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Trademark Appeal Case

不使用取消と事実上の使用権

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2010−300845(T2010−300845/J2)
審判種別取消
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は,成り立たない。
審判費用は,請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第3303268号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1に示すとおり構成及び,役務を指定役務として,平成4年7月31日に登録出願,平成9年5月9日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

1 請求の趣旨

請求人は,商標法第53条第1項の規定により,本件商標の登録を取り消すとの審決を求め,その理由を次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第21号証(枝番を含む。)を提出した。

2 請求の理由及び弁駁(要旨)

(1)本件商標の使用について

甲第3号証は,被請求人補助参加人株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(以下「補助参加人」という。)のサービス等を示す補助参加人のウェブページの2010年7月27日時点における複製である。これには,別掲2(以下「使用標章」という。)のとおり,使用標章中に「NTT」の文字が示されており,当該文字は本件商標と同一であり,本件商標そのものである。

また,使用標章中の「NTT」と「DATA」は,2段表記されており,サービスの内容そのものを示す「DATA」に識別力はないから,著名商標でもある「NTT」が要部であり,その要部が本件商標と類似する(以下「NTT」と「DATA」とが2段表記された商標「NTT/DATA」を「類似商標」という。)。

さらに,甲第3号証には,補助参加人が提供するサービスが示されている。その中には,「セキュリティ」や「WEBシステム」等,本件商標の指定役務,あるいは類似する役務を含むため,補助参加人が本件商標又は類似商標を指定商品又は類似する役務との具体的関係において使用していること,すなわち,商標的使用態様において使用していることは明らかである。

(2)通常使用権の許諾について

甲第4号証は,補助参加人の沿革を示す補助参加人のウェブページの2010年7月27日時点における複製である。これには,補助参加人は,被請求人の内部組織であったデータ通信事業本部を前身とし,被請求人から分離独立した後,1998年8月1日に現在の商号に社名変更されたことが記載されている。したがって,補助参加人は,被請求人の内部組織を前身とし,そのウェブサイトにおいて本件商標又は類似商標を商標的使用態様において使用しており,しかも,被請求人が本件商標に係る商標権に基づいて補助参加人に本件商標又は類似商標の使用の差止を求めた事実も存在しないから,補助参加人は本件商標の事実上の通常使用権者であることは明らかである。

被請求人自身,補助参加人に対して,本件商標の使用許諾を行なっている旨を以下のア及びイに記載するように,自白している。

ア 被請求人は,本件商標を含む商標「NTTデータ」に係る商標権についての審判事件(取消2010−300779,以下「別件審判1」という。)において,補助参加人が使用権者であることを明確に認めた。

商標「NTTデータ」の要部が被請求人の登録された著名商標「NTT」であることは明らかであるから,商標「NTTデータ」の使用許諾の前提として,当然に商標「NTT」の使用許諾が存在する。また,被請求人が登録商標「NTT」に基づく権利行使を補助参加人に対して行なわないことを当然に含むということからも,商標「NTTデータ」の使用許諾の前提として,当然に商標「NTT」の使用許諾が存在する。

甲第9号証は,別件審判1において補助参加人が提出した参加申請書,甲第10号証は,同被請求人が提出した答弁書であり,甲第11号証ないし21号証は,当該答弁書とともに提出された証拠である。これら各号証において,被請求人及び補助参加人自身が補助参加人が商標「NTTデータ」の使用権者であることを明確に認めていた。そして,被請求人が補助参加人に対して商標「NTTデータ」を使用許諾したということは,商標「NTT」の使用権者であることを認めたことにもなる。

そして,被請求人と補助参加人が,補助参加人のホームページにおける商標「NTTデータ」の使用が商標的使用態様による使用であることを認めている。

イ 被請求人は,本件商標「NTT」を含む商標「NTTデータ」に係る商標権についての審判事件(取消2010−300605,以下「別件審判2」という。)においてもまた,上記別件審判1と同様の主張をした。

(3)本件商標又は類似商標の使用による品質誤認について

補助参加人は,本件商標の指定役務に含まれる第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」に関して,甲第5号証の広告を実施した。

