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Trademark Appeal Case

商標不使用取消の証拠評価

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2010−301222(T2010−301222/J2)
審判種別取消
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第3311124号商標の商標登録は取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第3311124号商標(以下「本件商標」という。)は、「ECRU」の欧文字を横書きしてなり、平成6年10月6日に登録出願、第25類「被服」を指定商品として、同9年5月23日に設定登録され、その後、同19年4月10日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

そして、本件審判の請求の登録は、平成22年12月3日にされたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。

1 請求の理由

請求人の調査によると、本件商標は、本件審判の請求前3年以内に日本国内において商標権者によって使用された事実は見当たらない。

また、専用使用権者及び通常使用権者の登録もないため、使用権者による使用も考えられず、この点からも、本件商標は不使用の商標である。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

2 答弁に対する弁駁の理由

(1)総論

被請求人は、使用権者が本件商標を指定商品に使用していることを証するべく、商品の現物を展示した様子を撮影した写真、当該商品を販売した事実を証するべく、領収証及び入金伝票等を提出し、表面上はあたかも本件商標を指定商品に使用しているかの如き外観を呈している。

しかし、被請求人が提出した証拠には全く信ぴょう性がなく、本件商標が日本国内において販売されていたことを認めることはできない。

(2)本件商標に係る使用許諾について

通常使用権許諾契約書(乙1)は、2006(平成18)12月20日に締結されているところ、2002年(平成14)年から2009(平成21)年までの間は、被請求人は、東急建設との間で、ヴィラベルビュー701号室の修理を巡って係争中にあり、営業ができない状況にあったはずである。

このような状況にありながら、他方で、被請求人、株式会社ベルヴィ(以下「ベルヴィ社」という。)のいずれかが、本件商標の使用を企画すること自体が到底考えられず、当該契約書の信ぴょう性すらも疑わしいものである。

また、通常使用権許諾契約書は、緊密な利害関係を有する者同士であるからこそ作成可能な書面であることは明白であり、契約内容自体も疑問である。

(3)本件商標に係る商取引について

ア 乙第2号証について

乙第2号証には、被服が販売されている店舗の写真すらなく、証拠として提出されているのは単に商品を床に置いた様子を撮影したもののみであるから、当該写真がどこで撮影されたのか全く不明であって、同号証の写真をもって、本件商標が日本国内で現実に使用されていたことを認めることはできない。

なお、被請求人は、乙第2号証の写真は、商品紹介の便宜のために撮影されたものであり、商品カタログ、パンフレットとして使用されていたともいい得るものである旨主張するが、カタログ、パンフレット等は顧客の購買意欲を喚起するためのものであり、通常は当該被服をモデルに着させるなどの工夫をし、広く顧客に配布したりするものであるが、被服そのものを床の上に置いて撮影した写真をカタログ、パンフレットの代わりに用いることなど到底考えられるものではない。

また、被請求人は、これらの商品は、有限会社クランツによって製作されたと主張するが、商品仕様書、商品発注書、発注数量等を示す証拠も一切示されていないものであるから、実際に商品の製作が行われていたとは到底いえない。

更に、乙第2号証の写真に表示された被服には、被服のサイズ、定価を示す表示も見当たらず、洗濯表示を記したタグも付されていない。被服を小売しているのであれば、サイズ、定価といった表示は顧客にとって必須の情報である。このような表示の無いものが現実に販売されていたとは到底考えられない。

また、乙第2号証の写真中の商品タグには「原材料」及び被請求人が言うところの「品番」が表示されてはいるが、当該表示はこれらの情報を記載したシールをタグに貼付して行われているものである。タグに直接印字せずに一々シールを貼付して表示すること自体煩瑣に絶えないものであって、このような表示方法は通常の取引実務から逸脱している。

同様に、「エクリュ」の片仮名を記載したシールも商品タグに貼付されている。「ECRU」の欧文字商標についてはタグに直接印字しているにもかかわらず、タグ自体の色彩(白)とは異なる色彩(ベージュ)を基調とするシールをあえて用いてタグの統一感及びデザイン性を損ねてまで、何故、商標「エクリュ」を貼付しなければならないのか理解に苦しむところであり、不自然である。

加えて、乙第2号証の1については、被服自体は襟部分を広げて床の上に平らに置かれている状況であるにもかかわらず、縫合タグはアーチ型に不自然に膨らんでいる。タグがこのように波打って縫合されることは、新品ではあり得ない。

更に、乙第2号証の写真からは、写真に写っている商品を展示している主体に関する表示が全くない。したがって、誰が当該商品を展示したのかについては不明であり、使用権者が展示していることを認めることはできない。

イ 乙第3号証について

被請求人は、乙第3号証を提出して、被請求人は取引書類に本件商標を表示して頒布することにより、商品「被服」との関係において使用している旨主張している。

しかし、乙第3号証の領収証については、「株式会社ベルヴィ」の表示はあるものの、その住所表示あるいは連絡先の表示はされていないものであって、この「株式会社ベルヴィ」が使用権者と同一人であると断定することはできない。

また、当該領収証においては、その但書の欄には、「お品物代として」程度の記載がなされるのが通常であるのに、わざわざ取引のあった個々の商品について、「長袖T」、「半袖T」といった「商品カテゴリー」の他、被請求人がいうところの「品番」、「受領金額」、更には「エクリュ3品として」といった非常に冗長な記載がなされているが、そこまで書くのであれば、領収証にとって定型的記載項目である「消費税額欄」に消費税額を記入するのが当然というべきである。

