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Trademark Appeal Case

周知商標と類似性の判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2011−900337(T2011−900337/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第5418518号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第5418518号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりからなり,平成22年12月8に登録出願,第39類「貨物自動車による輸送」を指定役務として,同23年4月28に登録査定,同年6月17日に設定登録されたものである。

2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は,以下のとおりであり,現に有効に存続しているものである。

(1)登録第3084917号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲2のとおりからなり,平成4年9月25日に登録出願,第39類「貨物自動車による引越荷物の輸送,その他の貨物自動車による輸送,貨物の輸送の媒介,引越荷物のこん包,寄託を受けた物品の倉庫における保管,主催旅行の実施,駐車場の管理,自動車の貸与」を指定役務として,平成7年10月31日に設定登録,その後,商標権の存続期間の更新登録がなされているものである。

(2)登録第3315767号商標(以下「引用商標2」という。)は,「KIRIN」の欧文字を書してなり,平成4年9月29日に登録出願,第39類「車両による輸送,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,倉庫の提供,駐車場の提供,コンテナの貸与,パレットの貸与,自動車の貸与」を指定役務として,平成9年5月30日に設定登録,その後,商標権の存続期間の更新登録がなされているものである。

(3)登録第3315768号商標(以下「引用商標3」という。)は,「キリン」の片仮名を書してなり,平成4年9月29日に登録出願,第39類「車両による輸送,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,倉庫の提供,駐車場の提供,コンテナの貸与,パレットの貸与,自動車の貸与」を指定役務として,平成9年5月30日に設定登録,その後,商標権の存続期間の更新登録がなされているものである。

(4)登録第3315769号商標(以下「引用商標4」という。)は,「麒麟」の漢字を書してなり,平成4年9月29日に登録出願,第39類「車両による輸送,貨物のこん包,貨物の輸送の媒介,主催旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ,寄託を受けた物品の倉庫における保管,他人の携帯品の一時預かり,倉庫の提供,駐車場の提供,コンテナの貸与,パレットの貸与,自動車の貸与」を指定役務として,平成9年5月30日に設定登録,その後,商標権の存続期間の更新登録がなされているものである。

以下,これらをまとめていうときは「引用各商標」という。

3 登録異議の申立ての理由(要旨)

申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当するから,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第40号証を提出した。

(1)引用各商標の周知・著名性について

ア 申立人の前身のビール会社であるジャパン・ブルワリーが初めて「キリンビール」と名付けたビールを世に送り出したのは,明治21年でありその高い技術力から,「キリンビール」は,その当時から良質のビールとして高い人気を呼び,販売数を伸ばしていた(甲第8号証)。

そして,申立人は,明治40年2月創業以来,「キリンビール」の販売を中心に,酒類事業,さらには,飲食・食品事業,医薬事業など,多岐に亘る事業を展開しており(甲第9号証),引用各商標若しくは「キリン(麒麟)」と称呼及び観念し得る商標は,今現在も,申立人の代表的出所標識として,盛大かつ継続的に使用されている(甲第8号証)。

イ 引用各商標は,申立人による継続した盛大な商品の販売活動や宣伝広告活動などにより,あらゆる取引者層及び需要者層に申立人の業務に係る商品「ビール」などを表示するものとして定着している。

さらに,近年,申立人は,幅広い範囲の業務を展開しており(甲第9号証),多角経営及び海外展開をする企業であることは社会一般に知られており,引用各商標は,物流事業を含む広範囲の業種の分野においても広く一般的に知られ,親しまれるに至っている。

ウ 引用各商標が申立人の業務に係る商品「ビール」などを表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であることは,「日本国周知・著名商標検索」の検索結果からも明らかである(甲第10号証)。

エ したがって,「キリン(麒麟)」の称呼及び観念を生じ得る引用各商標は,我が国において,少なくとも,申立人の業務に係る商品「ビール」などを表示するものとして需要者の間に広く認識されている周知・著名商標であることは明らかであり,また,本件商標の出願時(平成22年12月8日)にその周知・著名性は獲得されているものである。