甲第5号証は,補助参加人のウェブページに公開されている「NTTデータCSR報告書2009」の一部であり,使用標章が表示され,その表示中に本件商標又は類似商標が記載されており,補助参加人の役務の質として,法令に反する行為をしないことが広告されている。

しかし,実際には,補助参加人はその役務の提供に際して,法令に反する行為を行っていた。このため,補助参加人による本件商標又は類似商標の使用が役務の質の誤認を生ずるものであることは明らかである。

(4)注意義務の懈怠

上述のように,補助参加人は,被請求人の内部組織をその前身としており,被請求人は,補助参加人の最大の株主であるから,被請求人が補助参加人に本件商標又は類似商標の使用を許容していることは明らかである。そして,被請求人は,本件商標又は類似商標を補助参加人に使用させているにもかかわらず,上記のような品質誤認を生ずる使用を放置したのであるから,「相当の注意をしていた」(商標法第53条第1項ただし書)事実はない。

(5)結語

以上のように,補助参加人は,本件商標又は類似商標を使用しており,本件商標又は類似商標が付された上記の広告等により,第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」の役務の質として,法令に反することはないという印象を,需要者に対して与えていたにもかかわらず,事実上の通常使用権者である補助参加人が提供した役務の質は法令に反するものであった。したがって,補助参加人による本件商標又は類似商標の使用は,役務の質の誤認を生ずるものであることは明白である。

そして,被請求人が,相当の注意をしていた事実はない。

したがって,本件商標の登録は,商標法第53条第1項の規定により取り消されるべきものである。

第3 被請求人及び補助参加人の主張

1 答弁の趣旨

被請求人及び補助参加人は,結論同旨の審決を求め,その理由を次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第6号証及び参考資料1・2を提出した。

2 答弁の理由(要旨)

(1)本件商標の不使用及び通常使用権の許諾について

本件審判請求は,補助参加人が本件商標を使用していることを前提とした上でなされているが,補助参加人は,本件商標を自己の役務の提供に関連する商標として使用していることはなく,これと共に,被請求人から通常使用権の許諾を受けていることもない。

ア 補助参加人の本件商標の不使用について

請求人は,補助参加人は本件商標をその指定役務である第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」に使用したと主張しているが,補助参加人が上記役務の提供に関連して本件商標を使用した事実はない。

請求人は,甲第3号証を引用して,補助参加人のウェブサイト上で,別掲2に示す使用標章の一部の「NTT/DaTa」の部分で,本件商標が使用されていると主張している。

しかし,請求人の主張は,以下に述べるとおり全て失当である。

使用標章は,NTTとDaTaを独特の文字書体で上下二段に一体表示した文字部分と楕円を三角形状に積み上げた図形部分とを一体に結合した表示であるから,本件商標とは明らかに異なる標章である。使用標章は,補助参加人の企業としてのシンボル表示であるところ,甲第3号証においては,「マーケット分野から探す」へ「キーワードから探す」として検索のための各種検索用語が列挙されているだけであるから,同号証に使用標章が併せてなされていたとしても,これが直ちに商標として使用されていることを示すものとは言えない。

商標法第53条に係る取消審判制度は,取消請求に係る登録商標が使用されたことを前提にしているが,上記のとおり,本事件においては,これが認められないのであるから,本件取消審判請求は,その前提において失当と言うべきである。

なお,使用標章が商標として使用される場合があるとしても,使用標章は,本件商標とは明らかに異なる標章である。

使用標章は,補助参加人を示すシンボル表示として,補助参加人により広く使用されてきており,補助参加人が我が国IT業界のトップ企業であることをも勘案した場合には,使用標章は出所表示性が既に獲得されていたことが明らかと言うべきである。

これに対し,請求人は,上記シンボル表示中の「NTT」と「DaTa」の文字が上下二段に一体表示されている部分だけを引用して,本件商標に類似していると主張している。

しかし,使用標章は,「NTT/DaTa」の文字部分と楕円を三角形上に積み上げた図形部分とが結合して,全体として補助参加人を示すシンボル表示として,まとまりよく一体表示されているものであるから,この図中から文字部分のみを抽出して,類否につき主張すること自体が失当である。