しかるに、領収証の定型記載項目でない事項に関し、それも1日限りの領収証において、あえて手書きで「エクリュ」などと書き込みをしたり、社名と同じ大きさで「エクリュ(ECRU)売上」などと強調した記載を施していること自体がいかにも不自然である。自発的に発行する長袖シャツ等に関する領収証であれば、「品番」などを書くことは通常あり得ない。

特に、領収証の下部には「エクリュ(ECRU)売上」の文字が手書きではなく、印鑑にて表示されているが、上記したように、「但書」の欄において「エクリュ3品として」の記載があるにもかかわらず重複してこのような表示をしている点及び入金伝票(乙4)の勘定科目の表示として用いている「エクリュ(ECRU)売上」を領収証においても用いている点とも相まって、当該領収証の証拠としての信ぴょう性に疑問を持たざるを得ない。

ウ 乙第4号証について

入金伝票(乙4)には、その右上方に表示された「承認印」、「出納印」、「起票」、「監査印」の欄に全く捺印も署名もなされておらず、また、左上方に表示された「伝票番号」の欄にも何の記載もされていない。

さらに、記入に必要のない「品番」や「ブランド名」まで書いてあるのに、消費税については「取引先名」の欄に手書きで記入するなど極めて不自然といわざるを得ない。

また、当該入金伝票にはどこの会社のものかを示すものも何ら表示されていないから、これが使用権者が作成したものとも認められない。

エ 乙第5号証について

乙第5号証の1の写真は、平成22年1月21日に撮影されたもので、同号証の2の写真は、同23年8月26日に撮影されたものである。後者は、本件審判の請求の登録後のものであるから、本件商標の使用証明にはなり得ない。

口頭審理において、被請求人は、乙第5号証の1に係る商品については、洗濯表示を付していたが、同号証の2に係る商品については、洗濯表示を付していないとする。

家庭用品質表示法における繊維製品品質表示規定(甲13)第3条において義務付けられている洗濯表示を、平成22年1月販売の商品については行っておきながら、翌年の商品について表示しないということ自体、現実に被服の販売を行っている者の所業とは思えない。

また、洗濯表示が行われている乙第5号証の1に係る製品についても、上記規定第5条において義務付けられている表示者の名称、住所、電話番号の付記は行われていなかった。

オ 乙第6号証及び乙第7号証について

(ア)ベルヴィ社の平成22年1月1日から同年12月31日までの確定申告書(乙6の1)の「事業種目」の欄には「不動産業」と明記されている。

ベルヴィ社の登記簿謄本(甲3)に徴しても、その「目的」の欄には「衣料品」に関する業務記載は見受けられないため、同社が「被服の販売」を業として行っていたのか非常に疑わしい。

(イ)ベルヴィ社の上記と同期間の損益計算書(乙6の2)の「売上高」の欄には「衣料品売上」の項目があり、そこには括弧書きで「エクリュ」と表示されている。同社の主たる事業と思われる不動産業においてでさえ、個別の賃貸物件のマンション名等を記載することなく、単に「受取賃貸料」、「受取管理料」としか表示していないにもかかわらず、わざわざ個別の商品名であり、しかも、唯一のブランドである「(エクリュ)」の表示がなされていること自体、不自然としかいいようがなく、商標登録の取消しを免れるための対策としか考えられない。

なお、当該損益計算書は、作成者が不明であり、真に確定申告に添付されたものであるのか不明である。「衣料品売上(エクリュ)」とあるが、実際に販売された商品が何であるかまで税務署がチェックするわけでもない。

(ウ)ベルヴィ社の平成22年1月1日から同年12月31日までの総勘定元帳(乙7)は、その作成者が明らかにされておらず、これが本物か否かも不明である。また、総勘定元帳自体は、確定申告の際に必ず添付しなければならない書類ではないので、当該総勘定元帳が税務署に提出されたのか否か及びその記載内容の信ぴょう性も不明である。

(エ)これらの証拠は、本件商標の使用状態を直接示すものではないため、これ自体で本件商標の使用を裏付ける証拠とはなり得ない。

カ 口頭審理における被請求人の主張について

(ア)被請求人は、被服に関する宣伝広告を全く行うことなく、相模原市緑区橋本4の18所在のヴィラベルビュー内における賃貸物件を下見に訪れた人を対象に、7階で被服販売していることを告げ、702号室にて被服を販売したと説明する。

しかし、何らの宣伝広告を行わずに、元々賃貸物件を下見することを目的として訪れた初対面の人に対して被服購入の勧誘を行い、見ず知らずのお店で商品説明を行って販売に至る上記販売方法は、通常の被服の販売方法とはかけ離れているものである。

(イ)被請求人は、ヴィラベルビュー702号室においては、平机の上に商品を展示し、必要に応じて商品の写真を客に提示していたと主張するが、商品の現物が目の前にあるのにもかかわらず、何故商品の写真が必要なのか。当該写真は、モデルが商品を着た様子を撮影したものではなく、客にとって、現物を見る以外に写真を見る必要性は考えられない。

(4)本件商標と使用商標との同一性について

被請求人は、乙第2号証の1ないし4の各商品において、縫合タグに付された使用商標と本件商標とは、社会通念上同一の範囲に属するものというべきである旨主張している。

しかし、乙第2号証の3においては、縫合タグ自体が見当たらない。

また、乙第2号証の4においては、縫合タグの上に商品タグが重なっていることから、縫合タグに表示された文字自体が把握できない。

乙第2号証の1及び2の縫合タグについては、ローマ字の4文字が表示されていることまでは把握できたとしても、タグ自体が平らではなく、所々浮かび上がって波を打っている状態にあることから、タグに表示された文字も変形し、具体的に何の文字が表示されているのかを特定できない。

