Trademark Appeal Case
複合商標の要部抽出と類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2011−1350(T2011−1350/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は,別掲1のとおりの構成よりなり,第43類「飲食物の提供」を指定役務として,平成22年3月15日に登録出願されたものである。
2 引用商標
原査定において,本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして,本願の拒絶の理由に引用した登録商標は,以下の(1)及び(2)のとおりであり,それぞれ,現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4108768号(以下「引用商標1」という。)
別掲2のとおりの構成よりなり,平成8年3月13日登録出願,第42類「しゃぶしゃぶ料理を主とする飲食物の提供」を指定役務として,平成10年1月30日に設定登録されたものであり,商標権の存続期間の更新がされたものである。
(2)登録第5006964号(以下「引用商標2」という。)
別掲3のとおりの構成よりなり,平成18年5月29日登録出願,第43類「飲食物の提供」を指定役務として,平成18年12月1日に設定登録されたものである。
以下,上記(1)及び(2)をまとめていうときは,「引用商標」という。
3 当審の判断
(1)本願商標と引用商標の類否について
本願商標は,別掲1のとおり,「和創菜」の文字を手書き風の書体で横書きし,その下段に「TSUKITEI」の欧文字を書し,さらにその下に,顕著に大きく「月亭」の文字を筆書き風に書してなるものであるところ,「和創菜」と,「TSUKITEI」及び「月亭」が一体となって特定の観念を有するとは認められないばかりでなく,これらが常に一体として把握されなければならない特段の事情も見いだせないから,それぞれが独立して取引に資されることも十分にあり得るところ,このうち「月亭」の文字は,本願商標の中央部に,顕著に大きく書されていることより,他の文字部分に比して極めて印象的で記憶に残りやすいので,本願商標に接する取引者,需要者は,「月亭」の文字部分のみをもって取引することも決して少なくないといえるものである。
一方,引用商標1は,別掲2のとおり,円の内部に「了」の文字のようにも見える曲線を左右に3本並べて配した図形(以下「図形部分」という。)の下に,「月亭」の文字を,筆書き風に縦書きしてなるものであるところ,図形部分と「月亭」の文字部分は,これらが一体となって特定の観念を有するとは認められないばかりでなく,両者が一体として融合した構成態様からなるものともいえず,他にこれらを一体不可分のものとして把握しなければならない特段の理由も見いだすことはできないことから,引用商標1に接する取引者,需要者は,「月亭」の部分のみをもって取引することも決して少なくないといえるものである。
また,引用商標2は,別掲3のとおり,「しゃぶしゃぶ・京懐石」の文字を横書きし,その下段に,引用商標1が有するものと同じ図形部分を左に配した上で,「銀座」の文字を横書きし,その右に,「月亭」の文字を,大きく筆書き風に横書きしてなるものであるところ,「しゃぶしゃぶ・京懐石」及び「銀座」の文字部分は,引用商標2の指定役務との関係において,役務の質(提供される料理の内容),役務の提供の場所を理解させるにすぎないことから,自他役務の識別標識としては機能しないものである。
そうとすれば,引用商標2のうち,自他役務の識別標識として機能するものは図形部分と「月亭」の文字部分であるが,これらは一体となって特定の観念を有するものとは認められないばかりでなく,両者が一体として融合した構成態様からなるものともいえず,他にこれらを一体不可分のものとして把握しなければならない特段の理由も見いだすことはできないことから,引用商標2に接する取引者,需要者は,「月亭」の部分のみをもって取引することも決して少なくないといえるものである。
そこで,本願商標中の「月亭」の文字部分と,引用商標中の「月亭」の文字部分を比較するに,まず,外観については,どちらも同一の文字から構成され,共に筆書き風に書してなるから,互いの文字の大きさの差,書体の差,引用商標1に関しては横書き・縦書きの差はあるとしても,時と所を異にして両文字部分に接した場合,取引者,需要者に対して外観上近似した印象を与えるものであり,互いに相紛らわしいので,類似するというべきである。
また,称呼については,どちらも「月亭」の文字に応じて「ツキテイ」の共通の称呼が生ずる。
さらに,観念について,「月亭」の語は,辞書等に記載されている既存の語ではないものの,「亭」の文字は「屋敷。住居」の意味を有する(「広辞苑 第六版」株式会社岩波書店)から,「月の屋敷」程度の共通の意味合いが想起されるものである。
そうすると,本願商標と引用商標は,それぞれ「月亭」の文字部分のみをもって取引に資されることもあることより,当該文字部分をもって外観上類似のものであり,「ツキテイ」の称呼は共通し,「月の屋敷」程度の共通の意味合いを想起させるものであるから,役務の出所の誤認混同を生ずるおそれのある類似の商標というべきである。
