Trademark Appeal Case
記述的商標の識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2009−17861(T2009−17861/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「PINK TARTAN」の文字を標準文字で表してなり、第25類「女性用のシャツ・ズボン・セーター・ジャケット・コート・ティーシャツ・スカート・ドレス及び下着,スカーフ」を指定商品として、平成20年6月23日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標は、『PINK TARTAN』の欧文字を横書きしてなるところ、これを構成する前半部の『PINK』は『ピンク、桃[淡紅]色』を、後半部の『TARTAN』は『タータン[格子縞]』をそれぞれ意味する語として使用されており、我が国の繊維及び被服業界では、『PINK TARTAN』の語を、『ピンクのタータンチェック(格子縞模様)』を意味する語として、スカート、スカーフ、ドレス及びそれらの生地に普通に使用している。そうとすれば、本願商標を、その指定商品中『ピンクのタータンチェック(格子縞模様)の商品』、『ピンクのタータンチェックの生地を使用してなる商品』等に使用しても、その商品の品質(色彩、模様)を表示しているにすぎず、また、これを上記商品以外の商品に使用した場合には、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと認められる。したがって、本願商標が、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審における証拠調べ通知の要旨
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲の事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、証拠調べの結果を通知した。
4 証拠調べに対する意見の要旨
請求人は、前記3の証拠調べ通知に対して、以下のように述べ、その根拠となる証拠として、平成23年3月1日付け手続補足書により、第9号証ないし第11号証を提出している。
(1)2002年に、ミムラン氏の妻であるキンバリー・ニューポート−ミムランのデザインによるブランド「PINK TARTAN」を立ち上げ、現在、カナダで21店舗、アメリカで74店舗、UAEのドバイ、韓国のソウルにあり、2010年には、旗艦店をトロントにオープンしている。本願商標は、このように10年近く継続しており、雑誌などのメディアにも紹介され、毎年4−8億円売り上げているブランドであって、オンライン販売も行っているので、カナダや米国はもちろんのこと、日本を含む海外においても、ファッションブランドとして認識されている。
(2)「PINK」が「ピンク、桃[淡紅]色」、「TARTAN」が「タータン[格子縞]」を認識させる語であるとしても、本願商標は、欧文字「PINK」と「TARTAN」を横一連に表してなり、全体から生ずる称呼「ピンクタータン」は長音を入れても7音と決して冗長ではなく一気に発音し易いため、全体で特定の意味を有しない一種の造語として認識され、全体では特定の意味を理解し認識させることはないブランド名として理解されると考えるのが妥当である。
(3)英語を公用語とするカナダにおいて、商標「PINK TARTAN」の自他商品識別力が認められ登録されている。このように英語を公用語とする国においても、本願商標の自他商品識別力が認められているから、我が国においても自他商品識別力が認められて然るべきである。
5 当審における審尋の要旨
請求人は、平成23年2月28日付け意見書において、「PINK TARTAN」ブランド製品のカナダ及び米国における2005年から2010年の6年間の売上の概数を示した表及び「PINK TARTAN」ブランド製品が紹介されているとする雑誌名とその発行年月を示した表を掲載しているが、それらを立証する証拠はなんら提出されていない。したがって、それぞれの根拠となる証拠を提出されたい。
また、請求人は、日本を含む海外においても、「PINK TARTAN」は、ファッションブランドとして認識されている旨述べているところ、本願商標が、特定の者の出所表示として、指定商品の需要者の間で全国的(日本国内)に認識されていることを立証する資料を提出されたい。
6 審尋に対する回答書の要旨
請求人は、前記5の審尋に対して、以下のように述べ、その根拠となる証拠として、平成23年7月8日付け手続補足書により、第12号証(別紙(Exhibit)AないしE)を提出している。
「PINK TARTAN」は、ファッションブランドとして使用され認識されており、英語を公用語とする国においても、本願商標の自他商品識別力が認められており、ファッション業界においては、「Black&White」や「RUGBY」のように、自他商品識別力が弱い語がブランドとして使用され、それが記述的表示としてではなくブランド名として認識されるという取引実情も合わせて考えれば、「ピンクタータン」「PINK TARTAN」が色柄名として使用されている例があるとしても、本願商標は、ブランド名として確立し認識されており、商標法第3条第1項第3号及び第4条第1項第16号のいずれにも該当しないと考えるのが相当である。
7 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
本願商標は、前記1のとおり、「PINK TARTAN」の欧文字を標準文字で横書きしてなるところ、その構成中、前半部の「PINK」の文字は、「桃[淡紅]色」等(株式会社小学館 ランダムハウス英和大辞典 第2版)の意味を有する語であり、後半部の「TARTAN」の文字は、「格子縞]等(前掲書)の意味を有する語であるから、その構成全体からは、「桃(淡紅)色の格子縞」程の意味合いを有する語として、取引者、需要者に認識されるものとみるのが自然である。
また、本願に係る指定商品及びその関連商品を取り扱う業界において、「PINK TARTAN」及び「ピンクタータン」の文字並びに「ピンク」以外のその他の色彩表示と「タータン」を組み合わせた文字が、「該色彩のタータンチェック(例えば、桃色の格子縞)の商品」を表す語として、一般的に使用されている実情が、前記3の証拠調べ通知に示した事実によっても認められるところである。