したがって、乙第2号証に表示された縫合タグ上の表示から、本件商標が使用されていた事実を認めることはできない。

また、商品タグに表示された商標は、「E」、「CR」、「U」の各文字の間にスペースが設けられているところ、やや左下方に傾けて書された各文字が各文字に隣接して描かれたかぎ括弧状の図形と一体となった記号様のものとして把握できることとも相まって、飾り枠を有する「E」の文字、飾り枠を有する「CR」の文字、飾り枠を有する「U」の文字の各々に分離して認識されるものである。

したがって、使用商標は、本件商標とは外観上において全く異なっており、「ECRU」の一つの単語を表示したものとは認識できないものであるから、商標法第50条に定める本件商標の同一性の範囲を有しないものである。

以上のとおり、乙第2号証によっては、被請求人が本件商標と同一性を有する商標を使用していたことはいえない。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証(枝番を含む。)を提出した。

1 本件商標に係る使用許諾について

(1)乙第1号証は、商標権者である被請求人と通常使用権者であるベルヴィ社との間で交わされた「通常使用権許諾契約書」の写しであり、これによれば、本件商標について通常使用権が設定されている事実が明確である。

(2)乙第9号証について

乙第9号証の1は、ベルヴィ社が通常使用権許諾契約書(乙1)第4条の規定で定められた基本料50万円を、商標権者に対して商標使用料を入金した際の「キャッシュサービスご利用明細」の写しである。

また、乙第9号証の2は、ベルヴィ社が平成22年度の売上げ(1,902,791円)(乙6の2)に対する使用料38,055円を現金にて商標権者に支払った際の出金伝票である。

以上より、本件商標に係る通常使用権許諾契約は、当事者間で現実に履行されている。

2 本件商標に係る商取引について

(1)乙第2号証及び乙第5号証について

商標権者と通常使用権者(以下「商標権者ら」という。)は、本件商標に係る指定商品「被服」の範ちゅうに含まれる商品「長袖Tシャツ」、「半袖Tシャツ」等に対して本件商標を付することにより使用している(商標法第2条第3項第1号)。

乙第2号証は、商標権者らが製造した商品(女性用)「長袖Tシャツ」(乙2の1)、「半袖Tシャツ」(乙2の2)、「長袖タートルネックTシャツ」(乙2の3)、「長袖Tシャツ」(乙2の4)の現物写真である。

当該商品の襟部分に縫合して付されているタグ(以下「縫合タグ」という。)に商標「ECRU」を付して使用しており、商品に付された紙製の商品タグの表面及び裏面に商標「ECRU」を印字して使用している。

なお、乙第2号証の被服は、既に販売済みであるため、商標権者らの手元にないため、乙第2号証の商品と同一時期に製作、展示された商品(乙5)を証拠として提出する。

乙第2号証に係る商品の展示、販売は、ベルヴィ社の本店所在地、神奈川県相模原市緑区橋本四丁目18番ヴィラベルビュー7F(乙6)を店舗として行われたものである。ただし、ベルヴィ社による被服の販売は、少量販売であること、商品提供者として納得のいく品質の商品が製作できた場合に限り不定期に展示、販売を行っているため、ここはいわゆる「常に不特定人が出入り可能で同一物を大量に販売できる形式の店舗」に相当するものではない。

なお、乙第2号証の写真は、商品紹介の便宜のために撮影されたものであり、乙第2号証は、商品カタログ、パンフレットとして使用されていたともいい得るものである。

また、乙第2号証に係る商品は、ベルヴィ社の製造管理の下、有限会社クランツ(東京都港区芝2−16−1 河上4ビル02)に製作させたものであるが、この事実は、後述する総勘定元帳(乙7の3)に相手科目「衣料仕入」に明記されているとおりである。

(2)乙第3号証及び乙第4号証について

商標権者らは、取引書類に本件商標を表示して頒布することにより、商品「被服」との関係において使用している(商標法第2条第3項第8号)。

乙第3号証は、商品「長袖Tシャツ」等(乙2)を販売した際に顧客に対して発行した領収証の控えであり、かかる取引書類に本件商標を表示して使用している事実を証明するものである。

商標権者らは、製造販売する多種多様な被服アイテムについて品番管理を行っており、現物商品に対しては、商品タグの裏面に数字を用いて品番を表示している。例えば、乙第2号証の1(下段に配されている写真)において示されている商品タグ裏面に「NO 1901」と印字されているのが「長袖Tシャツ」の品番である。

一方、取引書類(乙3、乙4)においては、売り上げた商品名の後続括弧内に当該商品の品番を表示している。この品番により、例えば、乙第3号証の1の領収証(控)が示す販売商品中に、品番1901「長袖Tシャツ」(乙2の1)、同1700「半袖Tシャツ」(乙2の2)が含まれていることが容易に理解できるものである。同様に、乙第3号証の2の領収証(控)が示す販売商品中には、品番2101「長袖Tシャツ」(乙2の3)が含まれていることが証明される。

なお、領収書(控)(乙3)の原本は紛失しており、複写物のみが現存している。

また、乙第4号証は、乙第3号証の1及び2の領収証(控)に対応する入金伝票であり、かかる書類にも本件商標が付されている。

なお、入金伝票(乙4)は、ベルヴィ社の経理管理上の書類であり、特定の者に対して発行する性質のものではないが、少なくとも領収証(控)(乙3)に記載されている商品が販売され、ベルヴィ社がその代金を受領している事実を証明するものである。

したがって、乙第3号証及び乙第4号証は、ベルヴィ社が取引書類に本件商標を表示して頒布(商標法第2条第3項第8号)し、同時に、本件商標を付した商品「長袖Tシャツ」等(乙2)を販売した事実を明確に示す証拠というべきである。