仮に,使用標章中の「NTT/DaTa」を分離抽出して検討したとしても,当該文字部分が一体表示されている以上,当該一体表示と本件商標との類否が検討されて然るべきである。

「NTT/DaTa」は,補助参加人の周知著名な略称表示そのものであるから,これを分離すること自体が明らかに相当性を欠いており,被請求人も補助参加人も,共に我が国を代表する企業の1つであるから,それぞれの商号の略称の表示である「NTT」と「NTT/DaTa」とは,相互に十分に識別可能であり,非類似であることは極めて明らかである。

したがって,請求人の上記主張は明らかに失当である。

上記のとおり,補助参加人において,本件商標を指定役務である第42類「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」において使用していることは,事実として存在していない。

イ 通常使用権の許諾について

請求人は,補助参加人は,「本件商標の事実上の通常使用権者である」と主張しているが,事実に基づかない主張である。

被請求人は,補助参加人に対し,本件商標とは別異の登録商標「NTTデータ」(登録第4657563号商標)につき通常使用権を許諾していることから,別件審判2に対する商標第50条第1項に基づく取消審判請求事件において,このことを主張した。

当該商標「NTTデータ」は,補助参加人の略称あるから,補助参加人に対して,その通常使用権の許諾がなされていることは当然のことである。

しかし,本件商標については,被請求人から補助参加人に対して使用許諾はなされておらず,被請求人から補助参加人に対する登録商標「NTTデータ」の通常使用権の許諾がこれとは異なる本件商標の通常使用権の許諾の根拠になるということもない。

ウ 小括

上記のとおり,補助参加人においては,本件商標を自己の役務の提供に関連する商標として使用することは,もともと予定されておらず,現に使用している事実もなく,これと共に,補助参加人が被講求人から本件商標の通常使用権の許諾を受けていることもない。

したがって,本件審判請求が成り立たないことは明らかである。

(2)役務の質の誤認を生ずる使用について

前項で主張したとおり,補助参加人は,役務の提供に関連して本件商標及びその類似商標を使用することはなく,本件商標を保有する被請求人から本件商標の通常使用権を許諾されたこともない。

したがって,補助参加人が役務を提供していた事実はなく,役務の質の誤認が生じ得るものでないことは,ここに指摘するまでもないことである。

(3)商標権者の監督義務の懈怠について

以上のとおり,被請求人は,補助参加人に対し本件商標の使用許諾を行っておらず,本件商標を使用していることもないため,商標法第53条第1項本文の要件を充足しておらず,同条第1項但書の適用の余地は存在しない。

(4)結論

以上のとおり,請求人の主張は全て失当であり,本件審判請求は成り立たない。

第4 当審の判断

商標法第53条第1項本文は,「専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは,何人も,当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定する。

そこで,請求人の主張する使用標章の使用行為が上記規定に該当するものであるか否かについて,以下検討する。

1 通常使用権者の使用であるか否かについて

請求人は,「補助参加人は,被請求人の内部組織を前身とし,そのウェブサイトにおいて本件商標又は類似商標を商標的使用態様で使用しているから,本件商標の通常使用権者である」旨主張するが,補助参加人が本件商標の通常使用権者であることを認めるに足りる証拠はない。

また,請求人は,被請求人が補助参加人に使用許諾を行なったことを取消2010−300779及び取消2010−300605の審判事件において自白している旨主張するが,それらの審判事件は,いずれも本件商標と異なる登録商標に対して商標法第50条に基づいて請求されたものであって,本件とは,その取消の対象となる登録商標及び取消審判の種類が異なるものであるから,これらの事件において通常使用権の許諾がなされたからといって,本件商標について通常使用権の許諾がなされていると解すべき合理的理由はなく,この点に関する請求人の主張は採用することができない。

