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Trademark Appeal Case

称呼の異なる部分使用

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成9年審判第13683号
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第1550555号商標(以下「本件商標」という。)は、昭和54年11月26日に登録出願され、「SOTHEBY’S」の文字と「サザビー」の文字を横書きしてなり、第26類「印刷物、書画、彫刻、これらの附属品」を指定商品として、昭和57年11月26日に設定登録され、平成5年8月30日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

2 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁をを次のように述べた。

本件商標は、その指定商品について継続して3年以上、日本国内において商標権者、専用使用権者、通常使用権者又は質権者のいずれも使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。

(答弁に対する弁駁)

(1)被請求人は、本件商標を商品「印刷物」について本件審判の請求日前3年以内に使用していたと主張し、乙第1号証の「オークション用のカタログ」及び乙第2号証として納品書写しを提出している。

しかしながら、乙第2号証として提出された納品書自体一般の文房具店にて販売されている納品書であり、その写しを見るも納品者の欄は空白で、納品者の住所や名称、等の表示が全くない。通常、納品書は相手に納品の事実を示すために商品と共に同封されるものであって、そのため納品書には納品者の住所や名称、電話番号等の表示が印刷され、或いはゴム印等で表示され、或いは担当者名の記載がされているのが普通である。

しかも、乙号証では納品されたカタログ代金が支払われたか否かも不明であって、これを以って、乙第1号証のカタログが有償で販売されたとは認められない。

(2)乙第1号証のカタログには本件商標を構成する英文字部分の「SOTHEBY’S」の表示しかない。本件商標は英文字の「SOTHEBY’S」とカタカナ文字の「サザビー」が2段に併記された構成である。

被請求人が主張するように、乙第1号証のカタログが仮に有償で販売されたとしても、被請求人が指定商品の「印刷物」について登録商標を使用していたことにはならない。

蓋し、本件商標は上述の構成であり、英文字の「SOTHEBY’S」からは「ソザビーズ」、「ソザバイズ」の称呼も生じうる。又、被請求人の営む競売業務のサービスマークとして競売関係者に於いては「サザビーズ」と称呼されることもある。

被請求人は本件商標から生ずる自然的称呼は「サザビー」又は「サザビーズ」であって、その他の称呼が生ずることは考えられないとする。そして、本件商標のカタカナ文字部分「サザビー」は英文字の「SOTHEBY’S」の部分から生ずる自然的称呼を併記したものに過ぎないとする。

その根拠として、1969年(昭和44年)に紹介された「SOTHEBY’S」は「サザビー」とのみ称呼され、周知著名標章として認識されたと主張するが、これを証する証拠の提出もなく、到底認め得ない。

(3)被請求人は1985年(昭和60年)頃から統一的に「SOTHEBY’S」を使用しており、本件審判の請求日前3年前では被請求人の競売会社は「サザビーズ」の称呼で知られていたものと言わざるを得ない。

因みに、平成2年審判第7997号審決では、「少なくとも昭和63年頃には、一部を除き、該競売会社『SOTHEBY’S』社が使用する商標『SOTHEBY’S』は『サザビーズ』と称呼され、また、これを片仮名文字で表す場合には『サザビーズ』と表示されていたものと認めるのが相当であるから、これが『サザビー』の称呼又は表示のもとに取引者、需要者間に広く知られているものとは判断することは出来ない。」と明確に判断している。

(4)更に、上記の審決以外でも、例えば、朝日新聞社発行「知恵蔵」(1994年版)(甲第6号証)では、「Sotheby’s」の英文字と共に「サザビーズ」の片仮名文字で表示して紹介している。また、同業の競売会社「Christie’s」、「クリスティーズ」を紹介する中でも「サザビーズより古いが」との表現で「サザビーズ」の表示を使用している。

以上から、本件商標を構成する英文字の「SOTHEBY’S」は少なくとも昭和63年頃より、片仮名文字で表示する場合には「サザビーズ」と表示され、称呼されていたものと見るのが相当である。