(2)商標法第4条第1項第11号について

ア 指定役務について

本件商標の指定役務,第39類「貨物自動車による輸送」は,引用商標1の指定役務中,第39類「貨物自動車による引越荷物の輸送,その他の貨物自動車による輸送」と,引用商標2ないし4の指定役務中,第39類「車両による輸送」と,同一又は類似する役務である。

イ 商標の類似性について

(ア)本件商標は,蹄図形の下部に「麒麟運輸株式会社」の文字を並記してなるところ,その構成文字中,「運輸株式会社」の文字部分は,業種名,業態名を表すものとして普通に使用されていることから(甲第17号証),自他役務の識別標識としての機能を果たす部分(要部)は,申立人あるいは申立人の業務に係る商品又は役務を表示する商標を容易に連想,想起できる「麒麟」の文字部分にある。

そうすると,本件商標は,「麒麟」の文字部分から「キリン」の称呼を生じ,また,古代中国の想像上の動物である「麒麟」の観念を生ずるとともに,引用各商標の周知・著名性から申立人の代表的出所標識であることを容易に連想,想起できるものである。

(イ)引用商標1及び2は「KIRIN」の文字を,引用商標3は「キリン」の文字を,また,引用商標4は「麒麟」の文字を書してなるところ,該構成文字に相応して,「キリン」の称呼を生ずるとともに,申立人が永年に亘って「麒麟」の図形や「麒麟」の文字とともに,「KIRIN」の文字あるいは「キリン」の文字を使用してきたという取引の実情を考慮すると,「古代中国の想像上の動物である麒麟」の観念を生ずるとともに,申立人の代表的出所標識であることを容易に連想,想起できるものである。

(ウ)以上のとおり,本件商標は,引用各商標と類似する商標であって,引用各商標の指定役務と同一又は類似する役務に使用するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第15号について

ア 本件商標と引用各商標との類似性の程度

本件商標は,その構成中の「麒麟」の文字部分だけによって簡略化され,称呼,観念され得るものであり,本件商標と引用各商標とは,共に「キリン(麒麟)」の称呼,観念を共通にする類似の商標であり,かつ,その類似性の程度は,高いものである。

イ 引用各商標の周知・著名性及び独創性の程度

引用各商標は,全国的に,申立人の業務に係る商品「ビール」などを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであって,周知・著名性の程度が高い表示である(甲第10号証ないし甲第12号証,甲第14号証)。

また,「麒麟」の語は,「古代中国の想像上の動物である麒麟」を表す語であり,「KIRIN」及び「キリン」の語からも,同様の意味合いを想起し得るところ,申立人が,本来,存在し得ない想像上の動物を,商品や役務の識別標識,すなわち商標として採択する行為は,まさに独創的であるというべきものであり,それ故,引用各商標は,独創性の程度が高い表示である。

ウ 本件商標の指定役務と申立人の業務に係る商品又は役務との間の関連性,取引者及び需要者の共通性その他取引の実情

(ア)申立人は,300社に近い数のグループ会社を傘下に置く多角経営企業であり,酒類事業,飲料・食品事業,医薬事業のみならず,「ビール」などの商品の配送に重要な役割を果たす物流事業を行っている(甲第9号証)。

全国的規模で「ビール」などの商品を製造し,販売するにあたっては,各地域へ商品を配送する必要があるところ,申立人の場合,子会社である「キリン物流株式会社」が,全国規模で,申立人の業務に係る商品「ビール」などの物流業務を行っている(甲第30号証及び甲第31号証)。

同社は,申立人の関連企業として,支店の外壁,看板,配送車,ビールケースなどに「キリン(麒麟)」の称呼及び観念を生じ得る文字商標あるいは図形商標を使用しているため(甲第30号証及び甲第31号証),「キリン物流株式会社」により提供される物流関連役務が,申立人の関連企業によるものであることは,全国の取引者,需要者においても容易に把握し得るものである。