(3)乙第6号証及び乙第7号証について

乙第6号証は、ベルヴィ社の平成22年1月1日から同年12月31日事業年度分の確定申告書の写しであり、乙第7号証は、同社の総勘定元帳である。

確定申告書(乙6の1)の添付書類である損益計算書(乙6の2)に、「売上高」の科目として「衣料品売上(エクリュ)」の項目及びその売上高が明示されており、これにより少なくともベルヴィ社が乙第2号証に係る商品等の衣料品を業として販売していることが証明される。

また、損益計算書(乙6の2)には、「衣料品売上(エクリュ)」の年次総売上高が記載されているが、その詳細な内訳は、商標名及び商品並びにそれぞれの単価まで総勘定元帳(乙7)に記載されている。

総勘定元帳(乙7)の平成22年2月3日付けにて「エクリュ(ECRU 半袖T)」(10,290円)が2件、「エクリュ(ECRU長袖T)」(6,195円)、「エクリュ(ECRU 長袖T)」(11,340円)並びに「エクリュ(ECRU 長袖タートル)」の売上げが記載されているが、これらは、領収書(控)(乙3)や入金伝票(乙4)に記載されている商品名、金額と一致している。

上記によれば、ベルヴィ社が商標「エクリュ」又は「ECRU」を付した半袖Tシャツや長袖Tシャツ等の被服を販売している事実が証明される。

(4)乙第8号証及び乙第10号証について

ア 乙第2号証及び乙第5号証の1に係る商品を販売したベルヴィ社代表取締役久加天淳の陳述書(乙8)にあるとおり、かかる商品の販売場所は、神奈川県相模原市緑区橋本4-18-13ヴィラベルビュー702号室(以下「702号室」という。)であり、販売期間は、平成22年2月から4月ころまでである。

イ 商品の展示は、702号室において平机上にその他の被服とともに陳列することにより行った。また、商品自体に価格やサイズに関する情報は記載していないが、販売者が口頭にて説明していた。顧客は、実際に商品を手にとって品質等を確認することが可能であった。

ウ 702号室が存する建物ヴィラベルビューの玄関出入口は、玄関に設置されているインターホンによって連絡することにより解錠できる構造であるオートロック式であるが、上記の販売期間中は、ヴィラベルビューの一部居室で工事をしていた関係上、施工会社である東急建設がガードマンを建物出入口に配置して管理を行っており、702号室への訪問者は、ガードマンに入室の希望を伝えれば、自由に入室できる状況であった。また、上記販売期間中、ベルヴィ社は、ヴィラベルビュー1階のピロティー部分と同建物1階に入居しているクリニック店舗内にヴィラベルビューへの入居者募集広告を掲載していた時期でもあったため、不特定人が702号室を訪れていた。

エ 乙第2号証及び乙第5号証の1の商品を含む商品の販売に際しては、宣伝広告を実施していないが、ヴィラベルビューへの入居者希望者・内覧希望者等が訪れていた時期であったことから、これらの者に対し口頭にて商品販売の案内をしていた。

オ 領収書(控)(乙3)は、販売を担当した久加天淳が作成し発行したものである。

キ 乙第10号証は、702号室内の現況を撮影したものである。

(5)本件商標の使用日について

領収証(控)(乙3)には、2010年2月3日の日付がめいりょうに示されており、同日に購入者に対して本件商標が明示された領収書を頒布することにより使用していることが明らかである(商標法第2条第3項第8号)。

同時に、取引書類(乙3)の頒布日に、本件商標を付した「長袖Tシャツ」等(乙2)を販売することによって、本件商標を使用している事実が証明されている(商標法第2条第3項第2号)。

3 本件商標と使用商標との同一性について

本件商標は、ローマ字の大文字で「ECRU」と表示されてなるものであるところ、縫合タグに使用されている文字商標は、筆記体風に表示されている点で本件商標と使用商標とは物理的観点からは完全同一とはいえない。

しかし、一般に、登録商標の書体に若干の変更を加えたりローマ字の大文字、小文字を相互に変更して使用することは取引の慣習上普通に採用されているところであり、これに接する取引者、需用者も彼此同一の商標と認識するものとみるのが取引通念・通常の需用者等の注意力にかんがみても自然である。

したがって、乙第2号証の1ないし4において縫合タグに付された使用商標と本件商標とは、社会通念上同一の範囲に属するものというべきである(商標法第50条第1項)。

同様に、商品クグの表裏に使用されている商標は、「ECRU」の文字周辺にかぎ括弧状等の細線を用いて飾り枠を配してなる点で本件商標とは物理的に同一のものとはなっていないが、文字商標をより印象的に表示すべく飾り枠を用いたりすることも取引の慣習上普通に採用されているところであり、当該使用商標も本件商標と社会通念上同一の範囲を逸脱するものではない。

4 以上のとおり、本件商標は、その指定商品「被服」につき、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者及び通常使用権者によって使用されているものである。

第4 当審の判断

1 認定事実

被請求人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。

(1)商標権者とベルヴィ社は、本件商標に係る商標権についての通常使用権許諾契約を2006年12月20日に締結した(乙1の1及び2)。

「通常使用権許諾契約書」(写し:乙1の1及び2)には、第1条において、甲(審決注:商標権者)は乙(審決注:ベルヴィ社)に対して、甲の所有に係る「エクリュ」(商標登録第948707号)及び「ECRU」(商標登録第3311124号)の商標権について通常使用権を許諾するとあり、第2条において、通常使用権の範囲として、使用許諾地域を「日本全国」、使用期間を「2007年1月1日より2013年12月31日」、使用内容を「乙が製造販売する婦人服及び身の回り品」と規定されている。