(5)なお、被請求人は答弁書にて「本件商標のように文字の2段併記からなる商標であって、いずれか一方の文字のみが使用されている場合、称呼及び観念において同一であるときは、自他商品の識別標識として同一の機能を果すため登録商標の使用と認められていることは、特許庁における審査や審判手続のプラクティスである。」と述べるが、正にその通りであって、異なるのは本件商標にあっては、称呼が「サザビー」と「サザビーズ」では相違することであり、複数の称呼を生ずるものである以上、識別標識として同一の機能を果すものとは認め得ないのである。

また、「SASSABY」商標に関する異議決定の理由については、単に 「SOTHEBY’S」の所有格「’S」を省いた語幹の「SOTHEBY」の称呼を「サザビー」と認定したに過ぎず、本件商標の英文字部分「SOTHEBY’S」の称呼を「サザビー」と認定したものではない。

よって、請求の趣旨通りの審決を求める。

3 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。と答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。

(1)被請求人は下記に示すように本件商標をその指定商品中「印刷物」等に使用していることが明らかであるから、請求人の主張は失当である。

被請求人は、英国最古の骨董品、美術品等の競売(オークション)業者として我が国はもとより、世界的にも著名な会社であることは顕著な事実であるが、本件商標の使用の事実を立証するに当りオークションとはどのような手順で行なわれるのかを説明する。

オークションに参加する方法としては、大きく分けて、日本で参加(開催される現地には行くことなく我が国で参加)する方法と、海外で参加(開催される現地に赴き、直接オークションに参加)する方法の2とおりがある。

オークションへの参加希望者は、どのようなアイテムがどの程度の価格でオークションにかけられるのかの情報をカタログによって入手する。通常、最新のカタログには2〜3週間後に開催されるオークションが収録されており、このカタログは有償の年間購読を原則としているが、日本国法人のカウンターでも閲覧することはできる。また、オークション開催に先立ってオークション開催都市及び開催国のみならず、他の都市及び国において開かれるプレビュー(下見会)で実物を手にして見ることもできる。

(2)本件商標の使用状況について

乙第1号証として提出する印刷物(カタログ)は、本件審判請求日前の約1年前である1996年10月17日と18日の2日間にイギリスにおいて開催された「ザ、ディーナ、ヴィエルニー人形コレクションオークション」のために発行されたものである。このカタログは年間購買者に、若しくは前記のオークションアイテムに興味ある者に有償で販売されるものである。このカタログが有償で販売されていることを立証するために当該カタログの納品書の写を乙第2号証として提出する。この納品書の写には当該カタログの表題、若しくはセールナンバー(LN6370−当該カタログの第3頁に表記されている)が記載されており、これらの納品書の写は当該カタログのものであることが判明する。

一方、当該カタログの表紙、第3頁及び裏表紙等には、本件商標の英文字部分の「SOTHEBY’S」が表記されており、これにより本件商標の使用事実が明らかである。

(3)ところで、請求人は本件商標について被請求人が行った存続期間更新登録を無効とすべき審判も別件として請求しており、その請求理由として次のように述べている。

本件商標の主要な構成部分であるカタカナ文字の「サザビー」を取去って使用しているが、この使用は本件商標の構成態様を著しく変更(請求人によるこの主張は、本件商標の英文字の「SOTHEBY’S」から生ずる自然的称呼は「サザビーズ」であって「サザビー」ではないから、英文字のみの使用は本件商標の使用とは言えないとするものと推測する。)するものであり、社会通念上本件商標の使用とは認められない。

(4)この事実を鑑みると、請求人は本件審判においても同様な反論をすることが予想されるため、あえて被請求人はこの点についても言及する。

本件商標のように、文字の2段併記からなる商標であって、いずれか一方の文字のみが使用されている場合,称呼及び観念において同一であるときは、自他商品の識別標識として同一の機能を果たすため登録商標の使用と認められていることは、特許庁における審査や審判手続のプラクティスでもある。何故ならば、そもそも商標の果す役割とは出所の標識であるから、いずれか一方のみの使用の場合でも、出所を指標する機能において登録商標と同一性が認められるかぎり登録商標の使用としてその同一性が認められるのである。つまり、登録商標と完全に一致する態様の使用でなくとも、一般の取引者や需要者がその出所について誤認を生じない程度の変更使用は、社会通念上同一商標の使用とみなされている。