「キリン物流株式会社」による商品の配送は,まさに申立人の業務に係る商品「ビール」などを効率的に配送するための物流業務に係る役務にほかならず,本件商標の指定役務と申立人の業務に係る商品「ビール」等との間の関連性が強いものであることを示すものである。

(イ)申立人を含む大手メーカー各社は,商品の製造から配送まで効率的に行うべく,その基幹となる商品の製造や販売と密接な関連性を有する配送業務を担う物流会社を設立するとともに,代表的出所標識を,当該物流会社の商号名に含ませることが顕著になっている。

このような各社の工夫により,取引者及び需要者は,商品の製造から配送までの業務が,同一の表示による商品化事業を営むグループの業務であるという印象を受けるものである。

(ウ)混同を生ずるおそれ

上記のとおり,本件商標と引用各商標との類似性の程度は高く,引用各商標の周知・著名性及び独創性の程度も高く,申立人の業務に係る商品「ビール」などと物流に係る役務の関連性の程度は極めて強いものである。

そうすると,引用各商標に類似する本件商標をその指定役務に使用した場合には,これに接した取引者,需要者に対し,引用各商標を連想させるものである。

また,申立人の子会社であり,高い売上高及び高い評価を維持している「キリン物流株式会社」が,全国規模で,「キリン(麒麟)」の称呼及び観念を生じ得る文字商標あるいは図形商標を使用し,申立人の業務に係る商品「ビール」などの物流業務を行っており,物流会社の主たる業務が輸送,保管,荷役,包装,流通加工であるという取引の実情を考慮すると,本件商標の構成中,「麒麟運輸株式会社」の語に接する取引者,需要者は,申立人のグループ企業である「キリン物流株式会社」と何らかの関係のある運輸会社であると誤信するおそれがある。

本件商標の指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,上記事情を踏まえて,総合的に判断すると,本件商標の構成中に申立人の周知・著名商標である「麒麟」の文字を包含する以上,本件商標から,申立人の業務に係る商品「ビール」などを表示する周知・著名商標を連想,想起し,本件商標をその指定役務に使用した場合には,申立人との間で系列会社などの密接な営業上,経営上の関係がある営業主の業務に係る役務であると誤信されるおそれがあり,引用各商標の持つ顧客吸引力へのただ乗りやその希釈化を招くという結果を生じ兼ねないものである。

(4)結び

以上のとおりであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してなされたものであるから,その登録は,商標法第43条の2第1号によって,取り消されるべきである。

4 当審の判断

(1)引用各商標の周知性について

申立人の主張及び提出に係る証拠によれば,「キリンビール」のブランドは,1888(明治21)年に誕生し,「麒麟」「KIRIN」及び「キリン」の各文字は,麒麟の図形と共に又は単独で商品「ビール」等に永年にわたって使用され,本件商標の登録出願時及び査定時において,申立人の業務に係る商品「ビール」等の出所を表示する商標として,取引者,需要者の間に広く認識されているものと認められる(甲第8号証ないし甲第10号証)。

(2)商標法第4条第1項第11号該当性について

ア 本件商標について

本件商標は,別掲1のとおり,蹄と思しき図形と,その下段に「麒麟運輸株式会社」の文字を書してなるところ,「麒麟運輸株式会社」の文字部分は,同書,同大,等間隔でまとまりよく表されてなるものである。

そして,本件商標の構成文字中「株式会社」の文字部分は,「資本金が株式という均等な形式に分割され,出資者すなわち株主が組織する有限責任会社。」( 広辞苑第六版)を意味する語であって,法人の組織形態を表すにすぎず,該文字部分が省略されて取引に資されることは一般に行われているところである。

また,その構成中の「運輸」の文字部分は,本件指定役務との関係において業種名を表すとしても,会社名にあっては,特段の事情がない限り,業種名を含めて一体のものとして認識されるというのが相当であって,「麒麟」と「運輸」とに,ことさら分離して観察しなければならない特段の理由は見受けられない。