そして、該書面の2枚目(乙1の2)には、「甲」の項目に、「住所 東京都世田谷区成城2−22−13」、「名称 株式会社インターコンチネント」、「代表者 代表取締役 久加天 淳」との記載及び印影があり、「乙」の項目に、「住所 神奈川県相模原市橋本4−18−13 ヴィラ・ベル・ヴュー702」、「名称 株式会社ベルヴィ」、「代表者 代表取締役 久加天淳」との記載及び印影がある。

(2)乙第2号証の1ないし4は、各種Tシャツ、タートルネックの写真であり、いずれの写真も、「2010.01.21」の日付が写し込まれており、上段は、床の上に置かれた状態のTシャツの全体の写真であり、下段は、Tシャツの襟部分に縫合されている縫合タグと記載事項が見えるように開いた状態の商品タグを拡大した写真である。

上記縫合タグについてみれば、乙第2号証の2の縫合タグには筆記体風に表された「ECRU」の欧文字が表示されているが、乙第2号証の1の縫合タグは、中央部が上方に膨らんで縫合されているため、「ECR」の欧文字が判読出来るものの、その後の文字については明かではなく、乙第2号証の4の縫合タグは、商品タグが縫合タグの上にかぶさっているため「E」の文字以外は不明である。

次に、商品タグについてみれば、商品タグの表面及び該タグの見開き部分には、別掲のとおりの構成からなる商標(以下「使用商標」という。)が表示されており、また、見開き部分には、黄色で表された「エクリュ」の片仮名が表示されているシール状のものが貼付されている。

そして、見開き部分の他の一面には、原材料の表示のほか、乙第2号証の1は、「NO.」の欄に「1901」と表示されたシール状のものが貼付されており、以下同様に、乙第2号証の2は、「NO.」の欄に「1700」、乙第2号証の3は、「NO.」の欄に「1903」、乙第2号証の4は、「NO.」の欄に「2101」と表示されたシール状のものがそれぞれ貼付されている。

(3)乙第3号証の1及び2は、いずれも、2010年2月3日付けの個人名義宛ての「領収書(控)」の写しであり、乙第3号証の1の但書きの欄には、「長袖T(1901)、半袖T(1701)、半袖T(1700)」の表示が各金額とともに記載されたうえ、その右方に「エクリュ3品代として」の文字が手書きされている。また、乙第3号証の2の但書きの欄には、「長袖タートル(1903)、長袖T(2101)」の表示が各金額とともに記載されたうえ、その右方に「エクリュ2品代として」と手書きされている。

そして、いずれの領収書(控)も、左下の「内訳」、「税抜金額」、「消費税額等」の欄は空白であり、右下には、「エクリュ(ECRU)売上」と「株式会社ベルヴィ」なる印影が表示されている。

(4)乙第4号証は、平成22年2月3日付けの「入金伝票」と題する書面であり、借方科目として「111現金」、貸方科目の欄に「エクリュ(ECRU)売上」と記載され、取引金額が記載されており、摘要の欄には、「半袖T(1701)、同(1700)、長袖T(1901)、同(2101)、長袖タートル(1903)」の各表示が金額とともに記載されている。

入金伝票(乙4)は、ベルヴィ社の経理管理上の書類であり、特定の者に対して発行するものではない。

(5)乙第5号証の1及び2は、タートルネック及びカーディガンの写真であり、同号証の1の写真には、「2010.01.21」の日付が写し込まれており、同号証の2の写真には、「2011.8.26」の日付が写し込まれている。

乙第5号証の1の上段は、床の上に置かれた状態のタートルネックの全体の写真であり、下段は、記載事項が見えるように開いた状態の商品タグを拡大した写真である。商品タグには、使用商標が表示されているほか、黄色で表された「エクリュ」の片仮名が表示されているシール状のものが貼付され、さらに、「NO.」の欄に「1504」と表示されたシール状のものが貼付されている。

乙第5号証の2の上段は、床の上に置かれた状態のカーディガンの全体の写真であり、下段は、襟部分に縫合された縫合タグの拡大写真である。縫合タグには、筆記体風に表された「ECRU」の欧文字が表示されている。

(6)乙第6号証の1は、ベルヴィ社に係る平成22年1月1日〜同年12月31日事業年度分の確定申告書の写しであるが、「所得金額又は欠損金額」等の金額は、すべて黒塗りされており不明である。

乙第6号証の2は、ベルヴィ社に係る平成22年1月1日から同年12月31日までの「損益計算書」と題する書面の写しである。

「【売上高】」の欄に、「受取賃貸料」、「受取管理費」、「更新料等」及び「衣料品売上(エクリュ)」の各項目が記載され、「【売上原価】」の欄に、「衣料品仕入等」と記載されており、その他「【販売費及び一般管理費】」、「【営業外収益】」、「【営業外費用】」等の欄が設けられている。

そして、該衣料品売上(エクリュ)の金額は、1,902,701円、衣料品仕入の金額は、2,791,343円と表示されているが、その他の項目の金額は、すべて黒塗りされており不明である。

(7)乙第7号証の1は、ベルヴィ社に係る平成22年1月1日から同年12月31日までの「総勘定元帳」と題する書面の写しである。

乙第7号証の2は、「総勘定元帳」、「6559 株式会社 ベルヴィ」、「615 衣料品売上(エクリュ)」と表示された書面の写しであり、左側がつづりひもでとじられ、容易に着脱可能なものである。

そして、平成22年2月3日の5件、同月17日の6件及び同月27日の1件に係る「相手科目」の欄には、「現金」、「摘要」の欄には、「エクリュ(ECRU 半袖T」、「エクリュ(ECRU 長袖T」等と記載され、これらの下に、「2月計」との記載があり、当該項目の「貸方」の欄には「190,890」と記載されている。