そうとすれば、本願商標は、「PINK TARTAN」の文字を普通に用いられる方法で表示してなるにすぎないものであるから、これを、その指定商品「女性用のシャツ・ズボン・セーター・ジャケット・コート・ティーシャツ・スカート・ドレス及び下着,スカーフ」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に、「ピンクのタータンチェックの商品」「ピンクのタータンチェックの生地を使用してなる商品」であることを認識するにとどまり、当該商品の品質(色彩、模様)を表した、自他商品の識別標識とは認識し得ない商標といわなければならない。
したがって、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項について
請求人は、「・・・このように10年近く継続しており、雑誌などのメディアにも紹介され、毎年4−8億円ほどの売上を上げ続けているブランドであって、オンライン販売も行っているので、カナダや米国はもちろんのこと、日本を含む海外においても、ファッションブランドとして認識されている。」旨述べているところ、当該主張は、本願商標が商標法第3条第2項に該当するものであることを実質的に主張するものと認められるから、以下この点について検討する。
ア 商標法第3条第2項の趣旨
知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10054号判決(判決言渡 平成18年6月12日)は、「・・・商標法3条2項は、商標法3条1項3号等に対する例外として、『使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識できることができるもの』は商標登録を受けることができる旨規定している。その趣旨は、特定人が当該商標をその業務に係る商品の自他識別標識として他人に使用されることなく永年独占排他的に継続使用した実績を有する場合には、当該商標は例外的に自他商品識別力を獲得したものということができる上に、当該商品の取引界において当該特定人の独占使用が事実上容認されている以上、他の事業者に対してその使用の機会を開放しておかなければならない公益上の要請は薄いということができるから、当該商標の登録を認めようというものであると解される。
上記のような商標法3条2項の趣旨に照らすと、同条項によって商標登録が認められるためには、以下のような要件を具備することが必要であると解される。
(ア)使用により自他商品識別力を有すること
商標登録出願された商標(以下『出願商標』という。)が、商標法第3条第2項の要件を具備し、登録が認められるか否かは、実際に使用している商標(以下『使用商標』という。)及び商品、使用開始時期、使用期間、使用地域、当該商品の生産又は販売の数量、並びに広告宣伝の方法及び回数等を総合考慮して、出願商標が使用された結果、判断時である審決時において、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものと認められるか否か(いわゆる『自他商品識別力(特別顕著性)』の獲得の有無)によって決すべきものである。
(イ)出願商標と使用商標の同一性が認められること
商標法第3条第2項の要件を具備するためには、使用商標は、出願商標と同一であることを要し、出願商標と類似のもの(例えば,文字商標において書体が異なるもの)を含まないと解すべきである。なぜなら、同条項は、本来的には自他商品識別力がなく、特定人の独占にもなじまない商標について、特定の商品に使用された結果として自他商品識別力を有するに至ったことを理由に商標登録を認める例外的規定であり、実際に商品に使用された範囲を超えて商標登録を認めるのは妥当ではないからである。そして、登録により発生する権利が全国的に及ぶ更新可能な独占権であることをも考慮すると、同条項は、厳格に解釈し適用されるべきものである。・・・」と判示している。
イ 本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否かについて
請求人は、前記証拠調べ通知に対する意見書及び第12号証(別紙D及びEを含む。)において、本願商標を使用している商品の売上高を提出しているが、それらはカナダ、米国等におけるものであり、また、雑誌における掲載例も、全て英語、フランス語で記載されたものであることから、これらの証拠からは、日本国内において使用していることを客観的に証明することはできない。
また、第12号証別紙B及びCにおいて、本願商標のラベル及びタグらしきものの写真が掲載されており、別紙Bの商標は、上下二段に表されていることから、本願商標とはその態様を異にするものである。また、別紙Cの商標は、本願商標と外観において同視できる程度に商標としての同一性を損なわないものと認められるが、これのみでは、日本国内において使用された結果として自他商品の識別力を有するに至ったものと認めることはできない。
さらに、上記各号証のほかに、日本国内における、本願商標を使用している商品の販売数量及び売上高、営業の規模(店舗数、営業地域、売上高)等がわかる具体的、かつ、客観的な証拠は、何ら提出されていないものである。
そうとすると、請求人の提出した各号証によっては、日本国内において、本願商標が使用による自他商品の識別力を有するに至ったものと認めることはできない。
(3)請求人のその他の主張について
請求人は、商標「PINK TARTAN」が、本願指定商品の分野において、カナダ、米国において登録されている例(第6号証ないし第8号証、第12号証別紙A)を挙げて、本願も登録されるべきであると述べているが、これら諸外国での登録例をもって、前記認定を覆すことはできないから、請求人の主張は採用できない。
また、請求人は、「PINK」又は「TARTAN」の文字を含む登録商標、「Black&White」や「RUGBY」のような色彩あるいは用途を表示している語のみからなる商標(第1号証ないし第5号証、第10号証及び第11号証)を引用して、本願商標が登録要件を具有するものであると述べているが、そもそも、商標の識別性の判断は、各商標につき、それぞれの構成態様等をも勘案し、個別具体的に判断されるべき性質のものであり、事案を異にする商標例をもって本件の判断が拘束されるものでないから、この点についても、請求人の主張は、採用することができない。
(4)むすび
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同法第3条第2項の要件を具備しないものであるから、これを理由に本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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