そうとすれば,本件商標からは,その構成文字全体に相応して,「キリンウンユカブシキカイシャ」の称呼を生ずるほか,「麒麟運輸」の文字部分より,単に,「キリンウンユ」の称呼をも生ずるものと認められ,該文字部分からは,特定の観念は生じないものである。

イ 引用各商標について

引用各商標は,「KIRIN」,「キリン」及び「麒麟」の各文字からなるものであり,これらよりは,「キリン」の称呼を生じ,動物の「きりん」の観念のほか,「申立人の業務に係るビール等の出所を表示する商標」程の観念を生ずるものと認められる。

ウ 本件商標と引用各商標との類否について

そこで検討するに,本件商標と引用各商標とは,それぞれ上記のとおりであるから,外観においては,十分に区別し得るものであり,また,観念については,本件商標が造語であって観念は生じないものであるから,両者を比較することができない。

そして,本件商標から生ずる「キリンウンユカブシキカイシャ」又は「キリンウンユ」と,引用各商標から生ずる「キリン」の称呼とは,「ウンユカブシキカイシャ」又は「ウンユ」の音の有無という明確な差異を有するものであるから,それぞれを一連に称呼しても,その語調,語感が異なり,判然と区別され得るものであるから,互いに相紛れるおそれはないというべきである。

その他,本件商標と引用各商標とを類似するものとすべき理由は,見当たらない。

エ まとめ

以上のとおり,本件商標は,称呼,外観及び観念のいずれの点からみても,引用各商標と非類似の商標と判断するのが相当である。

したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではない。

(3)商標法第4条第1項第15号該当性について

申立人の主張及び提出に係る証拠によれば,前記(1)のとおり,引用各商標は,本件商標の登録出願時及び査定時において,申立人の商品「ビール」を表示する商標として取引者,需要者の間に広く知られていると認め得るものである。

しかしながら,本件商標と引用各商標とは,前記(2)に記載のとおり,外観,称呼及び観念のいずれからみても十分区別し得る別異の商標であるから,商標権者が本件商標をその指定役務に使用しても,申立人の引用各商標を想起,連想させるものではないというのが相当であり,申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る役務であるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。

したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではない。

(4)申立人の主張について

申立人は,『申立人の子会社であり,高い売上高及び高い評価を維持している「キリン物流株式会社」が,全国規模で,「キリン(麒麟)」の称呼及び観念を生じ得る文字商標あるいは図形商標を使用し,申立人の業務に係る商品「ビール」などの物流業務を行っており,本件商標の構成中,「麒麟運輸株式会社」の語に接する取引者,需要者は,申立人のグループ企業である「キリン物流株式会社」と何らかの関係のある運輸会社であると誤信するおそれがある。』旨主張する。

しかしながら,提出に係る証拠を勘案するに,「キリン物流株式会社」は,申立人主張のとおり,申立人の業務に係る商品「ビール」を主とする物流業務を行うグループ企業であって,ビール飲料の分野あるいはこれに密接に関連する商品分野の物流業界においては広く知られているとしても,その業務範囲を超えた「貨物自動車による輸送」全般にわたってまで周知ということができない。

そして,本件商標と「キリン物流株式会社」とは,外観において十分に区別し得るものであり,観念については,本件商標の「麒麟運輸」の文字部分及び「キリン物流」の文字部分からはいずれも特定の観念は生じさせないものであるから,両者を比較することができない。

また,本件商標の文字部分から生ずる「キリンウンユカブシキカイシャ」又は「キリンウンユ」と,「キリン物流株式会社」から生ずる「キリンブツリュウカブシキカイシャ」又は「キリンブツリュウ」の称呼とは,「ウンユ」と「ブツリュウ」の音の明確な差異を有するものであるから,判然と区別され得るものであり,互いに相紛れるおそれはないというべきである。

したがって,本件商標の構成中,「麒麟運輸株式会社」の語に接する取引者,需要者は,申立人のグループ企業である「キリン物流株式会社」と何らかの関係のある運輸会社であると誤信するおそれがある旨の申立人の主張は,採用することができない。

(5)まとめ

以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきものとする。

よって,結論のとおり決定する。

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