上記記載の下には、4月6日に4件、同月18日に2件、同月30日に1件及び4月計の欄が設けられているが、「4月計」の「摘要」を除いた「摘要」及び「貸方」の各欄は、すべて黒塗りされている。

さらに、4月計の下には、5月11日の1件に係る「相手科目」の欄には、「りそな橋」と記載されているが、「摘要」及び「貸方」の各欄は、黒塗りされ、「摘要」の欄の「5月計」との記載に係る「貸方」の欄も黒塗りされている。

乙第7号証の3は、「総勘定元帳」、「6559 株式会社 ベルヴィ」、「132 りそな 橋本支店」と表示された書面の写しであり、平成22年1月25日の「相手科目」、「摘要」及び「貸方」の各欄に「衣料仕入」、「クランツ」及び「23,100円」との各記載があり、その他の項目の金額の欄は、すべて黒塗りされている。

(8)乙第8号証は、ベルヴィ社代表取締役久加天淳の陳述書とするものであり、概略以下の記載がある。

ア 乙第2号証の1ないし4及び乙第5号証の1に係る商品(以下「本件商品」という。)は、久加天淳が神奈川県相模原市緑区橋本4-18-13ヴィラベルビュー702号室で販売したものであり、販売期間は、平成22年2月から4月ころまでである。

イ 領収書(控)(乙3)及び入金伝票(乙4)は、久加天淳が作成し発行した。

ウ 商品の展示は、702号室において平机上に陳列することにより行った。

また、個々の商品に価格やサイズを表示していないが、久加天淳が口頭で案内した。顧客は、商品を袋から取り出して、体に当てるなどしてサイズを確認することもあった。

エ 乙第2号証の1ないし4及び乙第5号証の1に係る写真は、必要に応じて客に提示して商品の説明をした。

オ 702号室がある建物ヴィラベルビューの玄関は、玄関に設置されているインターホンによって連絡することにより解錠することができるオートロック式であるが、上記の販売期間中は、建物内の工事をしていた東急建設がガードマンを建物出入口に配置して管理を行っており、訪問者は、ガードマンに入室の希望を伝えれば、自由に702号室に入室できる状況であった。

カ 本件商品を含む商品の販売に際しては、宣伝広告を実施していないが、ヴィラベルビューへの入居者希望者・内覧希望者等が訪れていた時期であったことから、これらの者に対し口頭にて商品販売の案内をしていた。

2 判断

前記1の認定事実に基づき、以下検討する。

(1)通常使用権者について

通常使用権許諾契約書(乙1の1及び2)は、本件商標に係る商標登録番号(商標登録948707号)が明記されており、商標権者及びベルヴィ社の記名、印影も認められるから、両契約当事者間の合意による契約というべきであり、通常使用権の範囲として、使用許諾地域を「日本全国」、使用期間を「2007年1月1日より2013年12月31日」、使用内容を「乙が製造販売する婦人服及び身の回り品」と規定されていることが認められる。

そうすると、ベルヴィ社は、本件商標に係る通常使用権者であるということができる。

この点について、請求人は、被請求人(商標権者)は、東急建設とヴィラベルビュー701号室の修理を巡って係争中にあり、営業ができない状況にあったため、商標権者、ベルヴィ社のいずれかが、本件商標の使用を企画すること自体が到底考えられず、当該契約書の信ぴょう性すら疑わしい旨主張する。

しかし、後述のとおり、被請求人は、ベルヴィ社が本件商標の使用した場所は、ヴィラベルビュー702号室と主張しているのであるから、該701号室が使用できる状態になかったことをもって、本件商標に係る通常使用権許諾契約が無効であるとはいえず、また、かかる通常使用権許諾契約が無効であることを具体的に認めるに足りる証拠も見いだせない。

したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。

(2)本件商標に係る商取引について

被請求人は、通常使用権者であるベルヴィ社の代表取締役が本件審判の請求の登録前3年以内(平成19年12月3日から同22年12月2日まで。以下、「要証期間」という。)」に該当する同22年2月から4月ころまでに、神奈川県相模原市緑区橋本4-18-13在のヴィラベルビュー(以下「ヴィラベルビュー」という。)の入居希望者・内覧希望者に対して、702号室において被服を販売していることを口頭で案内し、702号室内の平机の上に本件商品を袋入りの状態で陳列し、顧客は本件商品を手にとって確認することもできたが、乙第2号証の1ないし4及び乙第5号証の1に係る写真も必要に応じて顧客に提示し、商品の価格やサイズも口頭により案内した旨主張する。

しかし、以下の理由により、通常使用権者によって商品「被服」について本件商標の使用をした商取引が真実行われたと認めることはできない。

なお、通常使用権者が本件商標を使用したとする商品は、「被服」と認められるものであり、この点について当事者間に争いはない。

ア 乙第2号証の1ないし4及び乙第5号証の1は、上段は、床の上に置かれた状態の婦人用被服の全体の写真であり、下段は、縫合タグや記載事項が見えるように開いた状態の商品タグを拡大した写真であり、いずれにも「2010.01.21」の日付が写されていることが認められる。

しかし、本件商品は、平机の上に顧客が手にとってサイズ等を確認することも可能な状態にあったとするのであるから、本件商品を床の上に置いた状態で写した写真を顧客に提示することは、通常の被服の販売方法に照らしてみても不自然なものといわざるを得ない。しかも、商標権者ないしベルヴィ社は、縫合タグや記載事項が見えるように開いた状態の商品タグを拡大した写真も撮影しているのであるが、そもそも縫合タグや商品タグは、通常、被服の購入を検討する顧客が自由に確認できるものであるから、本件商品を展示する前にわざわざ縫合タグや商品タグの拡大写真を撮ること自体、極めて不自然な対応というべきである。

