Trademark Appeal Case
造語商標の称呼外観類似
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2011−900359(T2011−900359/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第5423567号商標(以下「本件商標」という。)は、「モビキャス」の片仮名を標準文字で表してなり、平成22年11月26日に登録出願、第10類「屈曲式カテーテル誘導用シース,カーブ固定式カテーテル誘導用シース,その他のカテーテル誘導用シース,経中隔用穿刺針,その他の医療用機械器具」を指定商品として、同23年5月13日に登録査定、同年7月8日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、以下のアないしウのとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。そして、これらをまとめていうときは、以下「引用商標1」という。
ア 登録第3123468号商標(以下「引用商標」という。)は、「ナビキャス」の片仮名と「NAVICATH」の欧文字を二段に書してなり、平成5年3月30日に登録出願、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、同8年2月29日に設定登録され、その後、同17年10月18日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
イ 登録第4570816号商標(以下「引用商標2」という。)は、「ナビキャス」の片仮名を標準文字で表してなり、平成13年3月30日に登録出願、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、同14年5月24日に設定登録されたものである。
ウ 登録第4570817号商標(以下「引用商標3」という。)は、「NAVICATH」の欧文字を標準文字で表してなり、平成13年3月30日に登録出願、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、同14年5月24日に設定登録されたものである。
3 申立ての理由
(1)商標の類否について
称呼において、本件商標は、片仮名で「モビキャス」と書してなる商標であるところ、この態様より「モビキャス」の自然的な称呼が生ずる。
一方、引用商標は、各々の態様から「ナビキャス」の自然的な称呼が生ずる。
ここで称呼を比較すると、語頭における「モ」と「ナ」の一音相違の関係となるところ、相違する母音は「o」と「a」であり、これらは互いに近接した母音であること、相違する子音の「m」と「n」は互いに有声の通鼻音で音の性質が共通していることを併せ考慮すると、互いに聴感が近似した音に該当する。その場合、語頭における相違ながらも、それに続く「ビキャス」の音を共通にすることから、一連に称呼すると全体の語調語感が近似して聴覚されることになり、取引者、需要者層においては両者を聞き誤るおそれが高いといえる。
外観において、本件商標は、片仮名で「モビキャス」と書してなるのに対して、引用商標2は、片仮名で「ナビキャス」と書してなり、外観を比較すると「モ」と「ナ」の文字の一文字しか相違しない。これらの相違が外観観察に与える影響はさほど大きいとはいえず、互いに商標を構成する文字が5文字であるところ、そのうち4文字までが共通し極めて相紛らわしいことから、外観上も両商標は類似する。
観念において、本件商標の「モビキャス」については既成語として一般の国語辞書に記載が見受けられず、取引者、需要者層においては特定の観念を生じさせない一種の造語商標と認識される。
一方、引用商標を構成する片仮名「ナビキャス」及び欧文字「NAVICATH」に関しても、既成語として一般の国語、英語辞書に存在せず、取引者、需要者層においては特定の観念を生じさせない一種の造語商標と認識されるため、観念の比較はできない。この観念の比較ができないことにより、商標の類否観察において称呼及び外観の類似性が助長されるものである。
以上のとおり、称呼、外観、観念の各要素を考慮すると、観念については互いに造語商標であるため比較できないものの、互いに類似の称呼が生じ、さらに外観の点では引用商標2とは外観上も類似しているため、各要素を総合的に考慮すると、本件商標は引用商標と類似する。そして、本件商標と引用商標の指定商品は、同一又は類似のものである。
(2)出所の混同のおそれについて
引用商標の使用状況について、申立人は2002年度より、商品「冠動脈狭窄部貫通用カテーテル」について、片仮名表記「ナビキャス」若しくは欧文字表記「Navicath」の文字からなる商標を広く使用し今日に至っている。上記商標を付した商品のパンフレット(甲8)は、我が国の医療機関およそ900施設で配布されており、さらにその配布枚数は6000部にものぼる。