(2)本願商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否について
本願商標の指定役務は,引用商標1の指定役務を包含するものであり,引用商標2の指定役務とは同一である。
(3)小括
以上からすると,本願商標は,引用商標に類似する商標であり,かつ,引用商標の指定役務と同一又は類似の役務について使用をするものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(4)請求人の主張について
ア 請求人は,「月亭」の文字部分のうち,「亭」の文字には自他役務の識別力が認められないことを理由として,「月」の文字のみを分離抽出した上で,「月」の文字を有する複数の登録商標が存することから,「月」の文字も自他役務の識別力は弱く,結局,引用商標のうち,最も強い自他役務識別力が認められるのは,図形部分である旨,主張する。
しかしながら,「亭」の文字が,「飲食物の提供」の分野において,自他役務の識別力がないか,極めて弱い場合があるとしても,「月亭」というわずか2文字からなる部分から,「亭」の文字が捨象され,「月」の文字のみが分離抽出され,取引に資されるとは考え難く,「月亭」の文字部分は,その全体をもって取引に資されるとみるのが自然である。
したがって,請求人の上記主張は,その前提において採用することができない。
イ 請求人は,本願商標中の「月亭」からは「ツキテイ」の称呼が生ずるが,引用商標中の「月亭」からは,「ツキテイ」のほか,「ゲツテイ」「ゲッテイ」の称呼も生じ得るものであり,「ツキテイ」の称呼のみに限定される合理的な理由はない旨,主張する。
しかしながら,「月亭」の文字は,辞書等に掲載されている既成の語ではないものの,例えば「月亭 文都(つきてい ぶんと)」(平成23年3月3日付けで請求人より提出された手続補足書の甲第2号証),「月亭 八方(つきてい はっぽう)」(http://hanjotei.eonet.jp/hanjotei_db/data/rakugoka/index.php?hanasika_ID=30170),「月亭 可朝(つきてい かちょう)」(http://hanjotei.eonet.jp/hanjotei_db/data/rakugoka/index.php?hanasika_ID=30020),「月亭 八光(つきてい はちみつ)」(http://hanjotei.eonet.jp/hanjotei_db/data/rakugoka/index.php?hanasika_ID=30380)というように落語家の芸名として採択されており,いずれも「月亭」の文字は「つきてい」と読まれているから,これにならって,引用商標中の「月亭」の文字も「つきてい」と読まれるのが自然であるといえる。
そうすると,「月亭」の文字から自然に生ずる称呼は,「ツキテイ」であるから,請求人の上記主張は,採択することができない。
ウ 請求人は,本願商標中の「月亭」及び「和創菜」の文字の書体と,引用商標中の図形部分と「月亭」の文字の書体は異なる上,引用商標には,円形の図形を有していることより,「満月」や「月のウサギ」といった連想をさせるから,本願商標と引用商標において,役務の出所について誤認混同を生ずるおそれはない旨,主張する。
しかしながら,本願商標及び引用商標から,それぞれ「月亭」の文字部分のみが取引に資されることは,すでに述べたとおりである。
そして,「月亭」の文字部分の書体は,本願商標中のものと引用商標中のもので一定程度相違するが,いずれも筆書き風に同一の「月亭」の文字を書してなるから,時と所を異にして両文字部分に接した場合,取引者,需要者に対して外観上近似した印象を与えるといえるものである。
したがって,請求人の上記主張は,採択することができない。
エ 請求人は,本願指定役務の取引の実情として,称呼のみで飲食店を識別することは考えられないところ,本願商標と引用商標は,「ツキテイ」の称呼を共通する場合もあるが,引用商標からは「ゲツテイ」「ゲッテイ」の称呼も生じ得るし,また,外観上の相違からして,出所について誤認混同するおそれはない旨,主張する。
しかしながら,引用商標から生ずる自然な称呼は,上記に述べたとおり「ツキテイ」であるから,本願商標と引用商標から生ずる称呼は共通する。
そして,上述したとおり,本願商標と引用商標は,称呼が共通するだけでなく,外観においても類似し,想起される意味合いも共通するものである。
そうとすれば,本願商標と引用商標は,その出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといわなければならず,請求人の上記主張は,採用することができない。
(5)結語
以上のとおりであるから,本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして本願を拒絶した原審の判断は妥当であり,原査定を取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。
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