そして、デジタルカメラによる写真の撮影日は、容易に変更し得るものというべきであるから、乙第2号証の1ないし4及び乙第5号証の1の写真に、要証期間に該当する「2010.01.21」の日付が表示されていることをもって、直ちに、該日付に、これらの写真が撮影されたものと判断することはできず、後述のとおり、他の証拠と照らしてみても、該写真が少なくても要証期間に展示されたとはいえない。

また、商品タグには、原材料の表示や品番が表示されたシール状のものが貼付され、かつ、「エクリュ」の片仮名が表示されているシール状のものが貼付されているが、被服のサイズや価格は表示されていない。

しかして、商品タグには、「エクリュ」の片仮名が表示されたシール状のもの及び品番が表示されたシール状のものがそれぞれ貼付されていることにかんがみれば、顧客にとって重要な情報というべき被服のサイズや価格を表示したシールをはり付けることにさほどの支障があるとは考えられないから、商品タグにサイズや価格の表示がないことも、通常の被服の販売方法に照らしてみて極めて不自然といわざるを得ない。

以上によれば、乙第2号証の1ないし4及び乙第5号証の1に係る商品タグは、販売を目的に展示された商品に真実付されていたと認めることができない。

さらに、乙第2号証の1の縫合タグは、襟部分が床の上に平らに置かれているにもかかわらず、縫合タグの中央部が上方に膨らんで縫合されていることが認められるところ、被請求人が主張するように、「ベルヴィ社による被服の販売は、少量販売であり、商品提供者として納得のいく品質の商品が製作できた場合に限り不定期に展示、販売を行っている」のであれば、なおさら縫合タグの取付けが上記のように上方に膨らんだ状態で縫合されること自体、不自然なものといわざるを得ない。

なお、乙第5号証の2は、要証期間後と認められる「2011.8.26」の日付が写されているのであるから、同号証をもって本件商標の要証期間の使用ということができない。

以上を総合すれば、乙第2号証1ないし4及び乙第5号証の1に係る写真は、要証期間に真実展示されたものと認めることができない。

イ 領収書(控)(乙3の1及び2)及び入金伝票(乙4)は、販売を担当した久加天淳が作成し発行したとするものであるところ、後者の入金伝票は、ベルヴィ社の経理管理上の書類であり、特定の者に対して発行するものではないから、これをもって、取引書類に本件商標を付して展示又は頒布したということはできない。

(ア)該領収書(控)は、右下に、「エクリュ(ECRU)売上」と「株式会社ベルヴィ」の印影が認められるものであるが、被服に係る通常の商取引に照らせば、領収証等の取引書類には、取引相手による問い合わせなどの便宜を図るために、販売者の名称と共に、住所、電話番号等も記載するのが通常というべきである。

しかるに、被請求人は、建物の入居希望者・内覧希望者に対して被服の販売を行っていることを口頭で告げ、被服の販売時に乙第3号証に係る納品書を顧客に渡した旨主張するところ、顧客たる該入居希望者等は、頻繁にベルヴィ社ないし商標権者と取引があり、その連絡先を熟知している者とみるべき事情も見いだせないのであるから、住所及び電話番号の記載のない領収証を顧客に渡したとする被請求人の上記主張は、にわかにこれを是認することができない。

しかも、領収証(控)の但書きの欄には、「長袖T(1901)、半袖T(1701)、半袖T(1700)」などの表示がそれぞれの金額とともに記載されたうえ、その右方に「エクリュ3品代として」の文字が手書きされているにもかかわらず、「エクリュ(ECRU)売上」の印影が表示されている点については、通常の領収証発行の目的からみて、そこまでの記載をする趣旨が定かでなく、むしろ不自然であるといわなければならない。

そして、領収証(控)の日付である2010年2月3日は、口頭審理を行った平成23年9月22日の約1年7月前のものであり、さほど長期間経過したとはいえないにもかかわらず、被請求人は、領収証(控)(乙3)の原本を紛失したとする。

(イ)ベルヴィ社に係る平成22年1月1日から同年12月31日までの「損益計算書」と題する書面の写し(乙6の2)に記載された「衣料品売上(エクリュ)」及び「衣料品仕入」の各項目を除いた項目の金額は、すべて黒塗りされており、また、確定申告書(乙6の1)の金額も黒塗りされていることから、「損益計算書」と題する書面の写し(乙6の2)が上記確定申告書に実際に添付されたものであるかは不明というほかない。

しかも、「損益計算書」と題する書面の写し(乙6の2)は、本件商標を付した取引書類として展示又は頒布されたものではないから、これをもって、本件商標の使用を証明したものとはいえない。

(ウ)ベルヴィ社に係る平成22年1月1日から同年12月31日までの「総勘定元帳」と題する書面の2枚目の写し(乙7の2)には、平成22年2月3日に5件、同月17日に6件及び同月27日に1件の合計12件にわたる2月の売上額が190,890円と表示されていることが認められるが、その下には、3月の記載がなく、4月6日に4件、同月18日に2件、同月30日に1件及び4月計の欄が設けられているものの、4月計を除いた「摘要」の欄以外の「摘要」及び「貸方」の各欄は、すべて黒塗りされている。

