Trademark Appeal Case
卍マークの独占と公序良俗
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年審判第15174号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、別掲したとおりの標章からなり、第34類「たばこ、喫煙用具(貴金属製のものを除く。)、マッチ」を指定商品として、平成10年2月24日 に登録出願されたものである。
2 原査定の理由
原審においては、「本願商標は、『卍』(まんじ)の図形を表してなるものであるが、当該標章は、寺、寺院を表示するものとして、一般に理解され、かつ、すべての寺や寺院が、自己が『寺』や『寺院』である旨を表示するものとして使用を必要としているものである。
また、多くの寺において、破魔矢やお守りをはじめ関連商品が多数販売されている実情があることから、このような寺の象徴ともいえる『卍』のみからなる標章を、本願出願人が登録商標として独占して使用することは、社会通念上穏当を欠くものといわざるをえない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 請求人の主張
請求人は、原査定に対して、本願商標は何ら公序良俗に反するものではなく、十分に商標としての識別力を有する旨以下のように主張し、登録例(甲第1号証乃至同第35号証)を挙げている。
(1)拒絶理由がいうが如く、「まんじ」が、一私人によって独占して使用されるのが、社会通念上穏当を欠くというのであれば、「まんじ」はいかなる商品又は役務の区分にも登録されてはならないものである。しかるに、現実には「まんじ」及び「うらまんじ」が数多く登録されている(甲第1号証乃至同第22号証)。
(2)拒絶理由がいうが如く、「まんじ」が寺・寺院を表示するものであると一般に理解され、かつ、全ての寺・寺院が自己を表現するのに使用を必要としているというなら、「まんじ」を他の図形や文字などと結合させようと、「まんじ」を含んでいるものであれば、少なくとも「寺院」と何らかの関わりがあるものと、一般の人々には認識されることになる。しかるに、それにも拘わらず、「まんじ」が含まれている商標も数多く登録されている(甲第23号証乃至同第35号証)。
(3)同一又は酷似する商標に対して、ある商標は社会通念上穏当を欠くとされ、他の商標は登録されるとするとどのような相違があるかと思うものであり、法及び審査基準は平等に適用されなければならないものである。
4 当審の判断
(1)本願商標は、別掲の標章を表示してなるものであるところ、これが「まんじ」と称され、功徳円満を意味するものとして、また、わが国では寺院を表す標識・地図記号として使用されて、広く知られているものである(「広辞苑」第五版2536頁)。
してみれば、このような公的に、寺院を含めて社会一般において使用され又は使用を必要としている標識・記号について商標権の設定を認め、一私人に対して独占権を付与すること、そして、一私人が指定商品に使用することは、社会公共の利益に反し、また、社会の一般的道徳観念に反するというのが相当である。
(2)請求人は、登録例を多数挙げて、本願商標は公序良俗に反しない旨主張する。
登録出願に係る商標が公序良俗を害するおそれがあるか否かについては、査定又は審決時における社会通念に基づき認定、判断すべきものであるところ、社会通念は時代とともに変化するものでもあるから、それに伴って、従来公序良俗を害するおそれがなかったものがあるようになったり、又はその逆の場合もあり得ることであり、過去に登録されたものが常に公序良俗を害するおそれがないとはいい得ないというべきである。
そして、過去の登録例や審査例は参考資料の一つに過ぎないものであり、当合議体は過去の登録例等に拘束されるものでないことも明らかである。
しかして、商標権は、商標権者が指定商品又は指定役務について登録商標の使用を専有し、同者がいわゆる独占権を有するものであるところ、近時、商標権を含めて知的財産権に対する認識、評価、さらには権利意識が高まり、権利行使が日常的に行われていることは、当庁において顕著な事実であり、商標権においても例外ではない。
従来のように権利行使などが滅多にない状況においては、本願商標のような公的な標識・記号について登録を認めても、権利行使をして寺院の活動等に支障を来すことなどは希有であったといえようが、前示の事情に加えて、原審認定のような寺院の活動範囲が拡大し、また、役務に係る商標登録制度の進展に伴って事情が異なり、従来と同様には考えられない状況にあるというべきである。仮に、本願商標について商標権を設定した場合において、必ずしも商標法の知識が十分でない者の間においては、その行使をしたときなどは紛争状態を招来し、寺院の活動等について支障を来すおそれの存在を否定することができないとみられるものである。
してみれば、公的な標識・記号である本願商標について、商標権を設定することは、社会公共の利益に反し、また、社会の一般的道徳観念に反すると判断するのが社会通念上相当であることは前示のとおりである。なお、商標法第4条第1項第7号は「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」と定め、公序良俗を害する「おそれ」の存在で足りるとしている。
(3)また、本願商標は別掲の標章のみからなるものであり、文字や図形を含むものではないから、本願商標について公序良俗を害するおそれの有無を判断すれば足りるものである。
(4)なお、同一又は酷似する商標について、統一した判断が望まれることは請求人主張のとおりであるが、公序良俗を害するおそれがあるか否かについては、前示のとおり査定又は審決時点における社会通念に基づいて認定、判断すべきものであるから過去の事例とは同じでない場合もあり得、仮に、それが過誤であるときは、審判又は異議申立制度で是正されるべきものである。
したがって、請求人の主張はいずれも採用することができない。
5 結論
以上のとおり、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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