2 使用標章の使用について

甲第3号証は,補助参加人のウェブページであるところ,これには使用標章が表示されていることが認められるが,そのウェブページは,補助参加人の事業内容やサービス等を公衆に向けて一般的に紹介したものであり,また,その記載内容も「サービスやソリューションを探す」との表題の下,「マーケット分野から探す」,「キーワードから探す」として,補助参加人の事業の取引先又はサービスやソリューション等を検索するための各種検索用語が列挙されているのみで,「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」を含む本件商標の指定役務及びこれに類似する具体的な役務との関連において,使用標章が使用されていたものということはできない。

また,甲第4号証,甲第8号証及び甲第19号証も補助参加人のウェブページであり,これらにも使用標章が表示されてはいるが,甲第3号証と同様に,これらのウェブページは,いずれも本件商標の指定役務及びこれに類似する具体的な役務との関連において,使用標章が使用されていたことを示すものではない。

さらに,甲第17号証は,補助参加人作成の広告用パンフレットであるところ,これにより,補助参加人が使用標章を「コンピュータネットワークを介して行うオンラインショッピングによる購買履歴・帳票等のデータ処理を行う電子計算機プログラムの提供及びこれらに関連する情報の提供」について使用していたことが認められるが,当該役務は,本件商標の指定役務に含まれるものではなく,また,これに類似する役務でもない。

その他,補助参加人が,本件商標の指定役務及びこれに類似する役務について,使用標章を商標として使用していたことを認めるに足る証拠はない。

3 本件商標と使用標章の類否について

本件商標は,別掲1のとおり,「NTT」の文字を横書きしてなるものであるから,「エヌティティ」の称呼を生じ,観念においては,被請求人の商号の著名な略称を認識させるものといえる。

他方,使用標章は,別掲2のとおり,青地横長長方形内の,上部左側に白色で「NTT」と「DaTa」の文字を二段書きし,同じく,右側に10個の白点を三角形状に配した構成からなるところ,その構成中の文字部分と図形部分とは,視覚上分離して看取され,一体のものとしての意味合いを認識させるものでもないから,その文字部分が分離して看取され,かつ,独立して自他役務の識別力を有するものであり,これから「エヌティティデータ」の称呼を生じ,観念においては,補助参加人の商号の著名な略称を認識させるものといえる。

そこで,本件商標と使用標章を比較すると,本件商標が「NTT」の文字のみからなるのに対し,使用標章は,「NTT」と「DaTa」の文字を含む図形からなるものであるから,両者の外観は,明らかに相違するものである。

また,本件商標から生ずる「エヌティティ」の称呼と使用標章から生ずる「エヌティティデータ」の称呼とは,「データ」の音の有無という明らかな差異により,判然と聴別し得るものである。

さらに,本件商標と使用標章は,それぞれ被請求人及び補助参加人の商号の著名な略称を認識させるものであるから,観念上も相違するものである。

以上のとおり,本件商標と使用標章は,外観,称呼及び観念のいずれの点においても,相紛れるおそれのない非類似のものである。

なお,請求人は,使用標章は,その構成中の「DaTa」の文字部分に識別力がなく,その要部である「NTT」が,本件商標と外観,称呼,観念のいずれにおいても相紛らわしいから類似する旨主張する。

しかしながら,使用標章の構成中の「NTT/DaTa」の部分は,前記のとおり,補助参加人の商号の著名な略称表記と認められるものであって一体のものとして把握すべきところ,殊更これを「NTT」と「DaTa」に分離し,「NTT」の部分のみを取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすことはできないから,この点に関する請求人の主張は採用することができない。

4 役務の質の誤認について

前記2及び3のとおり,使用標章の使用は,本件商標の指定役務及びこれに類似する役務についての使用とはいえず,かつ,本件商標と使用標章とが同一又は類似するものでない以上,使用標章の使用が役務の質の誤認を生ずるものということはできない。

5 以上のとおり,補助参加人による使用標章の使用行為は,前記1ないし4のいずれの観点からみても,商標法第53条第1項本文の要件を欠くものである。

そうである以上,その使用行為に商標法第53条第1項ただし書の適用の余地はない。

6 むすび

以上のとおり,本件商標は,専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたということはできない。

したがって,本件商標は,商標法第53条第1項の規定により,その登録を取り消すべきものではない。

よって,結論のとおり審決する。

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