また、5月11日に「相手科目」の欄を「りそな橋」とする1件の「摘要」及び「貸方」の各欄も黒塗りされ、5月計の「貸方」の欄も黒塗りされている。

ところで、被請求人は、本件商品を含む被服の販売期間は、平成22年2月から4月ごろと主張するが、平成22年1月及び同年6月から同年12月までの本件商標を使用した商品の販売を何ら主張、証明していないから、かかる被請求人の主張は、同年1月ないし同年6月以降の販売に若干含みを持たせたものであるとしても、乙第7号証の2に照らしてみれば、商標「エクリュ」を付した商品の販売は、2月に12件、4月に7件、5月に1件の合計20件と推認することができる。

一方、「損益計算書」と題する書面の写し(乙6の2)によれば、平成22年1月1日から同年12月31日までの「エクリュ」に係る衣料品売上は、1,902,791円であるから、2月の12件の売上190,820円を除いた1,711,901円を4月及び5月の8件で売り上げたことになり、そうすると、4月及び5月の1件平均の売上は、約214,000円となる。

しかし、ベルヴィ社の本件商標を付した被服の販売は、不特定多数の者が訪れることができる店舗等での販売ではなく、ヴィラベルビューの入居希望者・内覧希望者に対して、本件商品等の販売を案内したにすぎないことにかんがみれば、かかる入居希望者等は、本来、被服の購入を意図していたとは到底いえないから、そのような顧客が被服の購入に高額の支払をするというのは通常考えられない。

そうすると、乙第7号証の2は、乙第6号証の2の記載と併せてみても不自然というべきである。

以上によれば、乙第6号証の1及び2及び乙第7号証の1及び2は、要証期間に本件商標を使用した被服が取引されたことを裏付ける証左ということができないから、乙第3号証の1及び2が真正なものとすることの裏付けということもできない。

(エ)上記(ア)ないし(ウ)によれば、乙第3号証の1及び2に係る領収証は、要証期間に顧客に真実頒布されたものと認めることができない。

また、ベルヴィ社は、本件商品に係る商品カタログ、パンフレット等は、作成しておらず、宣伝広告もしていない(乙8)。

(オ)被請求人は、「損益計算書」と題する書面の写し(乙6の2)には、「衣料品売上(エクリュ)」と記載され、この書面はベルヴィ社の確定申告書(乙6の1)に添付されたものであるから、ベルヴィ社が本件商品を業として販売していることが証明される旨主張するとともに、乙第7号証の2における平成22年2月3日付けの記載が乙第3号証と一致しているから乙第3号証が真正なものと主張する。

しかし、「損益計算書」と題する書面の写し(乙6の2)は、上記のとおり、確定申告書(乙6の1)に実際に添付されたものであるか否かは不明であり、また、乙第7号証の2は、左側がつづりひもで容易に着脱可能なものといい得るところ、原本を紛失したとする乙第3号証の1及び2を除いた平成22年2月及び4月の取引が真実行われたことを認めるに足りる具体的な証拠の提出がないのであるから、総勘定元帳の写し(乙7の2)をもって、本件商標を使用した被服の取引があったと即断することは到底できない。

そして、乙第3号証の1及び2にしても、上記のとおり、その記載事項において極めて不自然なものである以上、同号証に係る領収証が頒布されたとはいえない。

したがって、被請求人の上記主張は、採用することができない。

(カ)なお、被請求人は、「総勘定元帳」と題する書面の3枚目の写し(乙7の3)に記載された「クランツ」から、乙第2号証の1ないし3に係る商品を仕入れたと主張するところ、ベルヴィ社と上記クランツとの取引が実際にあったのであれば、ベルヴィ社においては、発注書控え、納品書、領収証等の取引書類が存在し、クランツにおいては、受注書、納品書控え、領収証控え等の取引書類が存在しているのが通常であり、これらの取引書類を提出することにさほどの支障があるとは考えられないから、乙第7号証の3をもって、直ちに乙第2号証に係る商品を仕入れたということはできない。

(3)本件商標と使用商標との同一性について

前記(2)のとおり、被請求人の主張する本件商標に係る商取引は、認められないものであるが、請求人は、使用商標は本件商標と社会通念上同一のものではないと主張するので、さらに、この点について検討する。

本件商標は、前記第1のとおり、「ECRU」の欧文字を横書きしてなるものであるから、「エクリュ」の称呼を生ずるものである。

一方、使用商標は、別掲のとおり、「E」、「C」、「R」及び「U」の各欧文字をやや左に傾け、「E」の左下にはかぎ括弧状の図形を配し、「C」及び「R」の上部と下部にはクランク状の図形を配し、「U」の右上にもかぎ括弧状の図形を配した構成からなるものである。

しかして、使用商標は、その構成中の上記図形部分が欧文字部分と不離に融合して表されているものではなく、その構成中の欧文字部分が「ECRU」の欧文字からなるものと視覚上めいりょうに認識し得るものであるから、使用商標の構成中の欧文字部分は、それ自体が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすというべきである。

そして、該「ECRU」の欧文字部分は、本件商標と同じつづり字からなり、「エクリュ」の称呼を生ずるものである。

そうすると、本件商標と使用商標とは、「エクリュ」の称呼を同じくするものであり、観念においても、両者は異同を生ずるものとは認められないから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標というべきである。

したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。

(4)小括

以上によれば、乙各号証によっては、通常使用権者であるベルヴィ社が要証期間に日本国内において本件商標を商品「被服」について使用したものとは認められない。

なお、被請求人は、要証期間に日本国内において、商標権者も本件商標を商品「被服」について使用したと主張するが、被請求人の提出に係る証拠によっては、商標権者が本件商標を使用したことを認めるに足りる事実は認められない。

したがって、本件商標は、要証期間に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、請求に係る指定商品について使用されていなかったものといわざるを得ない。

3 むすび

以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品について本件商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。

また、被請求人は、本件商標を請求に係る指定商品について使用していなかったことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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