例えば、本件商標の態様が英文字の「SOTHEBY’S」とその自然的称呼である「サザビー」又は「サザビーズ」以外のカタカナ文字との結合であるならば、英文字のみの使用では、その構成態様を著しく変更するものとしてその同一性が否定される可能性は高いであろう。何故ならば、「SOTHEBY’S」から生じる自然的称呼は「サザビー」又は「サザビーズ」であってその他の称呼が生ずることは考えられないためである。

しかしながら、本件商標におけるカタカナ文字の部分は「サザビー」と表記されており、この表記は英文字の「SOTHEBY’S」の部分から生じる自然的称呼を併記したものにすぎない。

被請求人らによって、1780年以来継続的に使用され、我が国では1969年(昭和44年)に紹介された標章「SOTHEBY」は、「サザビー」とのみ称されて周知・著名な標章として認識されていることは顕著な事実である。その後、被請求人らは周知・著名となった標章の態様を「SOTHEBY’S」に変更し我が国では1985年(昭和60年)頃からほぼ統一的に使用するようになったが、この態様の変更は既に周知・著名となっていた「サザビー」という称呼にわずか「’S」を付加したものにすぎない。この「SOTHEBY’S」の「’S」とは所有格であり、この所有格を表す当該部分は発音上省略されて単に「サザビー」と称呼されているのも取引社会における現状でもある。

このように、本件商標中のカタカナ文字の「サザビー」は英文字の「SOTHEBY’S」の部分から生じる称呼を表記したものであるので、たとえ英文字部分のみの使用であったとしても、自他商品の識別標識として本件商標と同一の機能を十分に果たしており(英文字の「SOTHEBY’S」のみの使用によって他人の業務に係る商品とその出所について誤認が生じていることはない。)、社会通念上も十分に被請求人の出所標識としての機能を果している。

(5)以上のように、被請求人は、本件審判の請求日前3年以内に商品「印刷物」について本件商標を使用していることが明らかである。

したがって、答弁の趣旨どおりの審決を求めるものである。

4 当審の判断

被請求人の提出に係る乙第1号証、乙第2号証の2、乙第2号証の3をみるに、乙第1号証は、1996年10月17日及び18日にロンドンで開催された「ザ、ディーナ、ヴィエルニー人形コレクションオークション」のために発行されたカタログ(写し)と認められるものである。

そして、このカタログの第3頁の表題の下部にセールナンバーとして「LN6370」と記載されており、当該カタログの表紙、第3頁及び裏表紙に本件商標と社会通念上同一と認められる「SOTHEBY’S」の文字よりなる商標が表記されていることが認められる。

また、乙第2号証の2は、顧客から株式会社サザビーズ・ジャパン宛のオークション・カタログ ファックス申込書(写し)と認められるものであり、これには各顧客の筆跡で住所・氏名と共にセール日「10/17.18」、セールNO.「LN6370」、タイトル「ImptDolls」、単価「¥4,500」等と記入されていることが認められる。

さらに、乙第2号証の3は、各顧客宛の納品書(控写し)と認められるところ、この書類にも各顧客の氏名又は名称と共に納品日、品名として「カタログ」及びセールNO.「LN6370」等が記入されていることが認められる。

しかして、乙第2号証の2及び乙第2号証の3の申込日又は納品日はいずれも1996年8月から10月の日付であることが認められる。

そうとすると、乙第1号証のカタログと乙第2号証の2(ファックス申込書)及び乙第2号証の3(納品書)に記載された商品(カタログ)は同一の商品であり、このカタログが有償で販売されたということが認められる。

してみれば、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者によりその指定商品中の「印刷物(カタログ)」について使用されていたものと認めることができる。

したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべき限りでない。

よって、結論のとおり審決する。

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