」の文字は、各地にありふれて使用されているものであり、「漁火館」の文字は自他役務の識別力を有するものであることからすると、本件商標において、「湯川温泉」の部分は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということができない。

してみれば、本件商標は、その構成全体をもって一体不可分の商標というべきであり、構成中に「湯川温泉」の部分を有してなることにより、引用商標と類似するものということはできない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。

(4)商標法第4条第1項第15号該当性について

前述のとおり、「湯の川温泉」が「湯川温泉」と称される場合があることは認められるものの、「湯川温泉」が「湯の川温泉」を表すものであるとまではいえず、また、「湯川温泉」は、我が国において、複数存在し、「湯川温泉」が特定の温泉を表すものとして、需要者に認識されるものではなく、かつ、本件商標においては、構成中の「湯川温泉」の部分は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということができないものである。

加えて、仮に「湯の川温泉」が申立人及びその加盟旅館の業務に係る役務を表すものとして知られていると認めることができたとしても、「湯の川温泉」と「湯川温泉」は、「の」の文字の有無により、外観、称呼及び観念上区別し得るものである。

してみれば、本件商標は、これに接する取引者、需要者をして、本件商標の構成中の「湯川温泉」の文字部分からは特定の者の業務に係る役務であることを認識することができないものであるから、申立人及びその加盟旅館並びにその他各地域の「湯川温泉」に所在する旅館の業務に係る役務又はそれらと経済的若しくは組織的に何らかの関係ある者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれはないとみるのが相当である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(5)商標法第4条第1項第16号該当性について

前記のとおり、本件商標の構成中、「湯川温泉」は、特定の温泉を認識させるものではなく、また、指定役務の質等を表すものではないから、本件商標は、その指定役務に使用しても「役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」ということはできない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。

(6)むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第16号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものとする。

よって、結論のとおり決定する。

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