さらに販売数量に関しては、2002年度の販売開始より、近年では2008年度で3462本、2009年度では2811本、2010年度では2392本となっており、単一ブランドのカテーテルとしては高い販売数量を誇っている。
(3)取引の実情について
申立人の調べ得る限りにおいては、現在、我が国の医療機関において語尾を「ビキャス」と称呼するカテーテルは申立人に係る商品以外は使用されておらず、本件商標を付した商品が市場に出回った場合、上述の両商標の類似性を考慮すると、商品の出所につき混同が生ずるおそれが極めて高くなるといえる。
そもそも、カテーテルなどの医療用機械器具に関しては人の生命や健康に直接関わる商品であり、医療現場においてその商品の採択ミスを防止すべく相互に相紛らわしい商標を付することは避けるべきであるとする社会的要請は他の商品に比べて高いといえる。本件のカテーテルに関しても、製品毎に性能や構造が異なっており、煩雑を極める医療現場において紛らわしい名称が付された商品が存在した場合、誤った商品が選択される可能性が高く、医療事故につながる恐れが高くなることは十分予測できるものである。
上記事情を考慮しても、医療用機械器具など人間の生命に直接影響のある商品については、類否判断はより慎重になされるべきである。
(4)むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の2第1号により取り消されるべきである。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「モビキャス」の片仮名よりなるところ、該語は、特定の意味合いを有しない造語であるから、その構成文字に相応して「モビキャス」の称呼を生じ、観念は生じないものである。
引用商標は、上記2のとおり、いずれも、「ナビキャス」の片仮名又は「NAVICATH」の欧文字若しくはその両文字よりなるところ、これらの語は、特定の意味合いを有しない造語であるから、その構成文字に相応して「ナビキャス」の称呼を生じ、観念は生じないものである。
そこで、本件商標と引用商標との類否について検討するに、外観においては、本件商標の「モビキャス」の文字と引用商標1及び2の「ナビキャス」の文字は、共に比較的少ない5文字からなり、看者の注目する語頭の「モ」と「ナ」の相違により、視覚上十分に区別できるものである。また、本件商標と引用商標3とは、外観上明らかに相違するものである。
次に、称呼においては、本件商標の称呼「モビキャス」と引用商標の称呼「ナビキャス」とを比較すると、両者は、共に5音という比較的短い音構成において、称呼上重要な要素を占める語頭において、明確に聴別できる「モ」と「ナ」の音の差異を有するものであるから、両者をそれぞれ一連に称呼しても、音質、音感が明らかに異なり、称呼上相紛れるおそれはない。
さらに、観念においては、両者は、共に特定の意味合いを認識させない造語であるから、観念上比較することができない。
そうとすれば、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標といわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)申立人の主張について
申立人は、引用商標の使用状況について、2002年度より、商品「冠動脈狭窄部貫通用カテーテル」について、「ナビキャス」若しくは「Navicath」の文字からなる商標を広く使用し今日に至っていると述べているが、提出された証拠からは、その商品の販売シェア、販売額、宣伝広告費など不明であって、その周知性を認めることができないものである。
そうすると、当該商標が著名であるといえないうえ、上記(1)と同様に本件商標と当該使用商標は別異の商標であるから、出所の混同のおそれがあるということもできない。
また、申立人は、「取引の実情について、そもそも、カテーテルなどの医療用機械器具に関しては人の生命や健康に直接関わる商品であり、本件のカテーテルに関しても、製品毎に性能や構造が異なっており、煩雑を極める医療現場において紛らわしい名称が付された商品が存在した場合、誤った商品が選択される可能性が高く、医療事故につながる恐れが高くなることは十分予測できるものである。」旨主張する。
しかしながら、前記(1)で認定したとおり、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、その主張は、前記認定を左右するものではない。
したがって、申立人のいずれの主張も採用することはできない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録は維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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